97弾 不法侵入者から話を聞こう?
ドラキャを所定の位置に止めると、出発時と同様の老人たちに変装した3人は、怪訝な顔をした。
「何か、あったのですか。」
老人に化けたミアンが口を開く。
「ええ、コソ泥が来たので取り押さえました。ついさっきです。」
「とりあえず、家に入りましょう。」
小柄な老人に変装したヘルバティアがそう言ったので、俺は捕らえた見張り役を引きずりながら、もう一人のコソ泥のところまでメムの先導で3人と一緒に侵入者を捕えた場所へ向かう。
「ふーん、これね。ありがとう、取り押さえてくれて。これらは別のところに運んで。」
変装のせいか、それとも別の理由か分からないが、声色はいつもと違い冷徹な感じがする。
「状況が状況なので、ヘイル、イワン、イワノフ呼びでお願いします。」
ミヤンが俺の耳元に小さな声でそうささやきかけてきたので、うなずいておく。
俺とメムが3人と共にコソ泥2人をリビングダイニングに運んで、ずっと見張る間、3人は代わる代わる服を着替えたり、コソ泥たちの装備や所持品を回収していた。そうして3人の着替えなどが終わって全員が揃うと、
「ありがとうございました。」
小柄な老人に変装したままのヘルバティア、いや、ヘイルが俺たちに深々と一礼する。
「このコソ泥は警備隊に引き渡しますか。」
俺がそう聞くと、
「いや、こっちでも聞いておきたいことがある。さて、どうやって起こすかだけど。」
と言って、ヘイルがイワンとイワノフに何かハンドシグナルを出した。そのタイミングでコソ泥たちは気が付いたようで、モガモガ言いながら体を芋虫のように動かし出す。
「ニシキさん、あなたはこの家の隠し部屋と、そこへ行く隠し扉に気づいたのかな。」
ヘイルがすごい威圧感で、俺に聞いてくる。
「まあ、あのコソ泥、真っ直ぐにこの部屋の奥の扉からあの壁板に向かい、何やら壁板をいじくり回していたのですから。何もないとは言えないでしょう。」
俺は、相手の出方をうかがう意味で、あいまいに回答する。
そうすると、ヘイルは少し威圧感を抑えたようで、
「まあ、確かにその現場を見て取り押さえたのですからな。………うむ、ここまで見てるのなら、ニシキさん、あなたにも隠し扉と隠し部屋の案内がてら、当方の作業に協力してもらいますか。」
「はあ、それはいいのですが、メムもですか。」
「そうですね、一緒にどうぞ。」
そう言われると、もう断れないか。
(私も立ち会うしかないでしょう。ここまできたら突っ走るしかないわ。)
メムも念話術で同意を示す。
そういうやり取りをしている間に、イワンとイワノフはコソ泥2人をどこかに運んで行ったみたいだ。
「では、こちらに。」
ヘイルさんが俺たちを先導して隠し扉を開けている。扉をくぐると狭い目の階段が現れた。
「足元には気をつけて。」
ヘイルさんはそれだけ言うとそのまま俺たちを先導する。高さがないので、俺は身をかがめながらメムと階段を降りる。降りた先には2つの扉があり、ヘイルさんが左側の扉を開けて部屋に入っていく。俺たちもそれについて行き、部屋に入ると捕まった2人のコソ泥が、俺とメムが捕まえた状態で目隠しをされて床に転がされ、イワンとイワノフに蹴られていた。部屋は石造りで頑丈そうにできていた。光魔法だろうか、部屋の中は明るく照らされている。
「猿ぐつわは、ほどいたの?。」
ヘイルが淡々とイワンら2人に聞く。2人は無言で首を左右に振る。
「そうか、まあいい。一人ずつ聞いてみるか。」
ヘイルがそう言って2人にハンドシグナルを出す。
イワンら2人は、見張り役だった男の服を剥ぎ取り、下着だけの格好にする。
「聞かれたことに答えてください。でないと後々大変なことになりますよ。」
ヘイルが見張り役の男に低い声でささやきかける。そして猿ぐつわを外し、口につめたボロ布を抜く。
「この家には何をしに来たのかな。」
「あ、あれだ。あの男に言われたのだ。見張りをするだけでいい、そうすれば俺が盗みだして換金した分の3分の1を報酬として支払う、少なくとも50万クレジットは払えるだろうと。この家の奴らが接近したら笛を吹け、それだけでいいって。そう言って笛を渡された。」
「じゃあ、所持していたこの短刀2本は何かな。」
「護身用だ。あ、あの男から1本は渡された。爺いと少年がいるだけの茶店だから、いない時に盗みに入るが、ヤバくなったら逃げてもいい、と言われた。」
ヘイルが見張り役の男の股間に、その短刀で軽く突く。
「本当かな。いざ、という時は押し入って家の者を殺れ、とか言われていたのじゃないかね。」
