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四季の雨

作者: ラム肉
掲載日:2026/04/18


嫌いな人もいるだろう。


だが、私は雨が好きだ。

雨が降れば川が流れ、滝が生まれ、植物が育つ。


そして雨の日には――


あの人がいる。


あの人との出逢いは数ヶ月前。

たまたま雨の日の散歩を楽しんでいた時に出逢った。


幾度か出逢う内、自然と二人の距離は近付いた。

彼も雨が好きらしく、雨の日にはこうして外に出て写真を撮っているらしい。


晴れの日の彼のことを私は知らない。

彼もまた、私のことを知らない。


私達は、雨で繋がっている。


名前も、年齢も、お互いのことを私達は何も知らない。


私達に待ち合わせの約束は必要ない。


雨が降る。


それが私達の待ち合わせなのだ。


雨の日、外に出れば必ずあの人がいる。


――私の初恋のあの人が


春。それは、私と彼がもっとも好きな季節だ。

彼との待ち合わせ場所は自然と桜の木の下になった。


私と彼は写真を撮り、見せ合う。

それが私達の日常になっていった。


私は素人同然だが、彼は大きなカメラ一杯に詰まった夢を持っている。

こんな下手な私にも彼は優しく教えてくれた。

そんな彼はプロを目指しているらしい。

私は彼の夢を全力で応援した。


時折、彼は練習として私を撮ってくれた。

カメラの画面に写る私は、まるで別人のようで。

とても美人に撮ってくれていた。


彼は魔法使いなのだろうか。


夏。私も彼もこの季節だけは苦手だった。


雨が降っているとジメジメとするし、湿気がすごい。


この時期だけは、彼もカメラを置いていた。

一度中まで濡れると使えなくなるかもしれないらしい。


私は少し寂しかったが、それでも彼とならんで過ごすこの時間は至福のひとときだった。


秋。それは長い夏が終わる時。


雨の日が少し少なくなった気がする。

それでもまた彼と写真を撮れる。それだけで幸せだった。


私の秋は紅葉の季節だが、彼にとっては食欲の秋らしい。

出会う度、食べ物の写真が増えていく。


毎回食べ物の写真を見せてくる彼に、お腹が空くと文句を言うと、それからは栗や柿を持ってきてくれるようになった。


彼の家の近くで幼木から育てているらしいのだが、これがまた美味しい。私も食欲の秋になってしまいそうだ。


その頃、体重計が壊れてしまった。


――秋はあっという間に過ぎていく。


段々と雨の日が減っていき、気温も心地よいから肌寒いに変わっていく。

彼も私も会うたびに重ね着している服が増えていき、体が大きく見えるようになり、お互いに笑いあったね。


冬。一年の終わりと始まりの季節。


冬になると雨の日が減っていき、段々と雪が増えていった。

冬の雨は冷たかった。

会うたび、お互い鼻を真っ赤にしてふざけてたね。

彼がツノの飾りをつけてきて「トナカイ」って言った日、私は今までにないくらい笑った。

そのうち笑ってる私につられて彼も笑いだし、体は冷たかったが、心は暖かいもので満たされていった。


雪がつもり始めた頃、年甲斐もなく雪にはしゃいで、雪だるまを二人で真剣に作った。


彼は完成した雪だるまを撮っていた。

私はそんな彼の真剣な姿を横で静かに眺めていた。


その時、ようやく私は彼に恋をしているのだと気付いた。


雨に代わるように雪の日が増えていった。

私と彼も、会うことが減って行った。


だから私は春を二人で迎えるのが楽しみだった。


だが現実はそうはいかなかった。


あれは確か、最後に雪が降った次の雨の日。

彼は私に今まで私と撮った写真――思い出を私にくれた。


あの時の私は何も考えず、喜んで受け取った。


それが彼との最後の思い出になるとも知らずに。


――ねぇ、あなたは今どこで何をしているのでしょうか。

私はもう、お婆さんになってしまいましたよ。


色々なことを忘れていく中でも、あなたとの思い出と、あなたのカメラのシャッター音は、今でも鮮明に思い出せますよ。


あなたと出逢った春、別れた冬。もう何度経験したでしょうか。

何度経験しても、あの時の喜びと悲しみは、二度と経験出来ませんでした。


私は今でも、あなたが初恋の人であり、唯一の想い人です。


ねぇ、あなたはどうだったのでしょうか。

私は今でも、自分の気持ちに気付いたあの時、告白していたらどうなっていたのだろうと、考えない日はありません。


時の流れは残酷で、今となってはあなたとの思い出の場所は、私の心の中だけになってしまいました。


それでも私はまだ、あなたを愛しています。


拝啓、名も知らぬ私の初恋の人―


外は今日も私と彼の思い出の天気。

世界のどこかでシャッター音が、今日も鳴る。

最後まで読んで頂きありがとうございます。


自分で想像して書いていくうちに、段々と泣きそうになり、最後の方で若干泣きました。


恋愛未経験、高校生の作者なのでした。

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