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第7話「賢者は昔も若かった」

「はぁ~。……仕事……したくね~~~~」

 今日も今日とて朝風呂でくつろぐ邪神様。

 朝焼けを眺めながら昨日の仕事と今日の仕事、そして今週の仕事、今月の仕事、今年の仕事、3年ですべき仕事、5年ですべき仕事、10年ですべき仕事、それぞれを思い浮かべてゆく邪神様。


「やんないとだめだなー……。楽隠居! とか思ってた時期もあったのに……」

「今からでもできますよ、社長。とっとと引退しますか?」

「……うーん、それはそれで寂しいから嫌だ」

 邪神様は我がままである。


「そういや邪神様って何の神様なんでしたっけ?」

 特に興味を抱いたわけでもなく、朝風呂の気持ちよさに魔王の口が滑った。

 口を滑らせた魔王も別に知りたかったわけではないのだ。だって知ってるし。


「お、いい質問だね」

 魔王は思った。『面倒な人特有の言い回しだ』と。

 そして決意する『聞き流そう……』と。『大人スキル全開で行こう……』と。


「俺が何を司る神様か気になるだろう?」

「うんうん」

 適当な相槌だけうち露天風呂で伸びをする魔王。

 だがノリに乗ってしまった邪神様は魔王の反応など気にしない。


「俺はな……! 勇気の神様だ!!!」

 少しのぼせかけたのか、湯船から出た邪神様は腰に手を当て自身に親指を刺すと魔王に向かって誇らしげに胸を張る。


「ほうほう、すごいですねー」

 魔王は湯船に溶け込むような心地よさに身を任せている。


「であろう。何せ人間の活力の元は、行動力の元は…………俺だ!」

 格好つけて再度自分に親指を指す邪神様。そのポーズのまま魔王の反応を待つ、が、魔王は我関せずと朝日を眺めて息を吐き出していた。


「おーい、魔王く-ん。邪神様、置いてきぼりでさみしーよー」

 涙目の邪神様は恐る恐る魔王に声をかけるも、「はー、そうですか。大変ですなー」と興味のない返事が返ってきた。


「むっ、そんなことを言う部下にはこれだ! 次元破壊光線! これを放てば魔王本体ごと2・3世界飲み込んで、すりつぶすことができる。必殺技だ!」


「わー、邪神様すごーい。という事で私は先に上がりますね」

 魔王は清々しい顔で露天風呂を後にした。

「魔王……喰らえ! 必殺の次元破壊光………ぐぇ!」


パコーン

 次元破壊光線! ……というか、スペ〇ウム光線を放とうとした邪神様の頭に木の桶が落とされ軽やかな音が響き渡る。


「……何をしようとしたのかわからないが、勇者として邪神を止めてみた……」

「……昔から思ってたけど、なんで勇者は口より先に手が出るの?」

 桶を片手に仁王立ちの勇者正。

 邪神様は頭のたんこぶを押さえながら恨みがましい視線を送る。


「勇者の本能がヤレと言っていた!」

「ヤダ怖い。暗殺者の本能って」


パコーン

「神様に手を上げるの不敬だと思います」

「邪悪なこと言うのが悪い。神でも邪悪なら滅ぼすのが人間だ」

「悪という概念自体曖昧なこと……よく言う(笑)。それよりも私は勇気を司る神としてやらなければならない事がある!」

「……」

 邪神の本気に勇者正は息を呑む。


「神への不敬を成した魔王を、世界の2個や3個犠牲にしてでもうち滅ぼす、勇気! これを成さねば勇気の神の名がすたr……ぐぇ」


パコーン

「捨ててしまえ、そんな勇気」

「痛いじゃないか。聖剣よりも痛い桶って何?」

「我が家に伝わる……ぷっ……伝説の桶だ」

「おい! 途中笑ったな! 真面目にやれよ!」

 怒り心頭の邪神様は既に魔王など意識の外だった。


「わかった真面目にやろう。……邪神よ!」

 今度は勇者正の覇気で空気が変わり、邪神様すらもが息を呑む。

 勇者正は足元の桶をもう一つ拾い上げ、ゆっくると重心を落とした。


「邪神! 他のお客様へのご迷惑を顧みず騒いだ罰として……今朝のお魚は邪神からタマに所有権移行するものとする!」


「待ってくださいお代官様! それは! それだけは! ご勘弁を!!」

 邪神様の抗議は受け付けられなかった。

 勇者正はその場に居た他の宿泊客へ頭を下げ、食堂へと向かう。

 すると食堂には既に魔王が居り、邪神様を待ちながらお茶をしていた。

 その横には宿のマスコット『ネコのタマ』が餌のお皿の前にお座りしていた。


「……事情は聞いておりました」

 魔王がそう晴れ晴れとした顔で言う。文字通り地獄耳と言う奴だ。勇者正は魔王にも罰を与えようかと思ったが、邪神様に反省を促すためにも同志を作ってはいけないと判断し言葉を飲み込んだ。


「……お風呂場のご利用はお静かにお願いします……」

 その後着替えた邪神が現れる。そして食事が運ばれてくると邪神様の膳から魚が抜かれていた。逆にタマのお皿には邪神様朝餉のお魚が鎮座した。


「おのれ、タマめ!」

「にゃ?」

 そこには魚を頬張る子ネコと、血涙を流して悔しんだ大人気ない邪神様が居ました。めでたしめでたし。


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