勇者遭遇
めぇーーちゃ遅くなりました!
スミマセン
帝霊亀討伐後、俺は丸一日眠った。後からマリナ達に聞いた話だが、その場で心配する以前に死んだ?というくらいの転倒をしたそうだ。
それからシェルナ共々壁際に寝かされ、マリナ達が周囲の警戒をしてくれたようだ。
眠り続けた俺はやっと起きるとみんなに抱きつかれてもみくちゃにされた。シェルナも少し前に起きてもみくちゃにされたらしい。
「だぁあ~~やめろやめろ!髪をぐしゃぐしゃにするな!おい、服の中の手を入れるな!おいどこ触ろうとしている!」
いろいろ危険になりながらマリナ達を退かすと、隣で横になっているシェルナに顔を向けた。
「ありがとよシェルナ、お前が居なかったら全滅だった」
「どういたしまして、でも結局最後に頼っちゃったけどね」
苦笑するシェルナに俺は顔を近づけ優しくキスをした。
「ふぇっ!??!」
真っ赤になってこちらを見るシェルナに笑ってしまう。
「な、なななななに笑っているのよ!いきなりキスされたんだからこうなるでしょ!」
「お返しだよ。俺もいきなりやられたもんでね」
舌をペロッと出して答えると、シェルナが更に赤くなった。もう熟したリンゴなのだ。
「う~~!う~~っ!!」
顔を両手で覆いながらイヤンイヤンするシェルナ、とうとう頭から湯気まで出てくる始末だ。多分だが、俺にキスしたときのこと思い出したのかもしれない。
「たく、ほらいくぞシェルナ」
「ムキャッ!あう~……」
シェルナを掌に乗せて胸元に持ってくると、今度は背中を向けて丸まってしまった。なんて可愛いやつなんだ。
俺はマリナに肩を借り立ち上がると、攻略した時に出た扉に向かった。疲労のためかなり足取りがおぼつかずゆっくりと向かった。到着する頃にはなんとか1人で歩けるくらいになり、シェルナも普段通りに戻ることが出来た。
扉に手をかけ、シェルナと一緒に押すとゆっくりと開いた。
扉の向こうは白磁に輝き、白い結晶で出来た柱が何本も立ち並ぶ不思議な空間だった。
「なんじゃここ?」
「不思議な空間ね?」
「幻想的という感じですか」
「私達の部屋と全然違う。なんていう落差!」
俺とマリナとアシュラとエキドナが感想を述べるなか、シェルナはものすんごい嫌な顔と呆れた顔が混ざった絶妙な顔で部屋を見ていると、
「……あのバカ姉達の悪趣味が詰まった部屋ね」
吐き捨てるように悪態を付く。
「バカ姉達って、前言ってた他の九柱の女神共か?」
「そうよ、だからビンゴかも」
シェルナが言うビンゴは、シェルナの魂の欠片があるかもしれないということである。だがそうなると疑問が出てくる。
「勇者達が攻略中の大迷宮はなんなんだ?」
「あっ、それ私も知りたい」
マリナが混ざったきた。あと2人も知りたいようで近づいてきた。
「うーん多分だけど、嫌がらせか探知のための仕掛けかも?」
「探知だと……もしかして罠か?」
「そうだとするとかなり悪質ね」
俺とマリナは苦々しく顔を歪めた。それもそうだ、もしシェルナの使徒がこの本当の大迷宮ではなく罠としての大迷宮に向かい、くしくも最深部まで到達して攻略したとしても、そこにあるのは魂の欠片でなく、よくてなにもない空間か最悪九柱の女神勢揃いで皆殺し確定なのだから。
「それはいろいろ詰んでろとしてだな、ここにはその探知の罠はないのか?」
「多分ないはず、バカ姉達は良くも悪くも人を侮る、だからこっちの大迷宮が発見されたしかも攻略されるなんて夢にも思っていないはずよ。だってそのためのあいつ、帝霊亀なんだから」
シェルナの答えにそりゃそうだと頷くだけの根拠があった。だって帝霊亀はどれだけスキルを酷使しても勝てない、勝てるわけがない相手なのだから。それは戦った俺が一番わかってある。
「ならさっさといこう。もしかしたらもあるかもしれないからな」
俺達は足早に奥に向かっていくと装飾がかなりされた扉が現れた。
「ここの先に……」
「えぇ、私の魂がある」
俺達はそっと扉に触れると、顔を見合わせて頷き力をいれて扉を開けた。
中は先程と違いとても質素と言う感じの部屋だった。中央に台が設置されているだけの部屋だが、俺はその台を見たときから眼を離せなかった。正確には台の上に浮遊している暗い部屋以上に黒い欠片な眼が吸い寄せられた。その欠片を守るようにリングが2つ回っていたがそんなのは気にならなかった。
