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69弾 当分これで静かだろう

(メム様、ここは逃げてください。)


 と伝えつつ、敵と距離を取る。


(何言ってるの、相棒は逃げないものよ。)


 そう伝えて俺と合流する。


「いいのか。距離を取ったな。わしは地属性魔法を極めた者でな。」


 その時、アンチージョの前に、岩でできた人形が地面から3体現れて、俺たちと対峙する。


「執事長様、お助けを。」


 と、言いながら地面にのびていた配下の者を、その岩人形は踏み潰す。


「ずいぶんと配下にも弱者にも厳しいんだな。金と暴力か。お前んのとこの商店は、とんでもない商店だな。売っているのは防具じゃなくて、暴力と喧嘩だな。」


 俺も怒りを抑えられなくなっている。


「いいのですよ。荒事の片付けです。しっかり片付けないと商店の発展につながらないので。」


 そう言うと、俺とメムに岩人形が襲いかかってきた。

 一体はメムに、二体は俺に向かって殴りかかってくる。

 俺たちは岩人形の攻撃を交わしつつ後退する。さっきの2発の魔弾による魔法の発動で、少し落ちた体力のことを考えると、魔法の発動は控えたい。

 とはいえ、岩人形の動きは、あまりキレがない。ワンパターンなのだ。しかも、アンチージョと岩人形の距離が離れてくると、より動きが鈍くなってくる。


(メム様、この岩人形、操れる距離に限界がありますね。)


(なるほどね、道理で動きが鈍くなってきたのかしら。)


 念話術でやり取りした瞬間、岩人形が崩れさる。

 もうもうとした埃が立ち、視界が取れなくなっているところへ


「ロックゴーレム・パイロット!。」


 再度、岩人形が3体、地面から生成されて俺たちに襲いかかってくる。

 アンチージョは先ほどの位置から、俺たちのいる付近まで前進して、杖を突き刺している。

 なるほど、奴の魔法はすごい。しかし、わかった事もある。まず、操作範囲と操作可能数は一定、この場合25マータルぐらい、操作可能数は3体。ただ、リセット的に一旦岩人形を崩して、その埃で視界を奪い、再度岩人形を生成し、操作範囲を新たにして、岩人形を操っている。


(メム様、この岩人形をかわしながら、あの人豚野郎のところへ行けますか。)


(いいわよ。)


 メムが動きを変えつつ、アンチージョの付近まで接近する。俺も、岩人形の攻撃をかわしつつ、アンチージョに接近する。


「ふん、どこに向かっている。操作範囲に気づくとはなかなか賢いが、わしとこいつらに挟まれて、動きが取れなくなるぞ。」


「そうかな。もうこの魔法のカラクリは大体わかったから、次で多分終わるぜ。」


「強がりおって、やってみろ。」


 アンチージョがそう言った瞬間、素早く岩人形からアンチージョの方を向き、俺は拳銃を構えて、火球の魔弾を撃つ。狙いは…………奴の長杖。見事に命中し、長杖が木っ端微塵になる。そして岩人形は、その場に崩れていった。後には、人形だった岩が積み残る。


「え、……………あ、ああーっ。」


 そう言って片膝を地面に突き、崩れるところに、俺は思いっきり膝蹴りを顔面に喰らわせる。


「ぐはあっ、うううう。」


 呻きながら、最後奴は気を失った。


「ふぅー、これでなんとかなったな。岩人形を3体もコントロールするのはすごいが、どこかで攻勢限界点があるとは思ったからな。やはり、杖が岩人形のコントローラだったわけだ。おう、前に言ったよな。金があるから偉ぶれると勘違いしたものは、後は悲惨なものになるって。」


