死力の鬼ごっことかくれんぼ
遅くなりました
「まさかお前達のような子供が我々を妨害する者だったとは」
魔術師のローブを身に纏い、手には身長より高い杖を携えた男が木々の間から出てきた。
「そんなわけないじゃないですか?私達はたまたまここを通りかかって怖かったから隠れていただけですよ」
「そうか。怖かったから魔法を使ってしまったのか。普通の一般人が知ることもできない上級以上の魔法を」
「はい」
私はニコニコしながらもゆっくりと後退して、降ってきた岩石に隠れた。
「ゴー!」
私の合図とともに木に隠れていた荒太とアシュラちゃんが全力で走り出した。
「逃さん!」
後ろから魔術師の男が魔力を高めていく。
「“ウォーターサーペント”」
魔術師の男から水の蛇が十数匹生み出されて私達を追跡してきた。
「はいはい飛べ飛べ!」
蛇が足元まで来てから高く飛んで木の枝に乗った。でもそれじゃ蛇から逃げることは出来ず、蛇は木を這いながら向かってくる。登ってきたところに私達は次の枝に飛び移った。
「おい、このままでいいのか?いつか追いつかれるぞ?」
「そう思うなら飛びながら迎撃しなさい。うねうねして当てにくいんだから」
私は荒太に愚痴をつきつつ、片手で蛇に魔法を放っていた。最初は風の魔法で切り裂こうとしたんだけど、胴体を真っ二つにしたんだけど、すぐにくっついて元通りになってしまったので、「なら蒸発させちゃえばくっつくなんて起きないだろ!」ということで、火の魔法を今放っている。当然火事にならないように注意を払いながらだけど。
「俺はちょっと大雑把だから下手して火事を起こすよりはこのまま逃げに徹していたほうがいいんだよ」
「アシュラちゃんは?」
「すみません。私はそもそも遠距離が斬撃を飛ばすしかコントロール出来ないです。火はちょっと」
アシュラちゃんが苦笑しながら答えてくれる。
「う~ん……その飛ぶ斬撃に火を付与することは出来ないの?」
「すみません、そういう器用なことは出来なくて」
申し訳無さそうにするアシュラちゃん。
その2つの表情を見た私はとても、とっても申し訳ない気持ちになってドンヨリしていると、飛ぶタイミングをミスって脚に蛇が巻きついて弾けた。
「しまっ……きゃあっ!」
蛇が弾けた勢いで木から落ちてしまい、そこに蛇が殺到さて来る。
「くっ!……くそっ、来るんじゃねぇっ!」
弾けた場所が痛みによって飛び上がることが出来なかったので、周りに業火を回転させて渦の中に籠もった。
渦に当たった蛇が私に到達する前に蒸発して消えていく。
「はあ、はあ、はあ、あとどれくらい来るのか」
そう呟いた直後、森の奥から無数の蛇がこちらに殺到してきた。それはまるで押し寄せる津波の如く。
「くっ……火力を上げろぉおおおおおおおお!」
私が更に魔力を込めると火が炎に、更に爆炎、獄炎に火力が上がっていった。どれだけ蛇が押し寄せて、相性が最悪でも押し負けるどころか近づくまえに蒸発させていく。まぁそんだけの火力を発揮してしまうと、
「アッヂィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
「心頭滅却!心頭滅却!心頭滅却!心頭滅却ぅうう!」
近くにいた荒太とアシュラちゃんが雄叫びと服を燃やしながら走り去っていった。
「我慢比べで負けないのが私だ!あと2人ともごめんね!」
私はそう言いながら迫るもすぐに蒸発する蛇共を見ていると、蛇共が蒸発されない距離から上に壁のように登っていった。渦に当たらずに上まで伸びて、渦の真上から降り注いできた。
「舐めるなっ!」
それに対応するべく、渦ではなくドーム型にして全方位から防げるようにした。そのため降り注ぐ蛇も私に到達することはなく蒸発させた。
しばらくして蛇が押し寄せることはなくなった。
「はぁ、はぁ、はぁ、流石に魔力を使いすぎた。ちょっと休まないと……っと危ない」
私が休もうと脱力仕掛けると森の奥からナイフが投擲されてきた。
「いきなりこんな物騒なものを投げてくるなんて、マナーがなっていないんじゃない?」
「それはすまなかったな。なにぶん人見知りで緊張して手が滑ってしまったようだ」
森の奥から先程の魔術師の男が現れた。手にはまだ数本のナイフが握られている。
「ソウナンですか。ならまた手が滑らないとも限らないので早々に立ち去らせてもらいますね」
そう言って動こうとすると手元の地面にナイフが刺さった。
「まぁまぁそう言わずに、もう少しお話しましょうよ。こちらにはまだまだ言いたいこととやりたいことがあるので」
顔全体は笑顔を笑顔を浮かべているけど、薄っすら開いている眼の奥は全然笑っておらず憎悪が浮かんでいた。
「いえいえ、そんなこと言わずに、ご迷惑になると思うので私も仲間と合流してから退散させていただきます」
「いえいえ、でしたらお仲間共々一緒にしていったらどうですか?私は一向に構いませんが?」
「そう言わずに……ね?」
そう言って私は仕込んでいた煙玉を地面に投げて相手の視界を奪った。
「小癪なっ!」
いきなり視界を奪われた男はすぐに風魔法で煙を吹き飛ばそうとしてきた。
「「ウインドロア!」」
なので同時に魔法を使って煙を吹き飛ばされないように相殺した。
「くそっ!」
なぜ使う魔法がわかったのかは、勘と状況で推察しただけなんだから。
男が次の魔法、もしくは接近してくる前に森の木々を縫うように走ってある程度行ったら木の根本に座り込んで息を殺した。
「ふぅーーー」
恐る恐る男の様子をうかがうためこっそりと見ると、煙が漂っていた。
「まずっ!」
危険と判断した私は前に転がりながら立ち上がって後ろを振り向かずに全速力で走り出した。
走り出した直後、後方で爆発的に膨れ上がる魔力。それにより吹き飛ばされる煙。魔力の中心には杖を両手で構えて眼を瞑っている男がいた。
私は既に男からは見えない木々の死角を縫うように進んで、傾斜が出てきたところにある岩の陰に滑り込んだ。
「“隠蔽”“気配遮断”“魔力遮断”“隠密”」
隠密系スキルをフルに使ってバレないように息を殺して黙った。でも手は腰の帯剣にかざしていた。
「…………」
さっきまで唸っていた魔力はどこへやら、圧力が消えて、木々の揺れる音、風が吹き抜ける音しか聞こえなかった。
息を殺して、殺して、殺して、殺して、私自身が大自然そのものになっているように思えるほどに。
そして足音が背後から聞こえた。
私は確認することなく振り向き、その遠心力を加えて背後にいる人物、魔術師の男を両断、勢いあまり隠れていた岩、男の背後にあった木を木々が終わる向こう側まで切り裂いた。
「“絶刀”」
振り抜いてから言葉を落とす。
「ば、かな……さっきまで誰も……いなか、た、のに」
胴体がゆっくりずれ落ちながらもたどたどしく言葉を吐く男。
「これくらいできなきゃ八雲に置いていかれるのよ」
すでに事切れた男に汗を大量に流しながら言葉を吐いた。
頑張って行きます




