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案件:リスタート館の真相

作者: 柩屋清

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「皆様の供述に一切、嘘はありませんでした」


白髪にヒゲを携えた男は丁寧に、そう答えていた。彼は自らの素性を、保険会社の人間と称している。


「ただし、尋ねていない事柄に共通の嘘があるーーと判明しました・・・・」


彼の説明に一同はどよめき静まるまで幾らかの時間を要した。皆が同じで、か弱い人間に見えてしまう。この建屋は通門証の要る東証一部上場の企業の工場の様な高い塀に囲まれた敷地内にありオート・ロック式の出入口を持ち、言わば巨大なる密室になっていた。

そこで一名、死亡が確認されたのである。

事件性があるか気になるところだ。


*****


(わたくし)が、この様な事を申し上げるには当然根拠がありーーそれは即ち、亡くなられた(ひがし)様の愛用されたタバコにまつわる話に触れなければならない・・・・という実情です」


この保険会社は外資系で東は喫煙か禁煙かの状態で死亡した際、下りる金額が変動する契約を交わしていた。

そして受け取り人はリスタート館の住人・全員となっている。

果たして何が問題だったのだろうか。


「実は私、定年までは警察の人間でして、スタッフに元・科捜研の男を近年、雇い入れました」


一同はざわついて落ち着きが無い。皆が更に弱小者に見えてくる。その様相が醒めた頃を見計らって白髪の男は決定的な事実を告げた。


「何と、東様のDNAは俳優・勝橋敏雄(かつはしとしお)さんと一致したのです」


今回は、凍り付いた様に静まりかえっていた。その後、再度どよめき一斉に質問を繰り出す。


*****


「実は元・科捜研のスタッフの兄は芸能の世界で裏方業をしていてタバコの吸い殻、とりわけセレブの人々の物を集める癖があったのです・・・・勿論、当人より許可を得て頂いております。そんな折、その彼の兄が数年前、亡くなり、遺族の勧めもあってか弟である元・科捜研の彼が引き継ぎました。ところが、まさか、この建屋が完成する前に亡くなっている勝橋さんの物と再会・一致し・・・」


白髪の男は応戦し、皆の心に問うた。


「この建屋の喫煙室にはカメラが設置してあり、録画を確認すると運営開始以来、東様以外、どなたも喫煙されていません」


この発言には、もう誰も口答えしなかった。


「ーー警視庁長官に話、通してくれ・・・・」


蓮沼(はすぬま)と名乗る男が一同の中から、重い口を開き打診してきた。

どうやら長官は彼達の水面化での最大なる弁護人らしい。

白髪の男はいよいよ核心に迫る覚悟をした。


*****


「医学的な資料及び、情報からみて東様は病死と断定されています。我々もそう判断し、保険金は支払う運びとさせて頂きます。ーーさて、問題は東様が勝橋さんではないか。更には蓮沼様が元横綱・富士ヶ峰関ではないか、伊藤様が元・タイロン王国・皇太子妃、リサ・マルコスさんではないか・・・・?」


白髪の男はひとり、ひとりと向き合い、彼達が顔を整形し、死亡届を提出し、別人として余世を生きているか、を尋ねていった。


「私供は皆様方の個人情報を守る義務がございます。何か不都合な事情があり、別人にならざるを得ず、蘇生されたのでしょう。唯一、私が助言させて頂くのならば一枚岩の様な結束より意見の違う親友を保つ事です。そうすれば(おの)ずと此の様な困難を対処できる強い組織に変貌すると約束できます」


別人になった事を認めない一同に伝えきっていた。白髪の男は最後には警察より保険会社の立場を優先していた。


(了)

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