異世界召喚されたら難易度ハードから始まってる!
第1話 異世界召喚されたけど難易度ハードから始まってる!
俺の名前は朧八雲、普通の高校生だぜっ!と教室で机に突っ伏しながら、変なテンションで自己紹介をしていた。(心のなかで)
突っ伏していると、隣から声を掛けられた。
「おい八雲大丈夫か?いくらテスト終わりだからってこんな昼間から寝るなよ」
こいつは中学からの親友の空樹荒太、何だかんだでよくつるむやつだ。
「いいじゃんかよ、やっと終わったんだから。これでやっとゲームとアニメ、ラノベ小説の続きが見れるんだから」
「相変わらずだな。それよりさ、明日から休みだろ、美晴呼んで遊びにいこうぜ」
美晴は俺が話す数少ない女子だ。荒太と一緒で中学からの付き合いだ。ちなみに名字は川崎だ。
「八雲、荒太帰るわよ!明日からいっぱい遊ぶんだから!」
後ろからけたたましい声が響いてきたので、振り向くと、そこには仁王立ちで立つ、美少女がいた。というか美晴だった。
「まだ帰れないだろ美晴、ホームルームあるんだから」
「そうだぞ、あと近くで騒ぐな。寝れないだろ」
「そういえばそうね。忘れてたわ!」
荒太と俺につっこまれ、美晴は自分の席に戻っていった。俺はため息を付きつつ呟いた。
「あんなんでなんで成績が一位なんだ?神様は不公平だぜ」
「それでスポーツ万能にあのルックスだろ?またスカウトされたらしいぞ、断ったみたいだけど」
なんで俺達といっしょにいるんだ?と口にしようとした時、教室の扉が開き、担任の河内啓子が入ってきた。(俺的にだいぶ美人)
「そんじゃ俺戻るわ」
荒太も自分の席に戻っていった。
「はーい席について、ホームルーム始めるから」
河内が催促し全員が席につくと、明日からの事を話し出した。
俺は聞き流しながら、外を眺めていると、いきなり教室が光だした。いや、教室というより、教室にいる全員の足元がだ。足元には、魔方陣?があった。
俺は、一人ずつなんだと間抜けに思っていた。
そしてきずいているかみんな!いやっ気付いてない、みんなの魔方陣は白だけど、俺の魔方陣だけ黒なんだぜ、めっちゃ不吉やわーなんて考えていると、
「「八雲!」」
叫びながら、荒太と美晴が血相を変えてこちらに来ようとしていた。 魔方陣はちゃっかり足元にあった。どうやら場所指定ではなく、人指定のようだ。
いや、叫んでいるのは他にもいた。
クラス内のオタクグループが、「異世界召喚きたぁー!!」とはしゃぎまくっていた。俺も隠れオタクみたいなところはあるが、あそこまで騒ぐことはできないなぁと思った。
周りはまだ混乱中のようだ。そうこう考えていると荒太と美晴が手の届く距離までやって来て、何か叫ぼうとしたとき、魔方陣が一気に輝きだし、極光がみんなを、漆黒が俺を包んでいくので、包みきる前に親友二人に叫んだ。
「俺は大丈夫だ!だから……また明日な!」
言いたいことを伝えきると、漆黒が視界を覆ったい、俺は意識を手放した。
◇
気が付くと、辺りは光が一切ない闇に覆われていた。そして俺は壁を背にして地面に寝っ転がっているようだ。
(ここはどこだ?普通神殿みたいな場所からスタートじゃないのか?それとも俺死んだ?それにすごい獣臭が漂ってくるんだが)
今の状況を整理しようとするが、闇と獣臭が思考を邪魔するので、スマホを取り出し、ライトを点けて前方を照すと、そこには一匹の狼がおり、こちらをじっと見ていた。
俺はもっと奥を見るために、スマホを持つ右手を前に突き出した。すると狼が居なくなり、スマホが地面に向けてスローモーションのように落ちていった。
俺は滑ったのかと思って右手の伸ばすが、スマホを掴めなかった。仕方なく左手で取る寸前に気が付いた。いや、もっと前に気が付けるはずだった。近くから聞こえる水が落ちる音、先ほどより匂いがきつくなった獣臭、何かを咀嚼音、ヒントは周りにたくさんあったのだから。
俺は手で取るのを止め、ポケットにあるイヤホンを使って、ゆっくりとスマホを近く引きずってきて、心を落ち着かせたあと、スマホを取り、咀嚼音がした方を照らした。
そこにはやはり狼がいた。口元には血が付いており、右手があった部分と交互に見て、こいつが何を食べていたのかをはっきりさせた。
