88弾 この愛で方を何とかしよう
住居下宿契約の追記事項を記載した書面が翌日朝には俺たちの元に届き、朝食をとりながらメムと確認をして、書面に問題がないのでこの追記事項の契約にサインする。
「相当必死に作ったようね。」
「一気に作って、ヘルバティアも契約条件の中で早くメム様に触れ合いたかったのでしょう。」
「でも、こちらの予定を知らせる手間はかかるわね。」
「まあ、急な予定の際や依頼等による部外の入浴等になった場合はやむを得ず、と言う別条件を付けていますし、入浴時以外のふれあいについては、2人による了解を経て別途定めるといっていますから。入浴の予定が急変や依頼の影響は受けることは、この書面からも了解していることがわかりますから。」
「ま、しょうがないか。じゃあ普段は、ヘルバティアと一緒に入浴と言うことね。」
「じゃあ、この書面の写しを俺の方で取っときますので、メム様、本日から入浴の方はよろしくお願いします。」
そういう会話をしながら、身支度を整えた後、組合本部に行く際に俺がサインした書面をミアンに渡す。
「じゃあ本日から、この追記契約はということで。」
「ニシキさん、早めの対応ありがとうございます。」
ミアンは眠たそうであった。
「じゃあ、メムちゃんと、今日から一緒にお・ふ・ろー。」
ヘルバティアは浮かれモードに入っている。
「こっちの依頼の状況にもよります。ランクアップ試験とかで当分下宿先を離れることもあり得ますので。」
俺は、ヘルバティアへ浮かれ過ぎないように釘を刺してみたが
「……ま、まあ、そういうこともあるかも、ね。じゃあ、アレよ。今日は休みにして。」
「何言ってるのですか。依頼を受けてこなす必要があるのです。こっちも生活もかかっているので。」
ランクアップをして、ローランカーの時に取り扱い不可だった情報を扱えるようにならないと、元の世界に戻る手掛かりが見つからないだろうからな。
「むー、まあ、長期にならない依頼をやってよね。」
と、膨れっ面をしながら結構な無茶を言ってくるヘルバティアに、ミアンが、
「姉さん、わがままより、家のことをなんとかしないといけませんから。」
と言って、ヘルバティアを抑えてくれた。
「では行ってきまーす。」
そう言って、俺とメムは下宿先を飛び出して行った。
「早く帰ってきてねー、メムちゃーん。」
背中の方でヘルバティアの無茶そうな注文が聞こえた。というか、そこに俺の存在がない。
組合本部に到着し、掲示板にて依頼を確認したが、指名依頼もないし、あまり良さそうな依頼はない。
街内の配送達依頼を3件受けて、街内を走り回り夕刻までに依頼を終わらせると、組合本部の食堂で夕食をとってから、下宿先に戻る。
「ただいま戻りました。」
茶店奥の厨房に、変装した双子妹たちへ声をかけて、自部屋に戻る。
部屋にて、装備の片付けや点検をしているところに、メムが
「ああ、来たわね。」
と言ってすぐに、ドアがノックされ、
「入浴どうぞ。」
と言うミヤンさんの声と、
「さあ、一緒に入りましょう。メムちゃん。」
と言うヘルバティアの声がする。
入浴準備をして、ドアを開けると、待ちきれないと言った顔のヘルバティアと、そんな姉を抑えるミアンとミヤンがいた。
「じゃ、メムはちゃんと風呂に入れてあげて下さい。」
と言うと、
「はーい、わかりました。」
と言いながら、ヘルバティアとメムと双子妹はいそいそと浴室に向かっていった。
俺は、灌水浴室で体を洗い、すっきりとした気分で部屋に戻る。さっさと体洗いを終わらせたからしばらく部屋でまったりと過ごす。小一時間もすると、ドアがノックされたので開けると、メムと、メムを連れてきたミアンがそこにいた。
「ありがとうございました。こちらは、終わりましたので。」
「はい、わかりました。」
俺がそう答えてミアンを見ると、少しぐったりとした表情をしていた。
「もしかして、メムと引き離すのに苦労されたとか。」
俺がそう聞くと、ミアンは無言でコクリと頷いた。やっぱり、ひと揉めあったようだ。
俺はメムと部屋に入り、メムの様子を見ると、メムもぐったりした表情をしていた。
「だいぶお疲れの様子ですが、どうだったのですか、入浴は。」
「入浴は気持ちよかったし、入浴後もおやつをくれたのだけど、部屋に戻る時にヘルバティアがわがままを言い出して、私にしがみつくから……軽く蹴ってあげたの。その後、妹たちとヘルバティアが、早く離れろ、嫌だって言い合ってもめて。」
「………ふーん、そうですか。ところで、すすめられるままにおやつを大食いしてませんか?。」
「な、な、何を言ってるのよ。見てもいないのに勝手な憶測でものを言わないで。」
メムが動揺したのを俺は見逃さない。
「でしたら、その表情はたまに出す、大食いして食い過ぎたなあって後悔してる時の表情ですよね。それに、黒い毛色で分からないだろう、とメム様は思っているでしょうが、おやつの食べかすがあちこちの部分についていますよ。」
「え、バレないようにそういうのは払い落としてきたはずなのに、………ハッ、ひっかけたわね。」
「もうバレましたよ。自分で毛繕いと確認をしだしたら、それは、立派な証拠ですね。おやつを大食いしたけど、バレないように隠蔽工作をしたと言う事ですからね。」
「まあ、アレよ。ヘルバティアから解放されるには、それなりにいう事聞いて演技をすることも必要じゃない。」
「元女神様が、みみっちい言い訳しないでください。食事量は自分でコントロールしないと、何度も言いますが元の世界に戻った時にでっぷりな体型になっていて、誰も神もメム様だと認識してくれなくなりますよ。」
「そんなポンポン言わないで。今度からはちゃんと自制するから。」
多分、そんな自制は3日くらいで終わりそうだけどな。
「じゃあ、ブラッシングしましょう。入浴後におやつを食べているのなら、食べかすを払いましょう。毛並みが乱れるといけないですから。」
「わかったわ、お願いね。」
俺は、ブラッシングをしながら、おやつの件は妹たちにしっかり言っておこうと思った。
翌朝、ミアンへメムにおやつを与え過ぎないように言ってみると、ミアンの方も、姉ヘルバティアがあんなにおやつを出してくるとは思っていなかったそうで、今後の厳重な監視を約束してくれたのだった。




