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春雨

作者: 金木犀

【第1章 あの日】


「ハックシュン」

この時期の俺の朝はだいたいくしゃみから始まる。

自身が花粉症のせいかこの季節は辛い。

【春】……この季節はあまり好きでは無い季節だ……

 ただ単に花粉症と言うだけではあまり好きでは無くならないのだが…… 今から一年前、俺にとっては人生で一番刺激的な出会いで、とても甘い気持ちになれて……そして人間と言う者の本質を知ってしまった季節である。俺はこの事を一生忘れられないだろう。

 そんな事になったのはいつもと違う事をした訳ではない。ただ少し些細なことだった……それだけだった。

あの日と同じように満開の桜が咲き誇り、桜の雨が降るそのせいか、余計にあの日の事を鮮明に思い出す。






「おーい、陽太花見行こうぜ!」

「ああ、いいぞ、今年もいつものところか?」

毎年恒例の場所で幼馴染とお花見、俺はこれがとてもたのしみだった。

「そうだ、サンドイッチとブルーシートと水筒を持って

 トンネル集合な!」

「いつ集合日だ?」

「明後日!」

明後日か……4月9日か……

「急だなぁ、分かった、予定も特に無いし大丈夫だ。」

「陽太の作るサンドイッチ楽しみにしてんぜ!」

「はいはい、じゃまた」

「おう!」

本当、瞬はサンドイッチ好きだな‥…

今年は何サンドイッチ作ろうかな?

ハムサンド?卵サンド?ツナも捨てがたい……

まぁ、アイツならなんでも喜んで食うだろう。

そして、次の日の夜俺は弁当を仕込んだ。

作り終わる頃には、日が昇っており急いで支度して、瞬と待ち合わせの所に向かった。





そして今、ついさっきまでお花見をしていたがあいにく、突然雨が降ってきた。最初はトンネルで雨宿りをしようと思っていたが雨が少しずつ強くなった為、どこか近くに雨宿りをしようとトンネルの奥へと歩き出した。

奥に進むと古い館があった。とても大きい、それに作りは立派だが、壁の状態から見て、かなり昔に建てられたようだ……大正時代に建てられたものだろうか。

「すみませーん、どなたかいらっしゃいませんかー?

雨がとてもつよいので雨宿りをしたいのですが……」

返事は来ない……いないのか?

コンコン

俺たちはドアにノックをした。

“が”

数分まったが、残念ながらドアは開かなかった……

「いないのか……」

とても、残念だ…いないのなら別な所を……

そう考えていた時

ガチャッ

瞬がドアノブを回していた。

「陽太!鍵開いてんぞ!!」

「えっ……ってか瞬人の家のドアノブ何勝手にいじってんだ!!」

「あー、いやすまん、陽太。なんか……引っかかるなぁって、思っちゃって……テヘッ」

……コイツの何かしらの感は昔から当たるから何も言えない。 

ビシャーン

雷鳴が空に鳴り響いた……

かなり今近くだったような……

「雷!やばいじゃん近くだし!生命の危機だし……一旦お邪魔させて頂いて、本人がいるか探そう!いたらすぐ言えるし……」

「はぁーー……ったく、今回だけだぞ…」

確かに、今の状況は危ない、雷も鳴り出しているし……雨も大粒で威力がとても強そうだ……。

自分達が死んだら元も子もないからな……

そう思い、俺たちは、申し訳なく思いながら館へと入って行った。


今……今思えばこの時から復讐劇は始まっていたんだと俺は思う。



【第2章 集められた人達】

中に入るととても広い所だった。

壁には絵が飾られており、中央には大きなテーブルやソファーがある。……ふかふかな感じがする。高そう……

そんな事を考えながら、館の中を物色していると……ドアから一人の女性が出てきた。


とても見惚れる美人だ……

色素の薄い肌、真っ黒で艶のある長い髪の毛、長いまつ毛…

彼女はとても神秘的な人で……

僕の心と視線はすぐ奪われてしまった。

“が”

