八雲の一撃と美春の勘
遅くなりました
俺は体を癒魔法で回復、そして2階層に降り立った。
2階層は1階層と同じく草原、それと小さな森が点在する場所だった。
「ここが2階層。可能性として群れが待ち構えていると思ったが、何もいない。アイツらのためにさっさと片付けに行くか」
俺は苦笑しながら歩き出して、
「約59体」
そう呟いた。
俺が探知で感じ取った群れのリーダーの数、リーダー共はバラバラに点在しているが、ある種の連携はしていた。
「だからこそ俺が来たんだけどな」
「頑張って行こうヤクモ!」
肩に乗ったシェルナが呑気に騒いでいた。
「おう」
俺は短く答えながら探知スキルの範囲を最大にまで広げた。
「…………見つけた。まず5体」
俺は見つけたリーダーに走り出した。まずは近場の丘にいた奴に向けて、大鎌を肩に担いて行った。
1体の周りにはまだ数十体の群れが存在したが、
「こいつの解放時にその数はないも同じだ死神鎌壱の型『断頭殺』!」
振り抜いた大鎌にて群れを両断。逃げられる前にリーダーに接近して大鎌で首を跳ね飛ばした。
「まず1体。次だ!」
俺はすぐさま次の場所に向かう。それを見つけた5体全部倒すまで続けた。
「もう一回探知を……だがこれでは時間がかかりすぎるな………薙ぐか。シェルナ」
「オーケー。しっかり受け止めなさい!」
シェルナから膨大な魔力、そして神気が流れ込んでくる。疑似神器により体に神気が慣れているとはいえ、こんなに一度に贈られたのなら体が耐えられない。でも俺の体を導線にすれば負担は軽減できる。
手にしている大鎌に流していく。大鎌が徐々に巨大になっていく。
「っぐぅ……ぐぅうあぁあっ!ガァあああああああああああああああああああああああ!!」
だが軽減できるとはいえ、元々体に合わない神気、身体中をズタズタに裂いていく。
「このじゃじゃ馬がぁ!大人しくしやがれ!」
俺は自分に発破をかける。その間も大鎌は大きくなるが、柄の部分より鎌の部分に集中的に神気を流す。だが、一定の大きさになったら、そこで止めて、神気の収束に移した。
「ぐぅうううっ!ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「充電完了よヤクモ!」
「いくぞ!極点死神鎌終の型『絶殺』!」
俺は回転しながら大鎌で周りを薙いだ。すると世界が横にズレた。それも束の間、元に戻ったが、近く、遠くと問わず森が消えていた。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
大粒の汗と血をしたらせながら、大鎌を支えにしてその場に崩れ落ちた。
「ヤクモ大丈夫!?今すぐ治療しないと!」
「無理だ。意識が持たねぇ……なんとか……物陰に……っ」
なんとか一歩踏み出したが脚に力が入らず倒れてしまった。
「くっそ!力が入らねぇ!」
動こうにも指先1つ動かない。でも体からは大粒の汗がドンドン吹き出てくる。
「ちょっまずいってヤクモ!まだここに狼共がいるかもしれないじゃん!」
焦る顔でシェルナが顔を揺らしてくる。言っていることはわかるのだがどんなに頑張っても指を震わせるくらいしかできない俺にはどうしょうもない。
「待ってろ、もうちょいで這うくらいにはなれる。周りを警戒してくれ」
「わかった」
俺の言葉に頷いたシェルナがフワフワと浮かんで周りを見渡しだした。その間に俺は魔力を少しづつ集めて癒魔法をゆっくりと身体中に流していった。
「くっ……少しづつ、少しづつ」
指先から徐々に徐々に動くようになってきた。
「よし、シェルナは警戒を続けてくれ。なんとか物陰まで這う」
「今のところ敵はいない。でもいつ来るかわからないから早くね」
「重症者に無茶を言う」
俺は悪態をつくもほふく前進でズルズルと進む。なんとか小さな窪みについた俺はそこに身体を入れた。
「ここでもう少し回復だ」
「そうね」
