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No.1

死がやってくる。それはこの星のどんなもの、いや、この宇宙のどんなものにでもいつかは訪れるものだ。そんな死がたった今、不死のはずの自身に訪れた事を魔王ディアブールは悟る。


「勇者よ。よくここまで来た。そして、この我を良くぞ打ち倒した。お前達の勝ちだ……。」


そう言って余裕の笑みを浮かべて魔王ディアブール・サタンは血を吐いて事切れる。鮮やかな鮮血が床に飛び散った。


「魔王、君の事は忘れない。新たな世界の為の贄となってくれた君を、俺は忘れない。」


ディアブールは魔王だ。悪逆の限りを尽くした。そんな彼だが、臣下を見捨てず、時に弱者に手を差し伸べ、導き、魔王にまで上り詰めた。そんな彼への敬意から勇者は彼に敬意を尽くす。


今、世界は魔王ディアブールの手から救われたのだ。こうして勇者アーサーは新たな世界を切り開いた。

アーサーは新しい王になり、囚われていた王国の姫と結婚した。すべてがハッピーエンドで終わる。


その、はずだった。


「………ル!」


どこからかききおぼえのある声が聞こえる。


「……ブー…ル!」


凛としてすずやかで、それでいて透き通った美しい声。その声に導かれるように瞼を開ける。


「ディアブール!!」


眼を覚ました魔王が見たのは神々しく美しいがあどけなくまだ幼さ残る女性だった。


「……貴様は誰だ。」


いや、何処か見覚えがあるような?そんな気がするがディアブールは思い出せない。女性は少し不貞腐れたような顔をして凛々しく言い放った。


「私は女神!貴方は魔王暦50〇▲ 年〇月✕日に死にました。よって…」


女神は、そこまで言うと、少し話しづらそうに顔を下に向けて話す。


「よって!貴方を裁きにかけ!罪による天罰を与えます!」


「……この我に天罰だと?」


「はい!貴方は多くの人間を、いえ種族を、命を殺しました。その罰をここで受けていただきます!」

それを聞いてもなお、魔王の表情は崩れない。

「ほう、では余程重い罰がくだるだろうな。我は殺しすぎた。天罰が下らない方がおかしい程にな。よい、申してみよ!どんな罰だろうと受けて立ってやる!!」


そう言った魔王の顔は余裕そのもので全く天罰を恐れてはいなかった。王の、人格者の顔を絶やさない。魔王そのものであった。


「貴方、何人殺したか覚えてないでしょう?!」


「当たり前だ。誰が数え切れない死体の数など数えるものか!」


女神は、魔王その態度に少しイラだった。


「貴方、罪の意識は微塵もないの!?」


「さぁな。」


女神は、むーっ!とした顔でディアブールを睨みつける。


「いいでしょう!貴方の罪状をここに読み上げます!」


そう言って女神が魔法で出したのは大量の紙の束だった。


「まず、魔王ディアブール!貴方は……」

女神がディアブールの罪状を読み上げてゆく。ディアブールは何食わぬ顔でそれを聞いていた。全て聞き終わるとディアブールは、さっきまで大声で罪状を読み上げてはあはあと息を切らしている女神へ改めて目をやる。


「ところでお前の名は?」


「は?!今そんな事、どうでも……」


女神は名を問われるとは思っておらず呆気に取られる。だが、少し間を置いて口を開いた。


「……セレティア。」


「セレティアか、良い名だな。」


女神は赤面した。まさか名を褒められるとは思ってもいなかったからだ。


「黙りなさい!それより!これから貴方には天罰として異世界へと旅立ってもらいます!!」


女神はゲートを開く。その七色の空間をみてディアブールは不思議そうな顔をした。


「異世界、だと?……予想外だ。地獄に落ちるものだとばかり思っていた。それとも、その異世界は余程厳しい環境なのだろうか?」


「……そうよ。厳しい環境よ!覚悟なさい!!今に見てなさい!その余裕の顔を歪ませてあげるわ!」


セレティアが指を振るうとディアブールはゲートへと吸い込まれてゆく。


「セレティア、また会おう。次会う時はこの何も無い味気ない空間にいる貴様に手土産でも持って来てやるさ。」


そう言って魔王は異世界へと転生した。光の粒子が魔王を包む。魔王の姿が消えてからセレティアはバカと、呟いた。


私の事、全く覚えてなかったなんて酷い…なんて思い、居なくなった魔王に対して舌をだして右目を人差し指で指して、あっかんベーっ、していた。


魔王ディアブールは新たな生を受け蘇る。目覚めるとそこは……。


「ここが転生先か、それにしても胸が重……」


ディアブールは胸へと目線をやって驚愕した。


「お、女?!」


そう、自分が女の肉体へと変わっていたのだ。それもかなりグラマラス。


「ふっ。女になったからなんだと……」


少し取り乱したが持ち直そうとするディアブールの目に鏡にうつる自分の顔が見える。


「は?」


魔王は絶句した。その顔こそ、魔王が隠れてプレイしていた。大好きな乙女ゲームの『白亜の乙女』に出てくる主人公ネージュに敵対する悪役令嬢、ダークチェリーの姫君、(その髪の色からそう呼ばれる。)チェリー・ローズ公爵令嬢に転生していたのだ。


「あの神!何たる鬼畜!?いや!これはチャンスか?!ネージュをこの我が悪の手から守れと?!何たる天命!!」(悪役令嬢に転生した時点で敵いないと言う事を忘れるディアブール)。


こうして魔王ディアブールによる乙女ゲーム攻略が始まったのである。


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