No.2
魔王ディアブールはその残虐な性格から血のディアブールと呼ばれていた。そんな血のディアブールは乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまう。目が覚めると見た事のない部屋のベッドの上だったディアブール。鏡にうつるは憎き女の顔。
「おのれ!女神!しかし、……」
これで乙女ゲームの主人公ネージュを助けられると、1人で喜びのガッツポーズを決めるディアブール。そんな中、部屋の扉がノックされた。入って来たのは悪役令嬢の執事レイだった。
「お嬢様、そろそろ学園への登校時間ですよ。着替えてください。」
「ああ、わかった。」
「?お嬢様?」
普段と違う話し方に執事は戸惑った。
「あ、いや、わかりましたわ。」
くっ、魔王たる我にこのような話し方をさせるとは!なんたる屈辱!!覚えていろ!女神!!
ディアブールは心の中で女神への憎悪を募らせていた。
着替え終わると食事をして学園への馬車へと乗り込んだ。
「お嬢様、大丈夫ですか?お加減でもお悪いのでは?」
普段と違う態度のチェリーにレイは訝しむ目を向ける。ディアブールはなんとか誤魔化していたが明らかに様子がおかしい。レイは顔をしかめた。馬車が学園へと到着する。馬車から降りたディアブールはなんとか授業が始まる前に席についた。授業が始まる前に1人の少女が教室へと入ってくる。ディアブールは目を輝かせた。そこにいたのは愛しのホワイトネージュの姫君、(その美しい肌からそう呼ばれる。)ネージュ・リングベルだ。彼女が歩くだけでディアブールの視線は釘付けになった。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花のようとは、まさにこの事とディアブールの口元は緩む。ネージュはディアブールから少し離れた場所の席へと座る。ネージュはディアブールの視線に気づくと肩を震わせた。
そうだ。今自分は悪役令嬢チェリーなのだ。今までいじめてきた過去がある。ネージュが怯えるのも無理もない。
ディアブールはネージュから視線を逸らす。自分がチェリーである限り、ネージュと親しくなることは不可能だろう。いや、最初から手折るつもりはない。ただ、彼女の幸せを望んでいる。それだけなのだ。なら、今自分に出来ることは……。
ディアブールが思いをめぐらせているとチェリーの取り巻き達がネージュへと駆け寄り文句を付け始めた。
「ちょっと!平民!チェリー様が見えないの?チェリー様を差し置いて王子に言いよるなんていい度胸じゃない?!」
「全くだわ!この平民!!」
「恥知らず!」
取り巻きの3人をなんとか諌めようとしてディアブールはネージュの元へ向かう。
「「チェリー様!」」
「チェリー様もなんとか言ってくださいませ!」
ディアブールを見たネージュは震える。ディアブールは重い口を開いた。
「怯える必要はない!楽にせよ!」
そう言ってディアブールは彼女の手を取った。
取り巻き達は何が起きたのかと目を丸くしてその場に立ち尽くす。ネージュもどういう事かと口を開けて呆然としていた。チャイムがなり、ディアブールは何事も無かったかのように席に着く。
しまった、チェリーらしくない振る舞いをしてしまったと、ディアブールは反省していた。そんな時に限って当てられる。問題を問われたディアブールはなんなく問題をとく。
「どうだ!これでよかろう!」
「せ、正解です。」
ディアブールは問題を解いて席に戻ろうとしてこともあろうに慣れないヒールでドレスの裾を踏んで大胆に転んでしまった。そんなディアブールにそっと笑顔で手を差し伸べたのがネージュだった。皆笑いを堪えていたがネージュは優しい笑顔でチェリーの手を取っていた。そんなネージュにディアブールは心から誓う。
「お前を守って見せる!」
「はい?!」
そう誓ったのだった。こうして1日を終える。ディアブールの転生生活は続くのだった。
不定期更新ですがよろしくお願いします。