丸まった俺の肩にちょこんとシェルナが座る。その瞳は慈愛にみちていた。
「なんだよその眼」
「うんうん……頑張ったなって」
その小さな手で俺の頭を優しく撫でる。
「母親みたいなことしやがって」
「お姉さんと言いなさい……そんなことよりお迎えが来たみたいよ」
シェルナがそういった時遠くから足音が聞こえてきた。
「たく……遅い奴らだ」
「八雲!」
いの一番にやって来た美春が俺を抱き上げた。
「るせぇ、今休んでんだから静かにしろ」
「もう、いつも勝手なんだから。でもありがとう。今回は助けられたわ」
「そうかい」
そう軽口を叩くと、次第に睡魔が押し寄せてきて眠りについた。
●
美春視点
「寝ちゃった」
私が駆けつけて抱き上げた格好でスヤスヤと眠る八雲。
2階層に来たとき動かない八雲の反応に不安を覚えて急いで駆けつけると、そこには丸まっていた八雲を発見した。死んでいないことはなんとなくわかっていたが、動けないほどの怪我なのかと焦った。
でも傷は少なく、見える傷も攻撃されたというよりは内側から裂けたという感じだった。
(何かの力を使って体に負担をかけ過ぎたって感じかな?無茶してくれちゃって)
それから少し軽口を叩き合っていると寝てしまった。
「寝ちゃった……それだけ頑張ってくれたってことなのね。この階層の惨状を見るに相当な」
私はあらためて視覚を強化して周りを見た。片側は草原が見渡せる。片側は丘で視界を遮られているけど、座り込んだ状態で目線の高さに一筋の線が刻まれていた。私はそれをそっと撫でる。
「シェルナちゃん」
「なにミハル?」
八雲と一緒に寝ようとしていたシェルナちゃんを起こした。
「私、私達がここ2階層に着いたときは何も感じなかったけど、八雲を探して走っているときにある違和感が出てきたの」
「……どんな?」
「周りには草原があって、遠くに身長より大きい草が生い茂る草むらが見えたりしていたけど、魔物も戦闘後も、何も無いの。そう不自然すぎるくらいに」
そう、戦闘数が少なかったとしても何かしらの痕跡は残る。血痕だったり、切断跡が残っていたりする。でもそれが見当たらない、それに魔物も出てこない。たとえリーダー狼だけしかいないとしても。
「それで大きな草むらに向かったら……それは切断されてしまった森だった。どの切断面も同じ角度、同じ高さで斬られていたから戦闘でのことでないとわかった。だから魔力が高まっていた場所をみんなで探した。そこまでいくまでに魔物が出ないことがわかっていたから散らばって探すことにしたの。まぁ私は大体の場所がわかっていたからここにこれたけど」
「なんで大体の場所がわかったの?」
「そりゃ切断された木を見ればわかるわよ?一見バラバラに倒れているように見えたけど、斬られてズレた方向が一緒だったのよ」
そう、倒れている木を見たら必ず同じ方向に落ちて倒れていた。だから衝撃が来た方向、つまり今八雲がいるこの方向に向かえば八雲に必然と会えるわけだよね。
「だからここにこれたってわけ」
「なかなかの洞察力なのね。おバカな子だとばかりずっと思ってた」
「おいこら。お前もか」
「でも早く来てもらってよかったわ。今は周りにいないとしてもこれからどうなるかわからないから」
「だから急いで駆けつけたのよ」
それからは二人して周りを警戒しながら、わかりやすい合図を定期的にやって他のみんなを集めた。
「おーい美春!八雲いたんだろう、どうだった?」
「まだ寝てるわよ」
最後にやってきた荒太が聞いてきたので私は膝枕している八雲を指しながら答えた。
「おうおう俺達のリーダー様はお寝んねの時間か?まぁいいんだけどな」
荒太はいろいろ察したのか責めもせずに苦笑いしながら八雲を見ていた。
「美春さん、そろそろ私にも膝枕させてください」
それから八雲を膝枕したい人たちのローテーションを3回ほどした。その間八雲は起きる気配がなく安眠していた。
これから迷宮編頑張って行こう




