82弾 引っ越し早々喧嘩をしよう?
双子の姉妹なので、全く同じように見えるが、見分け方は、左利きなのが末妹ミヤンで右利きなのがミアン。性格もかなり違うようだが、双子ゆえのコンビネーションは、戦ってみて驚異的なことはよくわかっている。長姉より、スタイルと大人びた感も驚異的だが。
「ミヤン、腕を怪我させた恨みはあるかもしれませんが、それは割り切りなさい。」
ミアンはミヤンをたしなめるが、
「でもミアン姉ちゃん、それだけじゃないもん。こいつ、あのグランドキャット連れてきて、ティア姉ちゃん奪っていったんだもんー。あのグランドキャットに、ティア姉ちゃん盗られたー。」
そう言ってボロボロと涙を流し泣き出した。
えっと、それは俺のせいになるの………。まあ、形は大人でも中身は子供か………。
しくしく泣き出すミヤンを横目で見ながら、ミアンが、
「まあ、色々こちらこそご厄介をかけるかもしれませんが、私たちの稼業には詮索はなしでお願いします。」
「ええ、重重承知しております。ただ我々の身に危険が生じる場合は、やむを得ぬこともあることもご承知いただければと。」
「わかりました。話が分かりそうな方で安心しております。後刻、一緒にリビングダイニングで食事をどうぞ。今回は下宿人を歓迎したいものですので。」
「ご招待、喜んでお受けします。」
「では後ほど呼びに参ります。しばらく部屋でどうぞ。」
ミアンはそう言って、まだ泣いているミヤンを連れて部屋を去って行った。
夕刻に、部屋から呼ばれて夕食は静かに始まった。
俺は、夕食を食べながら、メムとヘルバティアがいちゃつきながら夕食をとるのを眺めている。というか、俺はヘルバティアのメムに対するデレデレっぷりに、もう何も言う事がない。
「…………………………。」
「…………………………。」
「キャッ、もう、メムちゃんったらー。」
「…………………………。」
「…………………………。」
「もう、かーわーいーいー。」
ミヤンが何かイラついてきている。
「ミヤン、ニシキさんにそんな怖い顔しないの。もう、そんな殺気立てちゃダメよ。」
ミアンはミヤンをたしなめるが、
「ミアン姉さん、このニシキと食後に組み手をしてもいい?。と言うか、ニシキ、あなた、私に喧嘩売っているようだから買ってやるわよ。」
さてどうしょう。こんな風に言われるとは。まあ、あの時の戦闘で俺が痛めつけたのは事実だししょうがないのだけど。平和裡に終わらせられないかなあ………。
「ミヤン、何言ってるの。やめなさい。ダメよ。」
「ミアン姉さん、本人はやる気になってる顔よ。やってやろうじゃない。」
これは、俺が何を言ってもミヤンには届かないだろうな。ヘルバティアとメムも、黙りだして俺とミヤンを交互に見ている。
「分かりました。組み手だから、杖とか武器とかなしでやるんですよね。まあ、あなたが、それらを使いたければどうぞお使いください。ハンデぐらいあげますよ。」
「テメェ、………ずいぶん言ってくれるじゃないか。今すぐやってやるよ。遺言書の用意はしておけ!。」
「ふーん、弱者が偉そうなことを。無駄に血の気は多いのですね。」
これくらい挑発してあげれば、
「表出ろ!!、そこの庭でやってやるよ!。」
ミヤンは立ち上がって、そう言う。
まあ、当然こうなるでしょうね。
そしてミアンは、俺に近づき、右腕を掴みながら庭へ引きずり出すように連れていく。
ヘルバティアとミアンは呆れた表情をしながら、メムは面白そうな表情をしながら一緒に庭へ行く。
ミヤンに右腕を掴まれながら庭に出ると、俺を突き放し、間合いをとった。
多分投げを警戒したな。俺はそう考えつつ、
「集中」
やれること全部で相手をしよう。
