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学園軍記スクールブラッド  作者: 級長
第65次受験大戦 上杉事件
10/35

2.ハクロウ高校15級長

 15級長

 1.『豊饒神』豊饒苗

 2.『狂鮫』青嶋牙子

 3.『空の乙女』天野宙

 4.『氷室の番人』小室氷

 5.『燃える刀剣』烈火紅蓮

 6.『雷鳴の演奏家』響響介

 7.『壊し屋』鉄破正輝

 8.『武器商人』上杉四季

 9.『狙撃手』エルフィ・ラタトクス

 10.『獣王無尽』四条綴

 11.『猟犬』倉木闇人

 12.『機械技師』田中一郎

 13.『移動病院』癒野療子

 14.『人形師』遊木菜緒

 15.『暗黒騎士』白野黒

 ホテル 寝室


 夢憂が利用するホテルの部屋は、その浴室から想像できる通りに豪華だった。ホテルの部屋がベッドルームとリビング、ダイニングで構成される時点でそれは確かである。

 「んっ……」

 夢憂は天蓋付きのダブルベッドで目を覚ます。胸元までかけたシーツを左手で押さえ、右手は投げ出していた。物憂げに脚を組むと、シーツが腰の下までずり落ちて綺麗な脚が露出する。何故か鎖が付いた黒革の首輪を付けられていた。

 夢憂の躯を、余韻を感じる様に撫でる手があった。手の主は彼女と同い年くらいの男子高校生。ガウンを着て大学生くらいにしか見えない、夢憂の柔肌を愛でる彼が高校生だと辛うじてわかるのは、近くに『数学Ⅲ』の教科書が置いてあるからだろう。

 「まさか数学の教科書を読むだけの声にあそこまでそそられるとは思わなかったよ」

 夢憂が首輪の鎖を弄ぶ様子を見て、高校生が語る。まだ二十歳にもならない高校生のカップルが数学の教科書で一体何をしていたというのか。

 「だいたいはし飽きたでしょ。付き合いも長いし、公立四天王『死の商人』黄金札束ともあろう貴方なら」

 夢憂は起き上がり、体をシーツで隠しながら高校生、黄金札束を見据える。札束は彼女の胸元をはいずる鎖に目を奪われていた。

 公立四天王。15級長と同世代で、それ以上の力を持つとされる四人の高校生。その内二人が『春色の夢魔』宵闇夢憂と『死の商人』黄金札束だ。二人は同じ学校に通ってるわけではなく、札束は『商業高校』の生徒だ。

 黄金札束は『死の商人』の名の通り、商売で人を死に追いやることが出来る男だ。その実態は夢憂も知らない。彼女の彼に対する興味は、ただ夜を共にする時だけである。

 「さあ、朝御飯だ」

 ベッドの上にトレーが置かれる。そこに配膳されているのは茶碗一杯のご飯。夢憂は箸を手に取り、口にご飯を含む。それをよく噛んだ後、飲み込まずに札束に口づけをする。

 「んくっ、んん…」

 夢憂は口移しでご飯を札束に食べさせる。その最中、札束は夢憂を押し倒して上に乗る。彼女の髪が揺れてむせ返るほど甘い匂いが広がった。

 この二人の関係は単純だ。夢憂は札束が好きというわけでもない。だが、札束は夢憂が好きで堪らない。だから『死の商人』である札束は金で夢憂を『買った』のだ。ホテルの部屋代や学費、毎日の生活費などを札束が負担している。夢憂にとって、札束は共に寝る体であり財布でしかなかった。

 いくつかの理由がなければいくら湯水の如く金が湧き出る財布でも、夢憂は己の身を彼に委ねたりなどしない。まず、札束は皮肉にも金で目鼻立ちが良い顔、そしてスタイルのいい筋肉質の体を得ていた。

