四季の雨
雨
嫌いな人もいるだろう。
だが、私は雨が好きだ。
雨が降れば川が流れ、滝が生まれ、植物が育つ。
そして雨の日には――
あの人がいる。
あの人との出逢いは数ヶ月前。
たまたま雨の日の散歩を楽しんでいた時に出逢った。
幾度か出逢う内、自然と二人の距離は近付いた。
彼も雨が好きらしく、雨の日にはこうして外に出て写真を撮っているらしい。
晴れの日の彼のことを私は知らない。
彼もまた、私のことを知らない。
私達は、雨で繋がっている。
名前も、年齢も、お互いのことを私達は何も知らない。
私達に待ち合わせの約束は必要ない。
雨が降る。
それが私達の待ち合わせなのだ。
雨の日、外に出れば必ずあの人がいる。
――私の初恋のあの人が
春。それは、私と彼がもっとも好きな季節だ。
彼との待ち合わせ場所は自然と桜の木の下になった。
私と彼は写真を撮り、見せ合う。
それが私達の日常になっていった。
私は素人同然だが、彼は大きなカメラ一杯に詰まった夢を持っている。
こんな下手な私にも彼は優しく教えてくれた。
そんな彼はプロを目指しているらしい。
私は彼の夢を全力で応援した。
時折、彼は練習として私を撮ってくれた。
カメラの画面に写る私は、まるで別人のようで。
とても美人に撮ってくれていた。
彼は魔法使いなのだろうか。
夏。私も彼もこの季節だけは苦手だった。
雨が降っているとジメジメとするし、湿気がすごい。
この時期だけは、彼もカメラを置いていた。
一度中まで濡れると使えなくなるかもしれないらしい。
私は少し寂しかったが、それでも彼とならんで過ごすこの時間は至福のひとときだった。
秋。それは長い夏が終わる時。
雨の日が少し少なくなった気がする。
それでもまた彼と写真を撮れる。それだけで幸せだった。
私の秋は紅葉の季節だが、彼にとっては食欲の秋らしい。
出会う度、食べ物の写真が増えていく。
毎回食べ物の写真を見せてくる彼に、お腹が空くと文句を言うと、それからは栗や柿を持ってきてくれるようになった。
彼の家の近くで幼木から育てているらしいのだが、これがまた美味しい。私も食欲の秋になってしまいそうだ。
その頃、体重計が壊れてしまった。
――秋はあっという間に過ぎていく。
段々と雨の日が減っていき、気温も心地よいから肌寒いに変わっていく。
彼も私も会うたびに重ね着している服が増えていき、体が大きく見えるようになり、お互いに笑いあったね。
冬。一年の終わりと始まりの季節。
冬になると雨の日が減っていき、段々と雪が増えていった。
冬の雨は冷たかった。
会うたび、お互い鼻を真っ赤にしてふざけてたね。
彼がツノの飾りをつけてきて「トナカイ」って言った日、私は今までにないくらい笑った。
そのうち笑ってる私につられて彼も笑いだし、体は冷たかったが、心は暖かいもので満たされていった。
雪がつもり始めた頃、年甲斐もなく雪にはしゃいで、雪だるまを二人で真剣に作った。
彼は完成した雪だるまを撮っていた。
私はそんな彼の真剣な姿を横で静かに眺めていた。
その時、ようやく私は彼に恋をしているのだと気付いた。
雨に代わるように雪の日が増えていった。
私と彼も、会うことが減って行った。
だから私は春を二人で迎えるのが楽しみだった。
だが現実はそうはいかなかった。
あれは確か、最後に雪が降った次の雨の日。
彼は私に今まで私と撮った写真――思い出を私にくれた。
あの時の私は何も考えず、喜んで受け取った。
それが彼との最後の思い出になるとも知らずに。
――ねぇ、あなたは今どこで何をしているのでしょうか。
私はもう、お婆さんになってしまいましたよ。
色々なことを忘れていく中でも、あなたとの思い出と、あなたのカメラのシャッター音は、今でも鮮明に思い出せますよ。
あなたと出逢った春、別れた冬。もう何度経験したでしょうか。
何度経験しても、あの時の喜びと悲しみは、二度と経験出来ませんでした。
私は今でも、あなたが初恋の人であり、唯一の想い人です。
ねぇ、あなたはどうだったのでしょうか。
私は今でも、自分の気持ちに気付いたあの時、告白していたらどうなっていたのだろうと、考えない日はありません。
時の流れは残酷で、今となってはあなたとの思い出の場所は、私の心の中だけになってしまいました。
それでも私はまだ、あなたを愛しています。
拝啓、名も知らぬ私の初恋の人―
外は今日も私と彼の思い出の天気。
世界のどこかでシャッター音が、今日も鳴る。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
自分で想像して書いていくうちに、段々と泣きそうになり、最後の方で若干泣きました。
恋愛未経験、高校生の作者なのでした。




