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私の音源は、心臓・・・・  作者: 三秒前の金時豆
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イントロ7 「ゆびきりげんまん」

 珈琲レストランのあの日の帰り道。昼間は色々なことが起りまくっていて、なんかいつ家に帰ってきたのかも分からなかった。家の中に入ったとき、母が鬼のように怒りながら私の元に来て「バシッ!!」。私の左頬をぶたれた。痛かった。しょうがないよね、「無断」で学校を脱走したから怒られるのも無理が無い。どうやら学校からの連絡で「授業ボイコット」したと電話があったらしい。母は仕事の最中に私のリュックを取りに行き、担任と校長に深く謝り帰ったんだって。

 その時、担任は母に、「お宅の子供はどのように教育しているのですか?生徒のイジメ・カンニング。あんな生徒初めてですよ!!。」・・・・あいつ(担任)、親にまで「嘘」を言うのかよ。信じられない、「バシッ!!」、また母にぶたれた・・・。母はその後、校長室で二人の先生の前で泣きながら「土下座」したんだって・・・おかしいよ・・・・なんでお母さんが「土下座」しなきゃいけないの?・・・お母さんもお母さんだよ・・・・なんで私のことを信じてくれないの?・・・・なんで「嘘」だって分からないの?。

私は泣きながら二階の部屋まで走り、ベットの上で泣いた。

 なんなの・・・・学校だけでなく・・・家の中まで、私を冷たくするの?・・・・もう・・・毎日地獄だよ。彼じゃないけど・・・彼の言うとおりだ。


「この国は、冷え腐っている・・・・。」


 そうだ・・・・こういう時は、「ギター」を弾こう。いつもこんな嫌な時は「無我夢中に弾いて」頭の中を「ロック」にしてくれる。そうだよ。弾こう!久々に燃えてきたな。「珈琲レストラン」で「加藤君」が聴かせてくれた、「エレキの音」を思い出し。私とチカの二人だけの「ベースのギター」を持った・・・・


「あれ・・・・?。無い・・・無い!?」


ギターが無かった・・・・。変だな・・・。いつも窓際に置いてあるのに。しかもカバーも「音響機器」も無い!?・・・・それに・・・

明らか誰か入った後もある。・・・・・まさか!?


私は急いで階段を降り、一階の台所にいる両親の元へ行った・・・・。


「ねぇ・・・・。私の・・・チカのギター知らない?」


母は野菜を切りながら、


「んー?あー。リサイクルショップに売ったわよ。」



!?・・・・・・・・。



「遙佳。今まで黙ってたけど。もう音楽はやめなさい!最近は弾いてないけど。ほんと毎晩毎晩、うるさいのよね!!あんた、そんな時間あるのなら勉強をしなさい!!」


・・・・・。


「そんなんだから勉強に遅れて、カンニングするのよ!えー!!聞いてんの!!」


・・・・・。


「それにアンタ。心臓が悪いのだから。あんなうるさい音で遊んでたら余計心臓に負担かけるでしょうが!!そんなに死にたいの!!。ねえ!!下向かない!!」


・・・・・・。


「チカちゃんが亡くなって辛いのは分かるけど、いつまでもくよくよ・・・」


もういいよ・・・・。


「なに?もっと大きな声で喋りなさい!!遙佳!!」


よくわかったよ・・・。



私はその後、部屋に走り戻り、ドアを鍵をかけ、私は部屋に閉じこもった。母が急いで私の部屋の前に来て何度も何度もドアを叩いていた。ドアの外から必死の、やめなさい!何考えてるの!?、と止める母。


何考えてるのって・・・


こっちのセリフだよ。


 勝手に私の友達を売りやがって。遊び?勉強が遅れる?毎晩うるさい?カンニング?心臓に悪い?くよくよするな?

これでよくわかったよ。私はこの国・・・この世界は私を必要としてはいない。何処へ行っても、何処に座っていても、何処に突っ立ていても、「嫌われ」「キモがれ」「邪魔扱い」。もう耐えきれない・・・こんな世界から消えてやる。

 そうだ・・・私もチカの所に行こう。「あそこ」ならきっとチカが待っている。あの暗くて寒くて音も聞こえない「暗闇の世界」。絶対チカも喜ぶ。待っててね、チカ・・・私、今すぐそっちに行くからね。私は自分の机の中から「カッター」を取り出し、左手にあてようとした・・・


バンッ!!バンッ!ババーーーン!!


