請愛【しょうあい】
「突然お邪魔して申し訳ございません」
テーブルを挟んで麗加と父親、野沢家と座る。
「いえ、今日はどういったご用件で?」
「私どもの息子の彰宏と、西様の娘さんである麗加さんとの婚約を結んで頂きたいと思いましてね」
麗加は驚き野沢貴史を見た。いつかくることだと思っていたが、こんなにもタイミングを読んでくるとは思わない。
麗加は昴を諦める口実が出来たと思いながらも、もう会えないことに悲しさで心が掻き乱される。苦しい、心が絞め付けられるような思いが強く、婚約の話は麗加の耳に届かない。
西グループに利益があることに父親が手を伸ばさないはずがない。だから、婚約の話を断ることはない。
「麗加さん。麗加さん」
「……はい」
「大丈夫ですか?顔色があまりよくないですよ」
麗加の目の前に座る彰宏は、麗加の顔を覗くようにして話しかける。
「大丈夫です」
「無理はいけません」
「ご心配をお掛けしてすいません。でも、大丈夫ですので」
麗加は作った笑顔でその場を誤魔化した。その後、数分して野沢家は帰って行った。
麗加はその夜、心に決める。昴に自分自身のことについて話し、もう会えないと。
翌日、麗加は昴の店を訪れる。
「いらっしゃい。そこに座って。コーヒー淹れるから」
「昴」
麗加に名を呼ばれた昴は手を止め、目をしっかり見る。その目に心が揺らぐ麗加だったが、拳をギュッと作り覚悟を決めた。
「返事、の前に聞いて欲しい話があるの」
「とりあえず、座ったら?」
麗加は首を横に振り、話を続けた。
「私、西財閥の令嬢なんだ」
それを聞いた昴は酷く驚く。誰だって突然、有名な財閥の令嬢だなんて言われたら驚かない人なんていないだろう。
「あの、有名な?」
「そう。今まで黙っていてごめんなさい。言うのが怖くて話せずにいたの」
「誰だって言いたくないことはある。驚いたけど、それで嫌いにはならないよ。僕は麗加自身が好きだから。もちろん、金目当てで付き合う気もないから」
意志の強い昴の目を直視することができない麗加は、目を逸らした。
「昴、私には運命に逆らう勇気もなければ、全てを敵に回した後の対処の方法を考えることができない」
そこで一度、言葉をおいて昴をしっかり見るようにした。昴は何を言われるか、悟った。それでも、最後まで話を聞くように耳を傾ける。
「私は……、昴が、好き。好きなの!!だけど、私は昴と付き合うことはできない。もう、私には決められた未来がある。約束された人が…いるの」
麗加の目には涙が溜まり、しっかりと昴の姿を映すことが出来ない。涙を溜めた麗加には、昴が今見せている悲痛な面持ちはぼやけている。
「私は昴を一番に選ぶことが出来ない。例え、婚約破棄になっても破産しようとも、昴は二番目でしかない」
麗加は透明な涙を流し、最後に告げる。
「昴、ありがとう。私を好きになってくれて。そして、さようなら」
麗加は店を飛び出し走って家に帰り、ベットへと顔を埋めた。
「ごめん。ごめんなさい。昴、こんな私を許して」
泣きながら麗加は許しを乞いていた。それからずっと涙を流し、声を上げながら泣いていた。
そのころ昴は自分の無力さに悔しみを抱くしかなかった。自分に力があれば、声をかけてあげれば、悔やんでも悔やみきれずに昴は強く拳を握り、テーブルを叩いた。
「……麗加」
昴の声は儚く消える。
その後二人は会うことはなかった。
______麗加は沢山の人から祝福の言葉をもらう。
「美男美女の夫婦になるんですね」
「羨ましいですわ」
「お幸せに」
そんな声が聞こえる。何を羨ましがるのか。美男だから?美女だから?金持ちだがら?安泰だから?
麗加が一番、羨ましむのは自由を手にしている人だ。
ーFin-
愛を求めるのは難しい。
「二番目だけど許して」ということをお題に書いてみました。




