どこにいっても勇者…………ふざけんじゃねぇー!!
楽しければ幸いです。
老人のお陰で俺達は目立ちながら、なんとか入場することができた。
「いや~なんとかなるもんだな。あんなことして」
「……ヤバいことだって自覚あったんだ」
失礼な、それくらいの感情はあるわ。
「そんなことより早く宿に行きましょ。ふかふかのベッドにダイブしたいの」
シェルナがだらけきった状態で口を挟んできた。
俺は苦笑しながら、マリナに近くの宿に案内してもらいながら、大迷宮について聞いてみた。
「マリナ、大迷宮の名前ってなんだ?それとどんな魔物が出るのとか詳しく教えてくれ」
「う~ん、宿にもうすぐで着くから名前だけ教えておくね。この地の王国ラルスにある大迷宮、名前を『マザーグラント』」
「『マザーグラント』」
俺は噛み締めるようにその名呟いた。
「確かここに……あっ……あった。あれが前にお世話になっていた宿よ」
「おっやっと着いた……か……」
「うん……着い……た……の?……?」
シェルナ、これは幻ではないよ。だからそんなに目を擦らないの。
俺達の目の前にあるのは、今にも傾いて倒れそうな、二階建ての建物だった。壁には亀裂が走り、窓は木で出来ているようだが、どの窓も半壊か、よくて穴が空いていた。
「マリナさんや、これはどういうことだ。なんか抗争でもあったのか?もしくは冒険者が暴れたのか」
「? 昔から変わってないわよ?確かに裏組織の抗争とか冒険者の争いとかはよく起きていたけど。それにしても懐かしいわね」
マリナは懐かしそうに目を細め、過去を思い出しているようだ。
だが俺とシェルナはそれどころではなかった。というか目の前の建物に驚きすぎて思考が停止しただけなのだが。
(そうか、これが普通なのか。サコラの宿は立派過ぎたんだな)
(現実逃避しないでヤクモ!私は嫌よ、ここに泊まるの。別のとこ探しましょ!)
そうは言っても俺はこの国のことを何も知らない、シェルナも同じく、マリナに頼んで変えてもらっても……なぜだろう、同じもしくはそれに準ずる所に行きそうな気配なのだが。
俺とシェルナがそうこう考えていると、マリナがいつの間にか居なくなっており、探していると宿から出てきた。
…………宿から………出てきたのだ。手に鍵を持って。
「チェックインしてきたよ。はいこれ鍵」
「…………あぁありがとう」
「…………ありがとう」
「どういたしまして、て言うかシェルナっち泣いてるし、そんなに嬉しかったの」
「………………うん嬉しいよ」
もうシェルナが可愛そうになってきた。マリナからは悪意やいたずら心が感じられないので言うに言えないのだろう。当然俺もだが。
そうとはわからないマリナ、俺の手を引き宿に入っていった。
入ると中には……ヤバい人達がいた。見るからに合法な仕事をしていない人達が。その全員がこちらを睨んでいるので、怖い。
横のマリナはそよ風の如く視線を受け流していた。慣れているのだろう。
「さぁこっちに部屋があるんだよ」
そういうとずんずん奥に歩いていく。テーブルの脇を横切りながら。
俺はテンプレが起きないことを願いながら着いていった。
……………………テンプレは起きなかった。どうやら冒険者を引退していたとはいえマリナのことはあの手の人達は誰もが知っているようで、手をだすなんてことは起きないようだ。同時にその連れにも。何でも昔、そんなバカが三個集落分いたようで、当時のマリナによって一個都市分の人が叩きのめされたようだ。……人数の多さの違いは、巻き込まれの延長のようなものらしい。
ちなみにこの情報は、宿の出入口付近にいたおっちゃん達が話していたのを、シェルナに聞かせにいって仕入れたのだ。……まぁその後シェルナに小言を言われたが。
「あぁ~やっと野宿から解放される~」
「ホントね~」
俺達はマリナが取ってくれた部屋に入り、ベッドに転がっていた。お世辞にもいいベッドとは言えないボスボスと固いベッドだが、昨日までよりはましなので俺は何も言わない。シェルナは不満そうにしているが気を効かせているのか我慢しているのかわからんが、何も言わない。
「それはそうと、今日は大迷宮に行かないで、明日……じゃなくて3日後に探索開始ってことで」
「…………そうね、それでいいわ」
「マリナに伝えてくるわ」
俺は立ち上がると、部屋を出て隣のマリナの部屋に向かった。
コンコン、
「マリナー、今いいか?」
「……いいわよー、鍵開いているから入ってきて」
許可を貰った俺は部屋に入った。
中ではマリナもベッドに寝っ転がっていた。下着姿で。
「そぉおおいっ!」
俺はドアが壊れる勢いで閉めた。
「何やってんだ!勘違いするぞ、勘違いしちゃいますよ童貞はぁああー!」
「いいじゃないの、ちょっとした戯れよ。もう大丈夫だから入ってきて」
