美晴の過去話2・八雲との出会いは手当てから
遅くなりました。
ごめんしゃい
私の牢獄で八雲お母さんとお姉ちゃんの手当てをしている。八雲と知り合ってから少ししてから見るようになった光景だ。
「今はこれくらいしかできないですね。次は美晴だ」
そう言って私に近づいてくる八雲。思えば出会った時もこんな感じだった。
八雲と初めて知り合ったのは保育園入学前だった。
私がいつものようにお父さんから説教やら何やらを受けているとき、外から爆竹の音が聞こえてきた。
(なに?)
「なんだ!?」
お父さんも驚いていた。だってこの家は完全防音になっている、だから外に音が聞こえるわけがないのだから。でもお姉ちゃんが叩かれそうになったときに音が聞こえたので、タイミングがいいと思った。
(でもこれでお姉ちゃんが叩かれなくてすむ)
そう思っているとお父さんが外に出ていった。
「…………よかったのかな。ねぇお母さん、お姉ちゃん」
「…………」
「そうね、今は大丈夫になったわね」
さっきまで叩かれていたお姉ちゃんは放心していて、そんなお姉ちゃんと私をお母さんが優しく撫でてくれた。そんなお母さんも頬が腫れている。
(いつまでもこんなことが続くんだろう)
このことを思ったのはもう何回目だろう。記憶があるうちから考えている。それから毎日毎日、毎日毎日毎日毎日壊れたレコードのように考えて、考えて考えて考えて考えて頭の中から消えないほど染み込ませてきた。それはお姉ちゃんとお母さんも同じだと思う。
そうしているとお父さんが戻って来た。
「くそっ、バレたと思ったじゃねぇか!今日はここまでにしてやる。明日から反省するように!」
怒鳴りながら自室に戻っていくお父さん。私達はそれを見送って安堵した。
「さぁ2人とも、部屋に戻りましょ」
「「……うん」」
私とお姉ちゃんはいつも通りの口調で返事をした。
でもその時誰も気がつかなかったんだ、家の塀から覗く2つの瞳に。
◇
そんなことがあった次の日、私は廊下を歩いているとお父さんの部屋が開いた。
「あ……お、おはようございます」
私は深々と頭を下げた。
「ふん、そんなとこでなにしている。さっさと消えろ」
「は……はい」
私は怯えながら部屋に戻った。
「大丈夫だった?お父さんの声が聞こえたけど」
「うん、あいさつしただけ」
「そうよかった」
お母さんが安堵の息を吐く。
「美晴、来年から保育園にいくんだから少し外に出掛けましょ」
「……お姉ちゃんは?」
「美雪、外にいきましょ」
「……うん」
お姉ちゃんものそりと立ち上がった。やっぱり体が痛くて思うように動かないんだ。
私達はゆっくり移動した。お父さんに見つからないようにもだけど体が思うように動かないのが本音だ。そのお陰なのか私達はなんとか家を出ることが出来た。
実に数ヶ月ぶりの外だった。
いつも家のどんよりした空気しか吸っていなかったので、綺麗な空気を思いっきり吸い込んだ。
「すぅー……はぁー……すぅー…はぁー」
よどんだ気持ちが少し晴れた気がした。それから保育園までの道のりを三人で歩き出した。極力人目を避けるために裏路地とか、茂みに隠れながら進んだので本来三十分で行ける距離を一時間半かかった。しかも保育園には行かずに、保育園が見える少し離れた公園までであったが。
「美晴、あれが通うことになる保育園よ」
「……………うん」
そう言われても見た保育園の光景を私は一緒忘れないかもしれない。それほど衝撃的だったのだ。
だって、誰も彼もが満面の笑みで駆け回り、怒られているのもただ叱られている、言葉で言われているだけなんだから。
どこを見ても笑顔、笑顔、笑顔。落ち込み顔があっても、次の瞬間には笑顔に変わる。私が初めて見た保育園はそんな場所だった。
ただただ衝撃で、そしてはらわたが煮えたぎるほどの怒りが込み上げてきたのを覚えている。
どうして私達とは違うのか、どうして私達はこんなに違うのか、どうして私達だけこんなに惨めになのか、思わずにはいられなかった。
「大丈夫、大丈夫よ美晴。あなたもあそこにいけばあぁなれるから。だからそんな顔しないで、お願い」
「………………うん」
