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学園軍記スクールブラッド  作者: 級長
その他の記録1
30/35

朝凪旅行記2 苛烈! 地雷闘学校!

 地雷闘学校

 クリーチャーに対抗出来る闘学校の存在は、あらゆる自治体が求めておりあちこちで誘致合戦が行われている。

 しかし、中には闘学校を名乗りながら大した戦力にならず、自治体に要求ばかりする奴らもいる。クリーチャーとの戦いに役立たずというだけで、武器を持たない市民は十分脅せるので質が悪い。

 この様な闘学校を地雷闘学校と呼ぶ。古代の故事成語から『ふんたー』、『ゆうた』とも呼ぶ。

 秋田県 某所


 蜂蜜を積んだトラックを襲撃した熊のクリーチャーは、トラックをヒッチハイクした少女によって撃破された。

 運転手から見たら、剣が届かない間合いにいる熊が切断される奇妙な光景であった。

 「ありがとう、助かったよ!」

 少女は背中まで黒髪を伸ばし、黒いファーが付いた白いダッフルコートを着込んでいた。武器は背中に背負った鉄のロングソードである。ポケットから棒付きキャンディを取り出し、包み紙を剥がしてくわえた。

 「リンゴ味か。熊が寄ってくるだなんて、よっぽど美味い蜂蜜なんでしょうね。何処で買えるんですか? あ、チュッパチャプス食べます?」

 「いや、これは売り物じゃないんだ」

 少女はトラックに乗りながら運転手に聞いた。シートベルトを締める辺りに礼儀正しさが滲むが、どうやら蜂蜜は非売品らしい。

 斬られた熊は生き物なのに燃え盛り、なかなか目を疑う光景を運転手の眼前に広げている。この世界ではこれが当たり前だ。

 この一見すると少女にも見える少年の名前は朝凪一舞。今は恩師の言葉に従い、世界を見て回る旅の真っ最中だ。チャウス・マウンテンでの騒動の後、彼はさらに北へ向かった。秋田県に入った辺りで、護衛と引き換えにトラックに乗せて貰うことになった。

 「実はこの辺りに闘学校があるんだが、そいつらに蜂蜜を要求されていてね。さっきみたいな熊に襲われるトラックがたくさんいるんだ」

 「闘学校がいるのに襲われる? 護衛に来ないんですか?」

 「あいつらは闘学校を自称する癖に、さっきの熊でも苦戦するんだ。丸っきり戦えない私が言えた話ではないが」

 一般的な農家のおじさんである運転手はまだしも、仮にも闘学校を名乗る学校があの熊にも勝てないことに一舞は驚愕した。

 闘学校、それはある日落ちてきた隕石の影響で生まれた先程みたいな生物、クリーチャーに対抗する為の教科『防衛科』に特化した学校である。クリーチャーは元々地球にいた生物が凶悪に進化した姿で、先程の熊は蜜を取る際に蜂が刺すので、その蜂に対抗してあの様な進化を遂げたのだ。

 人間も同様に進化しており、その力の使い方を学ぶのが防衛科だ。

 戦えない運転手すら、防衛科を習えば熊くらい倒せると知っているくらいなのだが、それに勝てない闘学校はまず無い。簡単に言えば進学校の学生が分数の四則計算を必ず出来る様なものなのだから。

 「外からクリーチャー退治に来る学生さんもいるんだけど、必ず多数のそいつらを引き連れていかなきゃならん上にマナーが悪く足を引っ張る。死人が出たら学校から何されるかわかったもんじゃない。嫌気がさして、誰も二度と来ないんだよ」

 「なんて迷惑な……学校の名前は?」

 「とても言えないよ。私達が何か悪口を言えば、皆殺されてしまうからね。公民館でクエストを受ければ会えるだろう」

 弱い癖に立派に言論統制とは生意気だ。一舞は弱いのに威張る人間がいかに醜悪か確かめるべく、クエストを受ける事にした。

 「すいません、公民館の近くで降ろして下さい」

 「え? クエスト受ける気かい? 随分勇敢だな……やめた方がいいよ?」

 「俺の目的は世界を見ることですから。足引っ張る様ならクリーチャーの餌にしますんで」

 止める運転手を余所に、一舞は公民館で降りる事にした。ただ、運転手はいろいろと心配があった。

 「あいつら、多分久々のクエストで大張り切りだ。何があるかわからない。もし敵対することになったら、君は雑魚とはいえ千人を軽く越える学生を相手にしなければならなくなる」

