232弾 姉妹の話し合いがヤバイだろう
「おう、なんて日だ……。」
夕食を終えて妙に疲れてしまう。主に精神面での疲労が著しいので早々と寝床に。
「ダン、まあ気にしないのよ。」
メムがそう言い、続けて
「確かに、コンディションを良好にしなきゃいけないところであんな事があったらまずいわよね。私も必殺技が完成してちょっと調子に乗っていたかもしれないわね……。」
と殊勝に反省の弁を述べる。
「まあ、もういいですから。」
「でも、全員脱がせた状態で食事したらなかなか楽しい気分をも味わえたのじゃないの。そうはしないところがダンの偉いところだけど。」
「……ふぅーー。明日は話し合いですよね。じゃおやすみなさい。」
「ちょっと……そのため息と間はなんなのよ。」
俺はメムの昭和感あふれるおっさんのセクハラまがいな発言と粗い評価にガックリしながら眠りについた。
翌日になり、
「では昨日言った通り、今後の私たちのこのパーティ、華束舞踏の今後について話し合いを始めます。」
ヘルバティアがリーダーなのでまあ仕切るのはいいのだけど、
(まるで子供委員長みたいな感じになってるわね。そう思わない、ダン。)
(どんななりでもリーダーはリーダーですから。)
メムのちょっかい混じりの念話術での話をいなしておく。下手なことを言えば後々厄介の種になりかねない。メムも俺のいなしが効いたのか、それ以上は何も言わなくなった。
「ティア姉さん、一体何を話し合うのですか?。」
ミヤンが怪訝な表情でヘルバティアに質問する。
「おおまかな事をいえば、このパーティの今後の方向についてね。今回話し合いの俎上そじょうに載せたいのは、新たなメンバーを募集するかどうかについてよ。」
ヘルバティアが新メンバー募集の考えを示したことで、他のみんなが沈黙する。どうやら想定外のようだったみたいだ。まあ、俺もメムも全く考えてなかった事であるが。
「新メンバーですか。……もしかしてティア姉さん、天空刀剣の人数を見てメンバーを増やそうと思い始めたのですか?。」
「ミアンの言う通りよ。」
「うーん、今はまだ時期尚早だと思います。どうやって新メンバーを探して加入させるのですか。このニシキさんとパーティを組んでいるのも、偶然が重なった結果なところはあります。それに、たまたまニシキさんとメムちゃんが異世界人であったと言うところも大きいのですからね。」
「私もミアン姉さんに賛成。とりあえず結果が今出ているうちに、新たなメンバーを入れることを優先するより、この特訓所での特訓を終えることが優先なんじゃない。」
ミアンとミヤンが次々と反対意見を表明する。
「ニシキさんはどう思うのかしら。」
ヘルバティアに問われて俺は
「ミヤンさんの言う通りかと思っています。まずはこの特訓所での特訓を終え、そして10級のランクアップ試験を受けてから考えてみる方がいいかと思います。それに、新たなメンバーを入れると、俺とメムはこのパーティから出て行かざるを得なくなるかもしれませんがそれでいいのですか。」
と言って、今が時期尚早なことと新メンバーを入れるリスクを提示する。
「どうしてそんな極端な結論になるのかしら。」
ヘルバティアの表情が険しくなる。
「ヘルバティア、私はダンと同じ考えだわ。新メンバーはおそらく私たちのような異世界から来たものじゃないでしょう。そんな新メンバーに私やダンのことを一から説明するにしても、その話を受け入れるかどうか問題だし、私とダンの目的は元の世界に戻ることだけど、その目的に協力できる者ばかり新メンバーにできるかしら。」
メムもそう言って俺の意見を補足する。
「メムの言う通りですし、俺たちが異世界人だと知って、その異世界の知識をかっぱらって悪用しようと考える者が加わるかもしれません。そうなると、俺たちはそんなパーティからは離脱しなくちゃならないでしょう。この世界トゥーアールを大きく変えてしまい過ぎるかもしれなくなるからです。この世界の滅亡やら独裁者の誕生に手を貸すことはさすがに俺もメムもごめんこうむります。」
「新メンバー募集するにしても条件を厳しくして、しっかり審査した方がいいでしょう。でも今は特訓所の特訓とランクアップ試験を受けることを最優先にしないとダメです。やっぱりティア姉さん、時期尚早ですから。」