俺は溜め息を付きながらもう一度ドアを開けると、部屋のなかは……変わっていなかった。
「一体なにがしたいんだぁあああああああ!」
「…………うふっ、可愛い」
マリナは悪びれる様子もなく微笑んでいた。
俺はもう一度溜め息を付き、諦めてマリナの隣に座った。
「やんエッチ」
「……伝えたいことあるからいいか?」
「いいよ~」
マリナは足をばたつかせて耳を傾けてきたので、俺は先程シェルナとの話し合いの内容伝えた。
「…………確かにそうね、日数も打倒だと思うわ。私からは提案することはないわ」
それからマリナにラルスにある要所や店の事を聞き、少したったら3人で出掛けることにした。
◇
「う~ん、八雲の気配が近づいてきたわね」
「…………」
俺こと荒太と美晴は城の廊下を歩いていると、美晴が親友との距離を受信し、分かり出した事に呆れた。以前から何度か受信等してはいたが、とうとう距離まで計れるようになってきたことに俺はもう何も言えなくなった。
美晴はさも当然のように頷いているが、そんなことが出来ない身としては…………一瞬、ステータスにあった真の勇者の力かな?と思ったが、多分違うだろう。
「…………近づいたってことは隣の王国、ラルスにかな?それとも城壁都市か」
「ラルスね!近づいたといってもまだ遠いから」
…………なんとなくあっている気がして怖い。当たっていたら制度が精密すぎてヤバい。
「そんなレーダー持っているなら迎えにいけばいいのに。というか俺と八雲はもう美晴から逃げ隠れすることはできなくなったと言うことか」
「?」
俺の小さく重たい呟きに聞こえていなかった美晴が、不思議そうにこちらを覗き込んできた。
「何でもない」
「そう……それよりも八雲、あとどれくらいで来るかしら。楽しみだわ」
美晴はわくわくしながら歩いていった。
俺はあと1ヶ月で八雲と合流出来るなと思った。なぜなら美晴が上機嫌だからだ。この状態の美晴は、未來に起きることが知っているかのような言動と陽気さを見せ続ける、そしてだいたい1ヶ月後にそれが起きるので、俺と八雲の間で『美晴のハッピーエンドタイム』と読んでいる。ちなみに美晴にはこの名前の事を教えていない。知られたら絶対何かが降り掛かってくるからだ。
「…………」
「うぐっ!な、なんだよ」
「……何でも……な~い」
………………バレてない、バレてないハズなんだぁー。動揺するな、したら勘づかれる。
「それよりも、八雲、地の王国で一体何するんだろうな、図書室の本には書いていなかったし……解るとしたら今取り寄せている中にあればいいけどな」
「そうね、でも無理だと思うわ。図書室の本みたく、不自然に向かって抜けていると思うし」
まさしくそうなのだ、今まで読んできた本には、様々に記述されているのだが、死の女神及び大迷宮最奥の記述に関して、不自然に抜けてあったり、誤魔化し、たくさんの逸話として残ってあるので、本当の事がわからなかったのだ。
「こちらとしては早く八雲と合流しておきたいけど、その前にやることやっておくわよ」
「あぁ、幸い手段も見つけた。1ヶ月有れば楽勝さ」
「さっすが荒太、だったら感ずかれず、秘密裏に行いましょ」
俺は頷き、美晴と共に廊下を歩いていった。
◇
「ひっ!な、なんだこの異様な寒気は、い、いやこれはあいつだ、たぶん…いや絶対そうだ、美晴が『ハッピーエンドタイム』発動しやがった。急がねぇと、急がねぇとぉおおお!」
「「…………はぁ~、毎度毎度なにしてんのよ」」
俺が美晴からの悪寒をまたしても受けていると、またしてもシェルナとマリナに引かれた。理不尽だ、俺はただ自分の命の危機に敏感なだけなのに。
「コホン!それよりマリナ、食料は大迷宮探索の初日に買い込んでいこうと思うから、今日は」
「いえ、今日は先に食料を整えるわよ」
「なぜだ?」
俺はマリナの反論に首を傾げた。
「確かに受け取るのは当日でいいけど、その日にいきなりいって買ったとしても、そんなに大量には買わせて貰えないわ」
「…………なるほど、確かにそうか、だとするとどうするんだ?」
「今から言って、必要な分できる範囲で溜めておいて貰うのよ。そうすれば、当日買うよりは多目に買えるはずよ」
なるほどあったまいぃ~。俺はマリナに賛成し、先に雑貨屋に向かうことにした。しばらくして雑貨屋に着いた俺達は、雑貨屋の店主に状況を説明、それで交渉しながら3日後に向けて食料の備蓄をしてもらうことになった。
雑貨屋での用事を終えた俺達は、次に武器屋に向かうことにした。
「ここの武器屋はどんな感じなんだ?良いものは売っているか?」
「う~ん私がいた頃はまぁまぁって感じだったはずよ。なんならスラムの裏市の方が強力なやつ置いている可能性が大きいくらい」
裏市に負けてていいのかと思ったが、昔より裏の方が表にある物より質がいいらしいからしごく当然と言うわけなのかな?