「やっべぇな、これから片手でこの状況をクリアしないといけないのかよ」
俺は呆れた。なんだよこの無理ゲーは、攻略本寄越せよと愚痴った。
呆れていると、前方からたくさんの唸り声が響いてきた。
見るのは後回しにして、自分の周りの地面をライトで照らした。そこには俺を囲むように半円の魔方陣があった。なぜ半円なのかは、残りの半分は後ろの壁で途切れているからだ。
よく見ると、右手から出た血だまりは半円の外側にできていた。
「こいつらは俺が外に出た場所しか攻撃出来ないのか」
冷静に判断しているが、今も血はで続けており、意識も遠退き始めた。
俺は見たくなかったもう一つの確認事項に向けてライトを照らした。
そこにはいるわいるわ、見えるだけでも熊、鷲、鷹、サイ、ライオン、虎、豹、ワニなどの猛獣がおり、そいつらが炎、風、雷、水、岩とかを纏わせているわけで、見るからに凶悪な訳。
異世界で冒険を始める前に自分の命が終わっている。
俺は諦めて、遠退く意識に身を預けようとしたとき、猛獣の壁の向こうから、カツン、コツンと誰かが歩いてくる音が聞こえてきた。
一瞬、幻聴かと思ったが音は次第に大きくなってくると、猛獣の壁が二つに割れ道ができた。
しばらくしていると、歩く音が俺の前で止まった。恐る恐るライトで照すと、そこには死を纏った少女がいた。髪は銀色、フードから見える瞳は紫、黒のゴシックスカート、クマミミフードを着ていたが、一番目を引いたのは、少女の身長の倍はありそうな大鎌だった。
呆然としていると、少女は俺の右手を食った狼をいきなり両断した。
またもあり得ない光景に固まっていると、少女は両断した狼に近づき、切断面に手を入れ引き抜くと、手には俺の右手を持っていた。
今度は俺近づき、右手をくっつけようと元の場所に当てながら小声で呟いた。
「ハイヒール」
右手付近が淡い光に包まれ、しばらくして光が消えると、右手が傷痕もなくくっついていた。
俺はしばし呆然と右手を見続けたあと、改めて目の前の光景について考え出していた。
◇
回想終了と意味もなく昔のことを思い出していると、下の方から声を掛けられた。
「さっきからなにをぶつぶつ言ったり、考えたりしているんですか。私の話を聞いているんですか」
いやぶつぶつとは考えてないのだが、みんなにわかるように回想編を流していたのだが、そのせいか、この子が言っていたことは聞いていないけどと口に出して言えなかった。
「全く貴方は、なんでこんな人を喚んでしまったのでしょう。わかりました、もう一度最初から説明します。今度聞かなかったら、腕を切断します」
怖っ!というか心を読まれていた。すみません切断だけは止めてください。ちゃんと聞きます。
「貴方から説明してくださいとお願いしておきながら全く。……まずですね、この世界の名はメルウェスト、そして私はこの世界にいる十人の女神の一柱、死の女神シェルナといいます」
残りの九柱と信仰する国は
炎の女神フォルト、炎の帝国ギルシュ
水の女神べルカ、水の公国ウルト
風の女神フィーン、風の王国シュート
地の女神ボルメ、地の王国ラルス
闇の女神アナルカ、闇の帝国ベルナート
光の女神シゥルハ、光の王国キラリス
樹の女神ビュータ、樹の獣国ラインス
雷の女神ラソルタ、雷の精霊国ミルマ
癒の女神キュルア、癒の神聖国パラナイス
であるらしい。
なぜ死の国がないかというと、昔はあったようだが、複数の国が同盟をくみ滅ぼしたようだ。まぁ名前からしてヤバいからいつかそうなりそうだと思ったけど、すでに滅んでいたか。
九国の他に、商業都市、城塞都市、魔導都市とあるらしいが、これらは九国が共同で作ったらしい。
そしてなんとこの世界は、俺の大好きなRPGのように、魔法もあればレベル制のようだ。やったね!で、これが今の俺のステータス、
名前 朧八雲
レベル1
職業 勇者・錬金術師
スキル 錬成、錬金術、死魔法、思考加速、並列思考、直列思
考、不眠、痛覚耐性
体力130 魔力100 攻撃70 防御80 素早さ50 運200
加護 死神の加護
う~ん微妙、て言うか防御と攻撃弱くね!あとどんだけ遅いんだよ!これでも運動はそこそこ出来るのに!