 「忠告はありがたく受け取りますが、ここの蜂蜜を食べなきゃ、世界を見たことにならないのですから」

 一舞はそう言ってトラックを降りた。彼の目的は世界を見る旅。そのため、ここで生産される蜂蜜は食べたい。

 公民館は市のマークではなく、問題の闘学校のものらしいマークが付いていた。丸の中にに漢字の『袁』と書かれたマークだ。

 一舞は公民館で、その闘学校のパンフレットを見つけた。公民館はクエストカウンターになっており、市民病院の待合室みたいに広々としていた。いや、誰もいないので寒々としていた。

 「袁術防衛科総合学校、中学校と高校が一つになった一貫校で、直に大学が出来る予定……と」

 袁術防衛科総合学校というのが、問題の闘学校らしい。中高一貫校で大学も出来るらしいが、それは実力不足で何処の大学にも進学できないということの裏返しに他ならなかった。

 理事長の袁術はどう思っているのか。

 「そういえば最近風呂入ってないな。シャワー使おう」

 一舞は公民館のシャワーを使う事にした。ロッカールームからシャワーが並ぶスペースに繋がる、よくある公共のシャワーだ。シャンプーは設置してあるものを使うスタイル。

 ロッカーに服を入れ、バスタオルだけ持って一舞はシャワーに向かう。この姿だけ見れば、ウッカリ女子用のシャワーに来てしまったのかと勘違いしそうだ。

 肩や腕の細さから腰のくびれ、柔らかなお腹や足の肉など、胸が膨らんでないだけで体つきは少女のそれだ。髪の長さや顔立ちもあり、決定的な部分を見ずに彼を男であると判断するのは困難と言える。

 「へー、蜂蜜入りか。尚更欲しいな」

 シャンプーには蜂蜜が入っているらしい。ただ、これも非売品だろう。蜂蜜は大半を袁術防衛科総合学校に上納せねばならず、こうして市民に提供出来るのは僅かなのだ。シャンプーになっているのも、品質として食べられるものではない蜂蜜を使っているからだ。

 「お、なんか髪がつやつやに! 肌もスベスベだ!」

 髪を洗い、体に泡を塗りたくると蜂蜜入りの効果が実感出来る。一舞は旅の中でどういうわけか、無意識に綺麗を磨いていたため、出発の時からすると明らかに美人になっていた。

 チャウス・マウンテンでも騒動の前後に美人の湯で有名な温泉に入ったりエステを受けたり、参考にしているのが女性をターゲットにした旅行雑誌なので仕方ない。

 「おい、本当なんだろうな?」

 「ああ、凄い可愛い女の子がこっちに入ってったんだ」

 一舞が泡を洗い流し、体を拭いていると話し声が聞こえた。一舞は下賎な声に警戒心を強める。発音にも賎しさが滲んでいる。

 「間違えたのか?」

 「へっ、誘ってんだよ。見知らぬ顔だし、長旅で溜まってんだろぉ~? 学校の女は飽きたし、ちょうどいいや」

 一舞は背筋に寒気が走るのを感じた。殺気とは別種の危機感である。何がなんだかわからないが、このままだと貞操が危ないことくらいわかる。

 初めてだから優しくして、など言っても聞かないタイプに違いない。一舞はいつもの様にバスタオルを胸元で巻いた。誤解が強まるということも考えずに。

 彼のいた額田同報団という組織では風呂場にまでクリーチャーが侵入する可能性があり、その対策に一舞はこのスタイルを取る様になった。これなら胴体を無いよりマシ程度だが守れ、足の邪魔にならない。

 「いたいた。さぁ、俺と遊ぼうぜぇ~。長旅で相手がいなくてウズウズしてんだろぉ~?」

 シャワールームに入って来たのは、学ランの男子学生だった。坊主頭で日焼けしており、脂ギトギトの汚物である。こんな奴に体を弄ばれることを考えると、一舞は吐き気がした。

