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私の音源は、心臓・・・・  作者: 三秒前の金時豆
9/9

Aメロ1 結成の音

 綺麗に並べてある本棚、小学生の頃当時好きだった漫画を集めていた本や。好きな小説が並べてある。綺麗に畳んである布団とシーツ。勉強机の上も埃一もつない整理整頓してある辞典やファイル。


ジーーーーーーー!!(荷物のチャックを閉める音)


 大きなバッグを背中に担ぎ、紺色のアウターを着て黒いジーンズ。洗顔所で少し化粧し。黒く長いストレートの髪をセットし玄関に行き、歩きやすいコンバースの黒いハイカットスニーカーを履き、私は・・・

家を出た!!・・・・いや、旅立った。

 時刻は早朝の四時前。まだ家の両親はまだ起きていない。昨日青林檎の髪型した「堀崎君」にコンビニまで送ってもらって、家に着いたのは、深夜の〇時だった。家の玄関の鍵は開いてあって怒られるのかなと思っていたら、台所に行くと机に晩ご飯のおかずと母の置き手紙が置いてあった。


「遙佳。おかえり。さっきは叩いたりしてごめんね。本当はギター売りたくなかったんだよ。でも、これ以上あなたの悲しい顔見たくなかったから、仕方なくお母さんは遙佳の大事なギターを売ることにしました。多分傷つくだろうなと思ったよ。でも、今のあなたの事思ってしました。本当にごめんね遙佳。あと学校でのカンニングの事はお母さんは遙佳が無実のことを信じているからね。ごめんね本当に。ご飯、レンジで温めてね、お母さん明日早いからもう寝ます。」


めっちゃ傷ついてるよ。私は置いてあった晩ご飯をレンジの中に入れ、そのままお風呂に行き洗顔し、今日の旅立つ準備をしていた。

 あれからコンビニで「堀崎君」と分かれるとき、私は今後のことを考え、一つ堀崎君に「最初の決意」を言った。


「私、明日。家出るよ。・・・あの家の中では音源は作れない。もっと環境の良い所で作りたい。」

彼は寝転びながら。

「そうか。・・・・わかった!考えとく。」


 お父さん、お母さん、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん。少しの間、私は家を出ます。急に出てってごめんね。でも大丈夫だから、また帰ってくるよここに。お母さんへ、ちゃんとわかっているよ。お母さんが怒った理由も。私のこと思ってやったの知ってたよ。ありがとうね。お父さんへ、あの時止めてくれてありがとう。もしあの時お父さんが止めてなかったら、私はチカのとこに逝ってました。私間違ってたよ。私がいなくなったら今度は、お母さんやお父さん、周りの人が悲しむもんね。ごめんね。許して下さい。私ちょっとの間旅立つ事したけど、次帰ってきたときは生まれ変わった私になっています。だからどうか、心配しないで待ってて下さい。大丈夫、ちゃんと無事に帰ってくるから。では、行ってきます!!


シャーペンで書いた置き手紙を家の玄関に置き、私は大きいバッグを手にし、家を出た・・・・。


 

 まだ外は暗く、三重の朝日はまだ海底の中のようだ。道路は黒くアスファルトに、冷えた水で湿っていた。その道路を履き慣れた黒いコンバースのハイカットスニーカーで歩き、まだ「集合時間」まで時間があったから、国道沿いのコンビニに行く前に寄りたいところに行った。

 私が旅立つ前に寄りたいところが二つあり、一つは「伊勢神宮」。もう一つは「墓地」だ。

伊勢神宮は開門まで一時間あるため私は先に「墓地」の方へと向かった。私の家から墓地までそんなに遠くない所にあり、この時間で行く墓地もまだまだ怖い・・・。流石に「幽霊」が出る時間はとっくに過ぎてるし、それにすぐ隣は「伊勢神宮」だから幽霊なんて出るはずが無い。