スキルに関しては、最初の4つと最後はこの世界に来てからのだとして残りよ。
並列思考はゲームを同時に2つやったせいだろ、やっぱり3D○とP○vitaはダメだったか~。
直列と不眠もゲームのせいだろなぁ~、夏休みに一週間部屋に籠りっぱなしでいたのがダメだったんだろうなぁ~。
よしっ、気持ちを切り替えよう。次はもっとも重要なことだ。
「女神様、魔法について教えて下さい」
「さっきから貴方の気持ちは駄々もれなんですが、わかりましたまずは……」
魔法はスキルにその魔法が無くても使えるそうだ。ただし、代償が発生するらしい。
炎を使うと炎に包まれ、水は複数の箇所が凍り、風は切り刻まれ、地は針上の岩に貫かれ、光は視力を失い、闇は様々な状態異常にかかり、樹は体の一部が植物になり、雷は雷撃があたり、癒は回復系を受け付けないといった感じの代償が起こるらしいが、どれも死なない程度や一定時間で終わる感じらしい。
「でもね、私の死魔法だけ違うの。私の死魔法の代償は、使った人の死、もちろん一定時間で生き返るなんてこともおきるないの」
シェルナはつらそうに俯いた。多分、今までたくさんの人が使っていって死んだんだろう。それを自分のせいだと思っているらしい。
「そうなの、私のせいなんだ。私なんかが生まれたからたくさん死んでいって」
「馬鹿馬鹿しい」
「えっ?」
俺はシェルナの自虐を遮った。
「死魔法を使えば死ぬ、分かりきっていることをなぜやらなければいけなかったのか。それは死魔法を使ったものがその瞬間に望んだからだ。使ったおかげで助かった命がある、それもこれもお前が生まれ、魔法が生まれたおかげだ」
「でも、良いことが起こるより悪い人達が悪いことをする方が多い。そのせいで罪もない人が」
「それでも俺は感謝している」
「どうして?」
「お前に出会えたからだ」
俺がシェルナをまっすぐ見ながら伝えると、シェルナは顔を真っ赤にしながら口をパクパクし始めた。
「正直、親友の二人以外とはあまりいたくなかったし、異世界召喚された瞬間に王様達に洗脳されたかもしれないから、お前が喚んでくれて良かったよ」
「でも」
「さっきから自虐ばっかりだな。ちゃんと言うぞ、お前が俺を喚んだのは必然だ。だからお前を必ず幸せにする」
あれ?なんで俺はプロポーズみたいなことを口走っているんだ?こいつを好きになったらロリコン確定に……
「こんなおばさん好きになってどうするのよ」
うん?おばさん?どゆこと?
「私女神のなかでは最年少だけど、世界が出来てから6000年は生きているのに」
ロリババァきたぁー!!まじでか、本当にいたんだ、完全な合法ロリ。
「それにここにいる私は本体じゃなくて分身体なんだよ」
「分身体?」
「本当の私はこの迷宮『デッドエンドラビリンス』の最下層100階に封印されているの、お姉様達によって」
「お姉様達って言うと九柱の女神か?なんでまた封印なんて」
「私の力を恐れたの、私の力は死魔法が主流だけど、根幹は神殺しや神滅だから」
「お前はいわゆる、九柱の女神が暴走したときのストッパーであり、処刑者ってことか」
シェルナは首を縦にふり肯定した。
「だから私の国を滅ぼしたの。使徒を生み出さないように」
「使徒を生み出さないように?」
「封印されても、使徒が私を助ける可能性があったから」
そうか、使徒はこの迷宮を踏破してこいつを助けることができるくらい強いのか。
「だったら俺が使徒になろうか?」
「いいの?」
シェルナが目に涙を溜めながら見上げてきた。くそぉ~かわいいなぁ~。
「いいぜ、その代わりに二つ聞きたいことがある」
まず一つ、シェルナを助ける即ちここから出すにはどうすればいいか。
「ここ以外のランク不明の九つの迷宮を踏破して私の魂の欠片を集めて私に渡せばいいよ」
二つ目、お前はこの状態で俺に付いて来ることは出来るか。
「少女の状態を続けるとあなたをもう一度ここに呼ぶのに10年かかるからあまりおすすめは出来ない」
質問追加、少女の状態と言ったが、だったら手のひらサイズ位ならどうなのか、あとこの迷宮の地上からの入口はないのか。
