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07

先日の王宮での出来事は私の記憶から抹消した。抹消したったら抹消した。

王宮と私の相性が悪いのだろうか。嫌な思い出しかない。むしろ家から出ないほうがいいのかもしれない。


なんて真剣に考えていたけれど、今日も私は王宮に居る。


どうやら王妃さまの思い付きという王宮での勉強は二人の王子と一緒にお父様に魔法を教わることだったらしい。確かにお父様は魔法、特に雷魔法の最高峰と謳われるお方。普段は宰相という仕事柄、王子達の教育には関わらないが、そこは陛下の権限である。勿論、お父様にも拒否権は与えられたが、仕事という名目で娘である私にも教えることが出来るのならと引き受けたらしい。ただでさえ多忙なのに……いや、普段はお仕事してる時間にお父様に会えるという誘惑に勝つことが出来なかった私も私だが。ごめんよ、お父様。


そんなわけで、エリオット様とレオナルド様と机を並べてお父様の授業を受けること2回目。王子達が優秀過ぎて辛い……。

エリオット様は歳上だし、レオナルド様だって王子として英才教育受けている身なのでそんな二人と比べたって仕方ないことは分かっている。分かっているけども……!


「駄目な子でごめんなさい」

「おい、泣くな」

「まだ泣いてません」

「ぎりぎりだよ、コーデリア」


勝手に出るんだよ!

よしよしと頭を撫でるエリオット様には非常に申し訳ない。本当に彼は理想のお兄ちゃんだ。畏れ多いながらも心の中ではお兄ちゃんと呼んでいる。うぅ…と小さく呻いてその胸に飛び込めば優しく抱き締めてくれるのだからこれを(心の中で)お兄ちゃんと呼ばずに何と呼ぶ!


即行でお父様に引き剥がされたけど、お父様には盛大に泣きついても怒られないからそのまま鞍替えしておく。最初っからお父様にしとけばよかった。


「コーデリアはコーデリアのペースでいいんだ」

「お父さまぁ」

「焦ることはない。王子と比べるものでもない。あの二人はちょっと可笑しいんだ」


一緒に勉強し始めて知ったけど、お父様は王族様に対してちょっと辛辣ですね!?勿論、周りに人が居るときはそうではないし、他ならぬ王族の方達は慣れているのか気にしていない。ちなみにレオナルド様は前回授業終了後にスパルタァ…と呟いてから倒れた。お父様は私以外に容赦がない。……最初の出会いのときのこと根にもってないですよね?


レオナルド様とはあれから凄く良好な関係を築けている。と、思う。

同い年ではあるが、レオナルド様もまたお兄ちゃんのように面倒見が良い。多少口は悪いけれど。ただ時々凄く哀れなものを見る目を私に向けるのは一体全体なんだというのか。特に仲直りした日の帰り際に両肩に手を置かれて「その……頑張れ、よ?」と酷く痛まし気に声を掛けられたことは暫く忘れられそうもない。なんだ、私は何を頑張ればいいんだ。何度尋ね返しても毎回誤魔化されるから答えは分からないままなのが更に不安を煽る。━━閑話休題。


「先生の言うことを素直に肯定する気はないけど、僕らはやっぱりほら。見栄を張りたい男の子だからね。コーデリアに追い付かれまいと頑張ってるんだよ。ね?」

「引きこもりにそう軽々と追い付かれてたまるか」

「口悪いなぁ。コーデリアは、頑張るのやめる?」

「………やめません」


溢れそうな涙をなんとか堪えて首を横に振ると、エリオット様は私の髪に薔薇を差し込んだ。出会ったときにも同じ事をされた。先日羞恥のお薬塗り塗りが終わったときにも。前回の勉強会の時も慣れないことに四苦八苦していたらやっぱり一輪。どうやら慰めるときや頑張ったときのご褒美らしい。どこから出しているのか不思議なのだけど、魔法ではないらしい。一体どこから取り出しているんだ。


今日の薔薇は、何色だろうか。

いつも自分では見えないから帰ってからしか確認出来ない。


「うん。可愛いね」


お、お兄ちゃあああああんっ!!

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