そうこう考えていると武器屋近づいてきたが、なにやら人だかりが形成されていた。
「……嫌な予感」
「……ホントね…………すみません、一体どうしたんですか?」
「それが…………かくかくしかじかで」
「なるほどそんなことが」
「「わかったの!!?」」
なに?定番を知らないのか、おっちゃんが、かくかくしかじかと言ったら大体説明されて、解るものなのに。なに?そんな言葉だけでは通じないだと?仕方ない、俺が言ってやるから聞きなさい。
「おっちゃんが言うには、どうやら武器屋に強盗が押し入ったらしいんだけど、たまたまそこに居合わせた勇者……様に強盗が取り押さえられ、今は勇者様に握手兼サイン会が行われているんだと…………って勇者様!!?」
「「遅いわ気付くの!!」」
あの時の追ってきたやつらではないと思うが、勇者には会わない方がいいんだ。今回は武器屋諦めて他いくしかないか。
「マリナ防具屋に向かおう。さっさとここから離れよう」
「りょ~かい。私も同意見だし早く移動しましょ。たしか……こっちのはずよ」
俺はマリナに着いていき武器屋を後にした。だがここで考えておくべきだったんだ。なぜ勇者は武器屋にいたのか、他に仲間はいないのか、いたらどこにいるのか、なぜ勇者の顔を確認しなかったのか、他にも勇者が来ていないのか、たくさん考えることがあったのだが、この時俺の中には早くこの場から離れないとということしか考えていなかった。
◇
「はぁ~予定が台無しだな」
「そうね、まさに狙ったかのように居たわね」
「くそ勇者共が、私達の邪魔しやがって」
順に俺、マリナ、シェルナとそれぞれ先程起きたことについて愚痴った。
何が起きたかと言うと、武器屋を後にした俺達は防具屋、雑貨屋と向かうはずだったのだが、そちらに向かうと、待ち伏せたかのように勇者及びその仲間がおり、それにともない野次馬も多数存在と、やりたいことがなにもできなかっと言うわけなのだ。
「この分だと装飾屋も入そうだね。どうしたものか」
突然の事態に悩み出すマリナ、確かにこのままでは準備どころではない。ただでさえ時間がないのだ、あんなやつらのせいで立ち往生なんてしたくないのだ。
ちなみにあんなやつらとは、勇者共であり、ここにいた勇者チームのメンバーはインテリ系のやつらだ。クラスでは勉学がかなりすごいやつら、まぁ俺としては美晴に負け続ける敗北者みたいにしか思っていなかったが。どうやらチート能力を手にして、これで美晴を追い抜けると息巻いているように見えた。
…………ぶっちゃけめんどくせぇ状態に見えた。かかわり合いたくない。勇者じゃなくてもそう思えた。
「こうなったら行くしかないか、ヤクモ君、表を止めて裏にいこう」
「…………確かにそれが打倒ですかね。まぁお任せしますよ」
「なら決まり、先に宿戻ってて、ちょっと聞いてくることあるから、そんじゃ」
マリナは返事も気かづ、土煙を巻き上げながら走っていった。
「…………戻るか」
俺は宿に戻る事にした。マリナからいい情報が来るのを待つとしますか。
そして夕方、聞き込みから戻ってきたマリナから、俺はちょっと反応に困る提案をされた。
「ヤクモ君、明日の夜、スラムの奥でオークションが行われるらしいんだけど行くよ。シェルナっちにはすでに話通しているから」
どうやら提案ではなく決定事項の通達だったようだ。こうした俺は、初めてのオークションに参加することになった。
次回もよろしくお願いします。
できれば新しい仲間を入れたいです。




