勇者はめんどくせぇ~
大分出せませんでしたが、今日出せます。
「いやぁ~それにしても、あっけないって言えばいいのか、手こずったって言えばいいのかわからない結果だね!こんちくしょ!」
マリナが笑顔で悪態を付きながらこちらにやって来た。
「ホントだな、物語とかだったらベヒモスが、最後まで粘っていろもんだが、そんなに上手くはいかないか」
溜池をつきつつ、俺は俺で少し落胆していた。
「別にいいでしょそんなことは!勝てたんだからよしとしなさい!バカ達が!」
シェルナは俺達の発現にプンプン怒っている。でもどことなく同意感を出していた。
先程まで死闘していた者達と、その場所の雰囲気ではなかった。だが、それでいいと思えるくらいに清々しい気分だったりする。
「それよりシェルナ、回収はしなくていいのか?」
「回収?…………あぁ!忘れてた!」
俺は苦笑しつつ、慌てるシェルナをなだめ、シェルナの魂の欠片を探すことにした。
「うにょにょ~、どこだぁーどこだぁー、…………あった!私の魂を隠していた犯人はお前だ!」
やっぱりこの女神に誰かアニメたくさん見せただろ。プリ◯ュアに◯ナンとか、なんでやねん!
シェルナが指差したのはなんとベヒモスであった。
「どゆことシェルナっち?」
「多分だけど、もともとボスだったベヒモスに、私の魂が吸収、もしくは植え付けられたのかしたのよ。だからダンジョンコアを取り込めたのよ。まぁ欠片と言っても私の魂、変質の末、ダンジョンコアを取り込めるようにベヒモスを進化、または変質させたって訳ね」
なるほど、だからベヒモスは自分を産み出したはずのダンジョンコアを取り込めた訳か。それに条件も良かったわけか。
「どゆことヤクモ?」
「いやな、この迷宮はシェルナの使徒が現れたら出現するわけだろ?それって大分時間かかるだろ?その間に何度も品種改良的に殺して、蘇らせ、また殺して、また蘇らせてを繰り返し行えたから、シェルナの魂に耐えれる奴が作れたって訳だろ?」
もともと初期のベヒモスは耐えることはできないはずだろ。もしこいつが初期ベヒモスなら、大分前にレベルをカンスト、それにおおじて変質、更にレベルを上げているはずだろうからだ。
だがこいつはそうではなかった。レベルは上昇中だったが、何百年も過ぎれば、もっとレベルが上のはずだと思ったからだ。
確かに何らかの原因のせいであのレベルだったのかもしれないが、それにしても低いと思った。
「ふ~ん、そう思えばそうね。なんかその仮説がしっくり来る状態だったもんね!」
「と言うわけだ、シェルナ早く済ませろよ」
「りょーかい」
シェルナは俺にヘロヘロ~と敬礼すると、ベヒモスに触れ、集中しだした。少しすると、詠唱も開始した。
「封監されし魂よ、主のもとへ帰りたまえ、帰路の祝福“輪回魂”」
すると、ベヒモスから光の玉が浮かび上がり、空中で制止後、シェルナの元へふよふよと移動してきた。
目の前まできた玉をシェルナはそっと掌で包むと、優しく胸に仕舞うように取り込んだ。
「………………終わったよ」
魂を取り込んだシェルナは、俺の知ってるシェルナとは違い、少し大人びた雰囲気をおび、声に艶やかな声色が含まれている感じだった。
「…………雰囲気変わってね?」
「シェルナっちなんか少し成長した?」
俺達は疑問を口にした。
「そりゃ魂戻せば成長するわよ。この体って魂を抜かれまくってこうなんだから」
そりゃそっか、だけど俺とシェルナの目的に少し近づいたことにとても嬉しい気持ちが沸いてきた。
「やったわねヤクモ」
「おめでとシェルナ」
俺とシェルナは笑みを浮かべながら喜ぶと、お互いに見つめ合い続けた。
「「…………」」
「……………………あんまっ!」
どうやらマリナから見たら、俺達はラノベで言う桃色空間を作っていたようだ。そんなものは作っていたわけではないのだが。
「よしっ、2人とも戻るか!」
「「はーーい!」」
俺達はガナサル達が待つ町に戻ることにした。
◇
「ヤクモ君達の活躍によりスタンピード鎮静を祝して、乾杯!!」
『かんぱーい!!』
町に戻った俺達は、今現在ギルドにて今回のクエストに参加したメンバー全員での祝勝会を行っていた。
