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旅立ち?逃走?どっちにしても勇者はめんどくさい

お盆の17連勤で遅くなりました。

面白かったら幸いです。

ヤクモが荷物をまとめている頃、荒太と美晴は依然と図書館で調べものをしていた。

「ホントによかったのか、美晴?勇者各員に届けられた、緊急速報でのこと、調べた限りではわかった八雲がいる可能性が一番高い場所での魔物の大氾濫、スタンピードが起こったんだぞ?八雲がピンチかもしれないんだから、行かなくてよかったのか?」

俺は文献に目を通しながら、前に座る美晴に問いかけた。実際俺としては、八雲が居なくてはダメだが、助けに行った方がいいと思っていた。

美晴はと言うと、俺と同じく文献に目を通しながら答えてくれた。

「いいのよ。私の勘では八雲はあの商業都市にいるは」

「それなら早く行かないと」

「でも、八雲なら大丈夫よ。きっと。なんだかんだ言って生きていそうだし、今向かったらダメ、それは一番の悪手よ?」

「なん……あぁそっか、八雲は死神の加護持ちだったな」

美晴は文献を閉じ、脇に置くと、話し出した。

「そっ、私達が行ってもあっちに届く連絡は、『勇者が救援に向かう』よ。それだけじゃ八雲に対しては会いたくない連中なわけ。それに、確か獣国オタク連中がいたから、そっちが先に着いちゃうから、どのみち八雲はちょ逃げるわ。だから行くにしろ、行かないにしろ意味がないわけ」

「なるへそ~」

確かそうだ。八雲は勇者に絶対会いたかない。それなのに俺達『勇者』が向かっては逆効果なわけだ。

「あと、商業都市でのスタンピードは終わったらしいわよ?」

「…………なんでそんなこと知ってんねん。どこから届くんねん。その前にスタンピード発生届いたの昨日じゃなかったか!」

「それは……勘?テレパシー?ちょうほ………親切な人が手紙で教えてくれた?」

「今諜報って言いかけなかったか?いつの間そんなやつらを……確認だが俺の周りには置いてないよな」

「…………」

美晴が無言で視線を反らした。

ヤバい八雲、俺達美晴に監視されてるぞ。このままじゃ監禁される?!

「そんなことはしません…………今のところは」

「!!」

今最後になにか聞こえた!……ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい!!

八雲、早く来てくれぇ!急いで『第38回美晴会議』を行わないと!俺達の未来が!未来がぁーー!!

「ふふっ、ふふふふふふふふぅ~」

「はっ、はは、はははは」

片や満面の笑みで笑い、片やひきつり顔と笑みが絶妙に合わさった顔で笑っていた。

どちらも八雲のことを考えているのだが、考えている内容は全然違った。

「悪寒が!いままで感じたことのないような悪寒が!…………美晴か?美晴なのか!また美晴なのか!荒太、待っていてくれというより、押さえていてくれ!なんとか頑張って早めに行くから」

「「また電波ては受信している。怖いわー」」

俺が荒太の救援信号と美晴専用悪寒信号を受信していると、後ろの2人から怖がられた。

そんな俺達は商業都市サコラから地の王国に向かう街道を馬に乗りながら、ではなく小型の恐竜のような姿をした魔物、ディノソルに跨がりながら進んでいた。

「それにしてもこいつ凄いな。朝からぶっ続けで走り続けているのに休みがいらないなんて」

「まぁ、それがディノソルの特徴だから」

俺の疑問に、隣を並走するマリナが近づいてきて答えてくれた。

「ディノソルは速さは馬よりほんの少しだけ速いだけだけど、持久力が半端ない。というよりほぼ無尽蔵。ディノソルの魔力がつきない限りずっと走っていられる」

「欠点がないように思えるな、まさに完璧みたいな?」

「それがね~、そんでもないんだよ」

マリナは苦笑しながら答えた。

「ディノソルの欠点は止まれないってことなんだよ」

「…………は?」

止まれない?どゆこと?