私は今どんな顔をしていたんだろう。お母さんがとても心配した顔をしている。
「大丈夫、大丈夫だよお母さん」
「何が大丈夫なんだ?」
「「「!!」」」
いきなり後ろから声をかけられて、私達は後ろを振り向いた。だって私達は見つかってはダメだから。
そこには私と同い年位の男の子が大きなリュックを背負って立っていた。
「あなただれ?」
私は怯えながら聞いた。お母さんとお姉ちゃんはまたお父さんに叩かれると思って怯えまくっていたから。
「誰でもいい。手当てするから近づいてもいいか」
「え?」
私は何を言われたのかわからなかった。手当てとはなんなのかお母さんに聞こうと思ってお母さんに向いた。でも聞くまえにお母さんが大きな声を上げた。
「ホントですか!お願いします、この子達だけでも手当てを!私はどうなってもいいから!どうかこの子達を……」
「……お母さん」
「そういうことはいいので全員手当てしますよ。こっち来て下さい」
お母さんが感動的なことを言っているのに男の子はないがしろ的にしていた。なんか感じ悪い。
「まずお母さんから」
「いえ、私より娘達を……」
「この子達にやるよりあなたに先にやった方が安心感がでるのでお願いします」
「…………わかりました。お願い出来るかしら」
お母さんがそう言うと男の子は手慣れた感じで手当てを始めた。
「あっ……包帯とかは止めてくれる?それがあると……」
「わかっています。消毒や冷却ですませます」
「ありがと」
男の子は(後から聞いたけど)冷却シートと消毒液を取り出してお母さんのアザや傷痕に着けていった。
「っ!」
お母さんが痛みを堪えるようにしている。
「染みますが我慢してください。少しすればおさまります」
「えぇありがと」
「これでお母さんは終わりです。次はおまえ達だ」
そう言うと男の子はリュックを持って近づいてきた。私はというと怯えていた。お母さんが先にやっていたとしても知らない男の子は怖かった。
「大丈夫だ。痛いようには……するが家みたいなことはしない」
「……ねぇお願いできる」
私が怖がっている間にお姉ちゃんが手を上げて言った。
「喜んで」
男の子はてきぱきとお姉ちゃんの手当てを始めた。
男の子が触れようとするとお姉ちゃんはびくりっ!と奮えるが、でもお姉ちゃんは我慢しなが触られていた。
「うーん、打撲が目だちますけどところどころに切り傷もありますね…………顔にも触りますよ」
「……う…ん」
お姉ちゃんはぎゅっ、と眼をつむって俯いていると男の子が垂れ下がったお姉ちゃんの髪をかきあげた。
「っ!」
「…………」
髪で隠されていたのは右目の横を通る大きな傷だった。
「これはもう痕が消えませんね。なので他の傷を治します」
「…………ありがと」
しばらくしてお姉ちゃんが終わると男の子は私に近づいてきた。
「いいか」
「うん」
「なら顔とかはまだ大丈夫か?他は……服を脱いでくれるか」
「………………え?」
予想外の言葉に固まってしまう私。いくら子供でも同年代の異性に裸を見せるのは抵抗があった。
「別にお前の体に興味があるわけではない。体の方が重度だ」
確かに私はお姉ちゃんやお母さんと違って顔付近よりお腹を多く蹴られたり、殴られていた。そのせいでずっとお腹は痛いままだ。
「触るぞ」
「……うっ」
男の子に触られた箇所から激痛が走った。いつもはお父さんが拳が飛んでくるけど、今回は触られただけなのにとてつもなく痛かった、どれだけ今まで痛かったのかわかった。
「痛むか?どこが痛い?」
「うぅ……うっ………全部」
「っ!……ちっ…湿布やらなんやら貼るから冷たいぞ」
「うん……ひゃあっ!……うぅぅぅ……」
冷たさので声を出してしまって顔が熱くなってしまった。恥ずかしい。
「これでよし。3人の手当てはこれで終わりです。もうお帰りになった方がいいでしょう。ではまた」
そう言いながら道具をリュックに入れていき背負うと立ち去っていきました。
「あっ、ちょっとまって」
お母さんが声をかけるも男の子はどんどん離れていった。私達はそれを見送るだけしか出来なかった。
これが私と八雲の初めての出会いだった。
もうちょい早く書けたらいいなぁー
次回もよろしく