 一方の男子は一舞を男と知らず興奮していた。むしろ、男と知っていても信じまい。

 「やるんならもっとイケメンを選ぶよ、このチャバネゴキブリ!」

 一舞は堪らず、男子学生の膨らんだ股間を蹴り上げた。破裂音が響き、何かが潰れた様な感覚が足にあった。彼は別に汚れてない足にシャワーをかける。ボディソープまで使って洗い出した。

 「ポトフッ!」

 股間を潰された学生は学ランの股間に染みを作りながら、泡を吹いて倒れた。ショック死しただろう。ただの金的ならこうはならない。これは人間に目覚めた力『神力』によるものだ。

 神力自体は家電でいう電気みたいなものだが、その電気で何を動かすかは人次第。炎を出す奴がいれば電気を出す奴もいる。ただ、身体能力を強化するくらいは誰でも出来る。

 「ギャー! 相棒の息子がァッー!」

 「今ので死ぬのか……熊に苦戦するわけだ」

 男子生徒の相方が驚愕していたが、ちゃんと神力による身体強化が出来ていれば普通の金的程度のダメージで済んだはずだ。身体強化は自動で掛かるので、不意打ちは言い訳にならない。

 身体能力の力は蹴りの威力を上げるなど攻撃面以外にも、防御にだって使える。

 「こうなったら、お前を学校中の男子で順番に……」

 「断る!」

 「タコスッ!」

 一舞に襲い掛かる相方もパンチ一発で首を折られて死んだ。首は面白いくらいグルグル回っている。

 「やれやれ、性に目覚めたばかりの中学生はこれだから……」

 一舞はソーダ味の棒付き飴をくわえて服を着て、公民館のクエストカウンターに戻って来た。一舞はチャウス・マウンテンを去った後、立ち寄った町の図書館で思春期の中学生らしくその手の情報をある程度仕入れていた。それ故、あまり本能に突き動かされるのはマズイと考えたのだ。

 そんな話はさておき、一舞はクエストを受ける事にした。まず、目に付いたのはハチミツを荒らす『ツキノマグマ』、先ほど一舞が倒したクリーチャーの討伐クエストだ。

 「早く行こうぜ」

 「こいつ……先にクエストを……!」

 と思ったが、既に男子学生がクエストをボードに貼付けていた。公共のクエストカウンターでのルールは細かいローカルルールがあるものの大体世界共通で決まっている。パーティでは無い人間をクエストに誘うのは御法度。先にパーティを組むのが基本だ。

 「チッ、まぁいい。どんなクエストだ?」

 一舞はボードを見る。パーティ募集中のクエストはボードに貼られる。パーティはいないが人数が必要だという場合は、こうしてクエストボードに貼付けて見掛けた人から連絡するのがルール。クエストを受けた人間がその場の人に声をかけてはいけない。

 これはローカルルールではない。この地域のローカルルールについてはネカフェで調べて来てあるから、一舞も知っている。こいつらにルールは通用しない。

 「げ……これか」

 ボードに貼付けられていたのは『ラグーラパン』の討伐クエスト。北に来たことを実感するクエストだが、わざわざ人を募るクエストではない。

 「早くー」

 「はいはい」

 しかもパーティは一舞を入れて4人。どいつも最近凍空工業という武器の会社が発売した、流行りの『フレキシブルポール』という武器を使っている。

 ただの鉄の棒に見えるこの武器だが、両端が伸縮式で、手元のスイッチで突然伸びたりする。本来はこの超合金ロボのロケットパンチみたいな機構を突き攻撃の強化に使う、戦闘初心者向けの護身用アイテムだ。

 ただ、動画サイトでこの伸縮機能を使ったアクロバット動画が投稿されて流行したのが原因だろうか。敢えて地面に伸縮機構を突き出してジャンプする行為を繰り返す『バッタ』という人々が増えてしまった。

 (お前ら……戦う気あんのか?)

