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防衛戦の話し合いとその後

遅くなりました

サンライズ視点


 どうも王女のサンライズです。王女、お・う・じょ・の!サンライズです。現在私は城壁の上で下に見える混合軍を見下ろしています。

 そして軍から視線を外してその奥に見える森を見る。そこでは今ヤクモ様が敵方の勇者達と戦っておられるはずなのですが、先程まで見えていた魔力の動きが消えています。

「まさか戦闘は終わってしまったのですか?」

 それならばどちらが勝ったのだろう。普通なら人数が多い敵方が勝つものなのだが、ヤクモ様やミハル様、アラタ様の3人は普通のものはしで測っていい方ではないので悩んでしまいます。

 そうしていると近衛騎士が近寄ってきた。

「姫様、どうやら奴ら周りを囲んで包囲して逃さないようにするようです」

「わかりました。ならば包囲された後、手薄な所を攻めて、穴が空き次第そこから住民を闇の帝国に逃しなさい」

「了解しました」

 近衛騎士が走り去っていくのを見ながら、私は周辺をぐるりと見渡しました。そして見つけてしまった。何やら遠くでコソコソ動く人影を。

「…………何をしているんですかあの人は」

 その人、ヤクモ様は木陰に隠れながら移動していた。

「はぁーーーーっ、ごめんなさい。あそこにいる人を敵に気づかれないように連れてきてください」

「了解しました」

 近くにいた騎士の人が何人かに声をかけて走っていく。しばらくするとヤクモ様のところに案内の人が現れて連れてきてくれた。

「オイッスサンちゃん。無事にたどり着けてよかったよ」

「ヤクモ様も無事で何よりです。早めに合流してほしかったのですが、そんなことよりこれからのことを話し合いましょう」

 少し素っ気なかったかな?でもこう言わないと無事だった安堵感で顔がニヤけてしまいそうです。でも緩んではダメです。これからこの危機的状況をどうするか考えないといけないのですから。

「了解」

 私達は城壁を降りて、仮説で作られた作戦本部に入ると既に各指揮系統のトップ、連絡係数名、書紀者が勢揃いしていた。

「すみません遅れました」

『…………』

 やはり王女と言っても戦いでは素人。そんなものが遅れたことで会議が出来ずに対応が後手に回ってしまう。それに対する無言の圧力が会議室を包んでいた。

 でもそんな雰囲気をもの知らぬ顔でヤクモ様が壊してくれた。

「おらサンちゃん座って座って!こんなに時間をあげてあげたんだから打開策なんて5個や6個すぐに出してくれるって」

『っ!!』 

 ヤクモ様の発言に別の意味で緊張が走る。

「それとも何か?何も考えず、相談せず、ただただ黙って座って、現場で指揮を取って、現状からどうすればいいか考えていたサンちゃんを、ただ遅れただけで責めようとしていたなんてことないよな」

『…………』

 ヤクモ様の発言に会議室の面々が押し黙って俯いてしまった。

「あ、あの!遅れてきたので私から考えていたことを提案させていただきたいのですが!」

『どうぞ!』

 一瞬の逡巡もなく、声もぴったりに揃えて言ってきた。

「はい……それでですね。先程見てきた敵軍なのですが、既に王都を囲むように部隊を配置して、我々を逃さないようにしているようでした。なので敵軍が少ないところ、闇の帝国方面を重点的に攻撃して住民を逃していきたいと思っているのですが」

「……良いと思います。ですがそれで逃がせる住民は限りがあります。これのための攻撃も最初の2、3回が住民を無事に逃がせる限度だと思います」

 私の近くに座る軍を統括する大将軍エルフェネタが苦々しい顔で答えてくれました。確かにエルフェネタ様が言ったとおりです。この手で逃がせたとしても総数の3割逃がせるかどうか。

