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学園軍記スクールブラッド  作者: 級長
第65次受験大戦 上杉事件
17/35

報告書1.日本の武器について

 データリスト

 クラリス・ウォード

 17歳 女

 習得言語:英語、ドイツ語、フランス語、日本語

 留学目的:語学学習、防衛科学習

 使用武器:ハルバード『スティールハルバード』

 神力:(掠れてて読めない。ちゃんと管理しやがれ)

 「これは私が日本で見たことです」

 1人の留学生が母国に帰ったその日のこと、久しぶりに再会したクラスメイトに話した。

 留学生の名はクラリス・ウォード。多少癖のある黒髪を束ねた、褐色肌の少女だ。彼女はスイスの留学生として、防衛科を学ぶ為に日本へ飛んだ。スイスは組織の面で防衛科が発達しているが、クリーチャーに対抗する『武器』は遅れをとっていた。

 組織が優秀過ぎて武器の性能をカバーしてしまうことが原因であるが、さらに防衛を拡充する為に様々な武器が必要だった。それを学ぶ為に、積極的に留学生を派遣した。

 「日本には、サムライがいたんです。自分の身長より大きなサムライソードを振り回す、ラストサムライが……」

 クラリスは日本で見たことを語り始めた。


 1年前 ハクロウ高校職員室


 「というわけで、よろしく頼んだぞ」

 「また展開が速えーのなんの」

 留学生として日本を訪れたクラリスは、ハクロウ高校の職員室にいた。今日からお世話になるクラスの学級長と、事前に面会するためだ。武器について学ぶということで、適任がハクロウ高校にいたのだ。

 担任の男性教師にクラリスを任されたのは、平々凡々たる男子生徒。しかし彼はハクロウ高校が誇るエース、15級長が1人、『武器商人』上杉四季。

 「いくら美人だからって緊張するこたーねーべ。エルフィと同棲してんべ女の子は慣れちょるべや?」

 「なんで訛っとるとよ? それにエルフィは幼なじみだから別とーよ」

 教師が四季に訛りながら話す。四季も釣られて訛る。標準語以外日本語はサッパリなクラリスには、何を言ってるかわからない。むしろ教師の狙いはこれだろう。

 確かにクラリスは『可愛い』というより『美人』の範疇に入るタイプだ。留学生は基本的に年上なので当たり前だが、どうしても外国人は大人っぽく見えてしまう。ハクロウ高校の夏服である半袖のブラウスとプリーツスカートがいい意味で似合わない。スカートのベルトに引っ掛けた、灰色の尻尾の様なアクセサリーが辛うじて年相応の印象を与える。

 四季も現在は夏服。戦闘服として制服の改造が認められているハクロウ高校の生徒にしては珍しく、無改造。

 「じゃ、えーっと。アイネーミィズ シキウエスギ。アイアム ヒフティーンクラスプレジデント『バイヤーオブアームド』」

 「私日本語喋れますよ?」

 四季が必死に英語で自己紹介したところ、クラリスが日本語をペラペラ話す。四季は通訳のために連れて来た人物に声をかけた。

 「というわけだエルフィ。君の出番は無い」

 「ぐぬぬ……」

 スイスではドイツ語も公用語である。そのため、日系ドイツ人のエルフィを連れて来たのだが、無意味となった。エルフィはジャージ姿で、銃の整備中に連れ出されたため油まみれだ。

 「これだけは言わせろ! ドイツの科学力は世界一ィィイ!」

 「おー、ジョジョですね」

 エルフィは自らの出自を利用した一発芸をかまし、さっさと退場した。短編に2人も15級長はいらない。

 「我々人類は隕石の墜落以来、狂暴化した生物『クリーチャー』に対抗すべく『神力』を得た。神力それ自体は自動車でいうガソリンに過ぎず、神力で様々な現象を起こすエンジンは人それぞれ異なる。基本的には身体強化と何か、例えば発電だったり発火だったり、先程の油女は銃弾の起動を曲げたりだ」

 「誰に話してるんです?」

 「お茶の間」

 四季はこの世界の大枠をお茶の間に解説。油女はエルフィのことだ。クラリスのツッコミをスルーしつつ、話が武器に移るので四季は彼女に語り掛ける。ただし、目は見ずに。

 「しかし、例えば俺が炎を神力で起こせるとしよう。ではクリーチャーが炎に強く雷に弱い奴だったらどうするか。答えは簡単。外付けのエンジンで雷を起こす力を得ることだ。その外付けのエンジンが武器だ」

 「フムフム」

 クラリスは復習がてら、四季の言ったことを頭で反芻する。これが武器を使用する基本的な理由だからだ。

 「クリーチャーは既存の銃器や刃物に耐性を持つ。エルフィみたいに銃弾に神力込められる奴は別だがな。しかし、ある人がクリーチャーの狩りを見て気付いた。『クリーチャーの牙や爪で武器作ればいいんじゃね?』と。クリーチャーの素材以外に、隕石のもたらした電磁波で変質した金属も武器の素材として有効だ!」

