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妄想異世界短編集

賢者の石の欠片 2939年

作者: 王烈夏

何か気になる。

畑の一角に視線が釘付けになる。

掘ってみよう。

赤い石だ、親指の先位の大きさだ。

ん?声が聞こえる。


「我は賢者の石、世界の狭間の知識の管理者……の欠片だ。

我を本体に戻してくれぬか。」


賢者の石はお城に有るって聞いた。

そんな所まで行けないよ。


「戻してくれたならば、汝の望みを叶えよう。」


本当に?騙そうとしてない?そんなお話聞いたことあるよ。

お父さんに相談しよう。


あれ、お母さん、お父さんは?

ウワキして出てった?

ウワキってなに?

貴方も私を捨てるのねって、何言ってるのそんなことしないよ。


「我を母親に渡せ、宥めてやる。」


そんな事もできるんだ。

じゃあ、お願い。

あ、お母さん静かになった。

ねえ、この代わりに何か取られるの?


「我の望みは本体に戻る事、それと引き換えに汝の望みをかなえる。

それ以外のことで代償は要らぬよ。」


うーん、どんな望みでも叶えられるの?


「人の身に起こせる事ならば、ほぼ全て可能であろう。」


勇者に成りたい!


「勇者は人の身ではない。無理だな、すまない。他の願いはないか?」


んー、じゃあ強くして!誰にも負けない位に!


「可能ではある。が、身体を作り替える事になる、今の記憶は残らないぞ。」


できないってこと?


「できない、ではない。願いが二つ必要なのだよ。身体の作り替えで一つ、記憶の移動で一つだ。」

「ちょっと貴方!家の子の身体を作り替えるってどういうこと!記憶が残らないってなに?」


あれ、お母さんの声も頭に直接響いてきたよ。


「同期しておったからな、途中から聞いていた様だな、改めて説明しよう。」

「そういうことね、分かったわ、私も一緒に行くわ。私の願いも叶えてちょうだい。」


え、説明してないのに何が分かったの?


「説明の間、汝の意識を止めた。同じ話を聞くのはつまらぬだろう。」


それは、ありがたいけど、なんでもできるね、石のくせに。


「我の望みは一つだ、二人で叶えても我が叶える望みは一つ。それが等価な取引というもの。」

「なら良いわ、この子の願いを叶えて。」


お母さん。ありが


「身体を作り替えて記憶が無いというのは、もう一度赤ちゃんになるということよね?」

「うむ、今の体の大きさでも可能だが、記憶は無くなるのだ、赤子からの方が良いだろう。」

「あの人のせいで、最近生意気に成ってきたから丁度良いわ、もう一度育て直すわ。」


お母さん……


「本人も聞いておるのだが。」

「なによ、無くなる記憶でしょ。」

「通常の死とは異なるので、無くなりはしない。世界の狭間に吸収されるのだ。」

「理屈はいいわ、思い出したりはしないの?」

「それはない。」

「ならいいわ。」


僕はいらない子?

そんなの聞きたくなかった。

ねえ、先に強くしてよ、こんなの早く忘れたい。


「汝の望みは決まったようだな。

強くするのは我を戻した後だが、その嫌な記憶は先に狭間に移してやろう。」


お母さん、僕強くなってお母さんを守るからね。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 賢者の石の欠片は、この世界にいくつも有る。

それらが同様に誰かの願いを叶える、その度に賢者の石は大きくなり、世界の狭間には知識が補充されていく。

生まれ変わりを望む人は多いのだ。

賢者の石=賢者の意思、というダジャレから広げた話です。


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