イントロ4
ピッ・・・・・・
続いてのニュースです。
昨日。午前九時過ぎ、伊勢市の住宅街でオートバイと女子高生が接触する事故が起きました。
接触した女子高生は。
三重県伊勢市内に住む。高校生、金沢千花さん(十五歳)。
頭など胸などに、オートバイに強く接触し。その場で死亡が確認されました。現場は見通しの良い十字路の交差点で。事故当時は車などは走行していなく。金沢さんは急いで走っている所、右折する道路から飛び出してきた、同じく伊勢市内に住む中学生が乗ったオートバイに強く接触し。現場は一時騒然となりました。
目撃者は?
「いや~~。すごかったよ~。いきなり外からガシャーーンって音してね・・・」
「そうですね・・・もう、駆けつけた時にはもう・・・即死でしたね・・・」
乗っていた中学生は無免許運転だった模様です。
チカが教室に戻るとき、保健室のドアで。
「じゃっ!また明日会おうね!」
私は保健室の窓際のベットから。
「うん!五限目の数学頑張って!」
「おえぇ~~。」
それが、チカとの最後の会話になった。
チカの死後から一日が経ち。
私は、父と母と三人で葬儀場へ、チカの「お通夜」に行った。
時刻は夕方の十八時半。今日の夕方の天気は曇り。明日から雨だそうだ・・・・。
葬儀場では、多くの親族や親しい友人、ゆかりの深い人達が集まっていた。
・・・・・。
私と父と母。
会場の前にはチカの両親。家族、親戚の人達が座っていた。
会場は、黒い喪服の着た人に埋まった。
次第に、木魚の「音」が鳴り出す・・・・。
トットットットットット・・・・
夢だよね?・・・・・
トットットットットット・・・・
チカの顔は満面な笑顔で笑っている。
・・・・なにか言ってよ。
トットットットットット・・・・
なんで、死んだの?・・・・・・
トットットットットット・・・・
・・・・昨日・・・から。テスト期間だよ・・・・。
トットットットットット・・・・
・・・・。葡萄ケーキ。先食べちゃうよ・・・。
トットットットットット・・・・
温泉は?・・・・・
トットットットットット・・・・
正面に置いてある、木の箱が大きく見える。
トットットットットット・・・・
・・・・・そうだよ・・・・。
トットットットットット・・・・
私達の「音源」は?・・・・・。
ねぇ・・・・ねぇ?・・・・ねぇ?・・・・
「ねぇ!?」
私の心の声が会場に漏れ大きく響いた。他の周りの人達は驚き、私はすぐに立ち上がり。皆様に深く謝った。お母さんが横で気を遣って、もう帰ろうか?。と聞いてきたけど、最後までせめてチカの顔見るまで帰りたくなかった。・・・・見れるかな。私。
背後の三十代くらいの女性が友人に話をしている会話が聞こえた。ここの葬儀場の中は小さく。入館してから数分で満席になり、後ろの方では立っている人が多かった。私達の座っている席は、一番後ろの方で、一番前のチカの家族やチカの・・・・ね・・・眠っている箱まで意外と遠く感じた。
「即死だったんだって。可哀想に。まだ十五歳だよぉ~。これからなのにね。」
「運命だったのかな~。人生何が起きるか分かんないね~。」
「あんたもたまに、運転フラフラしてるときあるから、気をつけなよ!」
「うるせぇ。わかってるよ!」
運命?・・・・・人生?・・・・何言ってんの・・・この人達。チカの事故は「運命」だったの?・・・・違うよ・・・勝手に決めないでよ。・・・・・チカのこと何も知らないくせに・・・。これから?・・・・そうだよ、これからだったんだよ!私達の「人生」は!これから私とチカは「私達の音源」を作って、楽しい人生が始まる瞬間だった運命だったのよ!・・・・・それが・・・それが・・・・。
あなたたちに私達の何が分かるの?・・・・偉そう・・・に・・・言わないで・・・・。
「なぁ。どうする?千花ちゃんの顔見に行くか?」
「いいわよ。これから晩ご飯食べに行くんだから・・・。」
「だよなぁ。だって、もう顔とかも包帯で巻いてるそうだからな。」