 好きな武器のことを語り、四季も徐々に熱くなる。そして、1本の刀を取り出した。四季の背丈より長く大きい刀だ。鞘には虎の革が使われている。

 「これが俺の自慢の逸品、斬魔刀だ!」

 「サムライソード!」

 四季の刀を見て、クラリスも熱くなる。サムライソードといえば、日本文化の象徴だからだ。

 「四季さんはサムライだったんですね!」

 「正確には『武器商人』。刀以外も使うが、好きなのは刀だな。まだあるぜ俺のコレクション!」

 四季は自慢げに次々と武器を見せる。クラリスの趣味を考慮して、刀が中心となる。特に、四季は斬魔刀の様な大型の物を中心に見せた。

 「早速だが、クラリスとクリーチャー退治に行ってくれ」

 「これか」

 四季は教師から依頼が書かれた紙を受け取る。学校の傍にある『リバーオブアロー』に棲息する『グンセイオオトカゲ』の討伐が今回の仕事だ。

 「よろしく頼む。ちなみにクラリスが死んだら国際問題だからな」

 「荷が重い」

 サラリととんでもないことを言われつつ、四季はクラリスと依頼の場所へ向かう。クラリスも自分が死んだら意志に関わらず国際問題なので安穏としていられない。

 リバーオブアロー 河原


 リバーオブアローはハクロウ高校の傍にある川だ。その河原に『グンセイオオトカゲ』なるクリーチャーが出るとのこと。

 川自体は大きいが、水は今のところ少なく、川内部も水より砂地が多い。2人は堤防の上でトカゲを探した。。

 「死んだら開戦! ドキドキ留学始まるぜい!」

 「なんでそんなテンションなんです?」

 「無理矢理テンション上げてかないとやってられないんだぜ!」

 留学生が死んだら国際問題。まさか永久中立国として何世紀もやって来たスイスが開戦はしないだろうが、風が吹けば桶屋が儲かるともいうし、用心が必要だ。

 「私が死んでも開戦しない様に遺書書いたんで大丈夫です」

 「それならいいんだが……」

 クラリスが遺書があるとはいえ、マジでとち狂った相手はそんなもの気にしないだろう。幸いスイスは良識のある国だが、組織は人が集まる故に完璧では無い。国内に常時発狂してる様な奴らがいたら何きっかけで爆発するかわからない。いないと願うしかない。国防で著名なスイスですもの、国内に危ない奴などいないだろう。

 想像力過多な四季の心配は尽きない。

 「で、それが君の武器かね」

 「ハルバードっていうんですよ」

 四季はクラリスの武器に注目した。長柄の武器で、先端は槍である。しかし、柄の先端付近にはちょっと小型の斧も付いており、斧の刃が付いてる反対にも尖った刃が付いてる。奇妙な武器だ。

 「変質した金属で出来てるけど。まだあまり技術が発達してなくて」

 「でも、そのコートは凄そうだな」

 武器の技術はまだまだ。しかし、防具の方はさすが防衛先進国。四季はクラリスの羽織っているコートに着目した。赤いコートであるが、暑い今でも平然と着てられる仕掛けがあるのだ。四季も紅いロングコートを着ているが、夏用に薄手なのだ。

 「このコートはクリーチャーの羽毛を使ってまして、軽い上に着ればいつでも決まった温度で過ごせるんです」

 「なるほど。そういう技術は進んでるな」

 やはり技術は一長一短。進んでる部分とそうでない部分がある。クラリスによれば、クリーチャーの羽毛が入ってるとか。

 「四季さんはその武器なんですね」

 「俺といったらこれだろ。よし、ではトカゲ共をサクッと殺るか」

 背負った斬魔刀に手をかけた四季は、堤防を駆け降り河原に立つ。グンセイオオトカゲの群れがそちらを向く。色も様々で、トサカがあるものや襟巻きのあるものさえバラバラ。全く奇妙なトカゲである。グンセイオオトカゲはトカゲというが、小型の肉食恐竜に近い。2本足で立ち、口には鋭い歯が並んでいる。

 「早速死ね!」

 四季は斬魔刀を抜き、それを振り払って一度に複数のトカゲを切り裂く。クラリスもハルバードを薙ぎ払い、複数を倒す。薙ぎ払った隙にトカゲが攻撃を仕掛けてきたが、先端に付いてる槍で突いて反撃する。