俺の挑発に乗っているとはいえ、踏み込みの速さはなかなかのものだ。意外に挑発は失敗だったかもしれない。そう思いながら、スローに見えている相手が繰り出す腹部への左蹴りをかわす。やはり左利きだから、利き手、利き足を主に使ってくるか。少し見てみるか。左蹴りをかわすと、それを見越してか蹴りが流れた勢いを活かすように、体を反時計回りに回転させながら、今度は右蹴りで連続攻撃をかける。うん、滑らかな動きで早い。でも、その蹴り足のふくらはぎに狙いをつけて、カウンター気味に踏み込んで俺の右肘をそのふくらはぎに叩きつける。
「ぐうっ、くっ。」
今度はこっちの番か。一旦ステップバックしたミヤンの間合いを詰めつつ、今度は左足でローキック、左半身になっている左足を狙うが、これはフェイント。途中で左足の軌道を変えて踏み込み、左半身を軸にするイメージで右足を踏み出して、右肩を入れた右拳ストレートを彼女の顔面に、きっちりヒットした。ふらついたところをタックルし、押し倒したところで、
「ミヤン、もういいでしょう。あなたの負けです。」
「ミアンの言う通りね。これ以上はあなたが圧倒的に不利よ。」
ミアンが言うのに合わせて、ヘルバティアもそう言って、2人で俺とミヤンを止めに入った。
一旦庭からリビングダイニングに戻ると、ミヤンはミアンに手当てされて、左頬に湿布薬を貼られてしまう。
「すみません、手加減はできませんでした。」
俺は、3人にそう言って頭を下げて詫びる。メムは俺の隣で、頭をペコリとする。
「いいのよ、ミヤンは結構重い子だから。」
「冷静さが足りないと言ってるのですが………。」
ヘルバティアとミアンは結構容赦ないなあ。
末妹は、前回俺に投げられて腕を怪我し、今回は俺にパンチを浴びて、その上姉たちの発言でトドメを刺されたのか意気消沈していた。
「しかし、前回私たちと戦闘した時は、結構苦戦されていたようですが………。」
ミアンが前の戦闘シーンを思い出しながら、俺に問いかける。
「あの時は、正直きつかったです。あなた方との戦闘前に13人と戦闘していたので。」
正直に答える。
「お二人のコンビーネーションで結構体力を削られましたからね。やばかった、あのまま続いていたらこっちが伸びていたかもしれません。」
「そうでしたか。あの時はこっちも結構当てにくくて苦労してました。」
「本当、メムちゃんはひらりひらりと私の攻撃かわすから。」
ヘルバティアがメムとの戦いを回想する。
「とりあえず、食事はこれで終わりということでよろしいでしょうか?。」
俺はそう言って終了を促す。
「ああ、そうですね。どうぞお休みください。」
「じゃあ、私はメムちゃんと一緒に寝るー。」
ヘルバティアはどこまでメムにハマるのだろうか。しかし、そう言って一緒に俺とメムが自部屋に戻るところについて行こうとするのを、ミアンとミヤンが背後から羽交い締めにして抑え込み、
「姉さん、いい加減にしてください。ニシキさん、このまま部屋にどうぞ。」
ミアンがそう言って、長姉をメムから引き離したのだった。
「ああ……あああ…、メムちゃん、メムちゃん………。」
「明日も会えますから、落ち着いてください。姉さん。」
「ふぅ、やっと解放されましたね。メム様。」
「私、相当気に入られてるのね………。」
部屋に戻り、疲れた声でメムがぼやく。
「あんまりしつこく付きまとうようなら、念話術で言ってくだされば、あの双子妹とでヘルバティアをおさえますので、ほどほどにサービスしてあげてください。」
「そうね、それはお願いするわ………、今のままだと後々面倒なことになりそうだわ………。」
メムは本当にぐったりして、何もやる気が起きなさそうだ。俺もそろそろ寝ることにする。ふと見るとメムはそのまま寝入ったので、俺はさっさと入浴を済ませて眠りについた。