 何百という墓石が並び、烏に突かれた花束、餅、白い糞が付いていた。まだ朝日は出ていないため、周りは暗い。私のスマホのライトで目的地に向かい、墓地の井戸にある「バケツ」に水を入れ、とある「お墓」に向かっていた。


・・・・もう分かるよね・・・・。

 「金沢千花」。チカのお墓だよ・・・。


 やっと来たよ・・・チカ。ごめんね、今まで来れなくて。いつでも行こうと思ったら来れたのにね。でも行けなかった・・・。ここに来るのが恐かったわけじゃないよ。ただ・・・行こうと思わなかったんだ。おかしいよね。チカが亡くなって、一番悲しいはずなのに、私はあの時・・・・・。本当は私が死ぬべきだったんだよ。あの時・・・あの時私が・・・チカの家に行っとけばこんなこ事にならずにすんだのに。


 私ね、チカ。


 昨日色んな事あって、遂に耐えきれなくなって一度出なく二度も死のうと思ったんだよ。「畑中さんに嘘と担任に裏切られ」「皆から嫌われて」「両親にも怒られ」「私達のギターも・・・」すごい昨日は散々な日だった。チカがいなくなって「伊勢」は別世界になったよ。今まで信じてきた人、新しく信じた人まで敵になって、・・・・冷え切った世界になった。チカは?そっちはどう?・・・・ごめん、言い過ぎたよ。

 でもね苦しい事ばかりじゃないよ!チカがいなくなって私は「一人」になったけど。「新しい仲間」ができそうなんだ。まだその人達とは、あまり喋ったことは無いんだけど。これからその人達と「バンド組んで」新しい「音源」を作る事にしたんだ。私ね、最近「ギター」弾かなくなったけど「彼」が誘ってくれたおかげで、また「音楽」に復帰することにしたんだ。

 ほらぁ!覚えてない?学校の「放送室で奇声放送事件」起こした、男子・・・堀崎君だよ!!。っあ!そうか。名前知らなかったね。「堀崎憂希」って言うんだよ、あの人。やっぱり県外の人何だって。何県かまだ分からないんだけど、まぁそんな感じで当分「彼等」と連むことにしたんだ。いや、彼等と一緒に「音源」作って、この凍った国を溶かしてやるんだ!!

 だから、チカ。私が強くなるの見守っていてね。またいつかここに来て、色々「恋バナ」でも「音楽の話」いっぱい、いっぱい、お話しよ。じゃぁ、行くね。


行ってくるよチカ!!



チカのお墓参りも終わり時刻は六時前になっていた。今頃、家の方では私が「家出」したことを知り大騒ぎだろう。きっと慌てて辺りを私を探してるか、探してないか。多分私が思うに、探しに行かないかな。

 多分、家の両親は分かってくれると思う。だって自分たちの子供だから。まぁ私の勝手だけど・・・。

 となると、もしかしたらもう一つ寄る「伊勢神宮」で私のことを探しているかもしれない。もしそこで見つかったら元も子もない。仕方なく「本堂」まで行くのは諦めよう。とりあえす「宇治橋」まで行って、そこで本堂に向けてお参りしよ。・・・・隠れながら。


 おっ!今日は何人か参拝しに来ている人達がいるな。皆、御賽銭袋を持って本堂に向かっている。でも私はここまで。丁度「宇治橋」の手前で止まり、本堂に向けて深くお辞儀をし。決意した事やこれからのことを祈り参拝した。

 よし!行こう。・・・・・・・・あれ?・・・・・何だろう・・・?。何処からか「綺麗な音色」が聞こえてくる。

 その音は、今日初めて聞いた音では無かった。


「水の雫のように透明感」「なめらかに華麗な音の波」「その音が私の脳や心臓に届く音魂」・・・・そうだ・・・・この「音」昨日もここで同じ時間に聞いた音だ!!