「確かにそうかもしれません。ですが!このまま住民をここに残らせるほうが危険です。これはなんとしても成功させなくてはいけません」

「わかっております。ですが!こちらには増援は期待できず、あちらにはどれくらいの増援があるかわからない状況です。こちらだけが消耗していくだけです」

「いえ、増援ならあります。先に出撃している美春様達が戻ってくるまで耐え抜き、守り抜くことが私達の使命です」

 私の言葉に多数頷いてくれる。

「そうですな。私としたことが弱気になっておりました。我が国には頼りになる勇者様がいらっしゃる。普段の迷惑さのせいで忘れておりました」

 エルフェネタ様が豪快に笑っておりますが、言われた内容に苦い汗がダクダクと流れて、笑いも引きつってしまいました。

「これでも大将軍。何なら1週間、はたまた1か月持たせてみせましょう!」

「いえそんなには大丈夫です。それでは皆さん、よろしくお願いします!」

『はっ!』

 入ってきたときとは少しだけ雰囲気柔らかくなったようです。これからも頑張っていけそうです。

「よし、頑張ってみせます!」


八雲視点


 俺の目の前には講堂に横たわる多数の兵士達がいる。

「これで、1回目の戦闘か終わったわけだが……これ見てどう思うサンちゃん」

「うぅ〜……これでは防衛戦ですら危ういです。どうすれば……」

「これは私も予想外でした」

 三者三様の言葉だが、込められている気持ちはただひとつ、


 こんなに兵士がやられてしまうなんて。目算が全部瓦解した!


 だ。

 俺達3人は空を仰いで固まった。

「こっからどうするか。今の戦力で攻勢に出れてあと1回、後の防衛無視だと2回行けるかどうか」

「防衛は残しておかないといけません。なので攻勢はあと1回だけ」

「ですがそれですと逃がす者を厳選しなければなりません」

「そんなことは出来ません!」

 サンちゃんが喰い気味に反論する。だけどその反論もわかる。厳選するということは助からない者が出るということだ。そんなことは心優しいサンちゃん、果ては王族としてのサンちゃんがそれを許さないだろう。

「ならこのまま防衛一択で美春達が来るまでもたせるか?」

「ですが防衛ですら危うい可能性が出ています。それに相手側は王都を包囲しています。一斉攻勢に出られたら防ぎきれない可能性も…………あぁあああああああ!もうどうしたらいいのよ!」

 綺麗な髪をかきむしりながらしゃがみ込む。

「むぅ……私としては逃がすための攻勢でなく削るための攻勢をしたいのですが……駄目かな?」

「それは………いえそれは」

「だめだろ大将軍さん」

 言い淀むサンちゃんに変わって俺が反論する。

「なぜだ?確かに犠牲は出よう。だがそれ以上に削れば後が楽に、相手側も迂闊に攻めてこんだろう?」

「確かにそうだな。でもそれは相手側に大将軍と同等の敵が複数いない場合で成り立つ。今回相手には……俺と同じ勇者がいるんだぞ?」

「むっ!」

 そう勇者、勇者がいるだけでどれだけ考えた作戦も瓦解してしまう。今回の攻勢もそれでこれほどの被害を出してしまったのだ。連れてこれなかった者達は大勢いる。ここにいる者達より何倍も多い数をだ。

「だからサンちゃん」

「は……い……」

「ここは俺が単騎で出る。援護も不要」

「それはあまりにも無謀です!」

「そうですぞ!今や貴方様もここにいる者達の希望なのですから。そんなあなた様がもしも……」

 サンちゃんま大将軍さんも必死に止めてくるけど、流石にこれは譲れないな。

「希望だからこそ行くんだよ。ここで隠れたまんまだと士気に関わる。それに勇者なら希望を上乗せしてやんないとな」

「あ……くっ……そんなこと言われては」

「どうしようもできませんな」

 背筋を伸ばした2人が頭を下げた。

「「よろしくお願いいたします」」

「おう、お願いされた」

 俺はそのまま城壁に向かって歩き出した。

もっと早くできるように頑張りたい

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