「うわぁ~~。」
・・・・・・。初めて。・・・人を殴りたいと思った。同じ「人間」とは思えない・・・・。私はすぐ後ろの三十代の女性と男性に、私は怒りに燃え立ち上がろうとした瞬間。私の左に座っていたお父さんが、立ち上がり、そのまま三十代の二人に向かい。「ちょっと。いいですか。」と二人を廊下の方に連れて行き三人は会場を出た。私も後から気になり、三人の後を追い。廊下の方へと向かった。
私は、廊下でお父さんと三十代の二人が会話している声を隠れて聞いた・・・・。
「今の話。千花ちゃんのご親族の前で喋れますか?」
「・・・・・・」
「あなた達が何思うが何喋ろうが、別に構いません。しかし、目の前で大勢の人が悲しんでいる光景を見て何も思わないのですか?あなた達は金沢家のどういったご関係なんですか!家族や親戚の人達が千花ちゃんの突然の死に悲しんでいるのに・・・・。あなたもですよ・・・・」
「え・・・・・・。」
「顔を見たくない?。・・・・ご飯が食べれなくなる?・・・・あなた達はここに何しに来たんだ!!」
「す・・・・すみません!!」
「・・・・最後まで。見届けるのが・・・・私達の役目じゃ・・・ないですか・・・。」
・・・・・。初めてお父さんの怒っている、泣いている姿を見た・・・・。いつもお父さんは家の中では、とても静かで家ではあまり喋らない。仕事の時も「赤福餅」を作るときも無言で一生懸命働いていて、頭の中は「赤福」でいっぱいのお父さん。・・・・でもお父さんが、あんなに怒って泣いているのは、すごく分かるよ。お父さんとチカの関係は全く知らない関係じゃない。
保育園の頃から仲良しだった私とチカ。よくチカと私はいつも保育園で帰りのお向かいが遅い組で。二人で遊具で遊んでいた。当時よくお向かいに来ていたのが私のお父さんだった、その時に初めてチカと出会って、チカも私と同じ「娘」のように見守ってきた。小学校の頃もチカの家で夕方まで遊んでいたり、公園で遊んでいたときも、いつも向かいに来てたのはお父さんだった。たまに、一緒に三人で遊んでた事もあったっけ・・・・楽しかったな。チカもお父さんのことが大好きで当時よく「パパ~」って言ってた。・・・・・そう!中学の頃も初めて家の「赤福店でバイトしたい」って言ったときも、お父さんは迷わず、チカと私に。「頼りにしてるぞ!」って言ってくれた。バイトしているときも、チカとお父さんは楽しそうに働いていた。・・・・そういえば、チカといるときだけお父さんはよく「笑顔」の時が多かったな・・・・・。そんな・・・・そんな仲の良い関係だったチカとお父さん。・・・・だから・・・お父さんがあんなに怒ったり泣いたりする気持ち分かるんだ・・・
「千花ちゃんは・・・私の娘でしたよ・・・・ほんと・・・・に。」
お父さんが泣きながらしゃがみ込んだ・・・・。
その後三十代の二人は、お父さんに謝り。会場へと戻っていった。
お父さん・・・・ありがとう。
その後私も、会場に戻り母の横の席に戻った。後ろにいた三十代の二人も泣いている声も聞こえ、少しスッキリした。お母さんが、お父さんは?と聞いてきたが、私は気を遣い、トイレに行った。と答え、五分後にお父さんが目を真っ赤にしながら帰ってきた。気づけば、木魚とお経の音は終え。チカのお父さんが最後にチカの思い出と最後のお別れを語り出した。チカの思い出話をしている中、会場から多くの人が泣く声や鼻をすすったりする声と音が舞い上がった。横にいた、お父さんも更に泣き出し、顔をハンカチで押さえ下を向いていた。お母さんも涙ながらハンカチで涙を拭きながら、ただ会話を聞いていた。後ろにいる人。前の列の人も。その前も。そのまたその前も。この会場にいる人全員が泣いているように見えた。・・・・それなのに・・・・それなのに・・・・なんで私は・・・涙が出ないのだろう・・・・。一番・・・一番・・・泣きたいのは・・・私なのに・・・。