 「縛れ、『凌辱の首輪』」

 「あっ…」

 札束が呟くと、夢憂に付けられた首輪の鎖が暴れ出す。そのまま、彼女は手指の先から足先まで鎖が駆け回った。ベッドの天蓋の柱に鎖が絡み、蜘蛛の巣の様にベッドから浮いた状態で、夢憂の彫像と見紛う肢体を固定した。彼女が体を隠すのに使ったシーツは、ハラリとベッドに落ちる。

 「はあっ…まだするの?」

 「三年前、君を我が物とするために得た武器『凌辱の首輪』。ハクロウ高校の上杉四季がこれとセットになる『拘束の鎖』を持っているんだ。それを今夜、手に入れるという宣言だよ、これは」

 札束は夢憂が抵抗出来ないことをいいことに、鎖の隙間から覗く肌を舌で舐めていく。夢憂の寝汗は甘い蜜の様な味がした。彼女も札束の舌のむず痒さに呼吸を乱す。舌は脇から腹、臍に移る。札束が舌を内股に移した時、舐めるというよりしゃぶる形になっていた。

 「はあっ、はあっ、んんぁっ……」

 夢憂が札束に身を委ねる理由はこれだ。札束が宵闇夢憂という甘い蜜、それをひたすらに貪る男だからだ。

 夢憂が出会った男はたいてい、彼女を花瓶の花の様に大事に扱う。それは夢憂が当時まだ中学生であったからであるからで、多分その時の男が今の夢憂を見れば一人の女性として扱ってくれるだろう。

 「遅刻…しちゃう」

 「遅刻くらい、金があれば取り消せる」

 夢憂が口を開くと、札束は彼女から舌を離して鎖に手をかけた。そして、鎖が青い電流を夢憂に走らせた。これが『凌辱の鎖』が持つ力である。

 「んあああっ!」

 「今日は昼までしていよう。今までのこれの味は、今夜から味わえなくなるからさ」

 「うくぁあぁ…。いい、わよ、もっと来なさ……ひぐっ…はああぁっ!」

 夢憂は鎖が起こす電流の味に喘ぐ。彼女がのけ反る度、鎖が鳴る。だが、その喘ぎには苦痛の色だけではなく、快楽の色さえ滲んでいた。


 ハクロウ高校 3-8教室


 ハクロウ高校は愛知県有数の私立闘学校である。しかし、その校舎は平々凡々たるものである。今、四季がくつろいでいる教室もさして特別な仕掛けはない。

 「お前は偉いよな。ちゃんと制服着て」

 「そうすか? 制服だと服選ばなくていいから楽なんです」

 教卓の正面にいた四季は担任と話をしていた。今は英語の授業中。四季も赤点なんか取りたくないので真面目にノートを取る。

 他のクラスメイトを見ると、真面目にノートを取ってはいるが服装はまちまち。ハクロウ高校は戦闘服として私服の着用が認められているのだ。その中で一部だけでも制服を着る人間は少ない。

 「今週試験だな、四季」

 「ええ、生きた心地しません」

 四季は担任と目を合わせずに話す。同じ15級長でも倉木闇人は人と目を合わせることが出来なかったが、それは心の傷が原因で、高校に入ってからは傷が癒えて人と顔を合わせることができる様になった。だが、四季が人と目を合わせない理由は未だ不明だ。

 「外が騒がしいな」

 「また?」

 四季は外の騒音に耳を傾ける。担任も騒音を聞いた。私立闘学校に反対する集団の抗議集会だった。ここのところ毎日である。さすがに武力で追い払うわけにもいかないので我慢していた。

 そこへ、一際大きな爆音が鳴り響く。担任が急いで廊下に出て確認する。廊下の窓からは校庭が見えるのだが、何発かロケットランチャーらしきものが校庭に着弾していた。校庭が焦げてる。

 「ちょっと追っ払ってくるか」

 四季はベルトに白雨と黒牙を収めながら、重い腰を上げた。実はその抗議集会、教員連の差し金であるとサポート組織『図書委員会』の調査で調べが付いていた。図書委員会は私立闘学校において資料の管理と調査を請け負う組織である。四季が所属する購買部と同じサポート組織なので、連携を取ることも多い。

