第5話 家は、家族は…
誰もいなくなった世界、建物が破壊されたがれきまみれの大地に僕は1人、佇んでいた。仲の良かった学校の友達、毎日通っていた学校の校舎、栄えていた駅前の繁華街。今では全てが静寂に包まれ、無に帰している。とりあえず僕は家のあった場所へと行ってみることにした。
静かでがれきの山となった街を1人歩いて行く。右も左もさっきまで大きなビルがそびえていた。それが大きく傾き、照明が消え暗闇を作りだしている。外形は保っているものの、いつ倒壊してもおかしくないくらいの状態だ。
「家族は無事だろうか…。」
ミサイルは、一発は僕のすぐそばに落ちてきた。あの光がミサイルだったはずだ。僕が街を歩きながら見た感じでは僕がいたところが爆心地で、離れていくほどに建物の損傷が少ない。ここの周辺ではミサイルは一発だけだったのだろう。家までは十数キロ離れている。家族の無事を祈りながら歩みを進める。
「とはいえ、世界滅亡が記事にされるほどだもんなぁ。ミサイルが一発だけなわけないか。かなり希望を見出しづらい。」
多少悲観的になりながらも安否確認のために家へと向かうのであった。
高架橋の残骸に沿って歩くこと数時間。バキバキのアスファルトやくだけたコンクリートの道路を歩き続け、ようやく家に近い最寄り駅があった場所へとたどり着いた。ここから家まではまだ数キロある。家はすぐ近くに山がある、かなり街の郊外に位置していた。しかもこの周辺もあまり損傷はみられない。だが、人の姿や電気水道などのライフラインは止まっているようだった。とりあえず当初の目的通り、家があった場所へと進み続ける。
「ひょっとしたら無事かもしれない。」
隣街との被害の状況と比べ、損傷の少なさから淡い期待へと心を寄せる。それが悪手であることにはまだ気づかない…。