「手のひらサイズならあなたを呼ぶのに5年に短縮ささるわ、あと地上に入口はないのここはお姉様達がいる神界と地上の間の異次元に存在するから」
欲しい情報はある程度集まったな。これなら以外と行けるかな手持ちのスキルとか駆使したら。
「わかった」
「やっぱりだめだよねこんな無茶、わかってるせめてものお詫びにあなたを友達のところに」
「ちょちょちよっと待て、なに勝手に決めてんだ、やるよやるお前の使徒やるから話を聞け」
いきなり俺を荒太と美晴のとこに飛ばそうとしたので、お腹に抱きついて止めさせた。
「でもわかったって」
「それはお前が言った無茶を出きると思ったのわかっただ!出来ないの方じゃない」
「……出きるの?」
シェルナが信じられないといった感じで呟いた。俺は力強く頷いき-
「だからはやく俺を使徒にして、地上に送れ、いろいろやり始めないといけないから」
シェルナは俺の返答を聞くと、恐る恐る右手に触ってきた。すると、手首から肩に掛けて焼けるような痛みが走り、徐々におさまってきて、手の甲にシェルナが持つ大鎌が二つ交差して、その下でドクロが笑っている紋章が出来ており、人差し指には、赤黒い宝石が嵌まった指輪が付いていた。
「これは?」
「私の使徒だと言う紋章です。指輪は私との繋がりで、指輪と手の甲の紋章と腕の紋章がなければ私の分身体が現れないようにしました」
なるほど、これなら指輪を盗まれても分身体が指輪から出ることはなくて安心ってことか。
「了解、そんじゃ送ってもらう前にこれからのおおまかなことを決めるか」
一つ、5年後までに俺が強くなる
二つ、シェルナの魂を集める
三つ、九つの迷宮を踏破する
四つ、シェルナを幸せにする
「まぁこんなところか、すこし増えるかもしれないがだいたいこんな感じだろ、お前……シェルナもこれでいいか?」
「うんいいよ、私も……八雲が決めたことについていくから」
この時初めて二人はそれぞれの名前を呼んだ。
「うしっ!そんじゃ地上への道を開けてくれ」
「うん、わかった。……開け門、異界との架け橋をつなぎ、我を送れ、“異界門”」
シェルナが前方に手を向けて詠唱をすると、空間に渦が現れ、やがて黒くごつい門が出現した。
「そう長くもたないから早くしてね」
シェルナは額に汗を浮かべながら催促した。
「了解、そんじゃま、新たな世界に向けてレッツゴー!」
俺は意気揚々と門を潜っていった。
◇
八雲が潜っていったのを確認して私は門を閉じた。
「やっと行ってくれましたか、これ以上入られるといろいろときつかったですね」
シェルナは八雲をこの空間で魔物に襲われないように結界を張っているのにも相当な魔力を使っていたので、現在かなり消耗していた。
そればかりか、いきなりプロポーズされたので動揺してしまい分身体の維持にも支障が起きかけていた。
「私を幸せにするか、そんなこと今まで誰にも言われたことはなかったな」
今まで言われてきたのは、生まれて来なければよかった、お前のせいで死んだんだ、死ねよ、消えて、などを言われてきた。ずっといなくなりたいと思ってきた。
けど今日初めて誰かに感謝している、出会えてよかったと言われた。それだけで嬉しかった。心ではいろいろ考えていたのかもしれないが、その時私の世界が初めて色づいた。
「ふふっ、単純かも知れないけど八雲、あなたに恋をしたわ、あなたは違うかもしれない、その時は私に振り向かせてあげる、覚悟していてね。ふふっふふふふふ!」
シェルナの笑い声が暗闇にこだまし続けた。
◇
私こと川崎美晴は今親友の空樹荒太と異世界にあるキラリス王国?っていうところの城の図書室で調べ物兼作戦会議を行っています。
「見つかった?荒太」
「いんやこっちにもなかったよ美晴、なかなか見つからないな」
荒太がため息を付きながら別の本を手に取り見始めた。
クラスが異世界に召喚されて一ヶ月、私達が図書館に籠って一週間が経過した。
クラスが召喚されたのは光の王国にある神殿だった。そこにはたくさんの神官と国の王女メレーナがいた。
「成功した……勇者様お願いします、魔王から私達人類をお守りください」
いきなりメレーナは深々と頭を下げ、それに追従するように神官達も頭を下げた。