その時。私の部屋のドアが押し壊された。


私はその衝撃で転び、持っていた「カッター」を落した。私はすぐさま起き上がり、


そこに立っていた人は、「お父さん」だった・・・。


「遙佳・・・・。」


「お父・・・さん・・・」


父は、ゆっくり私の所に近づき、


バシッ!!


私の顔をおもいっきりぶった。


「もう・・・・忘れろ・・・。」


チカを・・・・・忘れろ・・・・?


ドックン・・・・!!ドックン。ドックン。ドックン・・・・。


忘れろ・・・・?


ドックン。ドックン。ドックン。ドックン・・・・


いやああああああああああああああああ


私は、父と母の間をすり抜け、玄関に行き。スニーカーを履き家を飛び出した。外はすっかり暗い夜の道。私はまた、走っていた。両目から「涙」を流しながら走り。何処に行くのかも分からないけど。とにかく走った。国道を目指し、コンビニも通り越し、流れる車の走行と並びながら走った。


はぁ・・・はぁ・・・ここ・・・何処だろ・・・?。


気づけば私は、伊勢から小俣町に繋ぐ大きな橋「度会橋」の真ん中にいた。


今日泣きながら走ったの「二回目」だな。はぁー。ほんと私って弱虫なんだから・・・・。ギターも無くなった。友達も居なくなった。これで私は「孤独」だ。孤独の孤独だ。

 ・・・・私は橋の手すりに腕を置き度会橋から見える、遠い度会町の山を見つめていた。丁度、度会町の遠い山が暗い夜空と暗い山の形が混合し、暗い山の形が暗い漆黒の世界への入り口に見えてきた。・・・ごめん・・・難しいよね。

 今日昼間降っていた「激しい雨」は今は降っていない。夜空は星空満天に晴れ、綺麗な「三日月」が照らしていた。私の後ろから聞こえる、度会橋の道を排気ガスを出しながら走る走行車。時間帯的、今が多い帰省ラッシュ。橋を渡る通行人も何人か私の背後を通る。たまに私をみてクスクスと笑う通行人いた気がする。

笑えよ、どうぞこんな泣き疲れた逃亡者の私を、どうぞお腹痛く指さして笑ってください。私は・・・


そんな「人間」だから・・・。



 綺麗な川だな。結構川の流れも速いし、水は汚い。そうか、今日は一日中雨降っていたから。山に降った雨が川に流れ、土砂や泥で濁流してるんだ。・・・・あの中に入ったら絶対死ぬよね。・・・・死ぬ?

 そうだよ私、死のうとしてたんだった。さっきはお父さんに邪魔されちゃったけど、今は私の周りには私を止める人はいない。それにここから飛び降りたら海まで流れて誰にも気づかず私は楽に死ねる・・・。


飛び降りよう。もうこの世界から脱出できる・・・。


チカ・・・待っててね。すぐ行くからね。


私は死を決意し度会橋から落ちようとした。


でも。


恐くて足が震えて・・・・駄目だった・・・・。


私は、死ねない・・・・。


私は手すりの下にしゃがみ込み、震えながら泣いた。


ププーーー!!


その時、度会橋の国道から一台の車が止まった。その車から男性らしき人が降り、私の所に近づいてきた。誰ですか・・・・。ダメだ・・・意識が・・・・。


そこから記憶が無い。




この匂い。・・・・・カレーだ!!


目が覚めたとき、私はボロボロのソファに寝ていた。辺りは静かで薄暗く散らかった広い部屋の中にいた。ここ何処?。・・・・・私の体には暖かい毛布が被っていた。そして奥の部屋から黄色く美味しいそうな「カレーの匂い」が香ばしく漂っていた。それにしても、汚いなこの部屋。暗くて分かんないけど、本や段ボール箱でいっぱいだ。私は起き上がり辺りを探索した。まず、ここは何処なのか、はっ!もしかして、私本物の「誘拐犯」に誘拐された!?