 私は目を開け、「ある人」を思い出しこの音が聞こえる「宇治橋の真ん中」に向かった。

やっぱりだ・・・・。「あの人」が居た。

 橋の真ん中で「綺麗な音色」を演奏していた「あの人」は、昨日は激しい雨が降りその人は傘を差さず全身に「黒い雨具」を着て、「五十鈴川」を寂しい表情で見つめていたけど、今日は服装が変わり雨具ではなく、白い着物に赤い帯をし髪の毛も後ろに束ね、顔全体にお化粧をした女性が「五十鈴川」を見ながら「綺麗な音色」を出し演奏をしていた。・・・・・・あの人、やっぱりそうだ。昨日の人だ。女性だったんだ。それに服装を見るところ、着物着ていて・・・どうやらここの「伊勢神宮」の巫女さんのようだ。


 その人の両手には「綺麗な音色」を出していた、楽器「笛」を持っていた。


「すごい、お上手ですね。とても感動しました。」


私は彼女の所に行き彼女の演奏の感想を伝えた。それから巫女さんは演奏を止め、私がいるのを驚き演奏が止まった。


「・・・・・・!?。あ、ありがとうございます。」


綺麗な巫女さんだった。小顔で綺麗な肌に美しいスタイル。


「綺麗な音色ですね。なんていう笛なんですか?」


彼女は私の方へ向き、「赤い笛」を見つめ説明してくれた。


 これは「篠笛」といって、とうという細いつるで赤いうるしを塗った笛です。今度、篠笛の演奏会があるのでいつもここで練習をしているのです。


「そうなんですか。すごい綺麗な篠笛ですね。まるで、生きているような生命感を感じました。」


「この笛は、私の家の昔から伝わる「大切の預かり物」なんです。」


「預かり・・・物?」


「あの・・・・もし、宜しければ。この篠笛、貴方にあげてもいいでしょうか?」


はい?・・・・・なんで・・・?


「お願いします。」


「あ・・・・あの・・・・。」


「では私そろそろ本堂に戻らなければいけないので、失礼します。」


彼女はそのまま深く私にお辞儀をし、本堂へと走って行った。


どうしよ・・・・あの人の「篠笛」貰っちゃった・・・・。大切な預かり物じゃないの?


ブーーーーン!!・・・・ブーーーーン!!

うわっ!ビックリしたー!!私のスマホから誰かからのの着信来た。私は慌てて、取りあえず貰った「篠笛」をバックにしまい、紺色のアウターのポケットからスマホをだし確認した。


「青林檎君からだ・・・・。」


堀崎くんだった・・・。つい「青林檎君」って言ってしまう。髪型のせいだよ・・・。


「もしもし?」


「お!!もしもしー?あのさぁ!ちょっと俺用事できたから、先行ってて。」


「はぁ?」


「だからー、先行っとけって!ちゃんと時間にコンビニに向かい来っから!じゃっ!・・・プープー」


なんて、勝手な奴だ。用事ができた?向かいが来る?誰が来るんだよ!!あんたが「来いよ」って言ったからちゃんと準備万端して出てきたのに、自己中な人だ・・・。あっ!そろそろ行かないともうすぐ八時だ!

 「五十鈴川」から国道沿いのコンビニまで丁度八時前に到着した。今日はまだ平日だから、お仕事する「職人さん」「スーツを着たサラリーマン」「学生」がコンビニに入っていた。駐車場には仕事の作業車が多く停まり、皆「お昼弁当や」「朝ご飯」を買っていた。どうやら、まだ「他の人達」は来ていないみたいだ。集合時間八時なっても全然来ないし、まったく来る様子も無かった。

 コンビニに着いてから十五分近く経った。私はずっと、雑誌コーナーで女性ファッション誌を読んでいた。

その時、駐車場に一台の中型車「マイクロバス」が入いろうとしていた。ここのコンビニの駐車場はそんなに広くないため、仕方なく道沿いに停車し、バスの両目が黄色いライトをチカチカとしだした。