ちなみに、ギルド受付嬢は料理や飲み物を運搬しつつ一緒飲食している。
料理を作っているのは、俺が泊まり、避難時に最後まで逃げず、残っていた女将さんとその看板娘さんが作っていた。
「お前ら飲んでるか」
声に振り向くと、ガナサルが近寄ってきていた。
「えぇ飲んでますよ」
「ギルマスお疲れ~」
俺が答えると、マリナが酔いつつ答えた。
「ははっお疲れさん、……まぁ今回のことはホントにありがとよ。お前達がいなかったらこうしてこいつらと騒ぐことができなかっただろうからな。感謝してもしきれないよ」
ガナサルはギルドを見渡しつつ呟いた。
ギルドのあちこちでは今回のメンバーが肩を組み合い飲んでいたり、熱心に何かを話し合ってていたり、飲み比べで勝負していたり等、がいがいがやがや、騒がしかった。
だが、嫌悪が起こる騒ぎではなく、むしろ喜び、安堵等の嬉しさが滲み出ていた騒がしだからだ。
「たまたまあの迷宮に用事があっただけですから。用事がなかったらあんな無茶なことしませんよ」
俺は手にしたジュースを飲みながら呟いた。
「その偶然に俺らは助けられたんだ。素直にお礼を受け取れ。…………それと、明日ギルドの執務室に来てくれないか。話したいことがある」
「わかった。マリナは?」
「連れてこい。それと今この場で重大発表しとくから。明日の話し合いに混ぜようかと思ったが気が変わった。大々的に発表して、こいつらにもみくちゃにされろ」
「……はぁ~、どう言うことだよ」
俺の質問にガナサルは答えず、スタスタとギルド中央に歩いていくと、話し出した。
そのとき俺は嫌な予感がプンプンすることに悪寒を感じていたのだが、予感は現実となった。
「てめぇら!ここで発表する!今回の一番の功労者、マリナとヤクモにSランクの称号を授与することをここに宣言するぜ!」
ガナサルいきなりのカミングアウトにギルドは、先程の謙遜が嘘のように静まり返り、視線がガナサルから俺とマリナに注がれだした。
「異論のあるやつはいるか!!」
ガナサルが叫ぶと、ギルド内のみんなはお互いに見合い、頷き会うと一斉に立ち上がり、
『意義なーーーーしっ!!!!!!』
叫ぶと一斉に走り込んできた。
「まじかっ……ぐえっ!」
俺は逃げようとすると、マリナに襟首を捕まれ息を詰まらせていると、マリナは思いっきり俺を近づく集団に投げつけた。
「裏切ったなっ!マリナぁああああああああああ!!」
「戦術的退却!」
マリナは俺を囮にして逃げようとしたが、そうは問屋が下ろさなかった。
「逃がさん!」
「ぐへっ!」
逃げようとするマリナを、いつの間にか回り込んでいたガナサルが同じように襟首を掴み、集団に思いっきり投げつけた。
「いってこーい!」
「ギルマスのバカーーー!」
その後、俺とマリナはみんなが潰れるまで揉みくちゃにされた。
マリナはうわ言のようにずっと、「ギルマス潰す、ギルマス潰す」と呟いていた。
◇
翌日、昼近くに起きた俺達は、昨日ガナサルに言われたようにギルドの執務室に向かった。
「う~ん来たか、まぁ座ってくれ。…………うぅ気持ち悪」
ガナサルは二日酔いだった。呆れて隣に立つ副ギルマスーーテレナ、に顔を向けると、
「って!あんたもかよ!しかもあんなの方がやばそうじゃないかよ!」
テレナは今にも吐きそうな青い顔、なのはまだいいほうだ。問題は口だ。何が問題って、すでに口がリスが餌を咥えまくったように膨らみきっているのが問題なのだ。
「吐くなよー、絶対吐くなよー!振りじゃねえぞこれ!」
「……と言いつつ?」
「ガチだボケッ!」
その後、二日酔い2人に癒魔法と回復薬を少しづつ飲ませながら、なんとか話せる状態まで戻した。
「すまんな2人とも、迷惑かけて、早速だが本題に入る前に、受け取れ」
ガナサルは控えていたテレナに何かを出すように指示を出すと、テレナが壁際の棚に近づいていき、小さな箱を手にとると、戻ってきた。開くと中には、ギルドカードが入っていた。
「これは?」
「昨日宣言した通り、お前達をSランクにしたから、ギルドカードを更新するんじゃなく、新しくしたんだよ。あぁこれはもともとギルドで決まっていたことだからな」