 そもそも平日の昼間に学校の制服を着た集団が抗議集会する時点でモロバレだ。しかし、メディアでは何故か『地元住民の抗議集会』と報道される。

 「まったく、俺達は地元住民と仲いいんだよ。クリーチャー駆除に協力してるからな」

 四季は廊下の窓から校庭に飛び出る。教室は3階。しかし、武器の力を使えばなんということもない。

 「あーあ、こりゃヤバい」

 四季は校庭に降りて一言。校庭の隅にある花壇にミサイルが着弾してるのを見て寒気を感じた。この花壇を心底大事にしてる人間の一人がよりによってハクロウ高校最強の人物なのだ。

 花壇に植えられた『ストロングパンジー』は粉々に吹き飛んでいた。この花は球技をしていてすっ飛んで来たボールくらい平気だが、さすがにロケットランチャーには耐えられない。逆に脅威を全て取っ払って大事に育て過ぎても緊張感が無くて枯れてしまう、育成の難しい花だ。だから様々な程よい脅威がある校庭で育成されていたのだ。

 抗議集会は学校の隣の河原で行われていた。四季は走り、瞬時に河原へ向かう。学校の東門を出るとすぐに堤防があるので、それを乗り越えれば河原だ。

 だが、四季が堤防の上にある道路から河原を見下ろすと、そこは既に阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。先に他の人が迎撃を始めていた。

 「あ、先越された」

 四季は抗議集会をしていた公立闘学校を迎撃していた人影を見た。長い黒髪と可愛らしい表情、細身の身体は少女のものだが、制服は男子のものを着用している。

 「五月蝿い、だから帰れ」

 その少女か少年かわからない人影は、腕を獣の様に変化させて向かって来る敵を引き裂く。わざわざ制服の袖を捲くって腕を変化させるところに彼か彼女の性格が出ている。

 「あらあら、ハクロウ高校最強の倉木闇人が花壇潰されてご立腹だ。俺は知らねーぞ」

 四季はその場で成り行きを見ることにした。ハクロウ高校最強の生徒、15級長『猟犬』倉木闇人。彼は滅多に怒らないが、怒らせたら怒らせたで手が付けられないのだ。それは上半身と下半身が泣き別れになった死体を見ればわかる。彼か彼女は自分に何されても怒らないが、動物や花、あと大事な人を傷付けられると怒る。

 しばらく闇人が惨殺する様子を見ていた四季だが、その隣に他の生徒が立つ。

 「抗議集会をしているのは女子校の闘学校『幻夢高校』、有名闘学校『北高校』、工業闘学校の『工業高校』、商業闘学校の『商業高校』の四つか」

 「四条か。よく制服で学校なんかわかるよな」

 四季の隣に立ったのは15級長『獣王無尽』四条綴。ショートカットの黒髪と勝ち気な表情が特徴の少女だ。服装は辛うじて制服である。男子用のスラックスを穿いて、上は黒いタンクトップ。これは制服と呼ぶべきだろうか。ゴツいベルトも目を引く。

 「そうか? 他の学校に友達いればわかるもんだがな……」

 四季の言葉に腕組みして真剣に悩みつつ、綴は戦況を見る。ほかっておいても闇人は負けないが、数が多いので時間がかかりそうだ。

 「よし、行くぞ!」

 綴は身体に力を込める。即座に異変は起きた。綴の髪が金色になり、長く伸びる。頭に猫の様な耳が生え、目も猫の様になる。身体付きが若干筋肉質になり、尻尾もスラックスから出て来た。

