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230弾 この空き時間どう使おう

「まあ、勝ち残ったし、夕食もいいものが出るらしいけど。」


  とミヤン。


「今後の予定が少しの期間空白になったのよね。」


 とヘルバティア。


「3日間って中途半端な空き方ね。」


 と言ってミアンがため息をつく

 講評後、ヘルバティアとトレガーマさんが何やら話をしていたが、どうやら予定よりかなり早くこのパーティ戦バトルロイヤルの決着がついたことで、予定に空きができたようなのだが……。


「ふーん、じゃあ……。」


 メムが何やらよからぬ事を考えている模様だ。


「メム様、何かろくでもない事を思いついたのなら寝室で記載しますが。」


 皮肉たっぷりに言ってやると、


「そう、じゃあお願いするわ。」


 そう言って先頭に立って寝室に向かっていった。



 寝室に入るとすぐに、


「さあ、書くものを出して。」


 メムがせっつく。

 机の上に紙とペンを出して、グハッ、痛ってえ、え、なんで……。額を押さえて机に突っ伏す。


「さっきはろくでもないことを思いついたとかよくぞ言ったわね。私が今考えているのは必殺技の洗練よ。リファインさせるのよ。」


 机の上に乗って、俺に時間差で頭突きをかましてきたのだった。


「う、うう、うぐぐ……。」


 なるほど油断してはいけないな……。


「さて、私がスッキリしたところでこう記載して、『爪斬撃に突きを加える。』と。」


「はあ、では、……言われた通りに記載しましたが。」


「次は『爪斬撃の威力を上げる。』と記載して。」


「はい、……記載しました。」


「最後に『後足による爪斬撃の攻撃の可能性。』、はい記載して。」


「はい、……これでいいでしょうか。」


『爪斬撃に突きを加える


 爪斬撃の威力を上げる


 後足による爪斬撃の攻撃の可能性』 


 3項目の課題として考えるのだろうかと思い、メムに言われて記載した事を大きめの余白で分けておくことにする。


「ふーん、いいじゃない。もしかして私の課題に気づいていたのかしら?。」


「いいえ、爪斬撃に重きをおくということに感心したのと、これからどうするのかなあというところですね。俺の思っていた課題は少し別なのですが……。」


 メムが気付けばそれでもいいし、どこかで壁みたいなものに当たった時にアドバイスするかもしれない事だからな。


「あらそうなの。これからは自分で必殺技の洗練を考えてみるわ。使ってはフィードバックしてこれらの課題に向き合ってみるわ。」


 そう聞いて思わず俺はメムを凝視して小さく拍手してしまう。


「いや、お見事です。よかった成長していて……。」


「……は?、ちょっとそれはどういう意味なのかしら。何、私を馬鹿にしていたの。」


「とんでもないです!。こうやって特訓所で成果が出ているのだなあ、と思っただけですから。あれですよ、この異世界でちゃんと俺たち成長できているかどうか不安だったもので。」


 必死でそう答える。


「……そうなのね、まあそう言われると悪い気はしないわね。ダンに、思いつきで言ってみたり、行き当たりばったりで食い意地ばっか張って迷惑かけたり、食い物で買収されやすいちょろい女神だと思われていたのかという不安もあったからね。」


 それ言うだけの自覚はあったのですね……この元女神猫は……。まあ俺も口には出さなかったし出せなかったことではある。


「まあいいわ、また記載をお願いすることになるでしょうから。さあ、明日からちょっとずつトレーニングしてその中で必殺技を洗練させていくわよ。」



 ということで、俺は魔弾作りと運用方法の研究に勤しみ、メムはロッジの裏庭で技を磨いていた。3姉妹も何か魔術のトレーニングをしていたようであった。そしてトレガーマさんが言ったように、夕食は3日間、豪勢な焼肉定食のような料理を皆が食べることができたのだった。


「さあ、今回は何の特訓かしらね。ねえ、起きましょうよ、ダン。」


 実質3日間の休日のような日が終わり、いよいよ次の特訓開始である。次の特訓に想いを馳せてか、プラス豪華な夕食のおかげか、メムは朝起きるとすぐに上機嫌で俺にそう言ってきて俺を起こしにかかる。