 初心者向け護身用アイテムというだけあり、本来の用途は敵を怯ませての逃走。ジャンプも高台へ逃げる補助でしかない。つまり、殺傷能力は他の武器と比べたら極端に低い。

 「ロングソードとか雑魚だろ」

 「足引っ張んなよ」

 クエストを手伝って貰うのにこの態度。一舞はだんだんこいつらを殺したくなってきた。


 いろいろ諦めた一舞がクエストの開始地点に到着すると、自治体の手で箱に入れられた支給品が置かれていた。田畑の広がる田園地帯がスタート地点である。本来なら、こういうのは闘学校の仕事である。

 「支給品……おい」

 早速学生3人は支給品を奪い合っていた。支給品は平等に分けましょう。支給品の中には一舞が普段愛用している棒付きキャンディが。消耗の激しい能力を持つ一舞には必需品なのだが、学生は分けるつもりがないらしい。

 田園地帯を走っていると、普通にラグーラパンがのさばっていた。闘学校がある土地で名前の通りラグー毛皮ラパンがのうのうと生きているとは。本来ならありえないことだ。

 「うぎゃあ!」

 「なんだよこいつ!」

 「強すぎる!」

 先行した学生達はラグーラパンのとろい動きすら見切れずに吹き飛ばされていた。ラグーラパンに苦戦していいのは小学生までだ。

 「チッ、邪魔で攻撃出来ん!」

 ラグーラパンに群がっているため、一舞は攻撃出来なくて困った。学生の武器が長いため、入れるスペースがない。しかも素人の武器捌きでは予想出来ないため、攻撃の隙間を縫って入ることも危険だ。

 (何? ふんたーが邪魔で攻撃出来ない?)

 一舞の頭に浮かぶのは、同胞団時代の恩師の声。厳しくも優しく、困難にぶち当たった彼にアドバイスをくれた。

 (馬鹿だな、無理に知らん奴と連携取ろうとするからいけないんだ)

 一舞は脳内恩師のアドバイスを元に、ロングソードに神力を込めた。そして、新たに棒付きキャンディをくわえる。

 「バナナ味……か」

 (逆に考えるんだ。『殺っちゃっていいさ』と考えるんだ)

 「セイヤーッ!」

 恩師のアドバイスと共に、一舞は渾身の一斬を放つ。水平一閃の斬撃は剣が届かない位置にいる筈のラグーラパンと学生達を巻き込み、周りの景色すら斬られてズレた様な錯覚が起きる。そして、そのズレが修正されると学生は上半身と下半身が寸断され、ラグーラパンは腹を斬られて絶命した。

 「黒龍斬……!」

 まさに一撃。学生が巻き添えで死んだが、本来なら味方を避けて使える技だ。学生は腸をばらまきながら死んでいた。

 「帰るか」

 一舞は死体を放置してクエストカウンターに帰還した。一舞の能力は斬撃強化。能力の強さからエネルギーの消耗が激しく、甘い物が欠かせない。


 「同行者の皆さんは?」

 「死んだよ、あんまりにも弱すぎてな」

 クエスト達成を報告した一舞は、飴をかみ砕き苛立ちながら受付のお姉さんに顛末を報告した。お姉さんは何故か冷や汗を流していたが、一舞にはすぐ理由がわかった。

 「後ろから斬ったんだ!」

 「報酬山分けが惜しくなったんだろ!」

 「俺達が強くて嫉んだんだろ!」

 「ふざきんな!!!」

 的外れな答えの数々に、一舞は呆れるしかなかった。奴らの夢の中では『一舞は強い仲間に嫉妬し、報酬山分けが惜しくて後ろから不意打ちで殺した』ことになっているが、現実は『一舞による激おこフレンドリーファイア』だ。

 「連行だ! 裁判所に連行するぞ!」

 いきなり学生の手で一舞は連行された。裁判所なんてものが学校にあるらしいが、恐らく無駄施設だ。そんなもの、帰りの会で十分。

 だが、興味があった一舞はわざと連行されて裁判所とやらを見に行くことにした。


 特に拘束されることもなく一舞は袁術防衛科総合学校に連行された。彼が『捕縛しないのか?』と聞いたら、『俺達から逃げられると思っているのか?』という答えが返って来た。大した自信だが、完全に慢心、油断である。

 「へー、デカイなぁ」

 袁術防衛科総合学校は、東京ドームと同程度の規模があった。2000年代から今に至るまで畳と並び土地の広さの例に上げられる東京ドームだが、実際のそれを知らないとピンと来ないのもまた事実。

 あまりのサイズであるが、最近出来た学校ということは元々この土地に住んでいた人がいるはずだ。地元にクリーチャーから守ってくれる闘学校が出来ると聞いて喜んで土地を譲っただろうに、こんな雑魚ばかり来られてさぞ残念だろう。

