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ラミア

 俺たちは、四天王とラミア、魔王の居室があると思われる一角に着いた。その入り口で俺たちは一人の黒づくめの女性と出会った。長い黒髪を後ろで束ねているその女性は、色白でつぶらな瞳、小さいが形の良い口の美女で、スレンダーだが胸はあるという感じの人である。女性は入り口の横で隠れていたが、俺が様子を見ようと隠れようとしたところで鉢合わせした。魔王軍中枢には女性はラミアしかいないはず…。とすると彼女は政府の人間?

「あなたは?」

 俺は聞いた。

「レイハ・ヤギュウよ。あなたは?」

 黒ずくめの女性は答えた。

「俺はキムと言います。チャーマースクールの校長の協力を得て、父親ジェームス・ルファルドを元に戻すため、ここまで来ました。」

「元に戻すって?」

「ラミアに術を解いてもらうため、ロバルト・ハウゼンさんを連れてきました。」

「はぁ。それは大変だったわね。」

「済みませんが、ラミアのいる部屋って判りますか?」

 彼女は少し考えてからこう言った。

「ええ。そこを真直ぐ行って左側二つ目の部屋がラミアの居室よ。でも…」

「でも、何ですか?」

「私も、今さっきここに来たばかりよ。本当にいるかどうかはわからないわ。」、

「わかりました。ありがとうございます。」


 俺たちは教えられた部屋に向かった。中から物音はしなかった。入り口に鍵はかかってなく、俺たちはそーっと忍び込んだ。中にはラミアらしき人影があった。しかし、俺たちが入り終わると人影は消えてしまった。そして、入り口は閉まり、マントに軍服姿の男と何人かの魔術師たちが隠れていたのだろうか、出てきた。

「嵌められたのか?」

 マント姿の男の持っている何か変な十センチメートル立方ぐらいの機械が動き、そこからゴーストが現れた。気絶するファー。アルが防御呪文を唱えた。同時に敵の攻撃呪文が来る。

「ファギ!」

「ファギ!」

 アルが沈黙の呪文を唱えた。魔術師たちの呪文は途絶えた。魔術師たちはハウゼンさんを魔法の杖で叩き始めた。俺は親父を床に置くと、マント姿の男が持っている機械を壊しにかかった。俺は短剣で機械に切り付けた。二三度、かわされたが、四度目にヒットした。機械は床に転がり、機械の動きは止まった。

「くそ!」

 マント姿の男は機械を拾い上げ、直し始めた。

「アル!ゴーストの呪いを解いてくれ。」

「了解!」

 アルはゴーストの呪いを解き、ゴーストは消え去った。

「ファー!ファー!起きて!」

 俺はファーを起こした。

「あ…、え…。」

 ファーは状況を分かっていないらしい。

「今は戦闘中。魔術師の一団に取り囲まれている。」

 俺は取りあえず状況を説明した。

「ファーはゴーストを見て気絶したんだ。」

「あ!そうだ。」

 ファーは状況を思い出したようだ。そして、ファーは魔術師たちにキッスを投げた。魔術師たちの動きは止まった。

「ファー、あのマント姿の男を虜にしてくれ。ラミアの居場所について何か知ってるかもしれない。」

 俺は機械を持っていたマント姿の男を指さした。ファーはマント姿の男の肩を叩き彼が顔をあげたところで、彼にウィンクをした。

「あ!」

 マント姿の男は声を上げたが、もう遅かった。

「ラミアの居場所を教えなさい。」

「はい。ラミア様は向かいの部屋にいます。」

 俺たちは向かいの部屋に向かった。


 向かいの部屋には鍵がかかっていた。俺はピッキングで鍵を開けた。中にはラミアと護衛の兵が八人ほどいた。

 ラミアは俺たちを見ると、片目をそっと閉じた。アルが彼女の虜になってしまった。

「マイ!」

 ハウゼンさんは叫んだ、ハウゼンさんを見たラミアの動きが止まった。ファーは兵たちにキッスを投げた。兵の動きは止まった。

「マイ…。一緒に帰ろう。」

「その前に、この人にかかっている術を解いてくれませんか。」

 俺はラミアにそう言って、親父を起こした。

「あ、ああ…。」

 親父は声を出した。ラミアは親父を見た。ゆっくり親父の瞳を見つめ、約五分間親父とラミアは見つめ合った。すると親父の顔が正気に戻った。

「…キム!?どうしてここにいるんだ?」

「親父…。」

 俺は親父に抱き着いた。

「彼の術も解きなさい。」

 ファーが言った。ラミアはアルを見つめた。アルは正気に戻った。

「感動の対面をしているさなか、悪いけど、急いだほうがいい。魔王が何処にいるかもわからないし。」

 アルが言った。

「了解!」


 俺たちはそこを出た。来た道を帰る俺たち。黒竜は何故か姿を消していた。攻撃の効かないあの化け物は凍り付いたままだった。後の二つの部屋は空だった。俺たちは七階に上がろうとした。その時である。