 俺が、気を失ったアンチージョに向けて吐き捨てている傍らで、メムも息を切らしているようだ。

 そこへ、廃村のどこかに避難していた3人の老人が俺たちに向かってくる。

 小柄な老人が、メムに走り寄り、


「大丈夫なのー、メムちゃん。」


 そう言って、メムをガバッと抱きしめようとする。

 メムは、慌てて、抱きしめられる直前でひらりとかわす。


「姉さん、落ち着いて下さい。」


「何やっているのですか。」


 2人の老人が、小柄の老人の肩を掴む。はいどうどう、落ち着いて、みたいな感じだ。


「ご協力ありがとうございました。お三方のおかげです。」


 俺は、3人にお礼を述べて、頭を深く下げる。


「この太っちょは、どうするの。」


 と小柄な老人に聞かれたので、


「死んでいないので、捕縛して警備隊に連れて行きます。」


 そう答えて、配下の怪我人を探しにかかる。

 しかし、ほぼ全員が岩人形に踏み潰されて、死亡していた。


「残った一人も結構重傷だな。」


 そう言いながら、一台のドラキャを覗き込む。箱があったので中を見てみる。


「これは箱ごと持って帰ろう。」



 3人とメムが乗ってきたドラキャは、戦闘に巻き込まれ壊れたので、無事だったアンチージョ商店のドラキャで街に戻る。

 そのドラキャに、捕縛された気を失っているアンチージョを乗せて、俺が見つけた箱を乗せる。あとは重傷の一人を乗せていく。

 そして現場を離れ、そのまま俺がドラキャを操作して街へ行き、先に3人を街の中心で降ろし、そのまま警備詰所本部まで直行する。夕刻になってくるところだった。



 警備隊に事情を説明し、アンチージョと重傷の一人を引き渡し、持ち帰った箱も渡す。箱の中には、ファチオア商店が、店舗拡大のために、裏で行っていた荒事や各種工作についての書類が入っていたのだった。そして、乗ってきたドラキャも一旦警備隊に渡して、まずは、茶店ノンブリへ行く。



「これでとりあえずは終わった形になるでしょう。裏ギルドの方はどうですか。」


「大丈夫です。こっちは依頼後に依頼元に裏切られた立場ですから。」


 あまり、裏の稼業について首を突っ込む気は、今俺たちには無い。この一件はこれでおしまい、ということになる。

 3人は老人の変装を解いて、いつもの少年の格好と、初老の小太りの男性コックに変装を変えている。店を開けているときは、いつもこの格好でいるそうだ。


「何がともあれ、ご協力ありがとうございました。」


 俺は再度礼を言い、メムと一緒に組合本部の寮へ戻ることにする。


「えっと、メムちゃんにはもう会えない、とか。」


 少年に変装したヘルバティアが悲しそうな顔をする。

 俺は、


「ああ、店が開店していたら、またセットメニューを食いにきますから。」


 そう言うと、


「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしています。割引券のチケットです。一ヶ月有効ですのでそれまでにお使いください。なおご利用は一回限りです。」


 満面の笑みで、ヘルバティアは、そう言って、割引チケットを渡してくれたのであった。



 アンチージョを警備隊に引き渡してから2日後、商業ギルドのイサドさんと事務所で話をする。


「いやあ、あそこまでやるとは。とんでもない商店です。警備隊に呼ばれて証拠書類の確認に行きましたが、あそこまでやるとは。ファチオア親子に反抗的な者、商店の方針に従わないもの、買収や引き抜きに応じない者、そういう者をみんな痛めつけるようにしていたのです。『ファファロイ』という、ファチオア親子直属で荒事専門の集団があるという噂が、事実だったのですから。すごい書類ですから。」


「俺はこれで、メムの買い取りなんて話に振り回されずにすみそうですかね。」


「おそらくそうでしょう。これらの証拠を元に、大連合機関に報告し、この国内では、ファチオア商店を一切認めないことになるでしょう。真っ当な商売をすれば良かったのですが。」


「あのアンチージョはどうなるのですかね。」


「まだ、取り調べをしても、ほとんど黙否をしています。もう一人の重傷者は、回復して色々喋ってくれるのですが、下っ端のせいか、全体像を掴んでいなくて。自分の犯罪行為については喋っています。ただ、ファチオア商店では、そのような者2人は全く知らない、と言ってきてます。」


 経済犯罪も絡むらしく、商業ギルドと警備隊で協力して捜査と調査を進めることになるそうだ。

 そんな話をして商業ギルドを引き上げようとすると、


「イサドさん、急にすみません。」


 そう言って、警備隊の隊員が駆け込んでくる。


「アンチージョ・リージーが急死しました。心臓麻痺のようです。」


 俺とイサドさんは目を合わせて、しばし沈黙する。

 俺は深呼吸をして、警備隊の隊員に尋ねてみる。


「心臓麻痺か、本当かい。」


「ええ、牢に入っている間に急に苦しみ出したそうです。あっという間に死んでしまったそうです。」


 まあ、使いで来ている隊員からそれ以上の情報は無理か。


「とりあえず、商業ギルド長に伝えておきます。」


 イサドさんがそう言って、奥に入っていく。

 俺は、商業ギルドを出て寮の部屋に戻る。

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