 「裁判所だぞ」

 「それより、アレなんだ?」

 一舞は裁判所に着いたが、それより気になるものがあった。学校の中心にある発電施設らしきタワーがどうしても、嫌な予感がして気になるのだ。何やら、緑色に光っている学校で一番高いタワーだ。

 「あれは新型の神力発電所だ、ハチミツで発電してるのさ」

 「ハチミツ発電? それって事故り易い上にただでさえ変な神力ばらまいてクリーチャー狂暴化させる上に、廃棄物も丁寧に処理しなければならないアレか?」

 一舞はその話を聞いて戦慄した。ハチミツ発電は事故を起こし易く、普通に使う限りでもばらまく電磁波がクリーチャーや人間を狂暴化させ、廃棄物のハチミツをクリーチャーが食べた日には目も当てられなくなるアレである。

 「そんなことはない! ハチミツ発電は安全なのだ!」

 「袁術理事長!」

 一舞が慌てていると、長い髭を生やしたオッサンが現れた。学生達によると、彼がこの学校の理事長らしい。

 「今すぐハチミツ発電なんざやめろ! 本当にヤバいんだぞ!」

 比較的、こういう技術系の知識に疎い一舞すらハチミツ発電の危険性を理解出来ている。なのに、袁術は何故ハチミツ発電をするのか。

 「世間でハチミツ発電が危険と言われている理由はな、運用する人間が馬鹿だからだよ。我々の様な優秀な人間が使えば安全だ」

 「あーもうこれ事故りましたね」

 袁術の自信は完全に事故フラグ。実力の伴わない自信は慢心でしかない。学生のレベルは理事長のレベルに関係しているのか。

 「もー付き合い切れねぇ。やるか。うん、コーラ味」

 一舞はポケットから棒付き飴を取り出し、包み紙を剥がしてくわえた。

 「黒龍斬!」

 そして放たれるライト版黒龍斬。ハチミツ発電をするタワーの表面を破壊し、発電所を停止させた。彼は旅をする前に同胞団の帰省に付き添っており、そこでハチミツ発電所を止める為に戦った。

 その時発電所を止めたのは一舞ではないが、『この発電所は表面を覆う壁の下に配線があり、それが切れると停止する』ことは覚えていた。ハチミツ発電所の設計を何処かから丸パクリしたなら、構造は同じはずだ。何より見た目が同じなのだ、その可能性は高い。

 「き、貴様! 発電所を!」

 「殺せ!」

 発電所を破壊され、生徒達がいきり立つ。この態度ではどうやら、修理が自分達で出来なくて焦っているらしい。

 「ほう? やるか?」

 生徒達が武器を手に、一舞に向かって走って来た。敵は四方八方から来る。だが、彼は慌てない。

 まず真っ先に突出した敵を見つける。上段に振りかぶった敵に対し、一舞は胴を水平斬りで仕留める。

 「ぐおッ!」

 その敵を蹴り飛ばして後ろの敵も転倒させる。転倒した敵に隠れていた新たな敵が姿を現した瞬間、神力を込めた一閃でそれをまとめて片付ける。神力で切れ味が増した分、数人を何の苦も無く斬れるのだ。

 上半身と下半身を分断された前進する味方がばらまく、血や脂によって後ろにいた学生には第二波が見えなかった。視界を死体が塞いだのは一瞬。だが、勝負が付くには十分だ。

 「ぐふぉ!」

 「ひぃ!」

 「後ろががら空きだ!」

 一舞の背後から飛び掛かった学生達。だが、彼は跳んだ学生と地面の間をスライディングで潜り、その先に待ち構えていた学生を勢いで一気に切り裂く。

 そして空中で防御も回避も出来ない、横に並んだ学生を後ろから横一文字に斬った。

 「キリがねぇな」

 ただ、人数が多いため次々倒しても片付かない。必殺技を多用していくしかないらしい。剣は大量殺戮に不向きだ。

 「フッ!」

 一舞は神力を剣に込め、水平斬りを放つ。斬撃は赤い線になって残る。その後、Xを書く様に斬撃を重ね、赤い線で電話にある用途不明の『*』の字を作る。

 「セイヤーッ!」

 その中央に突きを放ち、一気に学生達を貫く。その威力は鯨漁に使う様な巨大銛を人間に対して使う様なもので、当然学生はまとめて粉々だ。剣の威力ではない。

 「黒龍槍……!」

 次々に学生の死体が山になっていく。理事長の袁術もこれには黙っていなかった。中国でよく使われた青龍刀を手に、一舞へ迫る。

 「ならば、私が出るしかないな!」

 意気揚々と戦いに望む袁術。しかし、上から赤い斬撃が槍になって降り注いだ事に気付かなかった。一舞がまた必殺技を使ったのだ。剣を振り下ろすと同時に、槍の様な斬撃が複数降った。