 そうだ、そうに違いない。わわわわわ・・・・どうしよ・・・そうだ携帯!!・・・・家に置いてきたんだった。最悪・・・・。まずいよ・・・まずいまずい・・・。


その時私は床に落ちていた物を見つけ、確認した。


これって・・・・。




ガチャ・・・・・


「ん?・・・気がついたんか?」


誰かが部屋に入ってきた。私はすぐにソファに戻り毛布の中に入った。


ギシ・・・ギシ・・・カラン・・・おっとと・・・


この重さとの足音に鈍い歩き方といい、おそらく男性で・・・・もしかしたら結構年輩の人。どうやら電気を付けない所を見ると、この部屋は電気が壊れているらしい。男性が目の前の机に何かを置いた。


「冷めねぇうちに食いな。」


食べる?・・・・冷めないうちに?。


男性はまた、ふらつきながら奥の部屋へと帰っていった。


「カレーだ・・・・グゥゥゥゥゥゥ~」


・・・・晩ご飯まだだった。・・・・ゴクン。


「いただきます。」


謎の男性が持ってきてくれた「カレー」は、どうやら手作りカレーで、とても香ばしくこだわった味に甘口のカレーだった。お腹が空いてたせいか早く食べ終え、今度は飲み物が欲しくなってきた。


「甘口で美味しかったな・・・・。水がほしい・・・。」


はぁ。今頃、家の者は私の事を心配して探してるんだろうな・・・・。これ以上心配かけないよう早く帰らないと。下手したら警察に通報して「捜索」する騒ぎになっちゃう・・・・。まって・・・じゃあこれは?


誘拐されたんだった!?・・・・


「誘拐はねぇだろ。助けてやったのによ・・・。」


突然、私の背後から声が聞こえてきた。


「きゃっ!!・・・・」


私は驚き、その人の正体をを見た。


その人は、男性で背はそんなに高くはなく。白い白髪に、白い顎髭、白いパーカー、グレーの迷彩柄ズボン、そして白いキャップを被った年輩の男性だった。


「そんなに驚くかよ・・・・。」


「・・・・誘拐犯ですか?」


「失礼なお嬢ちゃんだなこりゃ。」


 白いキャップを被ったおじいさんは、度会橋で買い物の帰りの途中に、偶然しゃがみ込んだ私を見つけ、急いで車を止め、私に「大丈夫か?」と聞いた時、すでに私は気を失っていて、このままほっとく訳にはいかないと思い助けてくれたみたい。・・・・・そうだったんだ・・・。


「そうだったんだって・・・・お嬢ちゃん。ありがとうございますだろよ・・・・。カチ」


白いキャップを被ったおじいさんは呆れながらタバコに火を着け、ソファに座り一服しだした。


「それで・・・カレー美味かったかい?」


「え・・・・!?・・・・はい。とても美味しかったです。」


「ほうか。はははは。よかった。よかった。」


「あの・・・・ここは何処ですか?それに・・・あの・・・」


「ん?・・・・誰か来たな・・・。」


白いキャップを被ったおじいさん急に起き上がり、部屋の窓から外の様子を見た。しばらくすると、おじいさんは「またきやがったな・・・クソガキが・・・」といい。私にここを動くなと言って建物の奥へと移動した。

 数分経っても戻ってこなかった・・・。何かあったのかな・・・・トラブルじゃなきゃいいけど。・・・なんか心配だ・・・・ちょっと様子見に行こうかな。

 私は恐る恐る奥の部屋へと進み、薄暗い廊下を歩いていた。しばらくすると目の前に、下へと繋ぐ階段が見えてきた。ここは二階だったんだ。それに下の方の一階は電気が付いてて明るい。私は壁をもたれながら下へと降りていった。降りてみると一階の方は綺麗に片づけてあって、二階とは別世界だった。

 このまま真っ直ぐ行くと玄関らしきドアがあった。廊下の右側の方はリビングになっていて、どうやらそこからおじいさんの声が聞こえるのが分かった・・・・誰かと喋っている・・・・私は、廊下で二人の会話を聞くことにした。


「もう・・・帰れ。今日は忙しいんじゃ。」


「このハウス手に入れるまで帰んねぇよ。」


「じゃぁ。集まったのか?」


「明日連れてきてやるよ・・・俺のバンドを・・・。」


「どうせ、またすぐ解散するだろよ・・・。」


「しねぇよ!!・・・・やっと見つけたんだ。あんなやつら他にどこ探しても見つからねぇ最高のメンバーだ!・・・特にアイツは・・・。」


「とにかく、今日は帰れ・・・今客いんだよ・・・。」


「客~~~?・・・変だな、このボロライブハウスいつから営業し出したんだ?空き屋だったはずだろ?」


「ちちちち違う!違う!・・・いまホームレスの仲間が二階で寝てんだ!?」


「そこに隠れている奴か?」


「何!?」


え・・・・・・!?


