vsカラミティウルフ 前編
遅くなりました
美春視点
私達が部屋の中に入ると中はドーム状になっていて、壁は岩盤になっていた。部屋の奥は高台になっており、そこに全長15メートルはあろう巨体に漆黒の毛に包まれた巨狼が眠っていた。
「わぁーお、なんて大きさなのよ」
私はその巨体を見て感嘆の声をあげた。巨狼はただ眠っているだけだ。だけどそこには気品が溢れ、王者の品格、オーラといったのが溢れている感じなのだ。だけとそれ以上に凄いのがこちらに気がつき観察していることだ。巨狼は眠っている。でも感知系、探知系、といったスキル、自身の嗅覚、聴覚といった技能をもちいて状況把握。
「こんなんされたらどうしようもないぞ?下手に動けない」
隣で八雲が苦い顔で呟く。ホントは今にでも攻撃したいと思っているんだろう。
「ここは私が行く?スピードはこの中ではトップ、みんなが来るまでもたせることが出来るわ」
「……頼めるか?」
八雲は少しだけ考えたあと、信頼した目を向けて頼んでくれた。それだけで自然と口角が上がってしまう。
「まっかせなさい!何ならみんなが来る前に仕留めちゃうかもだから!」
そう言うと私はその場で軽めのストレッチを始めた。
ストレッチを終えると土を隆起させてスターター代わりを作ってクラウチングスタートの態勢をとる。
「能力向上系スキル全発動、魔法による強化、装備による強化」
私は出来る強化を最大限纏わせて巨狼を睨みつける。
ピクッ……と耳を動かすとゆっくりと瞼を開いて睨みつける巨狼。
私はここで改めて巨狼に鑑定を使った。
名前カラミティウルフ
レベル1000
スキル群雄割拠・神速・破噛・絶対感知・厄災
体力66600 魔力10020 攻撃19000
防御9890 素早さ57000 運27660
そこに見えたのは流石というべきステータスだった。スキル数はSランクだと聞かされると少ないと思うが、それはあらゆるスキルが統合された物。つまり無駄を省いて出来たがゆえの最高の構成。だからこそ、最後の厄災というスキルが何なのかわからないのが怖い。
「みんな、何かわからないけど厄災っていうスキルがある。どんな効果かわからないから要注意。それ以外はウルフ系が覚えるスキルの上位互換が4つ、この5つのスキルにステータス値が高い、単純構成だけどその分隙がない。気お引き締めて」
『了解』
最初に動いたのは荒太だった。
「オラァアアアアアアアアアアアア!ビビっていられるかぁああああああああああああ!!」
震脚を使い踏み込むと真っ直ぐにカラミティウルフ突っ込んだ。
それをいち早く捉えたカラミティウルフはのそりと立ち上がる。その間にも荒太は近づきもう目と鼻の先にいる。
「もらったぁああああああああああああ!……ああああぁぁぁぁああああん?」
荒太が殴りかかろうとした瞬間、目を離さず見ていたはずのカラミティウルフが忽然と消えた。
困惑で固まっていると周りが薄暗くなった。
「……マジかよ」
「うっそぉー」
『っ!!』
影で薄暗くなったのはすぐにわかったので何の影で薄暗くなったのか横目で見るとそこにはカラミティウルフが鎮座していた。
「……ここまて速いのは想定外なんだが」
流石に八雲でもここまでは考えてなかったみたい。まぁ私もなんだけど。
でもそんなふうに雑談しながら次に動いたのは八雲だった。
「マリナ!アシュラ!エキドナ!荒太の方に飛ばす!」
『了解!』
先に決めていた作戦通り、私は3人を脚で荒太の方に蹴り飛ばした。ちなみに3人は蹴る動作をする脚に乗って飛んでいく感じだ。
それで私は飛ばす方にいる荒太を見ると、血塗れになっていた。
「……なんで?……まぁいいや、マリナ、あっちにいったら荒太を治療しておいて」
「わかったわ」
3人を飛ばすと、すぐにカラミティウルフに向き直り剣を構える。
「なかなかやる」
視線の先には八雲が超高速で移動しながら攻撃してくるカラミティウルフに防戦一方になっていた。
「くっ……ぐぅううう!」
現在の私達にとってレベル1000は楽勝とは言わないが一人でも倒せる相手だ。
でも八雲は防戦一方、それも体のいたるところに傷を増やしながら。
(八雲があんなになるなんて普通ならありえない。それを言うなら荒太だってあんなにすぐにやられるなんて)
「何かしらのカラクリがあるはず」
「それなら多分厄災の効果よ」
耳元から声が聞こえ見るとそこにシェルナが座っていた。
「びっくりした!脅かさないでよシェルナ。それで、厄災の効果って言ったけど、厄災ってあのスキル?あれにどんな効果があるの?」
「……厄災は滅多に見られないスキルよ。持っているものはもれなく強者かすぐに死ぬもの。厄災には能力の低下系が盛りだくさんにあるの、いわゆる複合型スキルね」
「ふーん、それで?例え能力が低下しても今の八雲なら勝てるはずよ」
「それは神速スキルによってよ。文字通り神のごとく速い、そんなスピードに能力低下中に追いつけるはずないじゃない」
「あっそっか」
私は当然のことだと思った。神速スキルは文字通り神のごとく速い、普段の八雲なら捉えられるけど、今は弱体化中、それなら当然だし、防御できている八雲が凄い。
「なら問題は弱体化の発動条件かな」
「それは私にもわからないかな。私が知っているやつは自分が視認しているやつっていうのが発動条件だった」
「なら今回もそれなんじゃ」
「でもそれならちょくちょく見られている美春に効果が現れていないのが怪しいわ。別だと考えるべきよ」
「そうか」
私は八雲の攻防を観察しながら考察する。視認でないとすると先に考えられるのは範囲だけど、範囲ならあんなに動き回っているので私も範囲には入るなりかするなりするはずだ。
「美春、多分だけど突拍子も無い条件かもだから常識で考えないほうがいいよ」
「どうして?」
「知っているやつは視認だったけど、それにも沢山の誓約と条件があったはずだから」
「ふーん。だとすると……顔を向けている方向の一定範囲を弱体化させるじゃない?さっきから視線はこっちを向くけど、顔だけは向けないから」
「うむむむ、そうなのかな?ならならやることは脚への攻撃だね」
「そうね。ならボチボチと行きますか」
私そう言って踏み出した。
八雲視点
防御に専念しているとカラミティウルフの攻撃がゆるくなってきた。探知系で探ると美春がこちらに向かってくるのがわかった。どうやらカラミティウルフは美春に意識を向けたせいのようだ。
(これでどうするかだな。俺は今多分だが弱体化している。ここは美春が打開してもらうことに期待かな)
俺は防御に回していた魔力を回復にも少しづつ回して切り傷を癒やしだした。
「ふぅ~……うん?身体が軽くなった?」
ずっと息をするのを忘れるくらい集中していたので呼吸すると、いままで身体に巻き付いていた重りが無くなったかのような感覚に見舞われた。
警戒しつつカラミティウルフに視線を向けると、今度は美春に俺にやっていたことをしていた。
だが違うことは俺はその場に釘付けにされて防御していたのとは違い、美春は弱体化しているが様々な魔法で身体を動かしてかわしながら攻撃していた。
「魔道具じゃないスキルだからこその戦い方だな」
切り傷を癒やしながら飛び込むタイミングを窺っていると、とある反応を探知したのでそれに合わせることにした。
次回もよろしく