一目見てわかった、これがこれこそが探し求めていたものなのだと。
「あれが……」
「えぇ……私の魂の欠片よ」
俺はその言葉に何も反応することが出来なかった。そうなるくらいに欠片とはいえ、シェルナの魂に見捕れていたから。
「行ってくる」
シェルナはそう言うと肩から飛び立ちフラフラしながらも、でも眼はしっかり進むところ、魂の欠片を見据えていた。
でも途中で失速していきカクンと落ちていった。俺は慌てて駆け寄りシェルナをキャッチした。
「大丈夫かシェルナ!」
「ハァハァハァハァ……」
シェルナはさっきと違いかなり息が荒くなっていた。
「どうしたシェルナ、さっきと様子が」
「ちょっと……共鳴して……ね…………体が……ダルくなってる」
「シェルナ、ちょっとマリナどうすればいいかわかる……か……」
俺は気がつくべきだった、シェルナがこんなにも弱っているのに誰も声もかけず近寄ってきていないことに。
「マリナ、アシュラ、エキドナ……」
3人はその場に固まっていた。動いてもいない、一瞬時間が止まったのかと思ったがそれなら俺がなぜ動けるのかわからない、次に空間が止められたのかと思ったがそれとも何か違うと思った。
俺がこの現象を考えているとシェルナが荒い息づかいなのに教えてくれた。
「みんな……私の魂から発せられる……ハァハァ……神気に当てられて……停止したんだと思う。ヤクモは……ハァハァハァ……眷族だから大丈夫なだけ」
よく見ると魂から黒いオーラが湧き出ているのがわかる。あれが神気なのだろう。封印されているとはいえ神、漏れでているだけでも通常ならマリナ達と同じく固まってしまいなにも出来ないのだろうが、俺のように眷族となっていれば動く程度は出来るみたいだ。
「なら俺が運ぶ、シェルナこのまま近寄っていっても大丈夫か?」
「……多分大丈夫かな?近づくにつれ共鳴が強くなってヤバいかもしれないけど、先に触っちゃえばいいから」
「わかった、ならいくぞ!」
俺は歩き出した。近寄っていくとシェルナが更に赤くなり息も荒くなっていく。とうとう四つん這いから横向けに倒れるまでいったけど俺は歩みを止めず進んだ。そして魂の欠片の目の前まで到達した。
「ヤクモ、私を近づけて……クハァ、ハァハァ……」
俺は言われるがままシェルナを近づけていった。回転するリングの近くまでいった指がパチンッと弾かれた。手はそこで止まった、すると掌にいたシェルナがいきなり浮かび上がり魂に引き寄せられていった。見守るなかシェルナの中に魂が取り込まれていくと、ドクンッ、ドクンッと脈動する音が響き出した。
音は次第に大きく早くなっていき、今度はシェルナから黒紫色の神気が迸り出した。
「シェルナ……頑張れ!」
「うぐぅ……あぁああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!」
絶叫と共に波状的に広がった神気で俺は吹き飛ばされ地面を転がった。
だけど次第に弱くなり神気がどんどん収束していくとそこには妖精サイズから小人サイズになっていたシェルナが浮いていた。
「っう…………シェルナ大丈夫か?」
「ヤ……クモ…………なんとか融合は完了したようだね。不調もない」
俺はシェルナに近寄り優しく胸に抱きしめた。
「おめでとうシェルナ……今はゆっくり休んでくれ」
「うん、そう……する……ね」
そう言うとシェルナは意識を手放し寝息をたてだした。
俺は振り向き、後ろでへたりこんでいる3人のもとに向かった。
「大丈夫か?」
「なんとか、ね。神気?だったかしら、直接浴びたけどここまでヤバいなんて初めてよ。実際に他の女神達と戦う……いや戦おうとするときこれをもろに浴びるのよね。そうなるとなにもできなくなってしまうわね」
マリナが珍しく弱々しく俯いて話してきた。でも実際にそうなったとき確実にそうなってしまうのだが、対策はこれから取っていけばいい。
「私達勝てるのでしょうか」
「イヤー、すんっっっごい難しそう」
マリナはまだ女神共と殺り合う気兼ねがあったが、アシュラとエキドナは諦めかけていた。
