元に戻された折り紙のハート
こんな人にはならないでね。
土曜日のバスケの練習。夏にある市で行われる大きな大会のために、一年生は寄せ書きと千羽鶴をつくることになった。
正直、一年生は三年とあんまりつながりないし、書くこともなかったけれど、頑張って絞り出した。
そのおかげで、中身はペラくなってしまった。
そして、先輩が練習している裏で千羽鶴を折っている途中、同級生の一年の一人が「鶴だけじゃなくて、ハートも折ろう」ってことになって、私はハートを折ることを押し付けられたから、隅に座って折り続けていた。
アイツらとは気が合わないし、別によかった。一人の方が落ち着くし。誰かがやらないといけないし。
そして、二十個ほど折り終わったとき、様子見に来た一人(ハートも作ろうと言いただした一年)が、こちらに来て、私の折ったハートを見てこう言った。
「これじゃない」
そう言って、せっかく折ったそのハートを元に戻して、一枚の紙になった。
「ねえ、それも戻してよ」
内心、状況が呑み込めなくて。でも、さっさとしないとウザがられるから、全部元に戻した。
あー、惨め惨め。惨めったら……ありゃしない。
「私たちでやるから」
そう言って、折り目の付いたものをみんなのいるところに持って行って。
「ハートも折ろう」って言った。
それで、みんなから見えないカーテンに隠れて、座ったとたん。色んな疑問と怒りが込み上げてきた。
――は? あいつらの想定している折り方なんか知らないのに。
――私はあいつらの下僕か何かか?
――人に頼んでおいて、元に戻すなんてジョーシキないのか? 部下に頼んだ仕事をやってもらって、確認した瞬間に、全部デリートして消すようなもんだぞ。
――いや、そもそも何でその例えが出てくるんだ。これなら、私が部下で、あいつらが上司じゃないか。
そう言えば、この前も私が体育館かどっかで落とした薬について「知らないか」って言ったら、みんな知らないって言った。
だから「じゃあ、諦める」って言ったのに。
「諦めるんだったら、最初から聞かないで」って。
あれも意味分かんなかったな。
私には質問する権利しかないわけ?
結構なご身分で。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
私は下僕でも何でもないので(笑)