だけど、それを見ていたものは数名しかおらず残りは小さなパニックを起こしていた。
「ここどこなんだよ、映画の撮影かなんかか?」
「早く帰したよ」
「……やはりまだ鵜呑みにはしてくれませんか、ですのでこちらに要らしてください、お食事を用意しております」
メレーナは最初から連れていくと決めていたかのように神殿にある広間にいき、そこでも決められた事情をきかせてくれた。その事で私達はここが本当に異世界なんだと認識できた。
召喚当初は混乱と不安でいっぱいいっぱいだったけど、時間がたつにつれ落ち着いていき、私と荒太は今ここにいない八雲のことを考えることが出来るようになった。
メレーナが言うには、召喚した勇者は30人なのだそうだ。私達のクラスは30人と先生1人で八雲がいないのでちょうど召喚人数と合うことになる。こうなってくると八雲は別の異世界に召喚された可能性も浮上してきたが、その可能性は荒太が否定した。
「あのとき八雲の足下にあった魔方陣は、俺達の下にあった魔方陣と図形は同じだったから、八雲は別の場所に行っている可能性方が高いと思うぞ」
荒太は瞬間記憶が優れているんだ。約3日のうちに見たことはだいたい覚えているらしい。だけど、大事なことや好きにしか使わないのでもったいなさ過ぎるのた。
「荒太が言うんならそうたのねぇ……ねぇステータスどうだった?私は自分のしか知らないから荒太の聞きたい」
「俺か?平凡だぞ?そんじゃいっせぇーのでで同時に見せようぜ、いっせえー……のぅで」
名前 空樹荒太
レベル1
職業 勇者・剣闘士
スキル 剣術【超級】、拳術【超級】、炎魔法、地魔法、思考加
速、完全記憶、不眠
体力200 魔力100 攻撃110 防御120 素早さ100 運70
加護 炎の女神の加護、地の女神の加護
名前 川崎美晴
レベル1
職業 真なる勇者
スキル 剣術【極】、拳術【極】、全属性魔法(死を除く)、思考
加速、並列思考、直列思考、状態異常無効、アイテムボ
ックス、全パラメーター上昇
体力300 魔力300 攻撃250 防御270 素早さ280 運500
加護 炎の女神の加護、水の女神の加護、風の女神の加護、地の
女神の加護、光の女神の加護、闇の女神の加護、樹の女神
の加護、雷の女神の加護、癒の女神の加護
「ぶはっ!なんだよ美晴、相変わらずぶっ飛んでんな、早くあいつにも見してやりてぇよ」
「そんなに笑わなくてもいいでしょ?好きでこんなことにしてるんじゃないんだから。私も困っているのよ」
美晴が自身のステータスを再度確認したことで机に突っ伏すように落ち込んだ。
「確かにこりゃバレる訳にはいかないな、面倒に繋がってくるし、美晴が保護という名目の監禁に会いそうだ」
「勘弁してよぉ~」
九柱の女神全員の加護を持っている美晴は、国王や上級貴族、教会が神の使徒として、祭り上げられるのは確実だった。
「それに美晴だけ、職業1つだけなんだな、まぁだからそのステータスなんだろうけど」
「どういう意味よ」
美晴が口を尖らせて、ぶぅーぶぅーと言いながら荒太に顔を向けた。
「いやだってさ、俺や他のやつは勇者だけどお前は真なるだろ?多分だけど他の勇者達をお前がまとめて魔王を倒すみたいな感じじゃないのか?」
「えぇ~めんどくさい。私が従えるのは八雲と荒太だけでいいわ」
私はそういいながら背伸びして再び手元の本に目を移した。荒太もやれやれといった感じで私をみたあと、本を見出した。
それから数時間たち、そろそろ夕方になりそうなときに、荒太が上ずった声を上げた。
「これは……美晴!これを見てくれ!」
「どうしたの荒太?……これは……もしかして!」
「あぁ、もしかしたら八雲はこの死神のところに呼ばれたのかもしれない」
荒太が読んでいた本は2000年くらい前にあった、世界を滅亡させようとしていた国を滅ぼしたときのものだった。
そこには、九つの大国と女神が周りを包囲し一つの国に戦争をしようとしており、包囲された国には鎌を持った女神が守護しているような絵が付いていた。