後ろから聞こえた音によって、視線が移った。

ガチャ

突然、ドアが勝手に閉まり鍵がかかってしまった。

「おい、どうなってんだ!玄関ドアあかねぇぞ!?」

「どう言う仕組み?マジで」

俺達はいたって普通の高校だ。

分かるはずがない……

前を向いて見るとさっきまでいた女の人は消えていた。

いったいどこに……

仕方なく中に入って行くと人がいた…

一人じゃなく複数人いる。

「お前らもかよ……」

中年の男が俺たちの姿を見るとすぐさまに言った。

「は?」

“お前らとかもよ”?何言ってんだこのオッさん?

全然話の意図が見えない。

「あの、すみません、どなたか館の主人の方はいませんか?今さっき、雨が降り出して……雨宿りしたいのですが…」

「……‥館の主人はいないわよ……私達は逆に呼び出されたのよ…この手紙でね」

さっきショートカットの女の人の手には手紙握られており他の人も持っている。周りの人も次々手紙を取り出した。どうやら、俺たち以外全員持ってるようだ。

「じゃあ、鍵を掛けたのも館の主人か!」

「鍵をかけたぁ?何言ってんだ?お前ら」

「俺達二人がこの館に入ったら鍵が急に閉まってねー

そうだよな、陽太」

「あぁ、そうだ」

「………これ以上待ってられない、帰ります。」

ちょ!話聞いて無いのか?鍵がかかっているって今!

眼鏡をかけた女の人は玄関のドアに近づいてドアノブを回すが……やはり鍵をは開かない。

「……二人がかりでやりましょう」 

女の人は男の人を呼び手伝ってもらうが……

もう一度やるがやっぱりドアは開かない………

「俺達……閉じ込められたのか?」

「最悪だ…‥今日はネミたんの生放送があるのに!!!」

いや違うだろ!瞬今はそれじゃないだろ!!

「それどころじゃねぇだろ!!!」

ドンッ

男は分かりやすくイラつきテーブルを叩く。

「まぁ、まぁ落ち着いて!自己紹介をしましょう! 

 こうして集まったのも何か運命かも知れませんし……」

「あ?だったら先にねぇちゃんから言えや」

「そうですね。私の名前は【笠木 莉音】です。

 ……ほら君次ですよ!」

えっ俺?

