第6話 帰宅、そして初夜
歩き続けてすっかり日も落ちた頃、ようやく家があった場所へとたどり着いた。昨日まで家族で楽しく過ごしていた家は……傾いていた。木造2階建ての一戸建ては外壁が爆風で四方八方がえぐられて剥がれ落ち、玄関の扉は破れ、窓ガラスはすべて粉々に割れていた。2階部分は傾き、1階部分を潰しそうになっている。人の気配はなかった。
「あぁ、家族には会えなかったかぁ。」
抱いていた淡い期待に裏切られ、心にこみ上げるものがある。生死不明という4文字が頭の中を駆け巡る。ただ、僕の心はマイナスの方へと傾いていった。精神が不安定になり、泣き叫びたい気持ちを抑えながら冷静さを取り戻そうと自分を落ち着かせる。
数十分後、やっと落ち着いた僕は、危険の少ないところで眠りにつこうと思った。傾いた家から布団を持ち出し、近くの無事なように見える中学校の校舎で寝ることにした。
中学校へ向かう道のりでも人の気配はない。そしてたどり着いた校舎はほぼ無傷のようだった。僕は体育館のかたい床に布団を敷き、暑さが引かない夏の夜の中、横になる。1日中歩いていたせいもあったのだろうか、横になるとすぐに眠りに落ちていった。
夢を見た。たくさんの人と楽しく食べて遊んで笑って過ごしている。平和で幸せな日常。僕はとても心地よかった。皆とたくさん会話して笑っていた。…景色が不意に消えた。ハッと目を覚ます。目に入ってきたのは体育館の天井だった。
「夢か…。こっちが夢ならよかったのに。」
多少弱音を吐きながら体を起こす。グゥッとお腹が鳴った。そういえば昨日はひたすら歩いただけで何も口にしていなかった。
「朝ごはんを取りに行くか。」
家事はあまりやったことがなかったが、とにかく食料を入手しなければならない。家のすぐ近くにある山へ採集に行ってみることにした。
「地獄の1人サバイバルが始まりそうだ。」
自分に喝を入れ、決意を新たにしたのであった。