「闇魔法は黒っていうより紫に近い感じだった、多分だけど死魔法はこの絵みたいに漆黒って感じだと思う。この色ならあのとき八雲の足下にあった魔方陣の色と合う」
「そうね、この本によれば滅ぼしたあと……封印?いったいどこに……そこまでは書かれていないか」
私と荒太は揃って落胆のため息をついたが、ようやく見つけた手がかりに心を躍らせた。
「封印されたってことはもしかしたら迷宮かもしれないね」
「あぁ、それもかなりランクの高い、いまだに攻略されていないやつだな」
偶然八雲が迷宮を脱出したのと同時期に美晴と荒太も迷宮攻略を決めたのだった。
◇
地の王国ラルスと樹の獣国ラインスの間には広大な草原、ボノート大草原があり、挟むようにしてタシナ森林とゴロナ森林が存在する。そしてタシナ森林の近くにある小高い丘に『異界門』が出現し、扉から八雲が現れた。
「太陽は偉大だった」
俺は手を広げて第一声を上げた。
「いきなり何普通のことをいってんのよ」
指輪が光り弾けるようにしてミニシェルナが現れた。
「私こそ世界をまたにかける死の美少女神、その名もシェルナちゃんミニ!」
どこかのプリ○ュアみたいな登場をされた。
「何やってんだシェルナ、それが素か?」
「えぇ、あのときは贖罪の気持ちがおおきかったので自粛していたのです!それよりも前を見なくていいんですか?」
シェルナがニコニコしながら前方を指さした。なんのことかわからず振り向くと、森の木と木の間にまた狼がおり、こちらを見ていた。
「ふざけんなよこんちくしょおぉがぁあああああ!」
俺は一目散に駆け出した。肩ではシェルナが笑い転げていた。ムカつく!
「私の力で鑑定スキル入れといたから、あれ見てみたら?」
「え?……まじかよ」
シェルナが後ろを指さしながら呟いた。振り向くとさっきの狼が一定距離で追いかけてくるのが見えた。どうやら俺が疲れてから攻撃しようとしているようだ。横目で鑑定を行うと
名前 グレーターウルフ
レベル32
スキル 気配察知、嗅覚
体力500 魔力320 攻撃390 防御200 素早さ600 運200
やっべぇよ勝てる要素がないよ、ここで終わりかよ、あんな啖呵を切っといて恥ずかしっ!
そうこう考えたいると、肩にいるシェルナが助言をくれた。
「私の死魔法なら防御無視で一撃で倒せるわよ?」
天の声きたぁー!!さすが死神様、シェルナ様たよりになるぅぅうー!
「それで方法は」
「今の八雲のレベルだと、触れて死ねって言えばいいわよ」
「うそだろぉおおー!噛まれろってか、噛まれないといけないのかぁああ!」
嫌だぁああー!痛いのは、でも死ぬのはもっと嫌だわ。はぁ~しゃあない我慢するしかないか、といろいろ葛藤して八雲は覚悟を決めて、今度はグレーターウルフに向けて走り出した。
グレーターウルフもまさかこちらに来るとは思わず立ち止まってしまったが、すぐさま八雲にさっきよりスピードを上げて突っ込み、おもいっきり喉元に噛みつこうとしたが、間に腕を挟まれたので腕を噛み、噛み千切ろうと顎に力を入れる前に、
「死ね」
と八雲が呟くと、グレーターウルフは一瞬びくりと体を震わせたのち、力なく地面に落下した。
「勝ったのか?」
俺はなんも実感もなくグレーターウルフの死体を見下ろした。
ステータスを確認するとレベルが23に上がっていたので倒したことがわかった。
「最初にしては上出来ね、私ならもっとうまくできたけど」
シェルナが自慢げに語っているのがイラッとしたので、手で握ると尋問を始めた。
「おいなんでここに転移した」
「離しなさいよ!痛いからふんぬぅううう、」
シェルナがなんとか逃げたそうとするが絶対逃がさない。
「質問に答えろ、そしたら離してやる」
「むぅううー……ここがレベル上げにちょうどいい地域だから」
「いきなりレベル30に勝てるかぁあああ!」
「勝ったからいいでしょ?」
「下手したら死んでるわ」
それから俺とシェルナのくだらない言い争いは続き、終わったのは夕方になってからだった。
「もうするなよ?」
「わかったから、早く町に行きましょう、早くしないと門が閉められるは!」
「やっべ、ギリギリじゃないか」
俺とシェルナは全速力で大草原にある商業都市サコラに走り出した。