ミアンがそう言って反対の強い意志を表明する。
「でも新メンバーの募集は考えておいた方がいいと思っているの。みんな時期尚早とは言うけど、いい冒険者は早めに目をつけておく方がいいわよ。」
ヘルバティアはまだ新メンバーにこだわっているが、
「いい冒険者、といいますが我々の目的に会うものかどうかはじっくり調査した方がいいでしょう。目をつけるのはいいです、しかし、今は調査する暇もないでしょう。それに、何を基準に目をつけていく冒険者を選ぶのか、どういう調査をしてからパーティに入れるのかは、まだ明確にはしていないですよね。」
俺がそう言ってみると
「うーん、じゃあ新メンバーの件はランクアップ試験の結果が出てからまた考えますか。」
ヘルバティアはそう言って後々にすることを決めたようだった。
「では、話し合いはこれで終わりと言うことで……。」
俺がそう言って席を立とうとするが、
「待って、もう少しだけ。……ニシキさんについてもっと知りたいから。」
「はあ!?。」
ヘルバティアの発言に俺は少しイラっとしてしまう。
「ティア姉さん、ちょっと言い方が大雑把過ぎませんか。……ニシキさんがこのパーティの重要戦力であることは紛れもない事実です。あ、それにメムちゃんも。だからここで、ニシキさんの魔術についてしっかり確認してコミュニケーションをとってパーティ戦を優位に進めたいのです。身内のことをあまり悪くは言いたくないですが、ティア姉さんもミヤンも単純で大雑把で思考に欠けるところがありますので。」
ミアンの発言を聞いてヘルバティアが渋い表情になり、ミヤンは怒りの表情をミアンに向ける。
「なんかミアン姉さんだけがいい子みたいに聞こえるし、自分でそうアピールしてるように思えるのだけど。そうよね、ティア姉さん。」
「あらあら、なんか楽しいことになってきたわね、ふふふふふ。」
メムが元女神なのに悪魔のような表情でニッコリとして俺にささやく。
「私はそうは思わないし、まあそうなったのは……。」
ヘルバティアが言い淀むところに、
「ミアン姉さんに言おう言おうと思っていたけど、妙にニシキさんに自分が優秀であるみたいなアピールしてせこく媚び売ってるんじゃないの。そう言って私やティア姉さんを心の中で下に見ているのじゃないのかしら。」
ミヤンが厳しいことを言う。
「むー、ずいぶんな言い方ね、ミヤン。あなたはすぐに引っ越してきたニシキさんに喧嘩を売ったくせに、私が媚びを売っているなんてどこをどう見たらそんな事が言えるのかしら。まあ見る目がないからニシキさんの力量も把握できずに喧嘩売って逆に倒されたのだものね。」
「くー、何よ、私にいろいろ要領よく押し付けておいて自分は高みの見物ばかりのくせに、そんな性格だから学校で彼氏に逃げられたのでしょう。」
「言ったわね、双子であることを利用して勝手に私になりすまして、私の彼氏を騙そうとしたくせにあまりにガサツだから逃げられたのはどこの誰でしたっけ。その後ミヤンは『双子の出涸らしの方』って言われていたっけ。」
「よく言うわよ、この性悪女が。」
「ええ言ったわよ、出涸らし妹。」
ここまでくると何か空気が険悪なものになってくる。俺は少しうろたえながらヘルバティアの方を見ると、妙に悠然としながら双子妹を眺めている。
「「ガルルルル、フーッ、フーッ。」」
ミアンとミヤンは、まるで戦いの火蓋を切る前のように、かつ格闘家が試合前のフェイスオフするような感じでお互い顔を近づけて激しくにらみ合う。
「あのー、止めませんか?。いてっ。」
「いやー、面白いことになってきたじゃないの。こうなったら二人とも、やれやれー。」
止めようとする俺に軽くパンチを当てて、メムが2人を煽る。
「ちょっと、メム様。話し合いでしょ、罵り合いじゃないでしょ。」
「いいわよ、ニシキさん。たまには見物してみなさいよ。我が家の名物、『双子乱闘』よ。」
ヘルバティアも止める気なしだ。
「でもこのままだと、こんな居間で乱闘なんて……。」
「大丈夫よ、そこは、ほら。」
ヘルバティアがそう言いながら2人の様子を見るように手をかざす。俺もそれにつられて2人を見ると、
「じゃあ表出ますか。」
「いいわよ、そっちこそ。」
ミアンとミヤンがそう言ってにらみ合いながら、一緒に玄関を出て表庭の方に向かう。俺とメムも一緒についていく。