「出てこいよ・・・影が見えてんだよ・・・。」


バレた・・・!!どうしよ・・・どうせ今玄関に逃げてもバレてしまうし・・・ええい!正体見せるか!!



「は!?・・・・お前!?」


「!?・・・青林檎君!?」


「はん?なんや知り合いか、お前ら?」


一階のリビングでおじいさんが喋っていた人は、まさかの「青林檎君」だった。場は一時静かになりおじいさんは私達が知り合いだったことに驚いていた。青林檎君の方は、私が「青林檎君」と言ったことで大爆笑しているし、同時にこのリビングの壁に置いてある時計を見て、時刻は夜の22時前になっていた。


「なんだよ・・・・笑。アオリンゴって・・・笑。てか!なんでおるの?」


「いや・・・・その・・・・。」


「まぁいいや。おい!爺さん。そいつが三重の天才ベーシストだ!」


「えぇ!?・・・お嬢ちゃんが!?」


ん?・・・え?え?・・・。


何の話してたんだろ?確かバンドどうのこうのって言ってた気が・・・青林檎君が私の横に来て耳元で「なんでここにいるんだ?」と小声で聞いてきた。私は彼に何か言おうとしたとき、青林檎君がいきなりおじいさんに・・・


「わりぃ。爺さん!今日は帰るは・・・ついでにコイツも一緒に。またな!」


「ちょ・・・・。!。あっ・・・あの!。カレーご馳走様でした!助けて頂きありがとうございます!」


おじいさんは、左手を白い顎髭に触りながら難しい顔しながら考えていた。


 おじいさんの住む「ボロハウス」を出て、外の景色は目の前に田んぼが並ぶ田園風景だった。辺りは暗く町のネオンも無く、普段伊勢でよく聞く「救急車」や「パトカー」のサイレンは無い、聞こえるのは蛙とコオロギの大合唱だけだった。おそらく、「度会橋」で見た、あの遠い山はこの辺りなんだろう。

 すこし歩き、田んぼと田んぼを挟む道路が見えてきた。今の夜空は快晴に星空満天に輝いていて、赤と緑に光る飛行機が飛んでいた。青林檎君が先頭に歩いていて、彼の後ろに私が歩きながら、なんでおじいさん所に居たのか説明していた。


「ふ~~~ん。でもそれって・・・誘拐じゃね。」


「やっぱり?」


「うん。だって、普通倒れている人見つけたら真っ先に救急車呼ぶだろ?でもあの爺さんはお前を車に乗せ、自分の家に連れて帰り、監禁してたんだぜ?」


「監禁って・・・・そうだったのかな・・・?」


「そうだよ!危ねぇな~あの爺さん!」


彼は喋りながら前を向いて歩いていた。


「警察に通報した方がいいかな?」


「おお!しようぜ!俺達二人で犯人捕まえよう!!」


「・・・・・うん・・・・。」


彼はズボンのポケットから「スマホ」を取り出し、警察署に電話しようとしていた。


「・・・・やっぱり・・・やめよ。・・・助けてもらったし。・・・なにかお礼したい。」


「あっ!もしもし?警察さんですか?・・・・うん。・・・あー。・・・」


「え!?・・・ほんとに電話したの?」


「バーカー。してねぇよ。笑」


彼は笑いながら歩きこの道に設置してある、「自動販売機」に着いた。彼がそこで「何か飲む?」と言ってきた。そういえばさっきおじいさんの「手作りカレー」食べたときから喉が渇いていた。私は、財布も家に置いてきたからお金も持っていない。私は飲み物が欲しかったけど、いらない。と言い、彼は「あっそ!」と言い、自分の好きなジュースを購入した。