悲しい・・・はずなのに・・・。もう・・二度と・・チカと会えないのに。
ただ・・・ただ・・・・、頭の中で思っていた事があった・・・・それは・・・。
この会場で鳴り続けていた「木魚の音」。
天へと呼び続けていた「お経」。
そして、この会場埋め尽くす「涙の声と音」。
その三つの音が頭の中で混合し。新しい「リズム」「一つの音」になる答えを探している感情があった。
何考えているの・・・・。私。
絶対、今考える事ではない・・・。でも・・・どうして?。
さっき、お父さんがチカのこと思って泣いてくれたのに・・・・なのに・・・なのに・・・。
私の頭の中は・・・「音源」のことがいっぱいで泣くことができなかった。
チカのお父さんが、お焼香をお願いしますと言った。
チカの眠る木の箱の「棺」の前で多くの人達がチカに拝んだ。私達の番はまだ遠い。棺の近くで深くお礼をする、チカのご両親、ご親族の方。たくさんの人が拝んでる・・・・・。辛い・・・・辛いよね・・・。あっ小山先生がいる・・・。やっぱり、さっさと帰っていた・・・・なにそれ・・・・。
保健室の先生も。他のクラスメイトもチカに泣きながら拝んでいた。皆・・・皆・・・悲しかった。チカ・・・なんで死んだの・・・。ごめんね・・・何度も・・・言って・・・。
そして、私達の番がきた。父と母と順番に拝みチカの家族、ご親族達に深く頭を下げた。そして私の番。
今まで誰も今のところ。チカの家族以外、棺の中のチカの顔を見ていない。やっぱり、本当に見れない状態になっているせいか、誰も近づいていない。チカと仲が良かった私のお父さんでさえ、胸が苦しくチカの顔を見に行くのができなかった。・・・・だけど・・・・だけど・・・・私は・・・・。チカが眠る「棺」の所に近づいた。きっと・・・私の両親も。他の人達も。そしてチカの両親。ご家族の人も驚いたと思う。
「・・・・・・・。遙佳ちゃん!?。」
私は、言った。
「チ・・・チ・・・」
顔が熱くなる・・・・。
「チカの・・・お顔を・・・みせて・・下さい。」
チカのお母さんが。ゆっくり、棺の小さな窓を開けた。
チカ・・・・・。
ようやく。私の両目から。大きな涙が流れた。
たとえ。頭の中が「音源」のことでいっぱいでも。この瞬間には敵わない・・・。
チカの「お顔」を見た瞬間。やっと・・・・やっと。「チカの死を」認めた私。
スッ・・・・。スッ・・・・。ありがとう。チカ・・・・。
ゆっくり・・・休んでね。
やっぱり。悲しいよ・・・・。だって・・・だって。
チカは・・・世界で立った一人だけの「大切な友達」だから・・・。
私は、泣きながら父と母と会場の玄関まで向かった。葬儀場の玄関では、チカの親戚の人達が出迎えてくれていた。今日チカの「お通夜」に来てくれた人達、一人一人に深くお礼をし、挨拶をしていた。その親戚の中の真ん中で一人身長の高い人がいた。・・・・・堅太君だ。
私は一昨日、チカが来るのを待っていた時に、慌てて私の所に堅太君が来て。チカの事を伝えに来てくれた。・・・・堅太君も泣いていた。すごい・・・泣いていた。堅太君も泣きたいよね・・・。一番近くで見守っていたから。兄妹みたいに過ごしてきたもんね・・・・。涙が止まらない・・・。
私達は堅太君の前で止まった。ありがとう。堅太君あの時、伝えに来てくれて。一番辛いのに・・・。
堅太君は、泣きながら父と母に握手した。そして私も・・・・。
「・・・・。堅太君。」
「遙佳ちゃん・・・・来てくれて。ありがとう・・・。チカも喜んでいるよ。」
堅太君・・・・。
チカは・・・・もう・・・・いないよ。
私達三人は、葬儀場をでて父の車で家へ帰った。お母さんが、明日の葬式辛かったらやめるかと。聞いてきた。
ううん。・・・出るよ。・・・明日も。
行かなきゃ。最後まで見届けたい。