「あれ・・・・もしかして・・・・。」


私は何かに気づき、道沿いに停車したマイクロバスに近づいた。

近づくたび、マイクロバスの方から大きな音が聞こえてくる。その音は絶対にラジオの音では無いくらいの音で、車の外まで大きく聞こえる音波だった。


「この音って、楽器?」


マイクロバスに近づいた瞬間、バスのドアが開き中から人が出てきた。


「あぁぁぁぁ!!うるせぇ~~~!!」


「・・・・・・!?・・・・堅太君?」


「お前ら、車内で演奏するな!!・・・・って!遙佳ちゃん!?」


バスの中から出てきた人は、私は絶対知っている、この人も絶対知っている、なんでなの?と思う、


チカの親戚の二十八歳の「堅太君」が降りてきた。

どうして、堅太君が・・・・?


「お・・・おはよう!遙佳ちゃん!!あれ?今日高校休み?」


私はまだ驚いていて、まだ固まった状態。


「いや・・・・その、お向かいを待ってて・・・」


「そうなんだ!!・・・いや僕も、とある送迎してて。ここで人待ってるんだ。」


「そうなんだ・・・。・・・・ん?、あの人!!」


私はバスの中を確認し、一人の男性に目が入った。


「・・・・加藤君?」


「お?。最優秀賞さん!」


やっぱり、このバスが「向かいに来る車」だ・・・・・てことは堅太君は?、堅太君が送ってくれるの?


「え?知り合い?二人とも・・・・・もしかして・・・遙佳ちゃんがここで乗る人?」


「・・・・うん。そうだよ。」


堅太君は驚いてアスファルトの地面に転んだ。


マイクロバスの中は空席が多く車内は殺風景だった。加藤君は車内の真ん中付近に座っていて、今日も相変わらず大きなお腹に、太い指で自慢の「エレキギター」を持って弾いていた。


「加藤君、おはよ。これからよろしくね。」


「俺、握手嫌いなんだ。それに、まだ君をリーダーと認めてない。」


早くも敵視されてるし、こいつもなかなかのキャラだな・・・


「あれ?今日これだけ?他の人達は?」


ジャァーーーーン!!


「後ろ一人いるだろ。ジャァーーーーーン!!」


後ろ?・・・・あっ!!


「・・・・・・・スヤスヤ。」


濡れてる人だ・・・確か・・・・杉岡君だっけ。


「よし!!、じゃぁ座って!遙佳ちゃん。」


「ちょっと待って、なんで堅太君が送迎してるの?・・・タコ焼きは?」


堅太君が無言のまま、運転席に戻りシートベルトをした。私は、堅太君の助手席に座り、シートベルトした。

 バスは動き出し国道を走り、まもなく「度会橋」が見えてきた。バスは度会橋の手前の交差点に止まり、信号を青に変わるのを待った。


「俺、タコ焼き辞めたんだ。」


「!?。」


辞めた?・・・・どうして・・・・。


「俺、チカがいなくなってから本当は苦しかったんだ。あんなに元気なアイツが急にいなくなってさ、なんかぁ辛くて・・・仕事とかにも気が入らなくなって。正直キツかったんだ。」


・・・・・・・。


「あんなに、タコ焼きを三重で広めるんだ!って、言ってたのに変だろ?。でも、正直今の現状でちゃんとやっていけるのか心配になって。ユウも妊娠してるし・・・・ちゃんと違う仕事でお金稼いで頑張ろうと思うんだ。」