 「ハルバードを扱う力量はなかなかだな」

 四季はハルバードが使用者の技量を問う武器だと知っていた。なのでそれを使い熟すクラリスに感銘を受けた。切る、突くなど出来ることが多いと使い熟すのは大変だ。

 「何なに?」

 「面倒なのが来たな」

 トカゲを一方的に虐殺する2人に甲高い鳴き声が届く。グンセイオオトカゲのボスが群れの仲間を呼ぶ声だ。

 「グンセイオオトカゲのボスだ。他より身体が大きい」

 河原に現れたのは、グンセイオオトカゲのボス。他の個体より身体が大きい上、子分だろうトカゲを複数従えている。ボス自体も複数おり、この場に複数の群れがいることを示している。

 「群れはボスを倒しても新しいボスのとこに集まる。殲滅する!」

 四季が群れるトカゲに突撃。次々とトカゲの細切れが生まれる。四季の突撃で、彼とクラリスの距離は離れた。そこを見計らったかの様に、グンセイオオトカゲが2人の間になだれ込む。分断されたのだ。

 「まずい、クラリス!」

 「大丈夫!」

 リアルチートの代名詞、15級長の四季はこの程度のグンセイオオトカゲなど一ひねり。しかしクラリスは強い方といえいくらか一般的な戦闘能力しかない。クラリスが危ない。

 四季がクラリスのいるだろう方を見ると、ハルバードが天に突き出されてトカゲが空に舞うのが見えた。

 「なんとぉー!」

 トカゲの群れから跳び上がったクラリスの姿は、普段のそれと異なっていた。靡く銀髪に獣の耳。まるで『獣王無尽』四条綴の様な、変身系神力の使い手であった。

 それでも四条の様な素手で戦う粗野な真似はしない。空に突き飛ばしたトカゲをハルバードで、地上で呆然とするトカゲに叩き付ける。着地の際もボスのトカゲを踏み付けて頭蓋骨を砕く。着地の勢いでハルバードを強く地面に振り、周辺のトカゲも倒す。

 四季がいない方を向いていたと気付いた彼女は、振り向く時もハルバードを振り回してトカゲを薙ぎ払う。払った力が残るハルバードはバトンの様に身体の周辺で回転させ、勢いを殺す。その時もトカゲはハルバードに当たって吹き飛んでいた。

 無駄が無い。洗練された力強い動きは、馬鹿力集団の15級長と違う強さを持っていた。四季も15級長では『芸達者』だが、武器を扱う技量は使う武器の先代持ち主の技に寄るものが大きい。

 「スゲー。俺もポールウエポン極めようかな」

 ポールウエポンは扱い熟すと、華麗に敵を殲滅出来る。残念ながら四季はあまりポールウエポンを持っていない。

 「ふう。まあこんなもんでしょ」

 クラリスは狼への変身を解く。四季はクラリスの技に見取れていたが、彼女も四季の戦いを見ていた。

 「さすがサムライです。小細工無く敵陣に切り込む姿は武士道の権化!」

 「いやー、ただの力馬鹿なんだけどね」

 あれだけ美しい技を見せられると、自分の戦い方など粗暴で単純に見える。しかしながら、隣の花は赤いのか、クラリスからしたら凄い戦い方に見えるのだろう。

 「ホント、発達してないの武器製造だけなんだな。それを埋め合わせる様に軍組織や個々の戦闘能力が高い」

 スイスは防衛が進んだ国だが、武器の生産や量産は未発達。逆にいえば未発達なのはそれだけ。武器の生産が未発達で、それ以外も未発達なんて国は五万とある。

 「スイスの行く末がコエー。永久中立国でよかった」

 日本は強い奴は馬鹿みたいに強いが、弱い奴はモヤシみたいに弱いとバランスが悪い。軍の組織もまだまだだ。15級長みたいな奴が一部いるのと、皆が15級長の半分程度強いとじゃ、後者の方が組織として強い。

 「さあ、帰りましょう」

 「そ、そうだな……」

 外の世界に恐怖を感じつつ、四季はクラリスと学校へ戻る。四季は恐怖を感じることが15級長で唯一可能なのだ。

 「でも、犠牲者出てしまいましたね」

 「ああ、気にすんな」

 グンセイオオトカゲに喰い殺されたと思わしい人の死体を複数を見つけ、クラリスは俯く。死体の手足、そして首にあるリングを確認した四季はフォローする。

 「でも……」

 「こいつらはDQN族だ。姿形は人間そっくりだが、人間じゃねぇ。説明は学校でするよ」

 クラリスの精神的フォローに見えた発言だが、どうやら別に理由がある様だ。日本にしかいないものなのか、DQN族とは何なのか、疑問が残る一日だった。

 クリーチャー図鑑

 グンセイオオトカゲ

 群れるトカゲ。その姿はラプター系の恐竜に近い。どんな場所にも棲息する適応能力が特徴。姿形は様々で、骨格のみが共通。身体強化の神力を扱う。

 皮や鱗は防具、爪や牙は簡単な武器に使われる。

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