「ふぁああー、メム様が俺を積極的に起こすなんて、何かあるのじゃないでしょうかね。」


「そんなわけないでしょ、もう、ダンは面白いこと言ってぇー。」


 そう言いながらメムがペシペシと肉球のついた手のひらで俺を軽く叩くが本当に上機嫌だ。必殺技の洗練がうまくいっているのだろうか。

 顔を洗いメムと居間に行くと、3姉妹もやってくる。そこへドアがノックされて、トレガーマさんが特訓所の所員と一緒に来ているので中に入ってもらう。朝食を届けに来たのだろう。俺がそう思っていると、トレガーマさんから、


「申し訳ありませんが、本日を含めてもう3日、待機してもらえますでしょうか。」


 と頭を下げてきた。


「やっぱりそうですか……。」


 ヘルバティアがそれは予想済みという感じで対応する。


「ええ、ギリギリまで調整したのですが、予想以上に早くパーティ戦バトルロイヤルの結果が出てしまったがために、他の実戦特訓の予定が狂ってしまって……皆さんの特訓準備が追いつかずということになりまして、本当に申し訳ありません。」


 トレガーマさんがそう言って再度頭を深々と下げる。


「あのー、今回のパーティ戦、そんなに早く終わらせ過ぎましたのでしょうか?。」


 俺が手を挙げて聞いてみる。


「はい、講評の評価は前に説明した通りなのですが、講評では言えなかった事ですが、こちらとしては今までの結果から早くても5日、平均的には10日前後はかかっていたものですから、その平均的な日時がかかると予想していましたもので、まさか2日で終わることになるとは正直驚きでした。ニシキ・ダン様が本当にやりすぎな感じもあるのです。」


 トレガーマさんがそう言って俺をじっと見つめる。いや、それと同時に3姉妹もじっとジト目で俺を見つめる。


「は、はあ、俺がやり過ぎたということで……申し訳ありませんでした……。」


 この空気だと俺が頭を下げざるを得ない。


「あ、そんな、だからと言ってニシキ様が悪いということではないのです。頭を上げて下さい。この特訓所で想像以上に成長したのですから。……もうこの特訓所の特訓の枠を超えたと言ってもいいぐらいの成長を遂げたと言ってもいいくらいです。」


 発言がおかしなことになっているが、トレガーマさんが必死にフォローする。


「じゃあ、次の実戦特訓は3日後には開始されるということでいいのですね。」


 ヘルバティアがそう言って話を変えてくる。


「は、はい。それはなんとかなると思います。」


「じゃあ朝食をとって、この3日間をどう過ごすか考えましょう。でも稽古場は空いていないのですよね。」


「ヘルバティア様、残念ながら空きがなくて……何しろ。」


「予定が狂っているのだからしょうがないわね。このロッジ近辺で稽古なりの自主特訓するしかないのよね。」


「はい、その通りです。でも、次の実戦特訓が始まるまでの間はこの前の豪華夕食が続きますので。」


 トレガーマさんがそう言って三度頭を下げる。ああ、それで手を打って下さい、みたいな取引か。


「わかったわ。じゃあ、朝食をとりましょうか。」


 ヘルバティアは取引に応じる模様だ。


「はい、わかっていただいてありがとうございます。」


 トレガーマさんはそう言って朝食を持ってきた特訓所所員と一緒に急ぎ立ち去った。


「時間ができちゃったわね。」


 トレガーマさんらが立ち去った後の居間でメムがポツリと呟く。


「どうしましょうか、ティア姉さん。」


「じゃあ私はニシキさんと稽古したい。」


 ミアンがヘルバティアに予定を尋ね、ミヤンは俺との稽古を希望する。


「予定が急に変わることもあるかもしれませんから、稽古はやめておきましょう。怪我して体調不良の状態で実戦特訓が急に始まったら大変でしょう。」


「ではニシキさんは、魔術の研究をしたいと。」


 俺の返答にミヤンが少し不満を示す。


「ニシキさんのいうことはもっともだと思います。ミヤンは型稽古にすればどうですか。」


「ええ、ミアン姉さん、それは……、わかったわよ。」


 やや不承不承な感じを出しながらもミヤンはミアンの言うことに同意する。


「ミアンさん、ありがとうございます。俺も魔術の研究はしっかりしておきたいので。特に運用面を。」


「まだダンは満足できる運用方法にたどり着いてはいないのね。」


 なぜかメムが上から目線感を出しながら俺に言ってくる。


「ふーむ、では、明日はこのパーティの役割分担について、私リーダーとして思うところがあるの。で、みんなで話し合いたいのだけどどうかしら?。」


 ヘルバティアがそう言い出す。

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