  美人さん……莉音さんは俺に指を挿し指名してきた。

「えっと……【青葉 陽太】です。職業?は学生で…

 よろしくお願いします?」

「俺は【真木 俊介】

 高校三年生よろしくな!!」   

「【友田 雛】職業は考古学者よ。」

「チッ【矢巾 悠一】……大工だ。」

「僕は【柳 和樹】警察だよ。」

「【巴 紬】新聞記者やってます。」

「【最中 一郎】農家です。」

「それよりどうしますか?」

そう今、問題なのは今の現状をどうするかだ。

黒髪美人……莉音さんが喋りだした。

「今日は雨降っていましここで雨宿りしてて帰っていけばいいんじゃないですか?幸い、電気も通っているぽいですし

もし、明日の朝になっても出れなかったら警察に電話すれば良いですし……」

「確かにそれはいいですね!じゃあ、部屋割りをしましょう!」

「それで、さっき見て来たんですけど部屋は六つしかなくて……ジャンケンで負けた2人が同室でいいですよね?」

「ちょっと待って……莉音さん……だったかしら?ココには女性が何人いると思いで?」

「え?」

「こんな、男だらけの所に一緒に泊まったら危ないじゃない、ましてや同じ部屋とか……身の安全として女性は一人一部屋にしましょう?」

友田さん……そんなに俺ら危なくないだが……

「まっ、まぁ良いですよ、じゃあ、女性は一部屋、僕達男性陣はどこか二人一部屋でいいですよね?」

ほら、柳さんだって、苦笑しながらいっている……

「それでは……最初はグー、ジャンケン…ポン!!」




それから、部屋割りは簡単に決まり、俺たちは見事ジャンケンで負けて2階の部屋で寝る事となった。そして俺達は2階の部屋に行く筈だったんだが……



「なぁ瞬」

「俺も言いたい事分かるぜ陽太」

「「ココどこだ」」

そう、2階に行ったつもりで移動していた俺達は2階と正反対の位置にある【中庭】に来てしまったらしい。

中庭の中央には、大きな桜の木があり、桜が満開に咲いている。

「綺麗だな……」

「ココならお花見できそうだな!」

確かに、こんな状況でもなく、家の主人に許可を得ていたら

ココでお花見を是非ともしたい。そう考えて桜を見ていたら桜の木に誰かいるのに気づいた。

桜の木には花壇があるようで一人の女性が水をあげていた。莉音さんだ……

「あれ、莉音さんも来たんですか?」

「うん、何もすることがないからね」

まぁ、確かに、人の家暇かも知れないな

「そうですか…あのすみません俺達2階に行きたいですけど階段ってドコにありますか?」

「それなら……さっき地図を見たら確かあっちだったはず」

莉音さんが指差す方は俺達がさっき通ってきた所だった。

……俺達逆走していたのか……

「莉音さん、ありがとうございます」

「いえいえ、困った時はお互い様でしょ?」

「本当、マジで優しいな!全てが美人じゃねぇか!

そう思うよな、陽太!」

優しいくて、美人って非の打ち所がないな……

「私なんか美人じゃないですよ。」 

照れているのか、少し顔が赤い……

可愛い……


それから俺達は莉音さんに礼を告げ、二階に上がって行った。

二階の階段の所には莉音さんが言っていた通り“地図”があった。2ヶ所にもしかしたら地図があるのかも知れない。

「えっと、この館にある部屋は……」

「うわっ、陽太、すげぇぞココ、デッカい図書室もある!」

そう言って指差したのは一階の右側にある図書室だった。

その近くにも、食事室、ゲーム室、お風呂なんて2ヶ所ある。

ココには色々な部屋があんな。いったい、主人はいったいどんな人だったんだろう……





色々驚きながら、地図を見た後俺たちは階段を登った。

そして、2階にようやくついた。2階には先に最中さんがいた。2階の部屋の前の廊下にはジュータンが敷いてある……高いんだろうな。部屋の前には花瓶が机の上に置いてある。花瓶の中には水がいっぱい入っている。廊下の奥まである…

いったい何の花なんだろう。そう、俺が頭を悩ませていると

隣に来ていた最中さんが教えてくれた。

「手前から、デルフィニュウム、こっちは鈴蘭とスイートピー、それにスミレ、色々なお花があるね。」

「凄いですね!全部名前分かるんですか?」 

「伊達に農家やってないしね。」

そう言うと、最中さんは照れたように頬をかきながら言った。

「でもこの館の主人の趣味変わってんねー。」 

「え?」

一見どれも綺麗なお花に見えるけど?そんなに趣味変わってんのか?

「だってこれ、全部【毒】のある花だよ。」

「え!これ全部毒あんの!?」

「あぁ、お店で売っている一般的な物にはそんなないと思うけど……これの場合、茎や葉っぱ、色んな所に毒があるよ。」

「確かに……変わっていますね。」

むしろ……ここまでくると変わっているですまなくなるような?

「あっ、二人とも僕は寝るからまた明日ね。

 おやすみー。」

最中さんはドアの前に立ち開けながら挨拶してくれた。

「「はい!」」

どうやら最中さんの部屋は俺達の隣みたいだ。


俺たちの部屋は二人で一つ……

なんせ、じゃんけんで負けたからしょうがないが………

部屋は一人で使うにはそこそこ広いが……

「男、二人って部屋狭いなw」

「そうだな、ガタイの良い男二人ってな」

部屋にはベット、本棚、引き出し付き机が並んである……どれも高そうだ……その後俺達は二人でベットで寝た……最初は昔のようにお泊まり会をした感じでワクワクしていたが……

何故だろう……心なしか嫌な予感がする……瞬もあった通り何故か、変な感じがする……

そう考えていたが流石の俺でも眠気には勝てなく、いつの間にか寝てしまった。





「きゃーーーー!」

俺たちを眠りから覚ましたのは……女性の声……巴さんの叫び声だ!