「ディノソルが止まるのはお腹が空いたときか、持久力が無くなったとき、転んだときだけなんだよね~。だから止まりたいときは自力で何とかするしかない訳よ」

「欠点がデカイ。マリナは普段はどうしてるんだよ」

「ディノソルを使わない」

「だったら今回も使わないか馬にすればよかっじゃないか!」

なんでやねん!どうするつもりだったんだよ!普段使わないのに今回は使ったんだよ!その前に俺に相談してくれよ!

「相談する前にヤクモがこれにするって言ったんじゃない」

「…………」

俺の肩に洗濯物のように寝っ転がっているシェルナが、正論を呟いたのでなにも言えなかった。

そうなのだ、マリナが馬かディノソルが言いか聞きに来たとき、俺はなにも説明を聞かずに答えていたのだ。

つまり自業自得と言う訳だ。仕方ない。

「でも~仕方なかったんじゃない?だって、」

「あぁ、まさか勇者があんな早くやって来るなんてな、思いもしなかったよ」

俺は溜め息を付きながら、今朝のことを思い出していた。

「うぅ~頭痛い」

「飲みすぎたよ~……うぇっ」

「………………おろろっ」

商業都市サコラを出発するため門にやってきた俺達だったが、三者三様で二日酔い中だった。

祝勝会兼旅立ち送別会を真夜中まで行い、もう少しで空が明るくなる手前の暗い時間帯に終わったので、アルコールが抜けていないのだ。

「お前らそんなでおろろろらろ、だいしょぶぅろろろろろらなのかろろろろろろ」

「気を付けていってくださいね」

見送りに来たギルマス、ガナサルも二日酔いなのだが、副ギルマスのテレナ大丈夫なようだ。

おかしいなぁー、テレナさん、ここにいる誰よりも飲んでいたような、なんでこんな平気そうなんだ?謎だ、これが副ギルマスの力。

俺がテレナさんをじっと見ていると、テレナさんがこちらを向き、ニコッと微笑んできた。

「「…………」」

お二人さんや、そんな見つめられるとあれだ、テレる!よりは寒気が走ります!

「うっす、それじゃいって……?なんだあれ?」

俺達はサコラを背に歩き出そうとしたとき、獣国方面の街道を土煙をあげながら向かってくる馬車が見えた。

「…………ヤバいわね。ヤクモ、マリナ急いでいきましょ」

「いきなりどうしたシェルナ?」

焦りだしたシェルナに困惑しながら質問した。

シェルナは険しい顔をしながら答えた。

「あの馬車に……勇者が乗っているわ」

「「!!?!」」

シェルナの言葉に俺とマリナは驚き、すぐさま向かうことにした。が、

「……ちょっと待ってヤクモ君!」

マリナがいきなり引き留めてきた。

「どうしたマリナ、あまり時間はとれないぞ」

こうして入る間にも馬車は刻一刻と近づいてきていた。

「馬とディノソル、どっちがいい?あっ、ディノソルって言うのは」

「ディノソルでお願い」

「……説明は」

「そんなものいらん!」

俺の中には未知の生物に乗る光景が浮かんでいたので、説明なんて要らないのだ。

そんな妄想に入り込んでいると、マリナは頷き、今度はガナサルに向き直ると、必死に頼み込んだ。

「ガナサルさん、近場に入るディノソルを二頭買うわ。急ぎで」

「あ……ああ、わかった」

ガナサルは戸惑いつつ城門を潜っていった。

その間に俺達はいまだ猛スピードで迫ってくる馬車に対して、どう対応するかそれぞれで考え出した。

(さてと、どうしたものか。シェルナの言うとおり勇者が来るとして、誰が来たのか?……方角は獣国……こんな早い時期に獣国に向かう勇者……あっ、オタク連中か)

(どうしようかな。私達はなるべく勇者に会いたくないわけだし。でもヤクモ君の友達かもしれないけど……この感じは違うかな?)