それを聞いて俺は安堵した。てっきり俺はガナサルが元からある俺達のギルドカードを回収して、俺達の知らないところで使うなんてことするのかと思ってしまったぜ。
俺とマリナはガナサルに手元のギルドカードを渡して、新しいカードを受け取った。
「…………これさえあればあいつらを、………振りじゃねえぞへっへっへっへ!」
なんか悪どいことが聞こえたのだが、ガナサルには一応世話になっていたので、それでチャラにすることにした。
「それで、俺達に用事があるんだろ?なんだ?」
「それにかんしては簡単なことだ、お前達、ここに残ってくれないか?」
「できん!」
「……理由を聞いても?」
「まず俺だが、大迷宮を全部回らないといけない。5年で。だがらここに残り続けることはできないんだ」
「マリナも着いていくのか?」
「うん。今の私があるのもヤクモ君のおかげだし、それにちょっとした事情があるから離れられない」
「……そうか」
ガナサルは肩をすくめた。やはりガナサルも俺達の答えは予期できた事なのだろう。
「ならこれは個人的になのだが、先にどこの大迷宮にいくんだ?」
「出来れば光の王国に直接向かいたいんだが、間の大迷宮を攻略しながら向かおうと思う」
ガナサルは不思議そうに質問してきた。
「どうして光の王国なんだ?」
「親友が2人待っているんだ」
普通なら冒険に行くんだろうが、あいつらは必ず召喚された国に止まるか、俺が行きそうな名前の国に向かうはずだ。実際勇者召喚したのは光の王国のみと情報があるので、まず向かうならそこなのだ。最後に小声で、
「それになんとなくあいつらは待っていそうだがらな」
召喚されてから会ってはいないが、あいつらとは長い付き合いだから、そう思っているだけなのだが、あながち間違いではないと思う。
「そうか、そういう理由なら仕方ない。お前達の新しい門出を祝うとしよう」
「ありがとございます」
俺はガナサルに感謝の意を込めて、頭を下げた。
「そうだ、ガナサルさん、決戦前に援軍を頼んだっていってたけど、それってどうなったんですか?」
「うん?援軍?…………おぉ!忘れてた!騒ぐのにかまけて援軍要請断るの忘れてたぁ!」
「……あの~ちなみになんですけど、援軍って何が来る予定でしたか?」
「ん?……確か、たまたま樹の獣国に滞在していた勇者様方が来るらしかったらしい」
「いままでお世話になりました!今から地の王国の大迷宮に向かいます!いくぞ、マリナ!」
「そうね!迅速かつ、速やかに向かいましょ!」
俺とマリナは勇者が来るとわかるないなや、席を立ち、急いで準備をするためギルドを出ようと扉に向かい……
「ちょちょちょっとまてぇええええええええええええ!!いきなりすぎるだろうぉおおお!!」
「「ぐぇえっ!」」
俺達の発現に慌てたガナサルに腕を首に回されて絞められた。
「なんだお前らいきなり!そんなすぐに出ていったらこっちが迷惑だわ!少しは俺の苦労を考えろや!」
「ちょ………くび、しま……や……ばい……」
「ギルマ……はな……たんま……し……ぬ……」
暑く語るガナサルに、俺達の声は届かない。語るにつれどんどん絞まっていくので、顔は最初赤いから、青に変わり、現在は蒼白になっていた。
俺は青くなりだしたとこらで腕をタップしだしたのに全然きずかない。
「おい、聞いてるのか2人とも、おい、こら寝るな!」
「「………………」」
返事がない、ただの屍のようだ。
「テレナ!癒魔法かけてぇ!」
「なにしんてんだこのバカァア!」
テレナがすぐさま癒魔法をかけてくれた。ヤクモとマリナは意識を取り戻した。
「はっ!今向こう岸にベヒモスが見えたような。そんでもって俺を手招きしてた」
「はっ!今向こう岸にお父さんとお母さんが!なにやら『こっちに来るなぁ!』て叫んでいたような」
「……アッブネェ~」
なんか少しの間の記憶が抜けているが気のせいかな?まっいいか。
「そういえばなんの話してたっけ?」
「……勇者についてだ」
……あれ?なぜか初めて聞くはずなのに、聞いたことがあるような?………気のせいにするか!
