VS百手観音 後編
遅くなってすみません
「さて、また美晴に少しの間頼むとするか」
「そうだな。美晴あとよろしく」
「しょうがないわねっ!早くしてよ!」
俺と荒太のお願いにいやいやながらも了承してくれる美晴。請け負うと美晴は部屋の中央に向かって走り出した。それに追従するように仏像を向かいだした。俺達は反対に壁際に向かい、到着すると壁に背を向けて中央を見据えた。
そこでは逃げるのをやめた美晴が仏像に正面から挑み腕を次々と切断や破壊していく光景が映っていた。
「おらおらっ!もっとこんかいぃいいいい!」
雄叫びをあげ地面スレスレを高速で移動していた。仏像の攻撃を掻い潜り、脚を、腕を、腹を切断しながら接近戦をやり始めた。いままであんなに全力疾走していたのにまるで大丈夫かのように立ち振舞いだした美晴に向けて俺達は、
「毎回思うが化け物だな美晴の体力」
「しゃあねぇだろ?確か中学の夏休み、本州を走るって行って1週間で戻って来れるやつだぞ?化け物以前にアホだろ?」
「それもそうか」
そんな風に話ながらも俺達は自分が持つ遠距離で攻撃していた。でも距離があるのか別の要因なのか仏像に傷は付くものの牽制くらいにしかならなかった。
「う~んなかなかだなあの仏像」
「あぁこれだけやってコアの位置がわからないってヤバイな」
そう俺達は美晴に任せっぱなしで楽しようとここにいるのでない。(まぁ7割そうなのだが)ゴーレムの弱点コアを見つけるためなのだ。でも仏像はそれを見つけさせないようにしていたのだ。
ゴーレムは痛みに鈍感だがコアの近くに攻撃が来ると反射的に防御する。本来はそうするもののこの仏像はどこに飛んでいっても防御も避ける素振りも見せないのでお手上げなのだ。
「やれやれ困った」
「あぁ困ったな」
「コアの位置がわかったのに破壊がムズいなんてな」
「あぁ本当にめんどうだ」
そう俺達はコアの位置に目処をつけたのだ。なぜなら仏像はどこも防御も避けることもしない。と言うことは防御も避ける必要もないとても安全な場所になるわけだ。
「そうなると強固な体のどこか、ここにないか、になるか」
「1つ目はすぐにでも確認がて切るが2つ目は探さないといけないがな」
「なら先にわかるやつからいくか」
「そうだなさっさとすませよう」
そう言うと俺達は仏像に側面から迫っていった。
「美晴!10秒その場でキーープッ!」
「オッケー!八雲!」
かなり複雑に動いていた仏像に対して美晴は脚と地面と空間を斬りつけて動きを止めた。
「ナイス!『重華突』!」
「『轟突』!」
荒太は風魔法で加速した刺突を仏像の脇に、俺は同じ箇所に身体強化の降り幅を越えて纏わせて叩きつけた。
するとビキビキと音と共に胴体は半分以上を破壊された。
「…………」
仏像だから悲鳴なんてものはあげないが動きが止まった。
「……止まっただけか」
「あぁこれは分断しても無いな」
俺と荒太は距離をとりながら落胆した。なぜなら胴体にコアが無かったからだ。
今回放った突きは重々しいものを選択して使った。それは激突時の音で仏像の内部を調べるためだ。その結果、仏像の中にはコアがないことがわかった。一番楽なところにないんだ、落胆もする。
「はぁ、さっさと部屋の中探すか」
「そうだな、急がないと仏像きちまうからな」
仏像の中にコアが無いのなら他はもう部屋の中にしかない。仏像が来るって言うのは、仏像からの殺気がビンビンに感じていたからだ。どうやらさっきの攻撃でがっつり敵認定されてしまったようだ。
「よし手分けして探すぞ。荒太は左、美晴は正面、俺は右に」向かうから、反対側で合流するぞ」
「オッケー」
「善処する」
美晴と荒太が了承すると、すぐに行動に出た。
「『七条大槍』!」
さっそく荒太が轟音と共に壁と床に7つのクレーターを作るほどの刺突を放った。どうやら荒太は大技の連発で破壊しながら進むらしい。
「『虹色の閃光』!」
今度は美晴は周りに魔方陣を展開、そこから7色の閃光を連射して迫る仏像と床と天井を破壊しだした。美晴はいつも通りの感覚でいくみたいだ。
「いくか『死塵殱雷』!」
俺は死魔法を纏わせた愛刀で音速レベルを越した雷レベルまで昇華させた剣速で壁と床を削った…………のでなくもとの位置から約2メートルほど通りすぎた所を塵に変え陥没させた。
「無しか、今度は軽めにいくか」
そう言うとすぐに作業を開始した。
そんな時仏像はパラパラに別れた俺達の誰に攻撃するか迷っておらず、ロックオンされたのは……俺だった。
「どっちかな?まぁやることが1つ増えただけなんだかなっ!と」
ドガガガガガガガガガッ!
