請愛【しょうあい】
「同じ年って分かったから敬語はなしってことで」
「えぇ、そうね」
会話をしているうちにコーヒーはできたらしく、コーヒーの香りが鼻を通り体の中を巡るようだ。
コーヒーカップにコーヒーを注ぐ昴の姿に麗加は見入っていた。
「どうぞ」
昴はコーヒーカップを麗加の前へ置く。麗加はコーヒーを口に含む、その瞬間コクのある味が香りとともに口いっぱいに広がり、鼻からスッと抜けるように深い味わいだと感じた。
無意識に笑みが零れる。
「すごく、おいしい」
「それは良かった」
昨日出会ったばかりなのにこんなにも打ち解けている。
そして、二人は毎日のように会うようになっていた。1~2時間だけと短い時間だが、二人にとってはとても充実している時間だった。だが、麗加は未だに自分が令嬢だということを言うことが出来ずにいたのだ。
言ってしまえば会ってはくれなくなると不安だったから。麗加はいつの間にか昴に惹かれていたのだ。それは昴も同じだった。
「麗加、僕と付き合ってほしい。僕には何もないけど、君を精一杯愛するから」
彰宏に出会う前に、昴から告白をされる。強い言葉に強い目をした昴を見れば本気だと分かる。
「……昴」
「答えはすぐじゃなくてもいい。すぐに決めれないだろうしね」
麗加の素直な答えは決まっている。今すぐにでも返事をしたいが、できないのは自分の立っている場所のせいだ。私も昴のことが好きなんだ、と心で叫んでいる声を押し込めることしかできない。
変に期待させては昴に悪いと分かっていても、断る言葉が昴を傷つけないようにする優しい嘘が浮かんでこない。
俯く麗加の顔を見て昴は困らせてしまったと、無理だと諦めを抱いていた。話題を変えてみても麗加は浮かない顔をしている。
「…困らせてごめんね。今日は帰りな。返事はいつでもいい、僕はずっとここにいるから」
「…ありがとう」
麗加に言えることはただその一言だった。
夜、珍しく父親と夕食を共にした麗加。
「最近、頻繁に外へ出ているらしいが仕事もせずに何をしている」
「何もありません」
麗加は父親の質問に白を切る
「まぁ、いい。あs田、野沢家がいらっしゃる。お前もその場にいろ」
「…分かりました」
"嫌だ"なんて言葉は言えない。麗加の心はずっと曇ったままその日を迎えた。