僕達は巴さんの叫び声が聞こえた三階の部屋に向かった。

3階の部屋は2階と違い花瓶がない。

 その三階の部屋は三つあり……そのうちの一つが開いている…

叫び声はここからか!

「巴さん!何……が」

「ぁ……あ、死んでる矢巾さんが……死んで……」

部屋に入ると……矢巾さんが……死んでいた……

見た感じ外傷は無さそうだが脈を測ってみると……

脈は止まっており……死んでいる。

肌の冷たさからして、死んでからかなり経っていると思う…


「巴さん!警察に電話を!」 

「……」

「巴さん!!」

「……っええ!」

プルルルル……プルルルル

「だめよ…繋がらない…電波が圏外になっているわ!」

嘘だろ……と言う事は警察を呼べない……

オマケにこの館は謎に鍵が掛かっている……

助けを呼ぶ事をできない……絶体絶命な状況。

そして、この奇妙な密室館殺人事件の謎が幕を開けた……





【第3章 全員容疑人】

あれから、俺たちはお互い落ち着きを取り戻し、【矢巾 悠一】さんが死んだ事を皆さんに報告した。それぞれ反応はそれぞれだったが皆驚いていた。

そして、皆ギスギスした雰囲気となってしまった、誰が犯人かわからない上、その“犯人”がこの館内にいるとなると……

当然、皆疑心暗鬼となる。

容疑者はぶっちゃけ自分から見て、全員。俺の場合“瞬”を除くだが他の視点から見たら全員になるだろう…この場にいる全員、俺達を除くだがお互いのことをよく知らないはず……

なんせ昨日会ったばっかの初対面だからな……

それと、雷のせいか電波も繋がらず警察も呼べない状況、誰が取り乱してもおかしくない。


俺は自分達の身を守る為にも、“真相”を知る為にもこの奇妙な事件の調査を始めた。


まず、第一にどうやって死んだんだ?この人は?

巴さんに最初に部屋に来た時の状況を教えてもらうと……確か、一階の【中庭】に部屋から移動しようとしてドアを開け廊下を通ったら、矢巾さんのいる部屋のドアが開いていて…

開いてるのもなんか、プライバシーが無いようで可哀想だからドアを閉めて上げようと思いドアに近づいたら、偶然部屋の中が見えて……そしたら矢巾さんが倒れていて……

で、最初は寝てるのかな?と思って揺さぶる為に身体を触ったら、冷たくて……死んでいる通ったら怖くて叫んでしまったらしい。そして、その叫び声を聞いて俺達が来たと……

確かに、人が死んでいたら叫んでしまうのはしょうがない。

俺だって最初に見ていたら叫んでいたかも知れない……

外傷がある訳では無い……と言うことは【毒】か?

確かに……殺せるような毒の花はあったが……問題はどうやって花を摂取させたか……普通は花はたべない、ましてや食用でも無いものを……いったいどうやって……

俺達一旦部屋に戻ることにした。

「なぁ、陽太やっぱ、何か変じゃないか?」

「なにが?」

巴さんがいた矢巾さんの部屋にはおかしな所はなかった。

いったい、何がおかしいんだ?

