大魔王と勇者の平和な争い
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<大魔王>
私の城の前に勇者が立っている。
「来たか…」
大魔王である私は勇者を待つ。
「それでは、向かい入れてきますね」
妻である魔女が勇者を向かい入れに向かった。
元々、この場に通せといってあるからだ。
今更試練などを与えるつもりはない。正真正銘真っ向勝負といこうではないか。
さぁ勇者よ。貴様の力を存分に見せてもらうぞ!
<勇者>
「ついに来た…」
魔王城の前で覚悟を決める。
「緊張しているの?…大丈夫?」
そっと聖女が僕の手を握ってくれる。
「ははっ…ちょっとね。けど大丈夫だよ。覚悟を決めたからね。」
そう。もう覚悟はとっくに出来ている。
装備も揃えた。大魔王の弱点となるアイテムも手に入れてある。
それに…聖女の手元を見る。そこには二人で試練を乗り越えた時に手に入れた装備が付いている。
これがあれば大丈夫。さぁ最初の一歩だ。
門を開いたら、女性が立っていた。
「ようこそ。大魔王から奥に来るようにとのことですので、案内します。」
くっ。先手を打たれてしまった。仕方なく言う通りにしておくしかないだろう。
焦りを感じていると、ふと手を握られる。
「大丈夫よ。」
力強くそして、安心させてくれるような声で聖女が告げる。
そうだ。ここは既に戦場だ。一時の迷いで踏み外してしまう。大魔王と対峙するイメージは付いているだろ。
「ありがとう…。もう大丈夫だ」
聖女に礼を言うと、魔女が微笑んだ
「ふふっ。良い関係に見えますね。ですが、この先でも通用しますか?」
前を見ると、扉があった。
奥からは明らかに大魔王がいることがわかる。
自身のごくりっと唾を飲む音が身体の中に響く。
「後はあなたのタイミングでお開けください」
魔女は僕にタイミングを託す。
僕は扉に手をかける。
覚悟?とっくに出来ている。城に来たとき、聖女に試練の装備を渡したとき、聖女に会ったときから。
扉を開けると大魔王が鎮座している。大魔王は笑いながら
「よく来たな。」
低く荘厳な声。
「あ…あ…あう…」
声が出ない。
「ふむ…緊張しているか?安心しろ。君の本気を見せてくれたまえ。」
余裕の現れだ。
そうだ…いつだって勇者は挑戦者だ。
「お…」
頭は冴えているのに言葉がでない
「聖女を僕にください!!」
その言葉を聞いたお義父さんは笑いながら。
「…さぁ。これからの話をしようじゃないか勇者よ」
妻の両親への結婚の挨拶…僕が一度だけ勇者になった日だ
大魔王→お義父さん
魔女→お義母さん
聖女→婚約者
勇者→僕
大魔王の弱点となるアイテム→お義父さんの大好物
聖女の装備→婚約指輪
異世界でも別世界でもなく、現実世界で勇者になるならこの時だと思います。