葬式当日。予報は当たった。三重の空は朝から薄黒く染め、一つ小さな雫が、大きな弾丸のような粒になり、土砂降りの雨が降っていた。天気予報によると、この雨は一日中降りっぱなしで、三重県各地に「大雨警報」が出ていた。この影響は日本からまだ遙遠い、南の海で活発した大型台風の接近によって影響していた。チカの葬式はこんな天気の中予定通り行われた。会場は昨日と同じ葬儀場で、昨日と同じ多くの人達がチカの「お別れ」にやってきた。本来なら今日は水曜日で、今週から始まりだした、「新入生学力テスト」を受けているはずだった。でも今日は私のクラスだけが休みとなり、代わりに今日のテストは今週の土曜日に受けることに変更した。今日はお父さんもお母さんは来ていない。私は高校の、同じ教室のクラス全員と参加していた。他の皆もチカとは小学校や中学からの仲もあり、全く初対面ではない。数人は隣の町からや県外の人もおるけど、チカは入学してからすぐ、皆と仲良くしていた。私は未だに打ち解けない。私はまだ、誰とも喋ったことがないから。すごい不安だった。
集合時間八時半。カラフルな傘やビニール傘が駐車場で集まりだした。クラスのリーダー的な男子が呼びかけていた。だいたい皆が集まりだした頃、国道からシルバーの外車に乗った担任が入ってきた。
「よし!皆いるな?入るぞ入るぞ!」
相変わらず。マイペースな「ダメ担任」。駐車場は激しい雨で点呼は取れなかったけど。会場に入って人数点呼するかと思ったら。一人さっさと席に座り、即効スマホを取り出しアプリゲームをしだした。ありえないんだけど・・・・・。一応クラスの人は皆おるみたいで全員集まって席に座った。これで、全員か。一クラスだけだから少なく感じた。・・・・・・、そういえば。「あの人」は来ていない。確か同じクラスだったよね?。それに今日で一週間自宅謹慎が終わるから・・・・まだ知らされていなかったのかな。
そこにクラスの一人が私の隣に座った。・・・・・・誰?・・・・。
「笹木川さん。大丈夫?。」
フワリとした黒い髪に「甘い」香りをしたショートボブの髪型をしたクラスメイトの畑中さんだった。
「・・・・・!?。う・・・・うん。大丈夫です。」
「そ。・・・・・よかった。」
畑中さんとは、保育園の頃から一緒で。勉強もスポーツもできて、クラスの女子の中でリーダーシップある畑中さん。いつも畑中さんは私達と違うグループにおり。結構明るいメンバーにいる。
「チカ・・・。なんで・・・・・。」
畑中さんもチカと仲が良かった。チカは私だけでなく、他のグループとも仲が良く。チカは誰とでも好かれるキャラだった。でもチカは、違うメンバーと遊んでても一番「友達だ」と思うのが「ハルだ」って言っていた。私と畑中さんはあまり喋ったことがなくて。小学中学、高校十年間一緒だったけど。そんな笑いながら喋ったことはない。現に今だって、畑中さんと話すときはいつも「敬語」で。いつもドキドキしながら会話している。チカはよく私に、同い年の人に敬語で喋るのは変だよって言われた。もっとハルは「自信」を持って主張したり会話に入った方が良い、とも言われた。そんなことはわかってる・・・・。でも私は生まれながら物心を付いた頃から「人見知り」の私。しかも「超」が付くほど。唯一、同い年で喋れるのはチカだけ。
やっぱり・・・・他の人と仲良くするのは難しい。だから、わたし・・・・・
「私ね。チカと同じ地区でご近所なんだ。」
「え・・・・。」
「だから・・・チカとはいつもよく・・・遊んでたから・・・」
知らなかった。畑中さんの家はチカの近所だったんだ・・・・。でも・・・・。私も昔からチカの家のあの辺でよく遊んだりしていたけど。畑中さんと会ったことはない・・・・。そうだったんだ。畑中さんもチカと一緒に笑える仲だったんだ。畑中さんも辛いよね。急にチカがいなくなって、ビックリだよね。
「昨日。チカのお顔見たのでしょ・・・・。チカ・・・どうだった・・・?」
「・・・・・・。」
思い出したくない・・・・。でも。あの時チカの顔見たのは私だけ。どう、答えたらいいか分からない。
「ごめんなさい。」