「分かってねぇな、陽太。俺たちの階には花瓶があった。

だか、巴さん達がいた三階には、花瓶がない……

それだけじゃない、俺さアホだけどさぁ〜、記憶力はいいじゃん。」

「まぁ、確かに良いな」

確かに、こいつの瞬間記憶力は凄く少し特殊だ。

「さっきここに来る時見たんだけど、俺達の部屋の階の花瓶少しだけど動いてんの。」

「マジか?」

「あぁ、そんなに思うなら実際に行くか?探偵だって現場に足を運ぶし」

「そうだな…」

俺達は廊下にでて瞬の言っていた【動いた花瓶】の所に行くことにした。

「おい、瞬いったいどれだ?俺はわからねぇぜ?」

「んとなー……確か…あっコレだコレ!」


その花瓶は廊下の奥の方にあった【スミレ】だった。

「ほら、ココ花瓶前ひび入ってなかったのに入ってる。

それにこの花瓶だけ水が空っぽだ。

コレ、決定的な証拠だぞ!」

花瓶には、よく見るとうっすらひびが入っていて、水が空っぽ……凶器は、花瓶の水か?確か、昔に誤って鈴蘭の入った花瓶の水を飲んで、死んでしまった人がいるしな……

そうだとしたら犯人は花について詳しい最中さんか?

いや、犯人だとしたらわざわざ、この花たちがどんな花か教えてくれないだろうし……

「確かにそうだ…な?」

花瓶を動かしながら、話を聞き考えていた俺は花瓶の下にくっついていた【桜の花びら】に目がついた。

「何で、こんな所に桜の花びらが……」

「……犯人の物じゃない?

もしかしたら、ココに来る前犯人が“あの”桜の木によったのかも知れない。」

「そうだな、犯人も多分故意にやった訳ではないだろうし……自らわざわざ花びらを花瓶につけると言うことはかなりリスキーな筈だ。」

つまり、“ココ”に来る前中庭の桜の木に行った人が犯人……

という事。

それに気づいた俺達は中庭に移動した。




【第4章 桜】

中庭には全員集まっていた……

「あら、貴方達も来たの?この桜満開で美しいわよね」

友田さんが俺達に喋りかけてきた。

「そうですね……確かにこの桜はとても綺麗だと俺も思いますよ。あの昨日もここに来たんですか?」

「えぇ、あまりにも綺麗だから昨日も来たのよ、で今日も

来ようとしたら矢巾さんが死んだときいて……

ようやく部屋の外に出る気になれたわ…

貴方達も気をつけてね?犯人がこの中にいるかも知らないんでしょ?」

「…そうですね」

俺たちは友田さんと喋り終え、昨日水やりをしていた莉音さんの所に行った。

「莉音さーん」

「はい?なんでしょうか?瞬さん」

「昨日、桜の木に来た人って俺達以外誰かいますか?」

「うーん…‥そうですね、確か柳さんと友田さん巴さんですかねー?、確か?」

……と言うことはこの中に犯人が…

「なぁ、陽太お前はどう思う犯人?」

「……んー、三人とも怪しすぎてなんとも言えないな、凶器の水と思われる物は見つかったが、決定的な証拠もまだない。友田さんは昨日も来たのは自分から言ってるけど、怪しまれないようにわざと言っているだけかもしんないし…最中さんは毒花についても知っている為、犯行は可能…

それに、仮に巴さんの自作自演だとも言えなくもない」

そう、部屋の中にいたのは巴さんと矢巾だ……

例えば、矢巾さんと、何か話し込んでいた巴さんが毒の入った水を飲ます。

そう言うことも可能だ……

「やぁ、君達犯人がわかったかい?」

……柳さん…

「逆に警察の柳さんは、何か分かったのですか?」

「……いや、これといった事は分からないが、死亡推定時刻くらいしかわからなかったよ、君達は?」

俺達は今まであった事を話した。

……桜の花びらの事を除いて…

もし、仮に巴さんじゃなく柳さんだっとしたらと言う可能性があるからこればかりは言えない……

「やはり毒か…」

「柳さんも調べたのか?」

瞬、さっきから思ってたんだが歳上には一応敬語がいいんじゃ…

「ん?あぁ、僕も警官だし、目の前で起きた事件は調べるよ。」

「そうですか……その死亡推定時刻はだいたい何時ごろなんですか?」

「矢巾さんの死亡推定時刻は深夜〜朝ごろかな?

