チャリの宅急便
スポーツタイプの黒い自転車。
そこに跨がるのは、最近、ウーバーイーツを始めた女子高生、名前をキキと言った。
「今日も稼ぐわよー」
キキは魔○の宅急便と言う超有名アニメに憧れていて、何かを配達する仕事をやりたいと常々思っていた。
今まではトラックの運転手やピザのデリバリー位しか運ぶ仕事が見当たらなかったが、学生でも気楽に出来るウーバーイーツが現れると、すぐに飛びついた。
ウーバーイーツは、登録している範囲内に仕事の依頼があると、自動でキキのラインに送信し、そこに向かって荷物を受け取り配達すれば良いというシステム。
「どれどれ……」
早速一通、キキのラインに依頼が入った。
場所は現在地からさほど遠くない場所だ。
依頼を選択すると、地図が開かれナビが開始される。
自転車に付けられたスマホの設置台にはめ込むと、その場所へと向かった。
「とーちゃく!」
着いたのはアパート。
どうやら依頼主は飲食店などではないらしい。
自転車を停め、そのアパートの105号室の呼び鈴を押す。
表札には、「浦島」という文字。
キキは浦島太郎をイメージしたが、出てきたのは背の曲がった小さな老婆であった。
「ああ、う~ば~が来たわ」
「はいっ! お届け物を受け取りに来ました」
老婆は奥の部屋から30センチ四方程度の箱を渡してきた。
それを受け取ると、まるで鉛の様に重い。
(うっ、何だろ、コレ)
中身が全く分からない。
老婆が言った。
「それをおじぃさんに渡して来ておくれ。 私の今までの気持ち、と言って手渡してほしぃから、よろしくなぁ。 くれぐれも中は覗かんようにのぅ」
「わ、分かりました!」
手数料として1000円を受け取る。
キキは荷物を四角いリュックに入れながら、思った。
この中身は何なのか?
何故、老婆はお爺さんと離れて暮らしているのか?
(中身を覗くな、なんて、本当に浦島太郎じゃない)
中を覗いたら、白い煙でも出てくるのだろうか。
しかし、恐らくこんな感じだろう、とキキは予想を立てた。
お爺さんとお婆さんは昔、何かもめ事があり、離婚してしまったのだ。
理由はお爺さんの不倫とかかも知れない。
けれども、年を取ってようやくお婆さんはお爺さんのことが許せてきた。
そこで、自分の手料理か何かをお爺さんに届けようと思ったのだ。
(今までの気持ち、と言っていたから、本当は嫌いじゃなかったという意味なのかも)
キキは胸が躍った。
これで二人が復縁することになれば、自分は一役買ったことになる。
誰かの為に仕事がしたい、それはずっと胸に抱いていることだった。
そうなると、お婆さんは一体、どんな手料理をお爺さんに渡すつもりなのか?
(……ちょっと位なら)
キキは自転車を停めた。
ダメだという気持ちより好奇心が勝り、リュックを開けて、こっそり中を覗いてみた。
「……え」
隙間からはよく見えないが、食べ物ではない。
思い切って箱の蓋を全開にすると、キキは絶句した。
そこにあったのは、黒々とした爆弾であった。
ウーバーイーツ使ったことないんで、適当に書きましたw