事件は執務室で起きてるんじゃない。現地で起きるんだ
よろしくお願いします
八雲視点
全員での話し合いのあと俺達は戦争が始まる1か月間慌ただしく動き回った。
まず事務系ができる(やれる)俺とサンちゃんとマリナ、このとき初めてできると知ったアシュラで、兵站、武器の在庫、並びに発注、行軍日程、動員数、戦地における展開場所、諜報における2カ国の現状、戦後処理の前段階などなど、文官達を総動員して急ピッチで仕上げていった。
俺達がそうしている中、美春達にはレベル上げに迷宮攻略、立ち寄る街で珍しい魔道具、及び武具の購入、戦争による市場の変化を聞いてもらっていた。こちらはあまり芳しくないようだ。迷宮攻略はサクサクと進み、迷宮で魔道具も見つけているのだが、街では戦争のため武具も魔道具も買い占められており、食材もほぼほぼ買い占められていたらしい。
こうなって来ると自国で製作するしかなくなってくるので、すぐに武具を何々作り、どれだけの量になるのかを会議することになり、徹夜で仕上げた。
そんなトラブルが逐一浮かんでは解決のため徹夜会議をしていき、対応に追われた。
そんなこんなで戦争前日になった。美春達は国軍に追随して既に司令部を展開して準備万端。
俺はというと王城の執務室に書類の山に挟まれて事務をしていた。顔をあげると、同じ状態のサンちゃんとアシュラが黙々と手を動かしていた。
「ねぇ〜えサンちゃん」
「なんですか八雲様」
「明日って戦争初日だよね」
「そうですよ。何を当たり前のことを言っているんですか?」
「…………俺達今何してる?」
「そんなの……書類仕事ですけど?」
何を当たり前のことを言っているの?といった感じに首を傾げるサンちゃん。アシュラは俺が言いたいことがなんとなくわかるのか黙々と手を動かしていた。
「じゃあさ、なんで主力メンバーの俺とアシュラ、中立軍総大将件国王代理のサンちゃんがここにいまだにいるの?」
「…………そんなの、魔道具を使えば1時間も掛からず現地に迎えるのでギリギリまでこれを終らせるためにですけど?」
「それ……普通じゃないけど」
「?……知ってますけど」
どうやらサンちゃんの頭は毒されすぎてダメなようだ。完全なブラック企業思念に。
「そんなことより早く手を動かしてください。開戦までに間に合いませんよ」
「…………うす」
それから俺達は明け方まで書類を処理してから魔道具で現地まで飛んでいった。
魔道具は8畳ほどの絨毯なので3人にバックがあっても十分な広さがあった。
「ヤバイ少しだけ遅れた!代理がいないとヤバくないか!」
「大丈夫ですよ。あちらには近衛騎士団副団長がついています。的確な指示を出してくれますよ。そんなことよりこの魔道具は自動で目的地まで向かいますので、この1時間という膨大な時間を睡眠に回しましょう」
「…………1時間を膨大とは言わないよサンちゃん。まぁそうだな、この時間睡眠に当てないと現地で爆睡するかもしれないからな」
「…………」
「アシュラはすでに寝てるから……もういいや寝る」
それから3人で川の字で睡眠をとった。
半分寝ぼけながら、あと少しで到着かな?と考え始めていると爆音が響いてきた。
「なんだ?」
目を擦りながら前方に顔を向けると、黒煙が立ち込めていた。
「何が起こっているんですか?」
隣で困惑顔のサンちゃんが目の前の光景を見ている。
確かに戦争なら黒煙が上がり、爆音が鳴るのは普通のことだ、それが中立国で参加している俺達陣地で起きていなければの話だが。
「どうしますか?」
アシュラが指示を求めてくる。
「アシュラ、サンちゃんを護衛してこのまま王城に引き返せ。俺はどうにか情報を集めてから向かう」
「わかりました」
「気をつけろよ?帰り道にも伏兵がいる可能性が高い。こちらに向かうのは素通りしても帰るときは妨害してくると思う。その時はアシュラが囮でサンちゃんを逃がせ。でもアシュラが死ぬようなことをするな、必ず生き残ることをしろ」
「わかりました」
アシュラは決意を胸に頷いた。
「よしいけ!」
そう言うとアシュラは魔道具に魔力を込めて来たときより数倍速いスピードで戻っていった。
「こっちも行くか」
俺はそれを見送ると現地に向けて走り出した。
荒太視点
「何が起きてんだこれ?」
俺は目の前で起こっている戦闘に疑問を上げた。迫る兵士を殴り飛ばしながら、仲間達の状況も確認してこれが起きる前のことを思い返す。
事が起きたのはほんの1時間前。
俺達が動き出した両軍を見つめていた。
「うーんなんか違和感が〜。でもなんなのか全然わかんない」
隣で美春がうーんうーんと頭を抱えて考えている。どうやら違和感を感じていて、でもそれが何なのかわからないようだ。俺も考え見る。俄然の光景、違和感らしい違和感は見られない。ごく普通の戦闘。
「……うん?」
ごく普通の戦闘?