死後硬直はまだ始まったばかりみたいだしね。

でも何か変なんだよね?…」

「変ですか…」

「あぁ、実はあの後矢巾さんの部屋と自分の部屋を調べたんだ、そしたら“あの部屋”だけ“コップ”があったんだ」 

確かに俺達の部屋にはベット、机、本棚はあったが“コップ”

はない…。

それは、どこの部屋も同じだと思っていたが……

矢巾さんは部屋に入った後どこかに寄ったのか?

そうじゃなければ…いったいどう言うことだ?


そう言えば矢巾さんの部屋で調べてないな。

「瞬、いっかい矢巾さんの部屋に行くぞ」

「オッケー」


部屋の状況はさっき来た時と見た感じ変わってない。

館の主人と矢巾さんには悪いが少しこの部屋をあさらせてもらう。

色々、あさってみたら、机の引き出しから何かが飛び出しているのに気づいた。

ん?こんなものあったか?

引き出しを開けて見ると乱雑に物が入っていた。

見てみると平成13年発行の町新聞だ……

みた感じだがあの人が読むようなタイプに見えない……

それに何年も前の“記事”……館の主人のか?

俺は気になったので、その記事を見始めた……

……そうか、そう言う事なのか…

だから、あの花瓶…そして“今日”…犯人の狙いも……

 俺たちは無意識にこの人は“犯人”じゃないと、思い込んでいたみたいだ、あの人だってあの場所にいたのに……

「おーい、どうした陽太?なんかあったか?」

「謎が解けたかも知れない…」

「えっ!本当に分かったのか!陽太!」

「あぁ……急いで皆さんを玄関ホールに……俺は調べたい事があるから少し遅れてくる。」

「分かった!」

さて、目指す場所は“図書室”。

俺の推理が正しければ……

俺は足取りを重くしながら歩いた。



【第5章 4月9日】

そして、俺は調べごとが終わりホールに向かった。既にホールには全員いた。

「やぁ、陽太くん、急に呼び出してどうした?

……もしかして、犯人が分かったのか?」

「「「!」」」

皆、驚いてる……正直なところこの“事実”を知った僕でもまだ驚いてる。

「陽太くん、瞬君早く教えて!!」

俺に視線が嫌なほど集まる。

「………犯人は………






貴方です……莉音さん」

一瞬で視線が俺から莉音さんに移った。

正直、会ってまだ少ししか経ってないが好きになった人を俺だって疑いたくないが……

「えっ、冗談はやめてよ!陽太君私が矢巾さんを殺す訳ないでしょ!」

「証拠はあるのかい、陽太君、瞬君」

柳さんが真剣な目で見てくる。

証拠……

「証拠はこの新聞記事と“スミレの花瓶”……です。

まずは花瓶から…矢巾さんを殺したと思われる凶器は花瓶の水です。最中さん僕達の泊まった部屋前の廊下にあった花瓶の花…“全部毒がある”んですよね?」

「あぁ、そうだよ、毒の強さは全然違うけど誰も毒を持っている。」

真中さんは何を言いたいのか分からないと言いたそうに顔に書いてある。

「俺達は最初、最中さんが犯人だと考えていました。

……花のことについてとてもよく知っている最中さんなら何らかの形で矢巾さんを殺す事も出来なくない。」

「でも、一つ変に思ったことがあったんだー。

何でわざわざ、一番奥の花瓶を使ったのか…

だって、奥にある花瓶の水をとるには、もしかしたらその姿を見られるかも知らない、そんなリスキーな状況なのに犯人は“スミレの花瓶”をわざわざ選んで、それを凶器にした…

これがずっと謎だったんだー、ねぇ陽太そうだよねー」

「あぁ、それで俺たちはその植物達を調べたんです。

この館にはデカい図書室みたいな所があるから、調べるのは簡単でした。この植物達の共通点は“春の植物”でした。」

「もしかして!陽太君君が言いたいのは“咲く時期”なんじゃないかな?」

「そうです、鈴蘭は5〜6月、スイートピーは6〜10月はスミレ4〜6月デルフィニュウム5〜8月注目するのは“スミレ”