それから俺とマリナはガナサルから、勇者が援軍として向かっていることを聞き、どうするか考えることにした。
「ガナサル達には悪いんだが、出来ればすぐに出発したい。勇者が来る前に、なるべくはやく」
「……そうか、理由は……聞かないでおく。だが少なくとも、今日は居てくれないか?あいつらはまだお前らに感謝をしたりないだろうからな」
「………わかった。出発は明日にするよ。マリナもいいか?」
「私はヤクモ君に着いていくんだがら、ヤクモ君がそれでいいなら、いいよ」
「ありがと」
俺達はそのあと、ガナサルに礼を言いつつ、明日の準備を行うため、ギルドを後にして宿に戻ることにした。
「はぁ~もう少し居たかったんだがな。勇者、まさか隣の国に来ているとは」
「ホントに災難だね!でも獣国になんのようだったんだろう?」
「たぶんオタク連中が行っていたはずだ。ケモミミを拝みに、そして近場に起きたこのイベント系に必ず飛んでくる。めんどくせぇ~」
俺は盛大に溜め息をついた。イベントに飛んでやって来たのに、すでに解決していたと知ったオタク連中は、必ず解決者を探すだろう。そして文句やなんやと言ってくるに違いない。
「明日起きたら出発するか。それくらいは時間があればいいんだけどな」
悪態を付き、マリナと一緒に溜め息をついた。そうこうしていると、宿に到着していた。
「あっ!お帰りなさい英雄様!」
宿の扉を開けると、看板娘ちゃんが笑顔で迎えてくれた。そしてどうやら俺のあだ名は、「英雄様」になったようだ。
「「ただいま~」」
「おや、英雄様お帰り、昨日は大変だったね!」
女将さんが優しい笑顔で奥から出てきた。そんでもって女将さんも言ってきた。
「ちょうどよかったよ女将さん、実は急なんだけど、明日俺とマリナ別の国に向かうことになったよ」
「……そうかい」
女将さんが残念そうに答えてくれた。
「えぇーーー!!!嫌だよっ!まだもう少しいてよ!」
看板娘ちゃんは女将さんのように割りきれないみたいだ。
「やめるんだよ!いままでだってたくさんあったことじゃないか」
「でも!まだ恩返ししきれてないもん!」
「…………」
看板娘ちゃんの反論に女将さんはなにも言えなかった。なので、助け船を出すことにした。
「ちょっといいか?」
「なんだい?」
「その恩返し、予約という形でいいか?」
「予約かい?それが何で恩返しに……」
「予約するのは、5年後だから。それまで潰れないで欲しいから、無理差せるかもしれないから、かな?」
女将さんは黙り混んでしまった。どうやら5年間宿を維持し続けられるか考えているようだ。
女将さんが考え、答えを出そうとする前に、看板娘ちゃんが力強く答えた。
「まっかせなさい!私がいれば潰れることなんてあり得ないんだから!」
胸を張り、腰に手を当て、どこかのお嬢様が自信満々に答えるときの格好で答えてきた。当然、女将さんに拳骨を落とされてが。
「勝手な答えんじゃないよ!このバカ娘めっ!」
ゴチッン!
「いったぁああああーーーっい!!!」
…………あれを痛いで済ませるか。陥没くらいしてもおかしくない強さに思えたのだが、…………よしっ、深く考えないようにしよう。
「はぁ~、ただまぁ、このバカ娘の行った通り、潰さないようにしておくよ」
「ははっ、ありがとうございます。それでは荷物をまとめるので失礼します」
「あいよ、昼はどうするんだい?」
「ここで食べます」
「そんじゃ、腕によりをかけて作るよっ!」
俺達は礼を言いつつ、部屋に戻り荷物をまとめることにした。が、
「おっそーい!何してたのよ2人とも、待ちくたびれたわよ」
シェルナのことを忘れていた。
なぜシェルナが宿にいるのかと言うと、ただ単に昨日の宴会で騒ぎすぎ、飲みすぎただけである。いわゆる二日酔いだ。
女神が二日酔いを起こすんかいと言いたいのだが、実際に起こしてしまったのだ。なんとも言えない。
「なに失礼なこと考えているのよ。それより何してたのか教えなさい!」
俺はギルドでの話し合いのことをシェルナに伝えた。
「……なんてタイミングの悪い。運命的なにかを感じるわね」
「だから今から荷物まとめるから手伝え」
「えぇ~、めんどい。やっといてよ。私まだ昨日の酒が残ってる」
「残ってねぇだろ。たくっ、そんなことしてると、勇者の前に放り投げるぞ」
「やれるもんならやったみなさい。そのときはあんたも勇者にバレるんだから。お互い様よ」
よしっ、言質取ったorフラグを立てたぜ。ぜってぇぶん投げてやる。今のうちに幸せを噛み締めてやがれ!はぁーはっはっはっ!!
「なに笑ってるのよ、気持ち悪い」
俺達は口喧嘩をしつつ、荷物をまとめだした。といってもそれほど荷物が置いてあるわけではないので、すぐにすんだ。
そして逃がさん昼まで時間があったので、次の大迷宮の情報や、国への行路の確認をマリナに取り仕切ってもらいながら行った。
それから昼を女将さんが作ってくれたものを食べたのち、町を2人と女神で歩くことになった。
また日にちが空くかも知れませんが、待っていてください。




