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第1話
この物語はフィクションです。
長かった夏休みも終わりに差し掛かる、八月下旬の黄昏時。
日本海を一望する小高い丘の上で、俺は大好きな女の子に想いを伝えた。
―――おおきくなったらけっこんしよう
昔、同じ状況で伝えた台詞。
まだ幼かった恋は、愛と呼ぶには余りに小さなモノだったのかもしれない。
しかし、永い時間を経て今日、あの頃から温めてきた想いは実を結ぼうとしていた。
真っ赤な夕陽が少しこわい、と思った。なのに綺麗だ。
「……もう一回言うよ。ずっと傍に居てくれた、お前の事が好きだったんだ」