 突然ラミアがハウゼンさんにウィンクした。

「さあ、一緒にカオス様の元に戻りましょう。」

”すべての生きとし生けるものよ。跪き、その心をヒプノスの御前に捧げたまえ”ファーが呪文を詠唱した。「ステホ!」

 ラミアとハウゼンさんは眠った。俺たちは二人を抱えて、先を急いだ。

 七階では見ると石化する厄介なモンスターがいた。全員目をつぶり、ファーが魅了し、闇に帰した。六階以降、難なくモンスターを倒し、五階に差し掛かった時。変なことに気づいた。

「おかしい。道が違う。」

 俺は言った。

「え!?」

 ファーは驚いた。

「いや、壁の位置が変わっているんだ…。」

 アルは言った。

「じゃあ、行きの時作ったマップは…。」

 俺は呟いた。

「使えないな…。」

 アルも呟いた。そんな時、追手が来た。

「待て!」

 軍服姿の男とプリーストの集団に俺たちは取り囲まれた。しかも、軍服姿の男はあの機械を持っている。アルは沈黙の呪文を詠唱した。同時に相手も沈黙の呪文を唱えた。

 機械が作動しだした。ゴーストが出現してファーが気絶した。

「親父!あの機械を何とかしてくれ。そうしないと、ファーが目を覚ませない。」

「わかった。」

 俺と親父は二人がかりで機械を破壊しにいった。俺はハウゼンさんを背負いながらの戦いとなった。なんとか親父が機械を落とさせ、壊した。

「アル、ゴーストを!」

 アルがゴーストの呪いを解き、ゴーストは消滅した。しかし、その時、アルに一瞬のスキが生じ、敵の一撃を食らった。そして、ラミアが奪われてしまった。

「撤退だ!」

 負けを悟った軍服姿の男とプリースト達はラミアを連れて逃げて行った。


 俺たちは四階のチャーマースクールの前まで何とかたどり着いた。

「はぁ…。やっと一息できる…。」

 俺は言った。

「キム、済まんが仲間を紹介してくれないか?」

 親父が言った。

「あ、ああ。まず、彼がプリーストのアル。アル・オージェム。」

 俺はアルを紹介した。

「オージェム?君は…。」

「はい。マリア・オージェムの息子です。母は…、母はどうしたんですか?」

「ごめん。あの時、俺たちは魔王の部屋でラミアの術にかかった後の記憶が…無いんだ…。だからその後、マリアが…君のお母さんがどうなったか、わからないんだ…。」

 親父は悲しそうに言った。

「そうですか…。」

「今度、うちのパーティーのメンバーを探しに行こうとは思ってるのだが…。」

「同行させてください。」

「わかった。」

「あ、もう一人、魔法使いのファー。」

 俺はファーを紹介した。

「ご無沙汰しております。」

 ファーは親父に挨拶した。

「君は…昔、よく遊びに来てた…。」

「はい。」

「そうか…。魔法使いになったのか…。」

 そんな時、そこに一人、人が通りかかった。どうやらレイハさんらしい。

「あれ?あなたは…。」

 俺は気付いた。

「あ、最下層で会ったわね。」

「どうしたんですか?」

「チャーマースクールの校長に用があって…。」

「そうですか。」

「あなた達はどうしたの?」

「ええ。ラミアを連れてこようとしたんですけど、五階で魔王軍に奪い返されちゃって…。」

「そう…あ!じゃあ、ラミアの封印ってどうなってるの?」

「外れたままです。」

「それはまずいわね…。わかった。私がこの後地下七階に行って、元に戻しとく。」

「ありがとうございます。」

 俺たちはレイハさんと別れた。

「ハウゼンさん、起こしたくないな…。」

 俺はため息をついた。

「ああ、ラミア、奪い返されちゃったからな…。」

 アルも同じ気持ちらしい。

「でも、起こさないわけにはいかないわな…。」

「うーん、起こすか…。ハウゼンさん、ハウゼンさん…」

 アルはハウゼンさんを起こした。

「……マイ…マイ…マイ!あ!マイは?マイはどこに?」

「済みません。マイは…ラミアに戻ってしまったので…眠らせたのですけれど…魔王軍に奪い返されてしまって…。」

 俺は謝った。

「…マイ…。わかった。もう一度、連れ戻しに行く!」

「わかりました。でも、一旦休みましょう。そして、作戦を立てましょう。」

「嫌だ。今すぐ、行く!」

「ハウゼンさん!」

「マイィィィィィィ!」

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