過去の思い出ほど掘り返したくない
八雲、美晴、荒太の過去話です
「うっく、えっぐ、いだいよぉーどうして俺だけこんな目に」
「よーしよーし大丈夫ですよ~痛いの痛いのとんでけー」
「すみませんヤクモ様」
「ごめんねご主人様」
現在俺達はエキドナちゃんがいたボス部屋を出て次の階層に行く階段で休憩していた。
俺はというと泣いていた。というのもあのとき、振動で滑り背中に針が刺さったまではまだよかった。その事に気がついたみんなが心配して手を着いた俺の胸に。するとどうなるか、徐々に押し込まれていったのだ。その結果針は貫通しちゃったのだ胸を。その時ばかりはみんなが恐怖マンガ張りの顔になってしまっていた。
だから俺はみんなに謝罪と慰めを受けていた。……シェルナを除いて。
「なにいつまでメソメソメソメソ泣いてんのよヤクモ!男ならシャキッとしなさい!」
「そうは言うがなシェルナ、俺胸貫かれてんだぞっ!泣かずにいられるか!」
「うっさい!貫かれるくらいなんだい、私に関してはいろいろ姉達に抉られてんだから、楽じゃない!」
「…………すんません」
いきなりのシェルナのカミングアウトで周りの雰囲気が暗くなった。まさかそんなことされていたとは、俺はなんで貫かれたくらいでグダグダ言っていたのだろう、恥ずかしい。
「すまないシェルナ、俺が間違っていたよ。そうだよな、貫通したくらいなんだ!大したことない」
「え?そこまで極端に……」
「そうよヤクモ君、貫通くらい誰にでも起きるわ!」
「いや、それは起きないんじ……」
「そうですね、貫通程度で死んではなにもできませんね」
「えっと……」
「そうそう、ご主人様は考えすぎたんだよ、リラックスリラックス」
「…………」
すまないシェルナ俺達が間違っていたよ、貫通くらいでぴーぴー泣くより前に進まないとな!……よし、いつも以上にやる気が出てきたぞ。
「さぁ出発だ。最速で抜けるぞ!」
「「「おぉー!」」」
「……おぉー」
俺達は順調に進むことにした。
◇
「うん?なにやら八雲がバカな言動?もといなにやらやらかして飽きられてる感じがするな」
「ふぁ~あ……どうしたのよ荒太、早くご飯食べて迷宮に行くわよ」
「うん……まいっか、すまんすまん行くとするか」
現在は八雲が大迷宮に入って15日経過した日のこと、俺と美晴は朝食を食べるため王城内の食堂に向かっていた。
八雲が消えた当初、美晴は地球でもさほど起こさなかった癇癪を起こして、それの捌け口兼国の壊滅を防ぐため1週間ほど戦った。ちゃんと食事と睡眠は取っていたのでなんとか持ちこたえることができたのだが、これが不眠不休の食事無しだった場合無理だったかもしれない。それに癇癪もずっとというわけではなく思い出したらといった感じで起きていたので、それも防げたいた要因だったのだろう。
(もし不眠不休で食事無しでなくても、それ以外で戦かい続けるでもダメだっただろうな。いやはやそんな無茶苦茶な条件で1ヶ月も美晴の相手をしていた八雲は、ホント美晴とは違う意味での化け物だな)
俺は前を歩く美晴を見ながら、いまも何か頑張っている親友から聞いたことを思い出していた。
◇
それは中学2年の時に起きた事件。その頃俺は他の友達達とつるんでいた。もちろんクラスにいた八雲と美晴のことも知っていたと言うか、2人はある意味目立っていた。毎回テストトップであり才色兼備、運動神経抜群の美晴、その隣を全く違和感を持たれずに歩く八雲、2人は2年になってもお互い以外の友達が出来ておらず浮いていた。まぁホントは出来ないのでなく周りが声をかけることができないだけだったのだが。そんなおり、修学旅行まで残り1週間と近づくなか美晴が学校に来なかった。その日は八雲は来たのだが美晴が来ないと分かるとそく早退、八雲もその日から来なくなった。
待てど暮らせど2人は来ず、修学旅行は延期……とはならなかった。どうやら八雲が来なくなる前に先生方に延期と中止しないよう言っていたようだ。
それから俺達は修学旅行を満喫した。
修学旅行を終えて戻って来ても2人はまだ来なかった。クラスに不穏な空気が流れ出した頃2人は戻って来た。全身傷だらけの腕と脚を片方ずつギプスに覆われて。
どうやらまたしばらく休むことを伝えるために来たようだ。放課後、クラスで話し合いが起きた。議題は2人がなにをしていたか聞いてくる人を決めるだった。当然誰も行きたくなかった、誰もが知りたいが知っていいかとなのかと、会話もろくにしなかった相手に聞きたくなかったのだ。
決めるのはくじで、俺に決まった。当時はとても憂鬱だった。なんで俺なのだと、怒りもあったが俺も知りたいと思っていたのでそこまで嫌々とはならなかった。
それから先生に家の住所を聞き向かった。楽だったのは2人の家が隣通しだったことだ。だから事前に連絡して同時に聞くことができたよかった。
緊張しながら家に近づいていくと道路、かべや電柱に陥没したあとが出てきて、家に近づくにすれ多くなり、家付近まで行くと壁が崩壊していた。
「…………なにこれ?」
当然の疑問だ。ここが戦場だったと言われても信じてしまうくらいの破壊跡だったのだから。だから俺はより慎重に進もうとしたら、
「うん?誰だお前…………あぁクラスメイトの、どうしてここに……あぁそっか今日だったか。すっかり忘れてたよ」
後ろから訪問相手の八雲が杖を付きながら、コンビニ袋を持って立っていた。
「よう朧久しぶり、いまからお前ん家に向かう途中だったんだ。一緒にどうだ?」
「いいぞ、ならいこ……の前に美晴に電話しないと」
八雲はギプスで指だけ出た右手を器用にポケットに入れスマホを取った。
「ちっやりずれぇー…………あぁもしもし美晴?今日さクラスのやつが来る日じゃん……なに?忘れてた?俺もだからいいよ……うん、うん、なら早くしろよ」
通話を切った。
「なんか美晴、時間かかるみたいだからゆっくり向かおう」
「あ、あぁ」
俺が呆然と答えたことは仕方ないと思う。だって俺まだ普通だったもん。
それから俺は八雲の後を着いていき家に辿り着いた。のだが、
「……………………なんで?」
道路や周りは悲惨すぎる光景なのに八雲の家は外壁、中庭、犬の小屋、ガラスや全てが綺麗なままだった。
いったん落ち着こうと首を振り横を向くと、
「へ?」
なんとかそこには八雲の家と同じく無傷の家があった。
「どうした、早く上がってこい」
「あ、あぁ」
俺はもうなにがなんだかわからないまま家に入ることにした。
「すまないな、こんなものしか出せなくて、怪我がなかったらもっといいものを淹れれたのに」
「い、いやーお構い無く。と言うか」
どうやってやったの?というくらい八雲は映画に出てきそうな瓶から紅茶を淹れてくれた。片手で茶葉の調合もしてくれて。
「うん、そろそらかな」
「?なにが……」
ドドドドドドドドドドドドッ!