 「戦闘モード!」

 綴はそのまま堤防の上から飛び降り、戦乱の中へ。四季はそれを見送った。

 「撃て!」

 敵の一人がロケットランチャーを闇人に向ける。闇人は飛んで来たロケットランチャーを掴むと、それを敵に投げ返す。

 「嘘だ……」

 ロケットランチャーを撃った敵とその周りにいた敵が粉々に吹き飛んだ。闇人はストロングパンジーの仇を討った。

 「あたしもいるよ!」

 後ろから闇人を攻撃しようとした敵を綴が殴る。鈍い音がしたし、殴ったのは頭だから首が折れたのだろう、敵は倒れて動けなくなる。

 次々と襲い掛かる敵を、綴は軽くいなしていく。しなやかかつ力強い動きは、闇人と別ベクトルの強さを感じさせる。

 四条綴が獣王無尽と呼ばれるのは、この獣の様な姿が理由である。神力を使って肉体を変化させる『変身系』。この力を持つクリーチャーは数いれど、人間でこれができるのは珍しい。四季の狭い友好範囲ではハクロウ高校にも闇人と綴くらいしか見当たらない。

 「ぐげっ!」

 突然、数人の敵が頭を破裂させて倒れる。15級長『狙撃手』エルフィ・ラタトクスの援護だと四季はすぐに察知した。何せ、四季は妙な縁で小学校時代からエルフィと同居してるからだ。

 エルフィは弾丸に神力を込めて、弾丸の威力を増幅したり軌道を曲げたり出来る。教室からノートを取りながら敵の頭を撃ち抜くなど、朝飯前だ。

 「数が多い、一気に片付ける、シールドフィスト!」

 闇人は腕をさらに変化させた。変化したのは右腕だけで、左腕は元の人間のものに戻っていた。右腕は巨大なシールドの様なものになっていた。

 変身系は神力の込め方で『スイッチ型』と『バルーン型』にわかれる。綴の様に神力を込めてる間だけ変身できるタイプを、風船を膨らませる様子に例えて『バルーン型』と呼ぶ。対して、闇人の様に神力でスイッチを切り替えて変身するタイプを『スイッチ型』と呼ぶ。

 『バルーン型』は一タイプの変身しかできないが、『スイッチ型』はスイッチを見つければ複数の形態に変身出来る。しかし、変身形態が多いと使用者が持て余しがちになるという弱点もある。

 オマケに『バルーン型』は身体強化など他の神力と併用できるが、『スイッチ型』は使用者が他の神力を扱えない場合も多い。そら人間、スイッチ押すだけの生活してたらイロイロ鈍りますわな。

 「シールドで……どうやって?」

 敵は片付けると言いながらシールドを出してきた闇人に戸惑う。変身形態を持て余す使用者は、このシールドを防御にしか使わないだろう。

 だが、闇人はハクロウ高校最強。自分の使える形態を持て余したりなどしない。この形態の有用性を生かす方法をいくらでも知っている。

 「何をするか知らないが、盾ごときで! 仲間たる『睡の忍軍』の仇だ!」

 四季が先日全滅させた睡の忍軍の生き残りが闇人に迫る。スピードだけは一級品だ。だが、闇人にはそのスピードも通用しない。両手に持った小刀で切り掛かるも、闇人はそれをかわして彼女の後ろに回る。

 「シールドなのに避けた!」

 驚愕した彼女の様子を見て、遠くから観戦する四季は納得する。彼女の持つ武器は『ポイゾナシャーク』というクリーチャーのヒレから出来た小刀。斬った敵を毒に犯すことが出来る。闇人のシールドも身体の一部だから、毒が効くと考えたのだ。

 「言っておくが、俺には毒は効かない」

 「そんな!」

 何とか振り向いて闇人に向き合う忍軍の生き残りだが、既に遅い。彼女の腹部に闇人のシールドの先端が食い込んでいた。刺さってるわけではなく、普通に殴ったようだ。

 「ショックウェーブ」

 闇人が呟くと、凄まじい衝撃が彼女を貫いた。五臓六腑が水風船の様に破裂したかの如き衝撃だった。

 「がはぁっ! げほっ!」

 倒れた彼女は口から大量の血を吐き、しばらく苦しんで動かなくなった。実際に五臓六腑が破裂したのだろう。恐ろしい技だ。

 「シールドの真価は拳から振動を発して衝撃波を作ること。シールドの形状は特殊な筋肉の発達による副次効果に過ぎない」

 闇人はシールドの拳を集団に突き出す。かなり距離のあるところにいる敵がたくさん吹き飛んでいた。もちろん、さっきみたいに五臓六腑を破裂させるほどではないのだが。ショットガンみたいなもので、遠距離なら広範囲攻撃、近距離なら大ダメージと変化する。