私は。謝った。畑中さんは。なんで謝るの。と聞いてきた。気づいたら私は。泣いていた。
早く。終わらないかな・・・・・。辛いよ。
葬式が始まり、時間は一時間半で終わった。会場にいる全員が席から立ち上がり。いよいよチカが運ばれる瞬間が来た。ゆっくりと会場の出口に向かうチカの棺。私はその光景を見て、とても絶えきれなく。私だけ席に座り。泣いた。その時隣にいた畑中さんが、私を支え。最後までチカを見届けよって言い。畑中さんに支えながら、チカの家族ご親族が歩いている姿を見た。そして、チカは「霊柩車」に乗せられ・・・。
別れの時が来た・・・・・・。
プゥーーーーーーーーーーーーーーーーー。
「ハルっ!!」
「音源作ろうよ!!」
「今度は優勝できるよ!!」
「おっ!わりわり。」
「さっ!温泉!温泉!」
「なにより。演奏しているハルの姿を見るのが、一番の幸せなんだ。」
チカ・・・・・・。
プゥーーーーーーーーーーーーーーー。
運命ってなんなの・・・・。
今日は土曜日。今週最後の登校日だ。今日でテスト終わりか・・・・。
「遙佳ーーーーー!いつまで寝てるの!もう七時十分前よーーー!」
今日も寝坊した。
あの日以来私は、毎朝五時に起きることができなくなった。葬式が終わって次の日、一日中部屋の中にいた。朝のご飯もお昼も夜の晩ご飯も何も食べなかった・・・。私は暗い部屋の中で一人。考えていた。学校は木曜から登校の日なのに。テスト期間の大事な時なのに、私は行かなかった・・・。考える時間が必要だった。それから翌日金曜日の夕方、担任の小山先生から連絡があった。土曜日テスト最終日だけど、その日三時間で終わるから、残りの七教科のテスト夕方十七時まで、やってしまえ。と言われた。私は、はい。と答え、小山先生の命令に聞くことにした。今回の「新入生学力テスト」はあくまで、この一ヶ月ちょっとで学んだ事を一度試す試験。その試験の結果でどの生徒がどこまで学べたか、レベルを付けられ。検査する試験。もし、この試験をサボったり。受けなかった人は。「留年確定」という札を成績表に付けられ、大変な事になる。だから私は。仕方なく、今日土曜日に。高校に行くことにした。
何度見てもチカからのメッセージは無い。今日は伊勢神宮に「お参り」に行かなかった。
いつも通学路で立ち寄る国道沿いのコンビニも寄らなかった。横断歩道で信号待ちしているときも、何度も後ろの方を見てしまう。私は「黄緑色のリュック」を寂しく揺らしながら登校した。高校の門まで近づいた時、とある一件の小さな屋台を目にとまった。
「あれ・・・・?もしかして・・・・。」
「はい!いらっしゃ・・・・・・遙佳ちゃん!!」
堅太君だった!
堅太君の職業は「タコ焼き屋」で、昔大阪で「自分探し」していたときに「大阪のタコ焼き」に驚かせられ。自分もこんな「美味いタコ焼き」を作りたいと思い。大阪で数年、タコ焼きの修行をし。今度は地元の伊勢で自分の「タコ焼き」を食べさせたいと思い、今はこうして自分の店を開き。タコ焼き屋をしている。堅太君には「大きな夢」があってね、いつか自分の「タコ焼き」が三重の名産品にするのが夢なんだって。堅太君らしいな。まだ経営して二年くらいなんだけど。結構この辺りでは有名な「タコ焼き店」になってるんだ。たまにチカが食べたときは、チカが「まずぅ~~。」って言って堅太君に駄目だししてたんだけど・・・・。
「遙佳ちゃん・・・。もう。大丈夫なんか?」
「うん。もう、平気・・・。堅太君は?」
「大丈夫やもう!いつまでもクヨクヨしてたら。それこそアイツに怒られるは!ハハハ!」
「フフ・・・・。」
「それに、今は大事な彼女もおるし!明るい未来のために稼がないかんでさ。」
私は。堅太君に勇気を貰い、堅太君に「行ってきます!」と言った。その時、堅太君が「これ持ってき!」と「タコ焼き」を貰い今日のお昼ご飯に食べることにした。