諦めるの?・・・・堅太君のタコ焼き美味しくて大好きだったのに・・・・


「そうなんだ・・・大変だったんだね。堅太君も・・・それより妊娠したんだ!ユウさん!!」


「あー!!まだ男か女か分かんないけど!今年中に産まれるんだ!名前も決まってる!」


「じゃぁ・・・・結婚式は?」


「・・・・・・しないかも。」


「・・・・どうして。」


プープー!!後ろの車がクラクションを鳴らしてきた。信号はとっくに青に変わっていて、堅太君は急いで動かした。


「あっちの親がさ、俺らの結婚認めてくれないんだ・・・・だから・・・子供が産まれたら、すぐ三重を出ることにしてるんだ。」


「それって・・・・!!」


「うん。分かってる、覚悟は出来てるさ。だから取りあえず、まともなお金貰う所で色々バイトしてんだ。」


堅太君。ユウさんと駆け落ちする気なんだ・・・・。


「遙佳ちゃんは?」


「!?。」


「その格好。家出だよね・・・・それに後ろの人達と知り合いみたいだけど。」


私は、黙り込んだ。流石に堅太君には言えないかな。「これから時代を変える音源作る」って言ったら、笑われる。それに堅太君は、私の家族と仲が良いし、たまに会うくらいの仲だからバレてしまう。


その時、後ろにいた「加藤君」が出てきて、


「どうでもいいけどお二人さん。もう着くの?」


「うわっ!お前運転中は歩くな!捕まるだろ!!」


「俺は早くギターを弾きたいんだよ。こんな狭い部屋の中で落ち着けられるか!」


二人はビリビリの言い合いをしていた。一方の一番後ろで寝ている「杉岡君」は、幸せそうに爆睡していた。


 バスは度会橋を渡りすぐ右折し、度会町へと続く真っ直ぐバスは直進し、十五分くらい走って、度会町に着いた。度会町のコンビニが見えてくるとそこを左折しまた真っ直ぐ直進した。だんだんと景色が田んぼや山が見えてきて、田舎道になってきた。バスは田んぼの細い道路に入り、目的地へと近づいた。


ここは・・・


そうだ!。昨日来たあの「お爺さんの家」だ!!


キィー!シューーー!!(バスが停車する音)


「着いたよ!!。ねぇ!後ろの人起こしてくれるー?」


加藤君がその命令に無視し、一人先にバスの外を出て、残りの自分の荷物を運んどいてと堅太君に命令した。


「く・・・・まぁ、仕事だから、しゃぁないか・・・」


私もバスの外を出て、外の空気を吸った。


ふーーーーーーーーー・・・・・はぁーーーーーー!!


ここは、都会の伊勢と違って空気がおいしい。


「うわっ!?ここ虫多いんだけど・・・・!!」


加藤君は周りにいる飛んでいる蚊やハエに避けるのに騒いでいた。


「はぁ~~~あ・・・・・・・」


遅れて、「杉岡君」が寝起きで降りてきた。


「汚ぇな。まさかここで音楽作るのか?。」


加藤君は不機嫌そうに愚痴を言った。


 その建物は家半分鉄筋コンクリートでもう半分は古い木材の木で出来た、まるで手作りで作ったような大きな建物だった。昨日私はこの建物に運び込まれ、ここでお爺さんに助けてもらった。あの時は時間も遅かったし暗くて建物全体は分からなかったけど、結構古い建物だったんだ。それに建物の周り付近は大きな木や林で囲まれて、まるでジャングルのような感じだ。


その時建物の中から、男性が出てきてタバコを吸いながら現れた。


「汚ぇはねぇだろー。坊主ー。」


あっ!昨日助けてもらった「お爺さん」。


「よぉ!お嬢ちゃん。まさかベースがお嬢ちゃんだったとは、驚いたぜぇ。」


「き・・・昨日は助けて頂きありがとうございました!!」


私は地面深くまで頭を下げ、お礼をした。


「大丈夫。大丈夫。・・・・・しかし、まぁまた面白いバンドメンバー集めたなぁあいつ。」


お爺さんは、加藤君と杉岡君を見て笑いながら喋っていた。


「豚君に、貞子に、オッサンかぁ~」


加藤君は、「豚」と呼ばれ腹が立ちお爺さんに睨付けた。一方、杉岡君は、どうやら髪が長くて顔が見れないから「貞子」とよばれた。そんな彼は立ったまま寝ていた。・・・・・ん?あと一人オッサンは?