 「あぼべッ!」

 さらに、一舞が返す刀で斬り上げると、下からも槍状の斬撃が生えてきた。牙の様に合わさった二つの斬撃に挟まれ、袁術は身体を強引に引き裂かれた。あまり綺麗な切り口ではなく、腸で辛うじて上半身と下半身が繋がった様なものだ。

 「ピギャアッ!」

 「黒龍牙!」

 この傷では助かるまい。地面に落ちて血溜まりに沈む袁術は、最期にこう呟いたという。

 「蜂蜜舐めたい……」


 この戦いの後、文部科学省の『学園軍記対策室』から掃除の人員が派遣され、袁術防衛科総合学校のグラウンドに死体袋が並べられた。全寮制であるこの学校は親元を離れて暮らす学生ばかりで、久々の再会は無言の帰宅となった。

 理事長の袁術が死んだ段階で逃げればよかったのに、彼らは蛮勇を発揮して朝凪一舞に挑んだ。結果、生徒達は全滅。生存者は0。千人以上の犠牲を出す大惨事となった。

 グラウンドでは多くの遺族が悲しみに暮れた。役人達に犯人の逮捕を訴えた遺族だったが、その訴えは退けられた。袁術防衛科総合学校は地元住民を騙して土地を買収、その後は住民を脅して言うことを聞かせていた上に肝心のクリーチャーは倒さないという始末。

 故に一舞の行動が『学園軍記規制法』における正当防衛行動の『奪還』に当たるとして、不起訴処分どころか一定の謝礼が支払われることになった。政府の手先が学校を潰すといろいろマスコミがうるさいので、政府はなかなか思い切った行動が取れない。


 『また政府の怠慢です。秋田県でクリーチャーから人々を守る袁術防衛科総合学校が何者かの手により襲撃されましたが、政府は堂々と犯人を不起訴にしました。こんなことが許されるのでしょうか?』

 「この前は闘学校のハクロウ高校を非難してなかったかこいつら」

 犯人の一舞は居酒屋できりたんぽ鍋を食べていた。ここのきりたんぽ鍋はコラーゲンたっぷりの『ツキノマグマ』の肉を使った美人鍋だ。

 いくら一舞といえ、あれだけ神力を使うとしばらく動けなくなる。彼の能力は消耗が激しいのだ。そこで、地元住民の好意でしばらく旅館に泊まることになった。

 地雷闘学校からの支配から脱した祝いに、居酒屋には多くの人が集まっていた。奴らさえいなければ、外からクリーチャー狩りの学生も来るはずだ。

 「そういえば、青森で高速新幹線てーのが開通したってよ」

 「高速新幹線? クリーチャーが現れる前の乗り物ですか」

 一舞はそこで、新しい乗り物の話を聞いた。次の行き先が早くも決まった。一舞が渡されたパンフレットを見ると、クリーチャーが現れる前に存在した乗り物らしいことが分かる。

 2900年代の文化水準や科学技術は2000年代とあまり変わらない。クリーチャーの襲来により、文明が滅びかけたことやクリーチャーの対応に追われて技術を爆発的に進める『戦争』をする余裕が無くなったり、対クリーチャー技術を高めるために科学者がその分野に集中、他の科学技術の発展が遅れていることなどが原因である。

 「次の行き先決まりっと、古代の超技術を乗りに行こう」

 朝凪一舞の世界を見る旅はまだまだ終わらない。ここに来るまでで既に1200人を殺した一舞は、自分が後に『最も多くの人命を奪った学生』と呼ばれることをまだ知らない。

 朝凪一舞

 装備

 スティールソード

 ラグーコート

 アイテム

 シランコウの素材

 蜂蜜入りシャンプー

 チュッパチャプス


 Kill:約1200人

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