これだけ4月に咲く花です。」

「それがなんなの?」

「皆さん、今日は何月何日かわかりますか?」

「今日は確か……4月9日まさか!」

「先程説明した、もう一つの証拠【新聞記事】に書かれていた内容は7年前の“一家全員轢き逃げ事件”今からそして、その被害者の家族の名字は【笠木】」

「まさか!」

「そう、これは7年前の事件の復讐……そうですよね?莉音さん、それにあの花瓶には桜の花びらがついていました。

あの日、貴方も中庭にいましたよね?花に水やりをして…

証人なら僕達です。貴方も昨日会ったことをハッキリ覚えているはず、言い逃れはできませんよ……」

信じたくないけど、一番あり得る事なのだ。

それに“笠木”なんて名前今時珍しい名字はず。



「ええ、そうよ……私が、私が殺したの!

……簡単だったわ。7年前の事件の事を脅しに使って、部屋に来たら、簡単に部屋に入れてもらえた。そして、部屋に来る時花瓶から取った水を飲ませたら、簡単にコロっと死んだわ、ザマァないわね……」


「莉音さん……どうしてそんな事を……したんですか?」

「どうして…ねぇ?

ねぇ、陽太君、瞬君、本当の7年前の事件の真相しってる?」 

「!」

ピクリと柳さんの肩が揺れる。

「本当の事件…?」

「あら、柳さんは気づいたようね。

 そう、7年前に起きた轢き逃げ事件」 

「確か、子供と大人が轢き逃げされたんだっけ?」

「そうよ。新聞には詳しく書かれなかったから知らないと思うけど……

7年前その轢き逃げされて殺された人達が私の家族よ!!そこまでは新聞でも報道されていた……

轢き逃げした犯人は【矢巾 悠一】警察は犯人が分かっていた。でも柳さん貴方が賄賂を受け取ったせいで【矢巾 悠一】は罪にに問われなかった」

莉音さんの整った顔が歪む。

「嘘だろ……」

「本当よ。7年前のこの日、7歳の弟の誕生日だったわ……四月九日の日私は友達と遊んでいた為一緒に外出しなかった。お母さん達は弟にケーキを選ばせる為一緒に外出した…

 その買い物の帰りに私の家族は……【矢巾 悠一】に殺されたのよ!」

「だから矢巾さんを……」

「えぇ、それだけじゃないわ。

 この場に居る貴方達二人以外事件の関係者よ!」

「えっ」

「友田さんと真中さんは目の前で事故が起きたのに警察に通報しなかった。柳さんは、矢巾を捕まえた後賄賂を受け取り逃した。巴さんは事実を知っていたのに嘘の情報を新聞に書いた。……貴方達にとっては間接的に関わっているだけかも知れない、でも私はこの事実を知ってとても悲しくて、辛くて殺したいほど恨んで……でも、一回冷静に慣れたわ……

貴方達がもしこの事を悔やんでいるならこんな事はするつもりじゃなかった。

でも、貴方達はこの事故の事を!私の家族を忘れて幸せそうにしていた、それが許せなかった……

本当は柳さん……貴方も殺すつもりだった、でもこの“事件”の真相を解き明かす【探偵役】が必要だったから生かしてあげた……汚職警察官でも役に立つかなぁって思ったけど、予定外に来た陽太君や瞬君の方が探偵役に向いていたようね?」

