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今の季節は何と言うべきか。

当てはまるのは、桜が淫らに散り、GW(ゴールデンウィーク)という、何処もかしこも人がアリのように散乱する一週間前だということだ。

隙間風からは、ひんやりとした風は姿を消しつつあり、暖かい風が勢いを増しているのを感じる。丁度良い風だ。

俺の席は、一番窓側に存在し、その丁度良い風を一番感じることが出来た。

窓越しに外を見ると、日の光が弱まっているのが確認出来た。黒板の上にある丸い時計で、短い針はもう直ぐ3の位置に到達しそうだった。

「と言うことで、今日の授業はここまでにします。」

この言葉を待っていたのか、教室からは溜め息が散乱した。

チャイムと同時に、学級委員が起立と礼を指示し、皆がそれに従うと、騒がしい放課後が始まった。

「花咲君。ちょっと良い?」

教室の入り口から、教師の木南(きなみ)えりなが、少し教室が響くように俺を呼んだ。

何事かと思ったが、とりあえずニコッと表情を作り、木南先生の方へ向かった。

「何でしょうか?木南先生。」

すると、いきなり肩に腕を掛けられ、明らか強引に職員室へと引っ張られた。

職員室に着くと、木南先生は自分の席に座り、脚を組んで俺を見つめた。

「何ですか?急にこんな所連れてきて……。」

花咲友愛(はなさき ゆうあ)君に質問します。」

「はあ……。」

「友達とはなんだと思う?」

……友達とは、利用し利用される拷問の事です。などと本音を言える訳もなく。

「信じ合える仲間…ですかね…。」

すると、木南先生はニコッと表情を変え、俺の胸ぐら掴んだ。

「絶対そんな事思ってないでしょう?君の作り笑顔と作り台詞は私には通用しないわよ?」

「おっ思ってますよ。なっ仲間思いは、ぼっ僕の長所ですから……。」

すると、俺の胸ぐらを掴んでいた手が離れ、木南先生は溜め息を付いた。

「まっ、今は良いか。所でお前は部活に入ってなかったな。」

「はあ…、まあ…。」

「ということは、フリーな訳か。」

「そうですね。余り興味がないです。」

「じゃあ話が早い。今日から君は文芸部員だ!おめでとう!」

木南えりなは何を発しているのか理解が出来ない訳で……。

「入ってもらうも何も、入部何かしませんよ!」

「そっかー。でもね花咲君、残念ながら、もう君は文芸部の一員なのだよ。」

木南先生は、目を閉じながら満足げに頬を緩めて、自分の白い机をバタンバタンと軽く叩いた。

白い机に目をやると、入部届が……。


私は本日より文芸部に入部に致します。

2年B組 花咲 友愛


この用紙を見た途端、自然と怒りと切なさと心強さが湧いてきた訳で。

「こ、これは何の真似ですか?」

「あ、取り上げようが、破ろうが、幾らでも用紙は作れるから無駄だからね。」

人差し指を立てて、ウインク。殴りたい……この女……。

「何でこんなことを……」

「花咲君悪いんだよーだ。」

前屈みにぶりっ子声。殴って良いですか?殴った方がいいですかね?……。

「でもね、花咲君。」

何故か急に、木南先生の表情が少し悲しい様で優しい表情に切り替わった。

「ここに入れば、花咲友愛という物をきっと自然にしてくれる。君は順序を間違えて成長してしまっているからね。」

俺は、何故こんな表情で木南先生が何故こんな事を言っているのかが良く理解出来なかった。


「とりあえず、早速文芸部に行こう!」

生き生きと席を立ち、木南先生がまた俺の肩に腕を掛けると、職員室を出た。というよりは、負傷者が無理矢理ピッチの外へ出される感じか。俺の場合は心の…。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


青島高等学校(せいとう)。俺が通うこの学校である。

設立五十五年と、歴史がある学校と言っても良いだろう。長い時間、数々の足跡が刻み込まれ、かなりボロがきている印象を持つであろうが、二年前に改装工事をしたため、傷も少なく非常に綺麗な状態となっている。

青島高校は元々、五年前までは青島女子高等学校という、女子のみの高校だった。その後は、男女共同となったのだが、昔の影響からきているのか、青島高校に在学する男女の比率は、二対八となっている。

女子が多いのは、意外と俺にとっては好都合である。女子は基本、プライドが高い種類の人間が多いため、年下から年上まで関係なく、こっちが一歩引いた状態を保ち、相手の立場が上になる様に、言葉使いや雰囲気を作れば「やっぱ花咲君優しい」や「花咲君とお話すると楽しい」とポイントが楽に稼げるため、花咲友愛のブランド力が上がりやすい。

だが、職員室での事を振り替えると、木南先生に勘づかれている可能性があるのではないかと、完全に首に入りつつある腕の中で、危機感を感じていた。

「着いたぞ」

ほぼヘットロック状態で気が薄れていた中、言葉と同時に腕が離れ、ストローの紙袋に水滴を垂らした後の様に、自分の体が再生したのを感じた。

…………文芸部室。目線の先にそう見えた。

「開けるよ」

すると木南先生は、引き扉を横にスライドさせた。







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