と右側の腕十数本が一斉に振り下ろされて床を抉った。俺はサイドステップでギリギリを避けながら通り過ぎる腕を斬りつけて切断していった。
仏像が腕を引いているときにもう一度『死塵殱雷』であたりを塵に変えて天井付近までジャンプした。
それに反応して仏像は今度左側の腕で殴りかかってきたが、俺は空中を蹴って周りながら避けだ。そして伸ばされた腕を滑り台に見立てて立ったまま滑り落ちていった。
「おぉおおおおおらぁああああああああああっ!!」
顔付近まで滑ってきた俺は仏像の顔に斬撃を叩き込み、深々と抉った。すぐに再生を開始するが少しの間時間を稼げればよかった。
俺はすぐさま床に降り立つと合流に向けて進み始めた。
斬撃をだし続けながら進んでいてあと少しで着くときに仏像が横に現れた。
「ちっ、もう回復したのか」
顔の傷はすでに回復して腕も治っていた。
仏像はまた腕を振り下ろしてきたのだが、今度は右腕50本全部振り下ろしてきた。
「ちょまじかっ!」
俺はすぐさま回避に思考を移行した。密度が高く拳同士が密着して迫ってきていた。ほぼ迫る壁だった。でもほぼだ。ところどころ拳同士の隙間があるがギリギリ通れるかどうかだった。
「でも通る!」
俺は拳の壁に向かってジャンプ、迫る壁に向けて体を捻り、さまざまな関節を外して1つの棒になった俺は難なく壁の隙間を抜けた。だが肩や爪先をかすった。かすっただけで肉が抉れた。だけど押し潰されずにはすんだ。
俺はそのまま跳躍して美晴と荒太の元に着地した。
「痛ってぇ。なんだなんだ、俺がアタリってか?」
「よかったじゃん八雲!久々のアタリよ!」
「八雲、お前には同情するよ。アタリがこんなハズレだと」
そんな風に軽口を駄弁っているとまた仏像が拳の壁を振り下ろしてきた。
「俺1人だとそれはよかったが……美晴と荒太が揃うと意味ないぞ?」
ズガァアアアアアアアアアアアアアンンンンンッッ!!
迫る壁が肩辺りまで砕け散った。
仏像は行きなりの展開に呆然としていた。考えたのはなぜ砕けたのか。なぜさっきまで切断までだったのに。なぜいきなりこんな力が。なぜ。なぜ。なぜ。なぜ。なぜ。なぜ。
本来ゴーレムであっても疑問を持つ。仏像はその疑問に思考が奪われ固まった。固まってしまったのだ。
「美晴決めろっ!」
「八雲、俺達で数秒防御するぞ!いいな!」
「いきなりの終了ごめんね~」
響いた声に振り向くとそこには、背中合わせでこちらを向く八雲と荒太、その後ろで膨大な魔力を全面に収束させている美晴の姿があった。
「…………!!」
仏像は初めて焦った。この時声がでなくてよかった、声が出ていたら部屋が震えるほどの絶叫だっただろうからだ。
そんな仏像は大股で近づいて来て出鱈目に殴りかかった来た。さっき拳の壁をすぐに破壊されたため数ある手で四方八方から強襲した。とても最善だった、防御を担当するのがこの2人でなかったら。
「『水流そらし・激流』!」
「『死滅斬華・暴撃』!」
荒太は槍を使って迫る拳を脇に反らしていった。荒れ狂う激流を脇にそらす石のように。だから一発も当たらない。
俺はさっき使っていた『死塵殱雷』のように連撃の技でなく、一撃技の『死滅斬華』を使った。それの派生『暴撃』は斬ったところから周りを破壊していく仕様なので次々と斬り裂き破壊していった。
そして美晴のチャージ分の数秒を稼ぐことができた。
「お待たせ~2人とも!喰らいなさい!“極滅の光球”!」
美晴が収束させていた膨大な魔力を光魔法に変換、巨大なバランスボール程の大きさの光球を圧縮させてバレーボールくらいまでにして仏像に放った。
光球は仏像に飛来するが仏像は後退、それから腕1つで破壊しようと振り下ろした。でも光球は腕をヒラリヒラリとした感じで回避、仏像の胸に向けて一定速度で飛来していった。
仏像はそれをあっちこっちに避けるもどんどん追い詰められて部屋の端っこに追い詰められた。逃げられないと観念したのか腕全部で殴りつけるも、どれも当たらず光球はフワフワとしながら仏像に当たった。
その瞬間部屋の半分を太陽が覆った。
暑さはないが膨大な光が仏像を中心に広がり、反対側の壁にいた俺達の影を無くすほどの光が部屋を照らした。しかも包んだ部屋の半分は俺が調査した半分だったのでコアもろともだ。
しばらくして光球が消えると部屋半分が消失、仏像も消失、再生もしてこない。
「あぁ~眩しかった」
「でもでもこれで私達の勝ち!」
「あぁ早く帰りて」
三者三様の答えをしながら俺達の初めての迷宮合同訓練が終了した。
「「「せ~のっ、3人の勝ちでブイッ!」」」
次回も遅くなりますが
よろしくでどうぞ