ガコン!・・・・・「おおきに~」


ポカリスエットだ・・・・ゴクン。美味しそう・・・・。


ゴクンゴクン。ゴクン・・・・かぁ~~~~~。


美味そうに飲みやがって・・・・この野郎。


はぁ。家にはまだ帰りたくないな。帰ったらまた、怒られる・・・。


「ほらよ。」


「冷たっ!」


彼が飲みかけのポカリを私のほっぺに当ててきた。


「喉渇いてたんだろ?」


「え・・・・でも・・・・」


「半分残ってるから。もう全部飲んでええよ!」


ありがたいけど・・・・でも、これって・・・アレだよね・・・・。


「何迷ってんのお前?あっ!そうか!お前。かぁ~。そんな恥ずかしいの?笑」


う・・・・こいつ。ええい!分かったよ。こっちは喉が渇いてたんだから、ありがたく飲んだるよ!



ゴクンゴクン。・・・・はぁ。・・・・


「少な・・・・・・」


コイツ半分以上飲んでたし!。嘘つきやがって・・・・


「あの爺さんは、今捕まってしまっては困るんだよ。これからビシビシ動いて貰わねぇといかねぇし。」


?・・・・・。


彼は自動販売機に置いてあった自転車に乗り出し、「家まで送ったるよ」と言ってきた。


「え?・・・でもそれ、人のだよ。」


「俺のだよ!さっき爺さんの家行く途中ここに置いてきたの。早よ後ろ乗れって!」


「・・・・でも二人乗りは、いけないんだよ!」


「真面目かよ。流石学年一位様だ。」


「く・・・・分かったよ。」


私は彼の言うとおり、自転車の後ろに乗り。二人乗りで伊勢方面へと向かった。たまにちょいちょい道の案内標識を見る限り、どうやらここは「度会町」だそうだ。度会町は伊勢市の隣の山の方にあり自然に囲まれたのどかな町だ。辺りはまだ暗いたまにすれ違う車。私は最初は両手を自転車に掴んでいたんだけど、彼の運転の速さに思わず、彼の背中を強く支えていた。


暖かい・・・・相変わらず「甘く」「爽やかな」匂いをしていた。彼は見た目は少し小柄で子供っぽいんだけど、今日の青林檎君の後ろから見る姿は大きな背中に身長の高い雰囲気に見えた。・・・・また心臓が痛くなってきた・・・・


「堀崎憂希!」


はい?


「俺の名前!・・・・青林檎って初めて言われた!」


堀崎憂希・・・・・あ!思い出した・・・・確か指導部室で「強制帰宅リスト」に乗っていた名前だ。やっぱり彼だったんだ。


「そう・・・・私は・・・・」


「笹木川遙佳だろ。・・・・知ってるって!!」


「・・・・・・・・」


「なぁ!俺達とロックやらないか?俺は本当に世界を変えてんだよ。」


「考えさせて・・・・」


「お前も気づいてんだろ?今の状況。それでもまだ、あの地獄見るのか?」


「・・・・・・・・いや・・・だ・・・」


「このバンドはお前の力が必要なんだよ!お前がいなきゃ何も始まんねぇんだよ!」



一緒に変えようぜ!!



・・・・・・私を・・・・必要としている・・・・・。


彼は「世界を変えたい」という大きなバカな目標の為ロックをしようとしている。じゃぁ私は何のために「ロック」をするの?悪夢を終わらすため?チカのため?・・・・音源?・・・・・・そうだった。


元々は私が音楽を始めた理由は、私とチカで「二人だけの音源」を見つけることで始めた。色んな楽器を探し出し、私達に合う楽器も手に入れ、音源を極めるためロックの世界に入った。でもその後私達は、「何か」得た?・・・・何も得てはいない・・・・生まれるのは悲しみと悪夢と孤独と・・・・


「ハル!!」


別れだった・・・・。


そして私は一人になり、音源の事を忘れ、いつの間にか「ベースのギター」は飾り物に変わり、一人しゃがみ込む毎日だった。そして初めてまた新たな出会いがあり、「友達だ」と思った人が「悪夢」になり最後に待ち受けていたのはまた二度目の「別れだった」。私は孤独で泣きながら走っていた、この世界は私を邪魔者扱いし、嫌われ誰も私を必要としない世界だと確信した結末に変わった・・・・もしあの時チカの家で「音楽番組」を見ていなかったら・・・チカは今頃元気に一緒に登校したり勉強したり帰ってたのかな。