「爺さん!!トイレ掃除終わったぜ~~~~笑」


「大倉さん!!」


建物の中から出てきた人は、赤い髪の毛に左半分は坊主、右半分は髪をワックスでセットした悪魔のような顔した大倉さんだった。


「おう!リーダー!!あと皆!!遅ぇ~~よ!笑」


そうか。大倉さんは度会町の人だから、先に来て待ってたんだ。・・・・大倉さんがオッサンか!!


「おい、オッサン!なんだよその格好。バイトか?。」


加藤君が大倉さんの作業服見て追求した。


「お前ら。このボロハウス使うんだろ?。と言ってもここは俺ん家だ。まだお前らに譲ってねぇ、

それなりの働きしたらこのボロハウス半分お前らにやる。まずは俺ん家を綺麗に掃除しろ。」


私達は、驚いた。


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?


「何だよ?。お前らアイツから何も聞いてねぇのか?。」



バケツに、雑巾、モップ、ほうきとちりとり、掃除機。私達に持たせれた物は「楽器」ではなく「掃除道具」だった。


加藤君が怒りながら掃除機で掃除していた。

「ふざけんなよ!!なんでここで来て大掃除しないけねんだよ!!」


大倉さんが、楽しそうにモップで掃除してた。

「おい!デブ男!あとでギター教えてくれよな!!」


杉岡君は・・・・ゲームしながら足で床を雑巾で拭いていた。

「・・・・・・・。」


そして、私は二階の窓を雑巾で拭いていた。


「あれ。あの派手な格好していた、浜口さんは来てないね。」


「あ~?あー!やっぱ入らなかったんだろ。音楽性が違うって言ってたし。」


加藤君が大倉さんとじゃれ合いながら言っていた。


 私達が掃除を頼まれた場所は、鉄筋コンクリートの二階全部の部屋だった。二階の部屋は三カ所あり、一つ目の部屋は「大きなフロア」二つ目の部屋は「更衣室のような部屋」三つ目の部屋は「倉庫」だった。加藤君と大倉さんは、「更衣室の部屋」を担当し、私と杉岡君で「大きなフロア」を担当した。

 杉岡君が一人勝手に床を雑巾で拭き始め、喋らなくてもちゃんと進んでモクモクと掃除していた。一方私はまだ、窓拭きをしていてこの部屋の窓の汚れは結構、埃がすごくて落ちぬくかった。その時私は、二階の窓から外の様子を見ていた。


「あっ!堅太君がお爺さんと喋ってる。」


どうやら堅太君が、バスの中から残りの加藤君の荷物を積み下ろしたのを終わり、お爺さんに今日の運賃代を貰っていた。その後、堅太君はお爺さんにお辞儀をし、バスに乗り込もうとしていた。


「堅太君・・・・大変だけど、頑張ってね。」


その時、堅太君が運転席の窓を開け私に手を振り、笑顔で・・・・


「遙佳ちゃん!!頑張ってな!!なんだか分かんないけど、遙佳ちゃんも目標に向けて頑張って!」


「うん!!。ありがとーーーー!!堅太君!!堅太君も頑張ってねぇ!!」


そのまま堅太君はバスを運転し伊勢へと帰っていった。




 時刻は十二時丁度。掃除を開始してから、三時間経った。

お爺さんが一階から大声で私達を呼びかけ、お昼ご飯できたぞーと叫んできた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


加藤君と大倉さんが急いで、「待ってました」みたく走って下へと移動した。その後杉岡君も掃除を止めゆっくりゲームをしながら下へと行った。私も遅れて、汚れた雑巾をバケツに入れ、下の洗顔所で手を洗い皆の集まっている外へ行った。


