第10話 出会い
僕は歩いていた。生まれ育った街を出て、ただひたすらに歩いていた。ミサイル攻撃があってから、高校のある街、家のある街と辿ってきた。どちらも目に見えて大きな被害がでていた。家族に会えるかもと帰ってきたものの、人の気配は無く、今どこにいるのかの情報もない。僕はただどこかを目指すわけでもなく歩くしかなかった。
山を登った。川を渡った。田園地帯を通った。自然はきれいに残っており、田んぼもたいして被害は見られない。のどかな風景を見ながら足を進めていると、ふと気配を感じた。視界の遠くに、人らしき影が映った。足を速めながら慎重に近づく。小さな女の子だった。
「こんにちは。僕の名前は犬田賢一って言うんだ。君の名前は?」
僕は話しかけてみた。女の子は恐る恐る口を開いた。
「……摩子。…私の…名前は…摩子。」
「摩子ちゃん、いい名前だね。ここで何をしているの?お父さんお母さんは?」
「…分からない。お仕事行ったまま帰ってこない……。」
「近くに知り合いの人はいる?」
「………」
どうやら他の人はいないようだ。見たところ小学校低学年。女の子1人を残して立ち去ることはできない。幸いにも僕の手持ちの保存食はある程度余裕がある。
「よかったら僕と一緒に旅をしない?1人じゃあ寂しいよね。」
僕は高校生、女の子は幼い。傍から見れば親切な高校生か何か危ないと誤解されそうな組み合わせだが、僕に変な考えなど毛頭ない。
「…うん、行く。」
女の子は少し考えた後、ついていくことにしたようだ。
今のところ初めて生存者と出会ったわけだが、僕は小さい子相手だからか、妙に落ち着いていた。大人との出会いがまだなく、心の中で全然安心できていないからだろうか…。僕は女の子を気に掛けると同時に、自分の気持ちの整理をしていった。
僕は再び歩き出した。もう1人ではない、そばを摩子ちゃんが歩いている。僕たちは2人で歩いて行く。