(まったくなんて間の悪い。あの姉達が何かしたのかってタイミングね。……それにヤクモの友達って言う線は消えたっぼいわね)

(う~ん、どうしてこの2人はこんなにも勇者様に会いたくないなかしら?……でもマリナちゃんはたぶんヤクモ君の意見で会いたくないから、実際勇者様に本気で会いたくないのはヤクモ君なのよね?過去に何かあったのかしら?)

四者四様に考えていると、城門からガナサルが戻ってきた。手には縄を掴んでおり、その先には小型の恐竜のような姿をした魔物が連れられていた。

「こいつがディノソルか?」

「そっ、欠点が1つだけある魔物よ」

俺は後で欠点を聞こうと思い、マリナにすぐさま乗り方をレクチャーしてもらった。

ディノソルには危なく乗れ、後は勘で乗っていくことにしたので、出発することにした。

「それじゃホントにお別れだ。いつ頃戻ってくるかわからないが、また会おう」

「お世話になりました」

「気いつけろよお前ら」

「2人とも元気で」

別れを行った後、俺達はディノソルで駆けて地の王国に向かっていった。

そして回想は終了した。お疲れしたー。

ヤクモ達が駆けて行った後、少しして馬車が到着した。

「とぉーーーーーーうっ!!」

シュタッ!と変な着地音を付けながら馬車から人が飛び出した。着地後変なポーズを決めて。

それに続くように同じような着地音とポーズ決めていき、合計6人の人が飛び出した。

「「「「「「さぁ!我らが勇者が来たからにはもう大丈夫だ!安心してくれ、かかってこい魔物共!」」」」」」

ガナサルとテレナは思った、うぜぇ、なんでこんなに息ピッタリなんだよキモッ、と。

だが2人は先程の『勇者』と言う発言に加え、彼等が着ている装備に目を向けた。

色合いがバラバラ、ではなく全員が銀よりかわ白銀に近い色の鎧、腰に下げた剣も鍔と剣帯にかなりの装飾品が取り付けられているので、かなりの値打ちだ。

そして一番目に付くのは髪、全員がなぜか金髪なのだ。しかも日に照らされてピカピカに光っていて、気持ち悪い。

体型が痩せていればというより、普通ならよかったのだが、6人中4人がデブ、残り2人が痩せている、のではなく痩せすぎていてガリガリなのだ。

ガナサルとテレナは勇気を決して話しかけた。

「あの~、勇者様?ですか?」

「あぁその通りだ!それよりも魔物共はどうした?まだやって来ていないのか?」

「それなら致し方ない。宿に泊まらせてもらおう」

「すっ、すっすすすすぐに向かいたいです」

「早く看板娘をてご……むほんっ!安心させたいからな!」

「そうでござるね!」

「…………」

「……あの~その事なのですが、実はスタンピードは2日前に解決してしまったのです」

「「「「「「…………」」」」」」

…………6人の勇者が固まっている。人形のようだ。

勇者達は口を大きく開けたまま、放心してしまったようだ。ショックのあまり。

「そんなバカな」

「我々以外の主人公?」

「そんなものいるはずがない!」

「お、おおおおお落ち着けおおお前ら」

「貴殿がまず落ち着くでごさる!」

「…………はぁ~」

ルンルン6人中5人が慌てているのだが、たった1人のおデブが当然のような顔をしていた。

ガナサルとテレナは勇者達が喋って入る間に『念話』を使い、話してもいい事を決めたのち勇者達の話し合いが終わるのを待った。が、一向に終わる気配がなかった。

すると、勇者の1人が近づいてきた。それは、先程溜め息を付いた者だった。

「すみません。こんなことになってしまって」

「いえそんなことは」

「大変なときに到着したようですかね。あっ、申し遅れました、俺の名前は勝元大樹、一応勇者です。そしてあいつらが、上本、金屋、羽火、炉六、泡波って言います」

勝元は未だ口論し続けている5人を指差しながら教えてくれた。

ちなみに、上本はデブ、金屋もデブ、羽火はガリ、炉六もガリ、泡波はデブと言う感じだ。

「ところで、スタンピードを解決した人っていますか?」