「………は、はいい、そうです。その通りです。」
「あの男から聞いたのは、他にないかね。」
ヘイルが先ほどのように、見張り役の男の股間に短刀を押し当てる。
「……あ、あ、あ、ありません。い、今話したことが全てです。本当です。本当です!。」
見張り役の男は、悲鳴のように言いたてる。
「ふむ、いいでしょう。まあこれからいろいろ調べて、もし違っていたら、その股間のものを切り落としますので。」
ヘイルがそう言った後、股間から短刀を離す。
「あ、ああ、ああああ、ああああ、はい、はい。」
見張り役の男は荒い呼吸をしながら返事をした。
(ねえ、不快になってない。ダン。)
メムが念話術で俺に聞いてくる。
(いや、やはりこの家には何かあるのかなあ、という疑問ですよ。俺はコソ泥と思っていましたが、この対応は相当なものを隠しているような感じですね。)
この状況に巻き込まれているが、俺は意外に自分でも冷静になっていた。
(本当に殺しそうになったら止めます。メム様。)
(……わかったわ。)
ヘイルは見張り役に猿ぐつわと目隠しをした後、侵入者の男の猿ぐつわをはずし尋問をする。
「ずいぶん、この家の構造を知っていらっしゃる。」
「いや、偶然だ、偶然。壁板の色が違って見えて、気になって触ってみただけだ。」
「そうですか、嘘はいけませんよ。」
ヘイルはそう言って、イワンら2人に先ほどのようにハンドシグナルを出し、侵入者の男も下着だけの格好にする。そして、別の短刀を侵入者の男の耳に押し当てる。
「この短刀は、あなたが持っていたものですよね。おや、どうしたのですか、そんなに震えて。」
「いや、いや、その短刀を引いてくれ。………お願いだ、後生だ。」
「え、この短刀を引かなきゃならないのは、どうして。」
「………いや、その、………あ、あれだ。その……。」
「じゃあ、この短刀で少し耳に穴を開けてみますか。」
ヘイルはそう言って、侵入者の男の耳に短刀の先を押し当てる。
「や、やめてくれ。その短刀は毒がぬってある。やめてくれ。なんでも話す。」
「じゃあ、耳はやめて、こっちの方にしますか。」
ヘイルはそう言って、その男の股間に件の短刀を押し当てる。
「や、や、やめろー、やめてくれー!!。なんでも話す、なんでも話すからー。」
「やっぱり素直になるのが一番だ。じゃあ話を聞きましょう。なぜこの家を、この隠し扉を真っ先に狙ったのかな。」
「た、た、頼まれたんだ。裏ギルドの掲示板で知り合った男に。破格の条件だった。そいつの依頼で何回か別の盗みの仕事をした。その縁で頼まれた。この家に侵入して、絵を探してくれ。絵がどこにあるかの情報か、この家にないという情報をくれれば、50万クレジット支払う。その際に盗んだものはそちらで換金してかまわないし、それで得た金は別にお前の取り分で問題ない。そういう条件で頼まれた。」
「依頼者の名前は?。」
「いや、依頼のたびに変えてきた。グメツナ、キッニ、カッハなど、でも金払いは良かったし、きちんと払ってくれた。だから信頼した。」
そんな裏の稼業に信頼もクソもあったものじゃないが………。
「絵について、どんな話をしたのかな。」
ヘイルの声がより冷え冷えとした感じに変わってきた。
「いや、絵の話って、いや、隠されている絵を探してくれ、部屋に飾っている絵はそのままにしておいてかまわない。そう言われた。そうだ、隠し扉については、絵の話をした時に聞いたんだ。本当だ、知ってるのはこれが全てだ。まさか中に茶店の店員とコック以外の奴がいるとは思わなかったんだ。」
「まだ隠していることはないかな。」
ヘイルがそう言って、侵入者の男の股間へ再度、毒塗りの短刀を押し当てる。
「見張りをつけたのは俺だ、俺が雇った。ラキナナノシティで落ち合った。そしてそこから、ここまで来た。運び屋に連れてもらってな。荷箱に潜り込んでな。そして時期を待って侵入した。仕入れに行く時を狙って。これが全てだ、もうこれ以上は何もない。」
「仕入れに行く時期は誰かに聞いたのか、グメツナとかいう依頼者に。」
「いや、この時期なら新茶の時期だから動くだろう、と言っていた。そうだ、少しばかりこの街用に滞在費も少しもらった。もうこれ以上は思い出せない。」
「そうですか、じゃあ。」
そう言って、ヘイルは股間に当てた短刀をスッと滑らせた。
「ぎゃああああああああ、ああああ。」
侵入者の男が断末魔のような悲鳴をあげ、気を失った。
「あなたも、こうなりますよ。」
ヘイルは、見張り役の男にも、短刀を股間に当てすっと滑らせる。
見張りの男は、あっさりと気を失った。




