新たな仲間は鬼姫
いやー時間かかりました。
申し訳ない。
俺とマリナは早速鬼の女性をバレずに盗むための行動を開始した。
でもやることは至ってシンプルなことだ。まず俺が有り金分オークションで粘っている間に、ライブラの能力で存在感を極限まで薄めて鬼女に近づいたあと、もう一度ライブラの能力、『同一存在複製』で偽物を作ったあと、俺のところまで戻ってきたら、ここを立ち去る。
ホントなら有り金だけで手に入れたいが、周りを見る限り全員が鬼女を欲しいらしい。そんなに珍しいのかねぇ~。
そして奴隷のオークションが始まった。順調に進み、とうとう彼女の出番が回ってきた。
「皆様お待たせしました。今回の目玉商品、鬼人の姫及び巫女姫を持つ物です。皆様のなかにはなぜこのような方がここにいるのかわからないでしょう。実はこの鬼人、魔力が異様に低く、初級魔法すら唱えられないという欠陥品なのです」
その言葉に会場がざわめき出した。それもそうだ、巫女姫といえば魔法職内でもかなりの高位職業、その者が魔力がなく初級魔法すら使えないとなると、欠陥品どころか不良品である。これはもしかすると、
「さぁ物好きのかたはどうぞお好きに、それでは銀貨一枚から始めます」
すると案の定手を挙げる者は皆無だった。誰もが期待外れだと言いたげな目線を向けていた。だがら俺は、
「銀貨二枚」
嫌に静かになった会場で綺麗に聞こえた。それに追従する者もいなかったので、俺はシェルナの既望通り彼女を手にいれた。
……なんか余計に考えなくてよかったようだ。もしかしたら彼女の美貌目当てに何人か競ってくると思ったがどうやら杞憂のようだった。
鬼女が合流すると俺達はここを出ることにした。いらないことが起きる前に。
3人でフードを目深く被ると、闇夜に紛れつつ宿に戻る事にした。
(こんなにあっさり行くなんて、裏があるんじゃないか考えたくなるな。宿に戻るまで索敵しながら進むか)
警戒しながらやって来たので宿にくるまでに少し時間が掛かった。俺達は各自で部屋に戻らず、俺の部屋に全員集まった。
「さてと、先に自己紹介しとくか。俺はヤクモ・オボロ、異世界人だ。今君の主人は俺のようだよろしく」
「私はマリナ、ヤクモ君のパートナーよ。よろしくね」
握手をして貰ったあと彼女が自己紹介してくれた。
「…………アシュラ・ミカド。短い時間よろしくお願いいたします」
…………短い時間?どうゆうことだろう。
「短い時間とはどういうことだ?まるですぐに死ぬみたく言っているみたいだ」
「…………?違うのですか、こんな弱者、役に立つ事なんて実験材料くらいしか思い付きません。…………あと魔物からの盾代わりとか」
「しないしないしない!そんなことしないから。そんなことしたら俺が怒られると言うよりはどやされる。…………確かに君を買ったが、俺とマリナが率先して買ったわけではない」
「…………?では誰が私を買うようにいったのですか?見たところ、あなた方2人しか見えませんが」
アシュラが部屋をキョロキョロしているが、見つかるわけがない。だって、
「そんなに探してもいないぞ?だって君を買いたいといったのはこいつなんだから」
そういうと俺は胸ポケットから首根っこをつかみシェルナを持ち上げてアシュラの我前に突き付けた。
「…………妖精……いや精霊に近い?……あの主様、この方は誰なのですか?」
俺はシェルナの事を知っている分アシュラに話した。勿論まだ女神だということは伏せてである。
「…………それでなぜ私だったのですか?他にも優秀そうな人はいたはずですが」
「しらん!そういうことは直接本……神?……本人?に聞きなさい。……おらっさっさと起きて俺達に説明しろ」
「うにゃむにゃ、もうたへられなえ」
揺すったにも関わらずシェルナは爆睡していた。よだれを垂らして。
「くぅー……くぅー…むにゃぬにゃ」
よくもまぁ胸ポケットで寝れる。かなり揺れるはずなのに。
…………っと感心している場合ではない、というかよく寝れているものだ、こいつのお願いで俺達は起きている状態なのに。
「おいっ、さっさと説明しやがれ!」
「むにゃああああああああああああっ!いたいにゃああああああああああ!」
俺は寝ているシェルナのこめかみにを指で挟んで、アイアンクロー指バージョンをやりだした。耐えられなかったのかすぐさまシェルナが飛び起きて、暴れだした。涙目で。