「おっ待たせ~!」
二階から美晴が猛スピードでかけ降りてきた。両足で。
「…………」
俺が唖然としてしまっている頃、八雲が普通のようにしていた。
「おい美晴、怪我してんだから」
そうそう、気をつけないと……
「ゆっくり走ってこい」
走らせるんかい!
俺はがっくりとした。もう着いていけなかったのだ。
「はーい、それよりねぇねぇ、話ってなに?」
「え?はなし?……あぁ」
もう驚きすぎて当初の目的をすっかり忘れていた。
「実は2人がその……えっと……先月いったいなにをしていたのか聞きたいなぁと思ってな」
そう口にすると美晴はあからさまに不満顔になり口を尖らせた。
「別にたいしたことは……」
「美晴が楽しみにしていた家族旅行が取り止め、さらに従兄弟にバカにされて、嫌いなお婆に1日説教されたから、こっちに戻って来ても不満が爆発、1週間も不眠不休で県内の不良チーム叩き潰しまくっていた。それでも治まんないからそれ以降俺が相手になっていたわけ」
「ちょっ八雲!なに暴露してんの!?」
「え、え~~?ホントなのかそれ?」
ウンウンと2人して頷いた。
「マジなんだよ、こいつがキレるとこれくらいやるのはざらだぞ?」
「仕方ないじゃない、クソババアの説教とあのクソいとこ発言、マジあり得なことばっかり言ってくるし、家族は信じて説教に加わってくるし、不満溜まりまくりよ」
「そりゃ災難、でも頼むからもう暴れないでくれ、こっちが疲れる」
「ム~リ、それが起きるのはあいつらが私と会わない時だけよ」
それから2人して俺をほっぽって話し出した。話し合いと言うかほとんど口論みたいになっていたけど。俺が空気になったみたいだったよ。
「クラスの時と全然違うなぁー」
いつの間にかそう呟いていた。
そのまま夕方になり俺は帰ることになった。結局ほとんど話を聞けなかったが、いや目的の話は聞けたからいいのかな?その日はそれで終わった。それからかな、俺が八雲と美晴と付き合った行くのは。そのせいで当時の友達とは離れていったけど、それほど嫌ではなかった。
当の2人も俺が関わってくるのに嫌な顔1つもしなかった。それが余計に嬉しかったのだろう。
そうして今に至る。
◇
「今思い出しても美晴の化け物じみた能力と、それを押さえていた八雲に感服しまくりだな。そのせいで手に終えないけどな」
俺は深々と溜め息をつく。それはホントに深く深くついた。
「1つ言っておくけど荒太、あんたもその化け物の領域に片足突っ込んでいるの忘れないでね?」
「ははっ、りょーかい」
確かにそうだ、いくらレベルが上がり美晴が手加減して、不眠不休で無いにしても抑えていたわけだ。う~ん、なれたのかね。
「あっ、ミハル様、アラタ様おはようございます。これから朝食ですか?」
廊下を歩いていると前の曲がり角からキラリス王女が現れた。どうやら彼女も朝食のようだ。
「王女様おはようございます。体は大丈夫ですか」
「おはよう王女ちゃん。寝不足みたいだけどちゃんと早めに寝なよ?」
俺達が気遣うと王女様の目からハイライトが消え、暗く影が落ちた。
「それをあなた達が言いますか……えぇそうでしょうね、自覚ありませんよね。私が寝不足なのも、城にいる文官達が家に帰れず泊まり込みで書類と格闘しているのが、いったい誰のせいなのか」
「あの王女様」
「お、王女ちゃん、落ち着いて、つ疲れているのよ。そうよ、すこし休まないと」
珍しく美晴が慌てている。そうこうしていると、王女様の髪が逆立ってきて、赤黒いオーラまで纏ってきたぞ!
「全部全部全部全部全部あなた達のせいでしょうがぁあああああああああああああああああ!!」
火山が噴火した。そう思えるほどの叫びだ。
それから俺達はストレスで怒髪天に達したしまった王女様から説教を半日やられた。
そのお陰か美晴がすこしおとなしくなったのは嬉しかったです。
次回もよろしく