「爺さん!!。なんだよこのカレー!!超美味えぇぇやん笑。」

大倉さんが美味しそうに食べていた。


「まぁまぁかな・・・・・・美味いよ爺さん!!」

加藤君もお爺さんの手作りカレー食べて絶賛していた。


「カプ・・・・・・・モグモグ。」

杉岡君は全然喋らないけど、美味しそうに食べていた。


そりゃそうだよ。私もお爺さんの「手作りカレー」食べるの二回目だけど、今日のカレーは昨日よりさらに美味しくなっていた。


「お爺さん。本当に美味しいです。」


お爺さんは嬉しそうに、カレー鍋をタマで混ぜながら笑顔で喜んでいた。


「ほうか!。遠慮せず食えよ!!いっぱい作ったからな!!」


「あ!俺、おかわり~~~~~~笑。」


「オッサン!ちゃんと噛んでんのか?俺も!!」

加藤君と大倉さんが一緒に「おかわり」の欲求をしていた。


杉岡君はまだ食べようか、迷っていたけど諦めてまた「ゲーム」に夢中した。


「さて、アイツはどこで何をやってんだぁ。仲間に任せて勝手な奴だぜ。」


「アイツ」つまり「青林檎君」のこと。なんか「名前」よりこっちの方が定着して言いやすいからこれから彼のことを「青林檎」に決めとこ。ほんと、勝手だよね!青林檎め!!


加藤君がお爺さんに彼とお爺さんはどういう関係なんか聞いた。お爺さんはカレーを混ぜるのを止め、錆び付いた椅子に座り込み、タバコを吹かしながら語りだした。


「アイツからは口止めされてるんだが・・・・。ちょこっとだけ教えたろか?」


・・・・・・・皆、カレーを食べながら真剣に聞いていた。私も気になる。そもそも彼とお爺さんはどんな関係なんだろう。


「俺とアイツは・・・・・全く知らない関係じゃねぇ。ただアイツの親父と昔から仲が良くてな、それでアイツも産まれて、日に日に仲が良くなった感じだ。」


ふーーん。彼のお父さんと腐れ縁の仲で、それで知り合った感じか。ん?じゃぁ青林檎君の実家もホームレスなの?


「知ってっか?アイツん家すげぇ~金持ちなんだぞ~」


「!?。豪邸かよ!!笑」

「それは知らねぇわ」

「・・・・・・!?」


三人が「青林檎君の話」に夢中になっていた。


へぇ。お金持ちなんだ・・・・。


「それでな!家は三重じゃなくて、滋賀の・・・・おっとこれ以上言えねぇ!!」


お爺さんが慌てて「青林檎君の話」を途中で辞めた。


「何だよ~~~!!もったい付けないで教えろよ~~~笑!!」

「そこまで言ったら言おうや。」

「・・・・・・!!」


皆、話の続きを気になっていた。やっぱり・・・・・三重の人じゃなかった。滋賀・・・?滋賀県の人なのかな・・・?


お爺さんは立ち上がり、「さぁさぁ!休憩は終わりだ」と言い鉄筋コンクリートの一階のリビングへと入って行った。


「マジかよ・・・・。後どれくらい働かせる気だよ。あの爺さん。」

「思ったんだけど~~~!!今日の仕事。金出るの?笑」

「・・・・・・。」


出るわけないでしょ、オッサン。あのお爺さん「ホームレス」だよ。ん?でも、さっき堅太君にお金払ってた様な・・・・・。それにこの「手作りカレー」だって・・・・。全部野菜やお肉もカレーのルーも!?

あのお爺さん、どこにそんなお金があるんだろ・・・・。


「パチンコで稼いだんじゃね~~~~笑。」

「わかる!!しそうな顔だな。」

「・・・・・・・。」


私達は昼の十三時まで休憩し、二階のフロアへと向かった。


その時、お爺さんがリビングから出てきて私達に今日の「大掃除」の働くノルマ時間を言ってきた。


「おい。取りあえず、今日の十五時まで綺麗にしとけ・・・・はい、よ~~いドン!!」


十五時までーーーーー!?・・・・・・あと二時間。


とても、あと二時間で終わるような汚れじゃないよ・・・・・無理よ・・・・。だってまだ、「倉庫」も掃除していない。加藤君と大倉さんは黙り込み、遂に頭にきた二人は、お爺さんの胸ぐら掴み・・・・


「いい加減しろよ。爺さん!!俺らはここに音楽しに来たんだ。掃除屋じゃねぇ!!」

「もう、帰ってええすか?リーダー。眠いっす!笑。」


ちょっちょ・・・・うわっ・・・・どうしよ!!なんでこうなるの!?・・・・そりゃ皆「大掃除」でイライラしているのはわかるけど・・・・ダメだ・・・加藤君キレてる!?