 「貴様が上杉四季か! 『睡の忍軍』の仇、我ら幻夢高校『色の剣軍』が取る!」

 高見の見物を決め込んでいた四季の左右を多数の女子高生が取り囲む。全員、黒基調で赤いラインの入った半袖のセーラー服を着ていて、剣を手にしている。スカーフも赤色だ。寒さ対策か制服の一部か、全員が黒いタイツを着用している。

 「黒ストっていいですよね。あと、なかなかにいい剣持ってんじゃない。だが、お前らに合うかは微妙だな」

 「何を……?」

 四季は全員の顔を見ずに武器を確認する。種類に統一感が無いが、全部剣であることに変わりは無い。

 「見せてやるよ。『白雨』、『黒牙』!」

 四季は右手で白雨、左手で黒牙を抜く。その一撃だけで色の剣軍は半分ほど吹き飛ぶ。炎と斬撃が抜刀の際に乱れ舞った結果だ。

 「白雨と黒牙が退屈だってさ」

 ドサドサと地面に落ちた敵を一瞥しながら四季は言った。四季にはわかる。白雨と黒牙の、前の前の所有者はもっとハイレベルな戦いをしていた。抜刀で吹き飛ぶ烏合の衆など、眼中にすらないのだと。

 「なるほど、その持ち主は二人で白雨と黒牙それぞれ違うんだね。壮絶な戦いの末死んだのか。違うっていっても夫婦なのか。娘がいたみたいだな」

 「貴様! 私とこの名刀『死刃舞しじまい』が相手だ!」

 四季の前に現れたのは、刃が黒い刀を持った剣軍。しかし、彼女は脂汗をかいて苦しそうだ。

 「うぐぅっ! はっ…」

 彼女は刀を手にしていない左手で胸を抑える。ただ手を胸に当てるのではなく、服にシワができるくらい強く握り絞めた。

 「やめとけ。そいつはお前のことが嫌いだ。わざと神力を馬鹿食いして殺すつもりだ」

 「戯れ事を! ぐっああ……、何なのこの刀、私のてにすいついてきもちわるい…ひぐぁあっ」

 どうやら彼女は刀に嫌われてるらしく、刀を抜いた瞬間から刀に神力を吸われていた。神力は食物を通して人体に蓄えられるが、それを使い切ると今度は人体を分解して神力を捻出しようとするのだ。

 「ぐふっ!」

 彼女は口から血を吐き出す。同時に鼻血も出始め、目からは血の涙を流す。膝を付き、苦しげに息を荒げ続けた。四季は剣軍より刀の方を見兼ねて、彼女に近寄る。そして、刀を奪う。剣軍には刀を掴む握力さえなく、簡単に刀は奪われた。

 「ふむ、珍しい黒刀だ。持ち主の身体強化を増幅させながら、神力を吸収して切れ味を増す。確かに神力を食う刀だ」

 四季は軽く刀の性能を見定めた。刀は少女一人の蓄えた神力を、生命力を啜っていた。だが四季が触れても何ともないのは刀が満腹だからじゃない。

 「え? お前元の持ち主のとこから盗まれた? こいつに? そりゃ許せねぇ、死ね」

 「あああっ、やめ、ひっ、痛い痛い痛い痛いっ、ぎゃあああっ!」

 四季は刀を剣軍の薄い胸板に突き刺す。心臓ではなく肺を刺されたので即死は出来ない。座り込んだ剣軍は痙攣してしばらく後、刀を抜かれた後にようやく息絶えた。

 「よくも!」

 「元の持ち主誰? 俺が連れて帰るからさ、教えてよ」

 次々に襲い掛かる色の剣軍を『死刃舞』で軽くあしらい、四季は刀と会話する。軽くあしらうといっても、少女の若くみずみずしい生命力を啜った死刃舞は華奢な身体など簡単に真っ二つにしてしまう。