「確かに難しいだろう。だからこれから諦めないようにするために頑張んないといけないんだろう。まずは今後の方針から決めていかないといけないから出ようぜ」
俺はシェルナを赤ちゃんのように優しく抱けながら帰還のための魔方陣に乗ると部屋から消えた。
◇
「ここは……どこだ?」
転移の光が収まり周りを見渡すと暗い洞穴のなかにいた。足元には魂の欠片があった部屋の魔方陣と酷似するものが刻まれており、見ていると光出した。なので避けるとそこにマリナ、アシュラ、エキドナが転移してきた。俺が乗ったあとすぐに3人も乗ってきたようだ。
「みんな揃ったな」
「ヤクモ君……ここは?」
「洞窟……というよりは洞穴かな」
「なんか懐かしいように思えるよ」
エキドナの蛇の部分が何かに反応というか野生的になりかけているがほっとこう。
「とうとうやったんだな、俺達」
「うんそうだねヤクモ」
胸に抱くシェルナがそっと呟いた。
「やったねヤクモ君!まず1つ、されど1つ、やり遂げたんだよ!」
マリナが勢いよく抱きついてきた。
「おめでとうございますご主人様、シェルナ様。私はなにも出来ませんでしたが言葉だけでも贈らせてください」
「私からもおめでとう!特に何もしてないけど、おめでとう!」
アシュラとエキドナがそれぞれ祝福してきてくれた。アシュラは悔しそうにしているが、エキドナはどうするのがいいのかわからない顔をしていた。まぁエキドナはそうなって当然?なのかな。
「みんなありがと。なら最後に太陽を浴びて叫びますか」
「それいるヤクモ君?」
「私もそれは……」
「叫べるかね?」
マリナ、アシュラ、エキドナにはわからないようだ。でもシェルナは、
「いいわねヤクモ、思いっきり叫びましょう!」
満面の笑みではしゃぎ出した。シェルナはずっとあの真っ暗な空間にいたから叫びたい気持ちがわかるようだ。目頭が暑くなっちまうぜ。
そう言いながら俺達は歩き出した。でもすぐの曲がり角を曲がると光がすぐに差した。どんどん光に向かいとうとう外に出た。
「やった……いぃぃぃやったぁあああああああああああああああああああああああああ!!」
「でぇぇぇれぇぇたぁあああああああああああああああああ!!」
「「「…………」」」
発狂したかのように叫びだした俺とシェルナに3人が唖然としたように見つめていた。が、そんなこと気にしない、なぜなら俺達はやり遂げてやっと外に出れたのだから。
シェルナはやり遂げことで喜んでいるが、俺は出れたことに喜んでいるんだ。だって美晴の締め切りがかなり厳しいからだ。
人しきり喜んだ俺とシェルナは深呼吸の後、これからのことを話すことにした。
「出れたからさっさと次の街いくか、街に戻って準備整えて出発だが……」
「今戻ってもまだあの衛兵達がいると思う」
「そもそも街入れるかどうかでは?」
マリナとアシュラの発言はもっともなのだが、俺達はどうしても入って、まだ残っているかどうかわからない荷物を取りにいかないといけないのだ。
「荷物、その中のギルドカードを回収……」
「ならここにあるけど?」
シェルナが空間に波紋を起こすとそこに手を突っ込み中から俺達のギルドカードを取り出した。
「なら俺は街に戻りたくない!」
「言葉覆すの早っ!そしてシェルナっちナイス!」
「まぁね」
どや顔のシェルナ、すごいムカつく顔でひっぱたきたいが、それは今回許されるくらいの仕事をしてくれたから無しにしてやろう。いつもはやるが。
「だったらこのまま次の街に出発しよ……」
「こっちから巨大な魔力反応がする!慎重にいくぞ!」
いきなり森の中からどこかで聞いたことのある声が聞こえてきた。すごく聞いたことがある、とても嫌な予感が脳裏に過ぎる。
「なぁ、今の声どこかで聞いたこと」
「あるわねぇ~。しかも大迷宮攻略前にちょっとだけ聞いたことがあったような」
俺達は洞穴の窪みのところに身を潜めていると、洞窟の外の森から豪華な装飾をした鎧を身につけた男女4人組がいるのがわかった、というか勇者パーティーが出てきた。
「はぁー。めんどことになってきた……たく」
俺達は盛大にため息を付いた。
勇者達との騒動
よろしくどうぞ~