でも・・・・それは違うと思う・・・・私達は自分たちの意思でこの道に歩き出した。あの「音楽番組観たのも」「二人で音源作ろうなったのも」「ギタコンで最優秀賞取ったのも」「あの時階段から転倒したのも」「チカが・・・・」・・・・運命だったのかな。そして今度は「青林檎君」が現れてまた忘れかけていた「音楽」を「バンドやろう」と言ってきた。私はまだ「ロック」に未練があるのかな・・・・そうだよ。私はまだ、何も「極めていない」。それに彼は私をすごい必要としている。・・・・でも、また


裏切られたら?


多分、彼は裏切らないと思う・・・・分かんないけど・・・・彼は「嘘」という文字が無い。


ちょっとだけ、彼の「道」に手伝ってみようかな・・・・違う。変えるんだ!この冷え切った時代を私達の「音楽」で。変えなきゃいけない。いつまでも、くよくよしてちゃいけない・・・・


「うん。時代を変えよう!!」


「おおっ!ビックリした~!!オケッ!頼りにしてるぜ!リーダー」


やっぱリーダーなんだ・・・・・。


ウーーーーーーーーウーーーーーー!!


「そこの二人乗り止まりなさい!!」



いきなり、後ろの方から眩しい光と耳に響くサイレンが鳴り出した。


「うわっ!・・・・警察!?」


「ははは!逃げるぞ!!」


私は彼に強く掴み、彼が全速力で自転車をこぎ出した。


「止まれって言ってんだろ!!」


パトカーの中の人の声が怒りに怒鳴っていた。


それでも止まることは無い私達は、国道から田んぼ道に入り車の通れない細い道へと逃亡した。


「もう・・・追ってこないみたい・・・。」


「ふぅ~。楽しかっただろ?」


「・・・・うん!すごいスリルあって面白かった!」


「てかお腹痛いんだけど。もう離してくれ。」


「あ!・・・ごめん!」


すごい楽しかった、とてもスリルがあって心臓がバクバクしながらの恐さと面白さで、気づいたら大爆笑している私がいた。久々に笑ったな。もうちょっと・・・彼と二人でこのままゆっくり二人乗りの時間続いて欲しいな・・・・ん?何言ってんの!!私!?・・・・。


「明日さぁ!コンビニで待ってろよ!」


「え?。」


「その。え?、明日から禁止な!!」


「なんで?」


その瞬間彼が自転車を止め、


「可愛くねぇから。」


はい?・・・・・


その後また自転車は動き出し、私は無言のまま固まり顔が熱かった。


 少しして、景色はネオンの光が見えだしてきた。あと数キロで伊勢市に入り、まるで夢から現実に戻されるような感じだった。家に帰りたくないな。でも帰らないと流石にもう怒ってないよね。多分。


伊勢市に入りいつもの国道沿いのコンビニに着いた。


「ありがとう。送ってくれて。もうここでいいよ。」


彼は自転車を止め、すぐにアスファルトの地ベタに寝転んだ。


「かーーーーー。疲れたーーーー。重いよお前~。何食ってんの?」


ムカっ。この・・・・ストレートに言いやがって・・・。


「なぁ。もう一度聞くけど。バンドやるよな?」


その時、一瞬彼の顔がマジに真剣な顔になった・・・・


「うん。やるよ・・・・時代を変えるんだから、二度聞かないで。」


私は寝転んだ、彼の所に行き、


「ねぇ。約束してくれる?絶対、裏切らないでね。」


私は彼に右手で小指を指し。


「・・・・・。おう!」


二人の小指と小指が「ゆびきりげんまん」の「約束」をした。同時に私が「新たな音源の道」に挑む日となった。


「あっ!明日。ギター持って来いよ!!」


「なんでギターまで知ってんだよ!?・・・・親に売られたからないよ・・・。」


彼は目が点に驚き、またアスファルトの地ベタに寝転んだ。


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