「どうかしたの?」
「いやな美春。俺達って戦争を見せられているんだよな」
「そうだよ。それを見守るのが私達の仕事だからね」
俺達が話していると後ろにマリナさんとエキドナちゃんがやってきたので、俄然に広がる戦闘を指さながら言った。
「これって戦争っていうのか?俺にはただの戦闘訓練にしか見えない。それも新人の」
俺がそう言うと驚く美春が両軍を見る。視覚系のスキルも使って念入りにしているみたいだ。
「ほん……とうだ……ケガはしているけど死人が一人も出ていない!あれだけの数でぶつかれば相当数出るはず。それなのにこれだけの時間死人が出てないとなると」
「陽動」
俺に視線が集まる。
「そう考えるのが普通じゃないか?あの軍は俺達の眼を釘付けにするのが目的で、本隊は別のとこにいる」
「多分それが正解何だと思います。ですが新人とはいえあの量です。本隊はほんとの精鋭、実力者で固められていると思います」
マリナさんが俺の考えに補足を付け足す。
「私もそう思う。だけどその本隊がどこにいるのかが問題ね。それに勇者も」
「あぁ、勇者込みか勇者と別々かわからないが、それだけの戦力がいったいどこに……!?」
そうみんなで考えていると森から殺気が漏れてきた。
それに気がついた俺達はすぐに獲物に手をかけて臨戦態勢になった。
その瞬間、隣接する森から大軍が雄叫びを上げて襲いかかってきた。
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
臨戦態勢をとっていた俺達は対応出来たが、他の兵士たち、隊長クラスは違和感を感じていたらしく、自身の隊に指示を出そうとしていたところで襲撃が起きたので、対応に追われていた。
俺達は比較的森から離れており、迎え撃てるようにしていたのでらくらくと対応していた。
それから冒頭に(俺視点から)に戻る。
それから徐々にだがこちらがすぐに対応が追いつてきた。
このままいけば、
「このまま行けばなんとからなるかもな」
「このまま行けば……ね」
含みのある言い方で美春が言う。
「そうだな…………っと言っていると来たみたいだぞ」
俺がそう言うと、美春達が俺の視線のさす森に向けられる。
「やっぱり来ちゃったか」
「嫌なタイミングで来ること」
美春とマリナさんがしかめっ面で呟く。エキドナちゃんは態勢を低くして構える。
森から現れたのは、これから軍の、そして国としての最高戦力になりつつある者達。
「よっしゃぁああああああ!やってやるぜ!」
「全員経験値にしてやる」
「いい女いたら攫って囲ってやる」
「邪悪な国を滅ぼす」
「いい男見つけたい」
そんなことを言いながら10人近くの俺達の同級生、勇者達が現れた。
次は勇者対勇者になるやも




