67弾 ちょこっと寝返りしてもらおう
「では、グランドキャットを連れて行くことで、大丈夫ですね。そう依頼主に連絡していただければ。後は、依頼主から場所とかの指示があるでしょう。」
「わかったわ、その代わりと言ってはなんだけど、条件があるわ。」
「俺が、あなた方の正体をバラさない、という条件、以外に別条件ですか。」
こっちも条件が合わなければ、大暴れしてやるつもりだったが、
「あの………、その、………メム…ちゃんを触らせてくれて、そしてモフモフさせてくれれば。」
と恥ずかしそうにヘルバティアは、その別条件を言ったのだった。妹達は、ジト目かつ呆れた目で姉を見つめていた。
「まあ、いいですよ。うまくやってくれれば、一緒にメムとのお散歩もつけますよ。いかがですか。」
ここは、インセンティブでこれくらい条件つけるか。
「も、もちろん、喜んで。さあ、頑張るわよ。」
ヘルバティアは、これで落ちたようだ。
(まあ、いいけど。いいのかしら………これ。)
メムが念話術で、この3人に半ば呆れていることを伝える。
さて、これで引き上げるか、と思い席を立とうとすると
「ニシキ様、あなたもここにいてくれませんか。」
とミアンが、俺に提案してきた。
俺が、怪訝な顔をすると、
「いえ、あなた様を裏切ろうとかではなく、今帰ると、多分、姉が変に暴走しそうなので、一緒にいれば落ち着くかもしれません。あと、下手に街をウロウロすると、回収した、という報告に信憑性がなくなる可能性があります。」
と理由を説明してくれた。
しかし、末妹のミヤンは、
「えー、こんな奴を泊めるのー。反対ー。」
と言い出す。
ヘルバティアは、
「ミヤン、黙りなさい。私は、泊めるのに大賛成です。ミアン、空き部屋に案内なさい。」
と姉の威厳?をもって命令したのだった。
空き部屋に案内されて、メムと俺は、一息つく。部屋は、まあ普通の部屋か。マットレスと寝袋と毛布が用意されている。
俺は、マットレスに腰を下ろす。
「まあ、寝返ったのでしょうけど………。愛でられるのは、いいとしてもねえ。」
「まさか、あそこまで熱狂的なメム様のファンだとは、俺も思わなかったです。」
思わぬ対応に、少し俺たちは戸惑っている。
当分の間は、この部屋で過ごす事になりそうだ。
「ところで、私を囮にするという事だけど、念話術の効果範囲は、約20メートル、この異世界の単位だと約20マータラだからね。」
「ええ、森とかで試してみましたからね。この能力を活用するしかないでしょう。」
「しかし、危なくなったら全力で、逃げ帰るからね。」
「それは、それで問題ないでしょう。うまく飼いならせない奴らの責任と言い訳できますし。」
「ああ、なるほどね。しかし、よく気付いたわね。王都で私を最初に触った子が、あのヘルバティアだったなんて。」
メムが、ものすごく感嘆して、俺に尊敬の眼差しを送る。
「すみません、褒めていただいて恐縮ですが、あれは、言ってみたら当たったみたいな感じです。」
俺がそう言うと、尊敬の眼差しがあっという間に、唖然とした眼差しに変わってしまう。
「だとしても、なんていい勘してるのかしら。……すごいギャンブラーね、ダンは。」
「それに、以前、メム様を茶店で触らせてあげた後、メム様はあの子に違和感を覚えていたじゃないですか。それもヒントになったようなものですから。」
「ふーん、意外と観ているのね。で、あなたの考えた策はどういうふうにするつもりなの。」
「単純です。連れて来られた場所で、暴れるだけです。」
「へ、暴れるだけ。それって策も何もないじゃない。」
メムはさらに呆れた様子で、俺に言う。
「ただ今の状況では、そう言わざるを得ない、だけです。相手の受け取り先とかがどこになるのかと言う情報や、あの3人をいかに巻き込まずに暴れるか、を考える必要があるのです。」
「まあ、今は待つだけなのね。」
「ええ、降りかかる火の粉は払いたいですから。しかし、一気にファチオア親子やあのアンチージョを潰せない、その可能性が大きいです。多分、ファチオア商店の本部に行くことはないでしょうからから。ただ、この国かこの街への出先を潰しておくのはありかもしれません。」
俺の説明に、少しメムは考えてから発言する
「………でも欲しているのは、あのファチオア親子だから、本部に行く事になるのじゃない。」
「力ずくで奪ったようなものだから、誤魔化しのために、行く先は細かく、あちこちたらい回しになるでしょう。後から探しにくくするために。時間もかけるでしょう。」
「じゃあ、受け取り先で暴れると言うのは、あの3人が私を相手に渡して、3人が引き上げてから行動する、と言う事になるのね。」
「それなら、裏切った感もなく、俺が追跡してきたという言い方もできます。」
「まあ、わかったわ。」
そこへ、ドアをノックして、俺が返事をすると、ドアを開けて、ミアンが現れる。
「昼食の準備ができましたので、どうぞ。」
俺は慌てて念話術で
(あまり大食いを見せないで、控えめな量の食事をお願いします。)
(わかったわ。毒とか盛られるかもしれないから、気をつけるわ。)
よかった、意外と考えてくれていた、か。
(ついでに、ヘルバティアに媚びてやれば、安全になるかもしれません。いかがですか。メム様。)
(いいけど、どうなるかしらね。)
と、安全の確保のためにメムを使う。
昼食は皆で一緒にとり、淡々と終わった。
俺が、横にいるメムを指差しながら、
「いかがですか、この子と遊びますか。」
と言うと、ヘルバティアが満面の笑みで、
「いいのですか。いいのですか。」
と、大喜びになる。双子の妹たちは、冷めた目で姉を見つめていた。
俺は、メムを置いて部屋に戻り、策を考える。
その後は、夕食になる。
夕食も一緒にとったが、ヘルバティアの横にメムがいる。
その夕食後、妹達から
「すみません、一緒の部屋でお過ごし下さい。」
「お願いします。そうしないと、ティア姉さんがダメになりそうなので。」
そう言って懇願され、半ば強制的にメムと部屋に戻る事になった。
風呂を終えて、…まあ、ヘルバティアがメムと一緒に入りたがったのを、妹達は必死で抑えていたが、部屋に戻る。
「ねえ、ダン。安全は確保できたようだけど、あれじゃかえって私が疲れるわ。」
「あのメムに対する熱狂ぶりは、確かに引きますね。」
昼食後、メムはヘルバティアの膝枕で昼寝をしたら、一緒に寝入ったようで、妹達が
「姉さん、仕事してください。」
「ダメね、これじゃ。どうするの。」
などと言っていたという。
うーん、かえって迷惑をかけてしまったような気がしてならない。
そのまま、メムと一緒に眠りについた。