「離せぇー!潰れるぅううううう!つぶれちゃうよー!」
「なら説明するか。あともう少しやったら解放してやる」
「説明するから!それとなんで延長ぉ?!」
「寝ていた罰」
「うっぎゃああああああああっ!」
一頻りやったあとシェルナを解放すると、シェルナはふらふら~と床に降り立ち、突っ伏した。どうやらかなり堪えたようだ。
しばらくして回復したようで立ち上がり、俺の肩に飛んできて座った。
「初めまして、私があなたを買うように言ったシェルナよ。とりあえずよろしく」
「あの……私は」
「アシュラ・ミカドちゃんね。よろしく。とりあえずなんで名前知っているかというと心を読んだからだよ。ちゃんとスキルだから、疑わないでね?」
「あ……うあ……え?なん……えあ…………わかりました」
シェルナがバカをやった。アシュラの質問を聞く前に答えて、猶無を言わせなかったので、かなり困惑している。しまいには怯え出している。
「シェルナやりすぎ」
「あいてっ」
コツンと拳骨を落とした。こんなに怯えては今後に支障をきたしてしまうだろうが。
「ごめんなちゃーい」
誰も話していないのにいきなり謝り出したので、アシュラがまだ怯えた。だがら心を読むなといっているのに、慣れていないとただの独り言だぞ。たくっ。俺は深々とため息をはいた。
「あ……あの」
「どうしたアシュラ」
アシュラがおずおずといった感じで聞いてきた。
「その御方はもしかして……精霊なのですか?それでしたらいっしょにいるあなた方……あなた方様は大精霊なのでしょうか」
「………………ちゃんと待っててね。……マリナどういうことだ。地方によっては神は精霊って呼ばれているのか」
俺はアシュラに聞こえないように小声で話し出した。
「そんなわけないじゃない。精霊って言うのは確か、森羅万象を司り、神を助ける存在……だったはず。大精霊って確か精霊の中での最上位、王様みたいなものだったはずよ?うろ覚えだけど」
俺はこれに便乗してもいいと思い出した。シェルナを大精霊に添えればなにかと上手く行きそうだと思ったからだ。
「いやよ。絶対にいや。そんなことやらないから」
シェルナが反対してきた。心を読んで。
「だがなシェルナ、実際精霊ならなんとかなるはずだ」
だってここは剣と魔法のファンタジーなんだから。精霊を目立つように連れてあるいても、珍しいだけで終わる可能性があった。
「それは多分ない」
「どうしてだ?」
マリナが反対してきた。
「ヤクモ君、今まで人に会ってきたなかで1人でも精霊を連れている、もしくは会ったことがあるって人いた?」
「………………いた可能性はなきにしもあらずです」
「ないだよ!1人もいなかったが正解だよ!精霊って言うのはまず人の前に現れないし、ましてや人と契約なんて絶対にいないから!シェルナっちを精霊として出した方が悪目立ちしちゃうよ!」
「わっ、わかったわかった。ならこの案は無しで。でもだとするとどうする?」
「あっ……あの、そろそろよろしいですか?」
「「あっ」」
すっかりアシュラの事を忘れて話し込んでいてしまった。どうやら不安になったらしくアシュラが声をかけてきた。
「ごめんごめん、えっと、シェルナが精霊で俺達が大精霊かどうかだよね、その答えは違うだよ」
「でしたらその御方は」
「う~ん何て言えばいいのか……シェルナ話してもいい?」
「いいわよ」
「サンキュー」
シェルナから了承を得たので、俺はシェルナが死の女神であること、俺が使徒でマリナが眷族であること、大迷宮を回って魂を集めることを話した。
終始呆然と聞いていたアシュラが、おずおずといった感じで聞いてきた。
「あの、つまり私はそれを手伝うために買われたのですか?」
「それがなんとも言えなくて……ほんとは買う気なんてなかったんだが、シェルナがなにか君に引かれてね。あっ恋愛じゃなくて。その、シェルナにお願いされてね。それで買ったわけ」
「…………はっ……はぁ~」
アシュラはわからないといった感じで返事をした。
…………実際俺達もなんでかわかんないんだけどな!言い出しっぺのシェルナがわからないんじゃどうしようもない。
「まぁそういうわけだが、一応戦力として期待する。改めてこれからよろしく」
「よろしくね~」
「お願いするわ」
「よっ、よろしくお願いいたします!」
こうして俺達に鬼の姫であるアシュラ・ミカドが仲間になった。
新キャラアシュラ、よろしく!