「殴るんか?。猪八戒よ。」


「あぁ~~?」


ダメだよ殴っちゃ・・・・加藤君・・・こらえて!!


加藤君は右拳に力を込めていた。


止めなきゃ、止めなきゃ・・・・足が動けない・・・・・。


その時、一人の男子が加藤君の所に近づき、加藤君の右手を押さえた。


!?。!?。!?。!?。


「・・・・・・・・。」


杉岡君が加藤君を止めたのであった。杉岡君は本当に喋らない人で、もしかしてこう言う時に何か喋るのかなと思ったんだけど。彼は何も喋らず、落ちていたモップを拾い加藤君に渡した。そのまま彼は加藤君の胸にトントンと叩き、まるで「落ち着け」と言ってるような雰囲気で二階へと上がっていった。


「そうだよ。杉岡君の言うとおりだよ。まだ二時間もあるし、出来るとこまで頑張ろ。加藤君。」


「はぁー。わかったよ。」


加藤君は相変わらずやる気のないまま二階へと上がり、更衣室の掃除に戻った。


「大倉さんも・・・・頑張ろ。」


「う~~~~~ん。リーダーがそう言うなら!!俺、頑張る!!笑」


多分。大倉さんは「悪い人」じゃないようだ・・・・。


私はお爺さんの元へ行き、しゃがみ込んだ身体を起こしお爺さんを支えた。


「大丈夫ですか?。」


「やっぱり、みんな若いなぁ。昔の俺とそっくりだよ、あの加藤っていうガキ。」


お爺さんは笑いながら彼等のことを憎まず褒め。ソファに座り、また煙草を吸い一服していた。


さぁ!!あと二時間だけど、頑張るか!!


 私は二階に上がり「大きなフロア」の掃除を再開した。その時杉岡君が無言で、どうやら一人で最後のもう一つの部屋「倉庫」を一人でやる雰囲気をだし、彼は倉庫へと移動した。加藤君と大倉さんも、何だかんだ言って一生懸命掃除してるし、もしかしたら十五時までなんとか綺麗に終われそうな気がしてきた。


そして・・・・時刻は十五時〇〇分。


「爺さん!!終わったぞ!!はぁはぁ・・・・笑」


「おっ!!早かったなオッサン。」


「・・・・・・フーーーー。」


大倉さんは急いでリビングに行きお爺さんに報告をしていた。杉岡君も頑張って一人倉庫をモクモクと掃除して、くたびれて息を吐きながらしゃがみ込んでた。そして加藤君は・・・・


「爺さん・・・・。さっきは悪かったよ。ごめんな、ついカッとなって。」


「なんやぁ。キモいぞ急に。はははは。」


何か良い感じに皆、輪になってる!!いいんじゃないこの雰囲気!!


でもなんとか間に合って良かった!!


私達四人は、すごい達成感と幸福感に満ち。何か「色んな意味」で学んだ様な感じした。


その時、一階の玄関から誰かが入ってくるのが分かった、その後その人は二階へと上がり私達の目の前に正体を現した。


「おお!!!!すげぇー綺麗なったなぁ!!」


!?


「青林檎君!?」


ようやくご登場かよ・・・・この青頭め・・・・!!


「てめ~~遅ぇ~~よ~~~もう!カレーねぇぞ!!笑」


「何処行ってたんだ?」


「・・・・・・。」


青林檎君は、私達に「ご苦労ご苦労」と笑い、そのままお爺さんの所に行き何か相談をしていた。


「そんじゃっ!!早速だけど!!今からこの家リフォームするから!!そうだな明日の朝、またここ来て!!」


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?



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