教室に入り、自分の席に座った。今日の学校は私達のクラスだけ。水曜日が「チカのお葬式」だったため、水曜日のテストを急遽土曜日に変更にした。今日も皆登校して。色々会話したりしている。私も学校来た時はいつも喋っていた。でも・・・・その相手はもういない。隣の席だった、チカの席は違う人の席に変わっていた。私はテストが始まる八時半まで席で静かに待ち続けた。・・・・・あと二十分か。
「おはよう。遙佳さん!」
え!?・・・・・誰・・・・。
私の名前を呼んだその相手は、フワリとした髪に甘い香りをしたショートボブの髪型の、畑中さんだった。私は・・・おはようございます。と小さな声で言った。
「木曜から、遙佳さんの隣の席。私になったから。これからもよろしくね。」
「あ。・・・はい。よろしくお願いします。」
「その敬語やめない?同じ同級生なんだから!気軽に行こうよ!」
「はっはい!よろしくお願いします。!」
「だ~か~ら~。」
すごい。畑中さんってこんなに優しかったんだ。それにすごい話しやすいし、とても穏やかな人だな。それに何処か、雰囲気がチカに似ている。・・・・・・チカの言うとおりだ。やっぱり私は自分に「自信」付けなきゃいけない。もっと人と喋って自分を主張しなくちゃ。
「これからも。よろしくね!」
「うん!よろしくね。遙佳さん!!」
それからテストが開始し、あっという間に三時間が終わった。本来はここで全てのテストは終わりだが。私だけはまだ受けていない教科のテストがあり、続けて残りの教科を十七時までに終わらせなきゃいけなかった。他の皆は下校し。教室では私一人だけ残された。小山先生が来るまで。後五分くらいある。その間にテスト勉強の確認しようとしていたら、一人の生徒が教室に入ってきた。
「遙佳さん!!」
「畑中さん。?」
「遙佳さん!今日夕方、十七時半にクラスの女子皆で学校近くの珈琲レストランで「お茶会」するんだけど。遙佳さん来れる?」
「え・・・・。」
「別に無理やったらえんやけど・・・・来れるのかなと思って・・・・。」
多分。この誘いを断ったら、私はまた同じ「人見知り」。
変わらなきゃ・・・・。変わらなきゃ。
「大丈夫だよ!!行けるよ!」
「そ。じゃ~終わったら連絡してね!待ってるから!!」
畑中さんは、そう言って。嬉しそうに教室を出て行った。・・・・・なんだろう、この感じ。久々に楽しかった。そういえば、こうやって笑って誰かと話していなかったな。・・・・・チカ。私は変わるよ!もっと自分に「自信」を付けて高校三年間楽しい人生になるよう頑張るね!!
それから、私は残りの七教科のテストを終わらし。気づけば、十二時三十三分になっていた。あと、夕方まで四時間ある。待ちきれないな。そうだ!今度また皆と「お茶会」したら、その後皆で「楽屋の湯」の温泉入りに行こって誘ってみよ!そして皆でカラオケとか行ったりして・・・・。とりあえず、タコ焼き食べよっと。
時刻は十七時。私は自分の部屋で、お洋服に着替え。何度も何度もスマホを見たりしていた。そろそろ行こうかなと思い。部屋を出るとき。部屋に飾ってある「ベースのギター」に。
「チカ!行ってきます!」
と言って。部屋を出た!一階に降りたとき丁度、母に会い。あら?出かけるの?と言われ。私は、うん!と答え。母は、そう、いってらっしゃい。と返し私は学校前の「珈琲レストラン」へ向かった。徒歩だと遅くなるので。中学生の頃に中学校まで通っていた自転車で行くことにし安全運転で走行した。すごい楽しみだな!もう、皆集まっているのかな?。そういえば。「珈琲レストラン」行くの久しぶりだ!あっ「葡萄ケーキ」食べれる!!そうだ、畑中さんに今度海沿いの喫茶店もいいよってオススメしてみよ!
いらっしゃいませーー。
「あっ!遙佳さん!!こっちだよーー!!」
皆が集まっている!!
「お待たせしました!」
畑中さんが笑顔で待っていた。
私が席に座ろうとした瞬間。
「じゃ~とりあえず・・・・この明細書。全部払ってくれる?。」
・・・・・・・・!?
悪夢が始まった。