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鬼頭の嫁―最凶の鬼を使役するJKって、美味しいですか?―  作者: 白雲八鈴


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第23話 大好きだよ~(お饅頭が)

 私は鬱蒼と茂った木々の中にある四阿で、お重を膝の上に置いて黙々と食べている。ここの四阿の周りには家と同じ結界を常時張っているため、人は入ってこれない。


 これは食事ぐらい静かに取りたいと言った鬼頭のわがままだ。


 その鬼頭は、私の隣で食っている。

 何をとは言わない。言わなくてもわかるだろう。私の右半身が血まみれになっているのだから。

 はぁ、今日は機嫌がすこぶる悪いらしい。殺人鬼並に血まみれだ。私の着物がだ。

 右側だから余計に、さっきヤッてきましたよねっという状態になっている。


 はぁ、この着物のクリーニング行きが決まってしまった。あとで更衣室に行ってジャージに着替えよう。その後に軽く洗っておかないと。


 制服は無いのだが、運動着は学校指定の物がある。しかし、運動着を着て運動するのかと言えば、高等科に上がってからは全く無い。


 より実戦を考慮して普段着のままで走れと言われているからだ。あの霜辰(そうしん)先生にだ。


「久しぶりに桔梗と一緒にお昼食べれたのになぁ」


 食べ終わった重箱の蓋を閉めながら愚痴る。


「はぁ。お饅頭が食べたい」


 八坂のお饅頭を食べないとやっていけない。鬼頭に喰われると凄く無性に甘いものが食べたくなるんだよね。


 午後の授業に出る気が無くなった。しかし二日もサボると、霜辰(そうしん)先生は雪女(ゆきめ)をけしかけてくると思うんだよ。


 それも鬼頭の攻撃が届かない上空から冷気を降らしてくるのだ。いや、鬼頭が本気を出すと里を覆っている結界を壊してしまうから、上空に向かって攻撃をするなと言っている。


「あー⋯⋯お饅頭が私を呼んでいる」


 力なく座っているベンチに横になった。

 残りの昼休みの時間では、八坂のお饅頭屋まで行って戻ってくる時間はない。それに着替えなければいけないので、そろそろ動かないといけない。


「はぁ。鬼頭、更衣室に行って着替えて、着物を洗ってくる」


 しぶしぶ身を起こし、力なく立ち上がる。

 ふらふらと四阿の外に出ていこうとしたら、鬼頭が私の前に立ちはだかった。


「なに?」


 顔を上げると、正に人を食った感じになっている鬼頭がいる。


「はぁ。血がついているよ」


 着物のたもとからハンカチを取り出したけど、右側に入っていたため、ハンカチも血に濡れていた。

 仕方がないので、左側の着物の袖で鬼頭の口元を拭ってあげる。クリーニングに出すのには変わらないのだ。


 すると鬼頭に抱えられた。そして校舎の方に移動していく。

 ⋯⋯何か言おうか。



 結局、更衣室まで連れて来てくれた。あれか、もしかして私がふらふらとやる気なく歩いていたから、抱えて歩いたほうが早いと思われたのだろうか。


 そして、私は外の水道で着物を洗っている。軽く血を洗っておかないと、あとで困るからね。


「はぁ⋯⋯お饅頭が食べたい」


 私の視界には小豆色のジャージの袖が見える。だから余計にお饅頭が食べたくなる。


「甘いあんこ⋯⋯はぁ⋯⋯これぐらいでいいか」


 びっしょりと濡れた着物を広げてみる。多少は色が残ってしまっているけど、まぁまぁ綺麗になった。


 水を絞っていると視界の端に、八坂のお饅頭屋の紙袋が映った。思わず、振り返る。


 私の背後には、いつの間にか鬼頭が立っていた。それも八坂のお饅頭の紙袋を持っているじゃないか!


「お饅頭!」


 鬼頭の側に駆け寄る。すると絞りかけの着物と交換で紙袋を渡された。

 袋の中を覗き込むと箱が入っている。


 箱を取り出して開けてみると、いろんな種類のお饅頭がみっちり入っていた!


「鬼頭! これ買ってきてくれたの?」

「ああ」

「嬉しい! お饅頭があれば午後の授業も生きていける」


 鬼頭は、私がうじうじしている間に、南側にある八坂のお饅頭屋まで行ってお饅頭を買ってきてくれたらしい。


「鬼頭、ありがとう! 大好きだよ〜」


 お饅頭。


「そうか」


 にやけてしまう顔を鬼頭に向けると、頭を撫ぜられた。ふふふ、鬼頭はそっけないけど、こうやって私を甘やかしてくれるのだった。




 そして、私は自分の席に戻ってお饅頭が二十個入った箱を開けて、機嫌よく食べている。


「うっぷ。あのお重を食べたあとに、同じぐらいの量のお饅頭を食べるなんて、やはりあんこで血肉ができているのではないのですの?」


 私の隣の席の桔梗が口元を押さえながら、青い顔色をしている。

 やっぱり、フルコースは多かったのだろう。ここで吐かないでよね。いや、外だから別にいいのか。 


「おはぎ。おいしぃ~」

「鬼頭真白。食べるなら黙って食べろ」

「はーい」


 簡易の黒板の前に立っている霜辰(そうしん)先生に黙るように言われてしまった。

 そう、お饅頭を食べていることには怒られないのだ。


「それでだ。待ちに待った夏の地獄の釜が開く日が1ヶ月後に迫ってきた」

「誰も待ってないし」

「はぁ、こき使われる日だ」

「今年はどこを担当させられるのかなぁ」


 地獄の釜が開く日。それはお盆の先祖が現世に帰ってくる日のことを差す。しかし、悪霊も出てきて現世に留まろうとするので、それを見つけ次第、蓋が閉じるまでに地獄に叩き還すのだ。



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