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03

突然だが、この世界には魔法が存在する。

前世の世界では空想の産物でしかなかったものが。この世界には現実として存在するのだ。ファンタジー……。


この世界では誰の体にも魔力というものが流れている。だけど、それを変換して魔法を使うことが出来るのは王族や貴族などの上流階級の人間ばかりだ。勿論、貴族の中にも魔法が使えない人間はいるし、逆に極稀にだが平民出身の魔法使いもいる。


だからといって選ばれた者しか魔法が使えないわけではない。

魔宝石、と呼ばれるものがある。名の通り魔法が込められた宝石だ。これがあれば誰でも簡単に魔法が使える。ただし、宝石とだけあって値段は高い。種類やサイズ、込められた魔法によりなんとか手の届くものから国宝レベルまで様々だ。


余談だが何の道具も必要とせず自力で行使するものを魔法。魔宝石など何らかの道具を介して発動されるものを魔術と呼ぶ。ちなみに魔法使いであったとしても魔宝石を使用する者は多い。魔力の消費を抑えられるし暴走することがなく安全だからだ。比較的幼い魔法使いの子どもには魔力を通しやすい魔宝石を埋め込んだ杖を使って魔法に慣れていくという練習がよく採用されている。

勿論、中には魔法使いとしてのプライドが高くそんなものを使用することに対して誇りはないのかと怒る人種もいるにはいるらしいが。


魔法の使えない世界で生きていた記憶がほんのりある私には勿論そんなプライドはない。幸いお父様にもないらしく、私は練習用にと杖を頂いた。前世で言うところの白魔法使いが持っていそうな黄金の細工が施された白亜の杖だ。私の身の丈ほどの長さがあるのに、細いせいかさほど重くはない。上部に埋め込まれているのは青い魔宝石。その少し下では滴型をした色とりどりの魔宝石が揺れている。一目で分かる。お高い奴だ。


全力で拒否したかったが、体が弱く殆ど魔法が使えなかったお母様が幼いときに使っていた杖だと聞かされれば断れるわけもなく。


今日も今日とて嫌な手汗を掻きながら、庭で魔法の練習に励んでいた。早いところこの杖から卒業したい。長々とした呪文を紡ぎ、最後に一呼吸入れる。


「サンダーウォール、」


ばりりっ!と格子状の雷が私の目の前に聳え立つ。ちなみに杖無しだと、ぱりっと光って終わりだ。一応貴族であるので魔法は使えるがなんとも心許ない。雷魔法の最高峰と謳われているらしいお父さまの娘としてこれはいけない。よろしくない。


一応魔法を習い始めてから殆ど毎日こつこつ練習を続けてはいるのだけど…いまいち成長が見られない。練習自体は楽しいのだ。魔法が存在しなかった世界の記憶を持つ身としては、他の誰でもない自分自身の手で奇跡を起こせることはこの上ない喜びだ。例え微々たるものだとしても。


感覚を忘れない内に、一度杖を置いた。

身体の中の魔力をイメージする、と言うのは少し難しい。だから、流れる血液をイメージするようにした。


中心は心臓。心だ。

身体中を巡らせながら、発動する魔法を強くイメージする。炎の魔法なら血液を火に。雷ならば血液を電流に。そうするとじわりと体が熱を持ち出した。魔宝石を使用していてはこの感覚は伝わらない。頭の先から足の先まで満たして最後に伸ばした指先へ全てを集めていく。紡いだ呪文が魔法陣を描いたら、後はそこに注ぐだけ。


「サンダーウォール、」


ぱちっ。

はいはいそんな上手くいかないよねー!

お高そうな杖とはまだまだ長い付き合いになりそうだ。

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