 四季が刀に嫌われて神力を吸われなかったのは、刀と意思疎通が出来たからだ。刀も、自分の声を聞いてくれる稀有な人間まで嫌わない。聞き上手は好かれるのだ。

 しばらくしてついに、河原で抗議集会をしていた集団は全滅、生き残りは逃走した。河原には死体だけが残される。

 「でさ、何で闇人は怒っちゃったわけ? 花壇にミサイルが着弾したから?」

 「ボクは花を荒らされたくらいじゃ人を殺さないよ」

 変身を解いた綴と闇人が話していた。四季も暇なので白雨からほとばしる炎を飛ばして、逃走する集団にトドメを刺してから合流する。生き残りは極端に減った。

 「誰だそいつ?」

 「さっきの抗議集会の連中にスパイだと疑われてリンチされてたんだとさ」

 四季と綴は闇人が抱き抱えている少女を見る。闇人はこの少女を救うために戦ったのだ。少女の顔を心配そうに覗き込む表情に、先ほどの様な狂暴さは見当たらない。まるで捨て犬に傘を差してあげる様な、心優しい女の子だ。

 「これは……色の剣軍? いや、武器持ってないし鞘も身につけてないからさっきの奴らとは違うか。え? お前の持ち主?」

 四季はその少女を見て驚いた。服装は色の剣軍と同じセーラー服。だが、剣も鞘も身につけてない。全身ボロボロで、穿いてるタイツも穴が開き、セーラー服も所々破れている。スカートは一部が裂けてスリットの様になっていた。砂や泥が付着して汚れている。セーラー服が半袖なので、腕の傷がよくわかる。

 背中までのセミロングの銀髪は乱れ、息をする度に苦しそうな顔をする。肋が折れているのだろうか。そのうえ、右目はえぐられていた。とにかく、この少女がハクロウ高校のスパイだと疑われて暴行を受けていたのは確かだ。そして、死刃舞曰く主人であると。

 「ううぅ…」

 「……手当てしないと」

 少女が痛みに呻くので、闇人はボンヤリした声を漏らしながら一気に堤防の上へ飛び上がる。膝で全ての衝撃を吸収し、少女へのダメージを抑えた。こんな芸当ができるのは私立闘学校サポート組織『運輸委員会』のエース達か彼くらいなものである。

 「おいおい、あいつ一人で大丈夫かよ?」

 「保健室には癒野がいないけど更がいるから大丈夫でしょ」

 四季は闇人のボンヤリぶりで治療が成り立つのか心配したが、綴は更の存在を根拠に大丈夫だと言い切る。

 保健室には私立闘学校サポート組織『保健委員会』のトップにして15級長『移動病院』癒野療子が常駐しているが、生憎彼女は看護学校の入試に行ってて不在。だが、『保健委員会』のナンバー2であり闇人の友人、並木更がいる。

 癒野の治療の様にすぐ回復できるわけじゃないが、更もナンバー2だけあって治療の腕は高校生の中でも飛び抜けている。闇人も一応、応急手当てなど医療知識があるらしいが、如何せんボンヤリしてる上に力にセーブが効かないので任せられないのだ。

 「俺は武器拾って合流するよ」

 四季は散らばった武器を回収し始めた。敵から武器を奪うことは味方の戦力増強のみならず、敵の戦力を減少させることに繋がる。さらに、武器の声が聞ける四季なら武器が認める使い手に武器を回すことも可能。そういう意味で四季は『武器商人』なのだ。

 『春色の夢魔』宵闇夢憂

 配下『三大欲求』

  『睡の忍軍』(全滅)

  『喰の銃軍』

  『色の剣軍』(全滅)

 『破邪正拳』央田心史

 配下『四聖獣』

  『青龍』東山龍

  『朱雀』南野雀

  『白虎』西山寅治

  『玄武』北野玄

 『死の商人』黄金札束

 配下『カンパニー』

  『会長』

  『部長』

  『課長』

  『係長』

 『機械歩兵』板金歯車

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