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鬼頭の嫁―最凶の鬼を使役するJKって、美味しいですか?―  作者: 白雲八鈴


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第38話 それを言われたら元も子もない

「『縛!』」


 黒い鳥を霊縛する。広げた翼は白い輪っかに胴体ごと縛り付けられ、地面に落ちる。が、落ちた瞬間、漆黒の鳥が爆ぜた。


 いや、細かいモノが散り散りになって飛び立ち、再び空中で巨大な鳥の形になる。


「虫か」

「虫だね。たぶんこれはアレだ」


 土の中に頭だけ出ているカラスをさす。呪詛って本当に面倒くさい。


「鬼頭。虫をなんとかして、私は呪詛の方を始末するよ」


 たぶん榕が飛ばされたのはこれだ。見た目は大きな鳥だけど、攻撃をすれば細かな虫に分裂して再び鳥の形に戻る。そしてまた襲ってくる。


 さてと、私はまだ生きているカラスを視る。今回のは最近気になっていた術としての不具合はなく、きちんと術として成立していた。


 私はポケットから四枚の紙を取り出し、呪詛の元に向かって投げ放つ。白い札状の紙はカラスを中心に東西南北を示すように囲んだ。


「『太歳神を基として巡り。歳破神を逆へと巡る。黄幡神に背き地を鳴らし。歳殺神の鉾を打ち放て!』」


 ただの白い札だった物に紋様が浮き出てきて、雷撃が打ち放たれる。


「『汝が罪を歳刑神にて裁き給う』」


 そしてその雷撃は北に向かって飛んでいった。呪詛返しだ。

 八将神の名を紡いだ呪を更に返されることはないと思うけど、身代わりの人形は用意しておこう。


 右手の指を噛み、人形(ひとがた)に切られた紙に私の名を血で刻む。そして息をふっと吹きかけた。


 何かあってもこの人形(ひとがた)が身代わりになるだろう。それをロングベストの胸ポケットに入れた。


 振り返って鬼頭の様子を見ると、ただ私の行動を見ている鬼頭と目があっただけだった。


 そうだよね。虫ぐらい一瞬で燃やして終わってしまったよね。


「それじゃ、玄関に回ろうか」


 さっきは家の東側を通ったから、今度は西側を通って外に仕掛けてあるものが無いか確認する。


 しかし、何もなく玄関まで戻ってきてしまった。となると門柱に貼ってあった(ふだ)が怪しいということになる。


「しかしなんだろうね。どう見ても私達が昨日去ってから仕掛けているよね?」

「愚か者の考えなど理解しなくていい」

「でも、物事を予期するには必要なことだよ」

「そもそも結界から出なければ、煩わしいことなど起こらない」

「はははは、それを言われてしまったら元も子もないよ」


 鬼頭は相変わらず引きこもりたいようだ。危険から身を守るっていうなら、結界内に閉じこもっていれば何も起こらないだろうね。

 だけど、外に出る楽しさもあると思うんだよ。


「でも、私は鬼頭とこうやってあっちこっち行くのは楽しいよ。まぁ、ご飯は美味しくないけどね」


 やっぱり、里で作られた作物の料理が一番美味しい。

 すると、鬼頭に頭をグリグリと撫ぜられた。鬼頭も文句をいいながらも私に付き合ってくれているというのは、悪くはないと思っているからだろう。

 絶対に駄目な場合は頑として動かないからね。


 そして、問題の門柱に貼ってある札を視る。


「あれ? こっちは不出来な方だ」


 また、絵の具のような墨で書かれている。それも結界として貼られているけど、意味をなしていない。ただ、結界としては意味がなさない境界線を作っており、それに触れるものを感知するものでしか機能していない。


「鬼頭。燃やして」


 鬼頭の青い炎で意味をなしていない札が燃えていく。ん? 札の下に札がある!


「え? 二枚重ねになっていたの?」


 そんなことを思って視ていなかったから、下の札に何が書かれていたかわからない。


 なんていう姑息な手を使ったのだ。まさかの二重張り。下の札が本命だったと思われるけど、燃やしてしまったので後の祭りだ。


 恐らく上に貼ってあった札の境界線に触れると何かが発動するようになっていたと思う。これが榕の記憶を消したものでいいのかな?


「なんだろうな。騙すような手を使ってくるなんて、凄くモヤモヤとする」


 そう言いながら私は、道路と敷地の境界線のところに行く。そして隣の敷地から少し離れたところ。

 コンクリートで固められた駐車スペースの端っこだ。


「鬼頭。ここに、これを打ち込んで」


 五寸釘を鬼頭に渡す。これを昨日仕込んでいたのだ。この五寸釘自体に墨で細かく文字を書いている。

 ぱっと見た目は呪いでも発動しそうな釘だ。


 まぁ、札でも良かったのだけど、紙だとなにこれって剥がされそうな気がしたから止めた。


 鬼頭は私から渡された五寸釘をコンクリートにサクッと突き刺して押し込む。

 なんだかコンクリートと土の硬さが変わらないように見えてしまう。


 そして門柱側の端にもサクッと突き刺してもらう。これでいい。


 これって本来なら神職がするようなことなんだけど、まぁいいよね。


 そんなことを思いながら、先程埋め込んだ釘の中央で私は柏手を打つのだった。


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