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軽くフィクション・飛  作者: 高岸げひら
2/5

(スキージャンプ・飯野佳那)

『飯野選手、やりましたね!早くも今シーズン3勝目。おめでとうございます!』


 えっと、この国、どこだっけ?確か、なんとかランド。去年もここで公式戦があって、このジャンプ台でも勝った。雪質も、気候の割にキュッと絞まってて、好きなんだよね、相性、いいんだと思う。


「ありがとうございます」


『試合前の報道では、体調不良も報じられていましたが?』


 きっとこのアナウンサーのヒト、あんまり寒いとこ、好きじゃないんだろうなあ、明らかに中にいっぱい着込んでて、手袋も重ねてる。ごくろーさまです。私たちのために、すみません。

 そう、体調不良ね。本当は前の試合のジャンプがうまくいかなかったから、メンタルが少し沈んでて、行きの飛行機の中でマリちゃんとそんな話をしてたから、きっとマリちゃんが気を利かせて報道のみなさんにそんな話を匂わせてくれたんじゃないかな。

 私があんまり飛べなかったら、その方がそっとしといてもらえるからって言ってくれた。受け答えできなくても、体調悪いからって思ってくれるって。伏線っていうの?


「あ、おかげさまで大丈夫です。日本からはるばる応援に来てくださった方もいらっしゃって、本当にありがたいです」


『1本目を終えた時点では、2位の選手との差はわずかでしたが、そこを大きく突き放す大ジャンプ、見事でした』


 よし、今日もバレてない、か。


「コーチのスタートのタイミングもバッチリでしたし、上手く踏ん張れて、良かったと思います」


『ここからヨーロッパでの連戦が続きますが、意気込みをお願いします』


 あ、そうか。しばらくこっちか。そういえば、帰ってすぐ日本選手権だ。


「水田選手をはじめ、他の日本選手も調子を上げてきてるので、みんなで頑張って乗り切りたいと思います。日本の皆さんも応援よろしくお願いします!」


 ここで、ずずっとマイクが近付く。

 有名な歌手のお父さんそっくりな、ヒゲの薄い若いアナウンサーが、少しニヤッとしたような(私の考えすぎかな)。

 あ、やっぱ、いつものやつ、来るんだ。

 完全にインタビューのルーティーンになっちゃったなあ。カッコニガワライ。


『では、飯野選手、いつものやつ、お願いできますか?』


 ここで断る選択肢、ないじゃんね。

 おっと、スマイル、スマイル。

 いつもの、右手の人差し指を、右頬の横で立てて、と。


「私なんかで、いいのかな?」


 たぶん、テレビの前の皆さんが『いいんだよー』と応えてる、はず。

 あ、マリちゃんとサキちゃん、オーバーに口に両手を添えて「いいんだよー♪」と応えてくれてる。アリガト。


『ありがとうございました。今季3勝目を挙げました、飯野選手でした!』

 おじきして、インタビュー終わり。


 本当は、この飯野って名字、まだ慣れてないんだけどなあ。

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