「まさか……君がだなんて……」

「気づかないものね…… 私があの事件で亡くなった家族の子供だなんて……」

莉音さんの顔は恨んでるような悲しいような複雑な顔をしていた。

「……莉音さん、死んだものは帰って来ません。やめましょう……これ以上貴方の手が汚れるような事はしないで下さい。」






「そうね、陽太君死んだ者は帰ってこない……

だから、ここで全てを終わらせるの」

ボンッ 

ホールの柱が急に燃え出した。


「なっなんだこの音!」

「まさか…爆弾!?」

「えぇ、そうよ……この場所は…元々私の家族の物なの。

 だから……どうせやるなら良い復讐劇になるように

 【爆弾】を仕掛けたわ。恨むなら自分を恨みなさい。

 ……陽太君、瞬君巻き込んでごめんね。」

そう言うと、莉音さんは後ろに振り返り………館の奥に入って行った。館は昔に造られた造りのせいか、木製であるのか

ホールに火のまわりが早く、莉音さんがホールの奥に行った後すぐ火の勢いが増す。それでも俺は彼女を危険な所に行かせたくなくて追いかけた。

「莉音さん!待ってください!」

ドガァン

「っ陽太!!」

ドン

瞬が俺の背中を押してきた。自分隣には焼き焦げた柱……

俺は莉音さんに気を取られていたせいか爆発して倒れてきた柱に気づかなかった。 

………もし、瞬が助けてくれなかったら……

「陽太!おい陽太、大丈夫か!」

「あぁ、助かった。ありがとう。」

「早く、ここから脱出するぞ!他の人も皆んな脱出してる

爆発の影響でドアが開いたようだ!」

「まってくれ!瞬まだ中に莉音さんが!」

「馬鹿!何言ってんだ!お前死ぬぞ!爆弾はここの近くにセットしてある、その中に莉音さんは進んで行った、お前まで行って死んだら……俺は…」

「瞬……」

俺は瞬に説得され、館の外に脱出する事にし、無事館の外に出る事ができた。

外には消防車や救急車がいた、どうやら先に脱出した誰かが通報してくれたようだ……


俺たちが館にを見る頃には燃え盛る炎は全体に広がっていた。焼け崩れた所が所々あり、館の中が少し見える。

……莉音さんは……莉音さんは無事脱出したのだろうか、館の奥の方に行った為助かるとは思えないが無事であってほしい……

俺は目で莉音さんを探した。

「っ!おい、陽太あれを見ろ!!!」

瞬は館に向かって指をさした。

「莉音さん!!!」

そう………彼女はいたのだ……館の三階に…窓から彼女の姿が見える。

位置から見て、炎がかなり燃え盛る所にいる。

あそこにいたら、絶対助からない!助けたいが助けることができない……無力な自分に腹が立つ。

窓越しだが彼女は口パクで何か言っているように見える。

『あ、り、が、と、う、ご、め、ん、ね』

「クソがッ…くそっ……莉音さん…」


燃えてゆく館は、まるで命の儚さを讃えているようだ。

館にある桜の木が焼け崩れた所から見える。

桜の木にも火がついてある。風が強い為炎が燃え移ったようだ。俺は桜の木に目が離さなくなってしまった。

勢いよく燃えながら散っていく桜の木は……桜の雨となり…まるで彼女の命の表れのようだったからだ……春に現れ、そしてひっそりと散っていく【今の彼女】を表している……そう俺には捉えてしまった。そして、彼女の長くて短い復讐劇《人生》は幕を閉じた。




そして、後日彼女は遺体となり焼け崩れた館から発見されたそうだ……もし、会うのがもっと早ければ……もしあの時言っている言葉が違っていたら…貴方の事をもっと知っていたら……何か、何か違っていただろうか……

 毎年、またこの時期になり、この日になる……

桜が散るたびに俺は莉音さん《彼女》を無意識に探してしまう。桜とともに散った彼女と俺の恋心……

もし、あの復讐劇《人生》に続きが……エンドロールがあるのなら……

来世では……来世こそ彼女には幸せになって欲しい……そう願う自分がいた。そしてまた【春】がおとずれる……


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― 新着の感想 ―
[良い点] 悲しいお話ですが、真相が解けなければ犠牲者が増えていた可能性があるのでギリギリOKでしょうか。
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