勝元は後ろの5人に聞こえないように小声で聞いてきた。

「いえ、もう出発してしまいました。なにやら急ぐことがあるようで」

「ふ~んそうですか。わかりました。ついでに行き先とかは……」

「すみません、教えてくれなかったもので」

「了解しました。それではあいつらを落ち着かせた後、入ってもよろしいですか」

「はい、わかりました。よろしくお願いします」

勝元は軽く会釈した後、戻っていった。

戻った勝元は5人を宥めだした。落ち着く後少し会話し後また何かを話し出した。どうやら先程の会話の内容を話しているようだ。

「……だ……もうい……おう…………めろ」

勝元がこれからどうするか提案したようだ。5人は少し考えた後、頷いていたので、どうやら了承したようだ。

すると、振り向いた勝元がガナサルとテレナに話しかけた。

「すみませんお二人さん、どうやら解決した人物を探したいようなので、これから出発しようと思います!」

「「…………はぁっ!?」」

2人は相手が勇者であることを忘れ、衝撃発言をあまり口を大きく開けて叫んでしまった。

そんな2人を無視しながら勝元は続けた。

「遠くにかすかにですが土煙が見えます。たぶん旅人なんだと思います。まず間の始めにその方に聞きに行こうかと思います」

「!ちょ、ちょっとお待ちを!」

「いきなり旅人が、勇者様をお見かけしてしまっては驚いてしまいます!その旅人は自分達が連れて参りますので、どうか都市でお休みくださいませ」

ガナサルとテレナはなんとしても勇者達をとどませようと必死に語った。一応保険を賭けているとはいえ安心できなかったからだ。

だが、勇者達はその発言で確信めいた顔になり、ニヤニヤと意地悪そうに笑いだした。

「それはありがたいのだが、あなた方より我々が向かった方が速いので、その提案には遠慮させてもらうよ。それではありがとう」

そういうと勇者達6人馬車に乗り込むと、馬に癒魔法と強化の魔法を掛けると、勢いよく走り出した。

土煙が見える方向へ。八雲達が走り出した地の王国の街道……ではなく勇者達がやって来た獣国の方向へ。

「「はぁ~~~っ、よかったぁ~~~!」」

勇者達が小さく遠くに見える所になって、ガナサルとテレナは緊張を解きほぐすために深く息を吐いた。

「なんとか誤魔化すことができたな」

「そうですね。バレないかヒヤヒヤしましたよ」

なぜ勝元達勇者が、八雲達とは別方向に行ったのかと言うと、テレナが光魔法と水魔法を複合させ、鏡と言うよりは映写機のような事を行ったからだ。

なので勝元達が追っていった土煙はある意味本物であり、偽物なのだった。

「これで少しは稼げるかな?」

「それだといいのですが」

ガナサルとテレナは八雲達を心配しつつ、都市に戻っていった。

「とまぁこんなことがあったわけよ。ガナサルとテレナに感謝ね。次にあったらお礼言っておきなさい」

「「は~い」」

ディノソルに揺られながら、俺とマリナは門のところで起きていた騒動の事をシェルナから聞いていた。

ホントに感謝である。ガナサルとテレナが共謀して勇者共を騙してくれなかったら今頃追い付かれていたかもしれない。

「これで時間をどれくらい稼げるかだな」

「でもよくて数日、下手すると1日で追い付いてくるかも」

「勇者共のせいで旅立ちって言うより逃走だな。めんどくせぇことしやがる」

俺の言葉にマリナとシェルナも同意する。

「仕方ない、地の王国に着いたらさっさと大迷宮攻略して、逃げるか」

俺の発言は暗に、「大迷宮の最短攻略目指そうぜ!」と言っているようなことだった

「仕方ないか~、私達が伝説作っちゃう?」

「そうね、急がないとね」

2人の応援を聞き、俺は嬉しかった。

「よしっ!いっちょ頑張りますか!」

「「おぉーー!」」

俺達は意気揚々と地の王国に走っていった。




次は地の王国編かな?

よろしくお願いします。

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